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AGAバイトの概要と必要知識
#1. AGAバイトを始める前に読んでおきたい! AGA治療まとめ ボブ ⽪膚科専⾨医 Twitter ID:@hifukaibob
#2. はじめに:AGAバイトってどんなイメージ? 誰でもできる 楽に稼げそう! 薬だけ処⽅してれば いいんでしょ? たしかに多くの医師にとって、楽な部類の業務だと思います。 ですが治療の効果・リスクなど、⾃信を持って患者さんに説明できますか? やっぱり最低限の知識は必要です。
#3. AGAバイトを始める前に必要なこと ・AGAの疫学や病態を、⼤雑把に理解しておく。 ・AGA治療の種類・効果・リスク・コストについて 患者さんに⼗分説明できるようになる。 患者さんに質問されることもありますので、 ⼀度は勉強しておきましょう。
AGAの定義と主な原因
#4. AGAとは? ・Androgenetic Alopeciaの略語。(=男性型脱⽑症) ・健康な⽑髪は2〜6年かけて成⻑するが、 AGAでは数ヶ⽉〜1年程度で⽑髪の成⻑が⽌まってしまう。 →細くて短い⽑になる。 ・⽇本⼈男性の場合、20代で約10%、30代で約20%、 40代で約30%、50代以降で約40数%がAGAに該当する。1) 1)板⾒ 智:⽇本⼈成⼈男性における⽑髪(男性型脱⽑)に関する意識調査,⽇本医事新報,2004;4209:27-29.
#5. AGAの主な原因は? ・遺伝 下記の遺伝⼦の関与が指摘されている。2) ・X染⾊体上にある男性ホルモン受容体遺伝⼦多型 ・常染⾊体の17q21や20p11に存在する疾患関連遺伝⼦ ・男性ホルモン 覚える必要は ありません こちらは⼤事です 活性の⾼い男性ホルモンであるジヒドロテストステロン(DHT)が ⽑髪に作⽤すると、⽑の成⻑期が短縮する。3) 2)男性型及び⼥性型脱⽑症診療ガイドライン2017年度版 3)Inui S, Itami S : Androgen actions on the human hair follicle: perspectives, Exp Dermatol,2013;22:168-171
#6. DHTがあると何が起きる? ① DHTが⽑髪の 受容体に結合 ②⽑の成⻑期間が短縮 休⽌期 (3ヶ⽉) ③貧⽑化・脱⽑ 成⻑期 (2-6年) 成⻑期が短縮 (数ヶ⽉-1年に) DHT 健康な⽑髪 退⾏期 (2週間) →そもそも体内でDHTが作られることを防げれば、それがAGAの治療になります。 治療の詳細については、後述します。
内服薬によるAGA治療の詳細
#7. AGAの治療:内服薬 ガイドライン推奨度 内服薬 A (⾏うよう強く勧める) フィナステリド デュタステリド B (⾏うよう勧める) ー C1 (⾏ってもよい) ー C2 (⾏わない⽅がよい) ー D (⾏うべきではない) ミノキシジル (⾚字:処⽅薬 ⻘字:市販薬) 参考:男性型及び⼥性型脱⽑症診療ガイドライン2017年度版 次のページで 深掘りします ・フィナステリド(プロペシア®︎) ・デュタステリド(ザガーロ®︎) 共に、DHT産⽣を阻害する薬。 現状ではAGA治療の第⼀選択として 使⽤されることが多い。 ・ミノキシジル内服 降圧薬として開発されたが副作⽤で多⽑ になることがあり注⽬された。 ⾎圧低下リスクがあるためAGA治療⽬的 での使⽤は推奨されていない。
#8. フィナステリド・デュタステリド ・効果:半年後の⽑髪数変化量は フィナステリド:+56.6本、デュタステリド:+89.6本4)と好成績。 ただし効果確認まで6ヵ⽉の継続が必要。 ・リスク①:効いても、中⽌したらまた脱⽑する。 ずーっと続けないと 意味がない! ・リスク②:PSAの測定値が真の値の約1/2に低下する。5) 前⽴腺疾患の⾒逃しに注意。 ・リスク③:肝機能障害(特にデュタステリド) 時々は採⾎した⽅が いいかも・・・。 4) Gubelin Harcha W, et al. Am Acad Dermatol. 2014;70(3):489 5) Guess HA, et al. J Urol. 1996; 155: 3-9.
