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意識障害をシンプルにみる

投稿者プロフィール
島田利彦

医仁会武田総合病院

82,565

247

概要

AIUEOTIPSのような個別疾病からではなく、臨床でやるべきこと、To do listsからはじめる意識障害の見方について、それぞれの項目でのピットフォールと合わせて学習する。実在症例提示あり 

本スライドの対象者

研修医/専攻医

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テキスト全文

#1.

Essential & effortless  意識障害アイウエオの一歩先 2022/04/27 淡海医療センター

#2.

ERより一般内科へ「尿路感染で入院お願いします」

#3.

糖尿病, 膠原病?などあるが、家庭内自立した79歳女性 主訴: 意識障害 現病歴: 3日前まではデイサービスに行っており、2日前の夕も元気であった。受診前日の朝から倦怠感と38度前後の発熱があったが、まずまず元気で食事もとれていたため経過を見ていた。 受診日の朝、看護師が訪問時に顔色不良あったが、意識はあり会話可能であった。その後、昼から徐々に応答が悪くなり救急要請。

#4.

糖尿病, 膠原病?などあるが、家庭内自立した80歳女性 既往歴 : 2型糖尿病(HbA1c 7.0%) SLE?(詳細不明 抗核抗体高値指摘・症状なし), 神経因性膀胱・慢性水腎症 脾腫瘍(10年以上前から指摘、良性として経過観察され緩徐に増大) 飲酒なし 喫煙なし 内服薬 : プレドニン3mg、メバロチン、ラシックス、タケプロン、フェロミア、マグミット、 ランタス 6U、トラゼンタ、ボグリボース

#5.

BP157/86mmHg, p 132/min, SpO2 99%(10L/min) reg, BT 38.7℃ E4V1M4 焦点の合わない開眼+, 痛みに弱々しく逃避 瞳孔は正円同大, 対光反射sluggish,人形の目現象正常  項部硬直なし 心雑音なし 呼吸音静 腹部にあきらかな圧痛はなさそう 両側hand drop+ 筋緊張亢進・不随意運動なし Babinski上向き?(再現性なし) 尿道カテーテル留置すると、白色混濁尿が大量に流出 

#6.

尿バッグ

#7.

WBC H   9600/μL  NEUT%    71.9 %  LYMPH% L   18.0 %  MONO%    10.0 %  EO% L   0.0 %  BASO%    0.1 % RBC L 359×10 4/μL Hb   L 9.6 g/dl MCV 83 fl PLT    28.8×10 4/μL PT-INR 1.20 INR APTT 36.0 SEC FIB   H 460 mg/dL FDP     H 20 μg/ml CRP     H 19.94 mg/dL TP H 8.5 g/dl ALB L 2.5 g/dL T.BiL   0.3 mg/dL AST 18 U/l ALT    6 U/l ALP 240 U/l LDH 157 U/l γ-GTP    14 U/l AMY

#8.

動脈血液ガス pH 7.573 pO2 329.0 mmHg pCO2 17.0 mmHg HCO3(P.st) 20.5 mmol/L cLact. 14 mg/dL 急性呼吸性アルカローシス

#9.

尿定性沈査 比重  1.010 pH  8.5 尿糖    (+-) 尿蛋白   (4+) 潜血    (+) ケトン体      (-) ビリルビン   (-) ウロビリノーゲン   NORMAL 亜硝酸塩    (-) 赤血球 >=100 /HPF 白血球 >=100 /HPF 扁平上皮 1-4 /HPF 細菌    (3+) 酵母真菌      (+)

#11.

画像(脾臓腫瘍、慢性水腎症)上は以前と大差なし 神経因性膀胱・水腎症

#12.

ERの判断詳細不明の基礎疾患あり複雑性尿路感染・敗血症か。各種培養・抗生剤投与、入院加療 一般内科としては

#13.

なぜこんなに意識が悪いの?他に確認すべきことはない? 入院管理するにあたって

#14.

画像検査 MRIでも著変なし. さらに

#15.

腰椎穿刺 外観           血性髄液  徐々に透明に 髄液細胞数 10 /μl    多核球         6 単核球          4 蛋白定量 86 mg/dL 糖定量 102 mg/dL  (随時血糖187) まとめ グラム染色       赤血球少数のみ.白血球や細菌は見えず

#16.

研修医による問題リストと入院時アセスメント # 急性意識障害   血性髄液(traumatic?)  # 発熱 # CKD # 両側水腎症/膿尿:神経因性膀胱 # SLE?:抗核抗体高値 # T2DM # 脾腫瘍(詳細不明) 尿路感染や敗血症の可能性が高いか。除外すべき疾患としては髄膜炎、 ヘルペス脳炎など。一般細菌や抗酸菌に加えてHSV PCR,クリプトコッカス, ADAなどを提出しておく。まずは広域抗生剤・ACVを開始し、検査結果で 徐々に治療を狭域化する。  

#17.

「もうひとつ確認することは?」

#18.

診断的検査 NH3 287 μg/dl  (正常値:40-110)

#19.

補液とCTRX投与開始 入院翌日には呼名に開眼+  NH3 127 第4病日 「お腹が減りました」 NH3 66   最終診断

#20.

尿路感染に伴う「非肝性高アンモニア血症」              診断のヒントは?

#21.

            診断のヒントは? 尿pH = 8.5  尿のアルカリ度↑ 尿培養では最終的にB群溶連菌と常在菌と思われるGPRを検出* 典型的なウレアーゼ産生菌ではない

#22.