#9. フィナステリド・デュタステリド ・コスト:⾃費診療のため施設ごとに異なる。⼤雑把に⾔うと1ヶ⽉分で フィナステリド…先発品:7000円、後発品:5000円くらい。 デュタステリド…先発品:10000円、後発品:8000円くらい。 もっと安い施設も少なくない。 ・⽐較:効果で選ぶならデュタステリド。 安さと副作⽤の少なさはフィナステリドが有利。 途中で切り替えは可能。 勤務先に 要確認! ⻑期使⽤することを考慮すると、 まずはフィナステリドの⽅が オススメしやすいです!(私⾒)
外用薬とその他のAGA治療法
#10. AGAの外⽤薬 ガイドライン推奨度 外⽤薬 A (⾏うよう強く勧める) ミノキシジル B (⾏うよう勧める) アデノシン C1 (⾏ってもよい) t-フラバノン サイトプリン・ペンタデカン カルプロニウム(カロヤン®︎) カルプロニウム(フロジン) ケトコナゾール C2 (⾏わない⽅がよい) ビマトプロスト ラタノプロスト D (⾏うべきではない) ー (⾚字:処⽅薬 ミノキシジルやアデ ノシンを含む市販薬 がオススメです。 ・外⽤薬には頭⽪の⾎流改善・成⻑因⼦ 産⽣促進・⽑の成⻑期延⻑などの効果 が期待される。 ⻘字:市販薬) 参考:男性型及び⼥性型脱⽑症診療ガイドライン2017年度版 ・推奨度AとBの外⽤薬は、共に市販薬。 処⽅薬よりも市販薬の⽅が推奨度が ⾼いという不思議な現象が起きている。 (処⽅薬は正直、効果が微妙・・・。) ・ビマトプロストやラタノプロストにも 発⽑効果が期待できる6)が、広範囲への 外⽤に関する安全性は不明。 6)Blume-Peytavi U, et: J Am Acad Dermatol, 2012; 66: 794-800.
#11. 内服・外⽤以外のAGA治療 ガイドライン推奨度 その他 A (⾏うよう強く勧める) ー B (⾏うよう勧める) ⾃⽑植⽑術 低出⼒レーザー LED C1 (⾏ってもよい) かつら着⽤ C2 (⾏わない⽅がよい) 成⻑因⼦導⼊ 細胞移植 D (⾏うべきではない) ⼈⼯植⽑術 参考:男性型及び⼥性型脱⽑症診療ガイドライン2017年度版 ・バイト医が関わるとしたら 低出⼒レーザーやLEDライトなど、機械を 使って光を頭部に当てる治療。(光線療法) ⽑髪の細胞を活性化させて発⽑を促す。 痛みや副作⽤は少ない。 ・植⽑は、⾃⽑はアリだけど⼈⼯⽑はなし。 専⾨性が⾼く、バイト医が関与することは 少ない。 これらの治療の値段はお⾼め。 まずは内服や外⽤から開始し、 効果が⾜りない時に 検討することが多いです。
AGA治療の推奨度まとめ
#12. Take home message ①代表的なAGA治療法は内服薬。 ②内服薬は処⽅するだけじゃなく、 効果・リスク・コストの説明も必要不可⽋。 ③塗り薬・植⽑・レーザーなど、内服以外の AGA治療についても把握しておこう。 これからAGA診療を始める先⽣⽅の 参考になれば幸いです。
#13. おまけ:AGAの治療推奨度まとめ(⾚字=処⽅薬 ⻘字=市販薬) 推奨度 内服薬 外⽤薬 その他 A (⾏うよう強く勧める) フィナステリド デュタステリド ミノキシジル ー B (⾏うよう勧める) ー アデノシン ⾃⽑植⽑術 低出⼒レーザー C1 (⾏ってもよい) ー t-フラバノン サイトプリン・ペンタデカン カルプロニウム(カロヤン®︎) カルプロニウム(フロジン) ケトコナゾール かつら着⽤ C2 (⾏わない⽅がよい) ー ビマトプロスト ラタノプロスト 成⻑因⼦導⼊ 細胞移植 D (⾏うべきではない) ミノキシジル ー ⼈⼯植⽑術 参考:男性型及び⼥性型脱⽑症診療ガイドライン2017年度版