非肝性高アンモニア血症Non hepatic hyperamonemia 肝硬変でアンモニアが上昇するメカニズムでもっとも重要なことは? 肝機能障害そのものよりも、門脈圧亢進に伴う門脈・体循環シャントの関与が大きい → いわゆる肝機能に変化がなくても、便秘・TIPS治療・特発性門脈圧亢進症などで肝性脳症が増悪する

#23.

門脈・体循環シャント  Porto-systemic shunt (肝臓をバイパスする部位の)Urease産生菌感染      ・ 骨盤内静脈は直接IVCへ還流. UTIでは起こりやすい     ・ Proteus, Ureaplasma, Corynebacterium urealyticumなど多彩 ・ 胃のピロリ感染や膿胸での合併例も報告あり 先天性尿素サイクル異常症(常染色体劣性) 抗てんかん薬(バルプロ酸) 痙攣発作(数時間以内に低下する) その他、血液検体の放置、骨髄腫の一部、Reye症候群など 非肝性高アンモニア血症Non hepatic hyperamonemia

#24.

高NH3による意識障害で搬送された高齢女性 下腸間膜静脈 → 左卵巣~腎静脈への肝外シャント

#25.

意識障害へのアプローチ

#26.

意識: 覚醒度と内容、量と質 Frontiers in Psychology 2013  

#27.

純粋な失神では 頭部CT  の意義に乏しい (2次性外傷除く)

#28.

意識障害の捉え方頭蓋内か、頭蓋外か

#29.

意識障害患者の収縮期血圧100mmHg以下なら頭の外、170mmHg以上なら頭蓋内 収縮期血圧mmHg 患者数 BMJ2002

#30.

古典的AIUEOTIPS (あくまで私見ですが) 覚えにくい。 見落としが心配。 臨床で使いにくい

#31.

意識障害への6stepアプローチ  ABC/Vital signs →    Do DONT         血圧と低酸素, 低血糖(夜間でも簡便)    Lab 採血:      Ca, VitB1を忘れない。原因不明や再発ではNH3  Scan 画像:      focal signがあれば積極的に        画像評価の落とし穴に注意 (後述)  Spinal tap:         少しでも髄膜炎・脳炎かもと思ったらやる(個人的意見)  病歴再チェック :     薬剤(治療薬)、 毒物(CO, 農薬など)  EEG:             NCSE(後述)に注意。BZDによる診断的加療も

#32.

意識障害への6stepアプローチ(追記)   Do DONT  Dextrose ブドウ糖, O2, Naloxone ナロキソン, Thiamine ビタミンB1           ナロキソンは本邦ではルーチンではない       ブドウ糖投与には少し注意が必要(低KやVitB1欠乏増悪)       髄膜炎・脳炎疑いへのルンバール         高齢者の敗血症による意識障害では確かに迷うが‥  薬剤(治療薬)、 毒物(CO中毒, 農薬服毒, 違法薬物など)        薬剤内服を黙っている・隠している場合もある

#33.

意識障害でも評価できる神経所見脳幹部 と 錐体路   バイタルと自律神経症状(起立性低血圧や肛門括約筋トーヌスなど)  高次脳機能: 空間無視 (neck rotation)  項部硬直(meningeal sign) 脳幹反射(瞳孔、対光反射、角膜反射*、OCR/人形の目)      *睫毛反射も     眼位(共同偏倚)、眼振・眼球運動  眼底 (うっ血乳頭) 不随意運動 特にミオクーヌス  疼痛刺激による表情筋(顔面神経)や四肢の逃避    徐脳・徐皮質肢位  Arm drop, 膝立  反射/病的反射 Babinski / Chaddock 迷ったらまずベッドサイドで頭の横に立ってみる Focal signあれば積極的に画像を

#34.

意識障害/昏睡での神経局在徴候と高位診断 J Neurol Neurosurg Psychiatry 2001より一部改変

#35.

中枢神経障害による意識障害画像診断におけるピットフォール 超急性期の梗塞(単純CTでearly CT signないか) 両側視床梗塞(傍視床正中動脈のラクナなど) MDMA脳炎、橋本脳症(MRIでも異常がないかも) ヘルペス脳炎初期(初期は10%MRI陰性) 静脈洞血栓症 (MRV必要) TTP http://nanbugim.p2.bindsite.jp/_src/sc941/97bc91a48e8b8fb08d5b8dc7.pptx.pdf

#36.

Non convulsive status epileptics: NCSE非痙攣性てんかん重責   脳波がてんかん波をしめし、行動あるいは精神状態に変化が持続   てんかん重責の20-25%   昏睡状態患者の8-20%   全般性痙攣重責患者の運動症状抑制後の14% Lancet Neurology 2007, Neurology2003

#37.

高齢者の意識変容・精神障害 特に 『5D』 に注意   Depression: うつ Dementia:認知症 Delirium:せん妄 Delusion:妄想性障害 Drug-induced:薬物 

#38.

まとめ: 意識障害へのアプローチ   ABC・バイタルサイン  →    Do DOT      BP < 100mmHg → 全身系:採血評価重視       BP > 160mmHg → 頭蓋内:画像評価重視                    (特に神経局在所見があれば)   薬物・毒物のチェック、再チェック    腰椎穿刺      EEG   小さなミオクローヌスがあるなど、NCSEを強く疑えば治療的診断     

#39.

Take home points    意識障害は頭の中と外で分けて考える   さいけつ、画像、ルンバール、あとはくすりとEEG   肝硬変でなくてもアンモニアは上昇する

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