テキスト全文
ERでの初動とバイタルサインの重要性
#1. Essential & effortlessバイタルサインとショックERでの初動 2022/04/13 淡海医療センター
#3. まず動く、動いてもらう トリアージしたら
先に指示を出す!
OMI
O2, Monitor, infusion
さ る も ちょう しん き
バイタルサインの種類と正常値の確認
#4. ERでの患者初期評価 :バイタル→自律神経→みため
#5. あらためてバイタルサイン種類とおおよその正常値は? 血圧
脈拍
体温
意識レベル
呼吸回数
+
瞳孔、尿量 + SpO2 呼吸回数 12-20/min
尿量 0.5-1ml/kg/hr以上
#6. バイタルから考えよう 1 生来健康な68歳女性 2日前からの高熱
血圧 110/65mmHg
脈拍 84/min 整
呼吸回数 16/min
体温 39.2℃
SpO2 97%
比較的徐脈の定義と原因の考察
#7. 比較的徐脈 McGeeによる比較的徐脈の定義 脈拍が、体温(℃)×10-323 を下回ること
比較的徐脈の原因
レジオネラなどの非定型細胞内病原体、
チフス、既存の房室ブロック、
陰性変時作用のある薬剤(BB, CCB)、
リンパ腫、詐病、薬剤性発熱
#8. バイタルから考えよう 2-1 40歳代ぐらいの女性 既往等不明
公園で倒れていた
肥満あり 右hand drop+
JCS Ⅱ-30
血圧 175/90mmHg
脈拍 135/min 整
呼吸回数 18/min
体温 36.2℃
SpO2 97%
全身に冷汗あり
次とセットで
#9. バイタルから考えよう 2-2 70歳代 男性 2型糖尿病
病院での待ち時間中に昏倒
意識レベル Ⅱ-20
血圧 65/48mmHg
脈拍 135/min 整
呼吸回数 22/min
体温 36.1℃
SpO2 測定困難 80%代
四肢に冷汗+冷感著明
血圧に加えて脈圧は?
#10. 2-1. T2DM患者の薬剤性低血糖
低血糖性片麻痺(右に多い)
2-2. 急性心筋梗塞による心原性ショック
低血圧かつ脈圧が小さい(15 mmHg)
脈圧<SBPの25% → 低心拍出量
糖尿病患者の意識障害とバイタルの違い
#11. Catecholamine surge 血圧上昇+頻脈 ⇒ カテコラミン過剰分泌
循環不全・心不全(CS1)
低血糖
低酸素・高二酸化酸素血症
敗血症
疼痛(解離・SAHなど)、不安、運動
甲状腺クリーゼ、 褐色細胞腫
#12. 糖尿病患者の意識障害 低血糖とDKAのバイタルの違いは?
低血糖で血圧は下がらない
交感神経活動亢進→頻脈+血圧はむしろ上昇
#13. Copyright restrictions may apply. Feldman-Billard, S. et al. Arch Intern Med 2010;170:829-831. 血糖と血圧は逆方向に動く
Concomitant values of mean glucose level and mean systolic blood pressure (SBP) on 24-hour continuous recordings in 12 diabetic patients with hypoglycemic episodes ○収縮期血圧 ●血糖
#14. Question break: 39歳女性 抗リン脂質抗体症候群、血小板減少症、慢性頭痛
(SLEの基準は満たさないが補体低値あり)
数日前からの動悸、手の振戦、発汗で内科外来受診
BP 185/110mmHg p 135/min SpO2 98%
RR 16/min BT 36.2℃
心電図は洞性頻脈
何を考える?
Basedow? 褐色細胞腫?
出血性ショックの評価と身体所見
#15. 39歳女性
採血では甲状腺機能正常
胸腹部CTでは腫瘤・結節なし(褐色細胞腫らしくない)
軽度の心拡大あり BNP測定すると >600
心エコーで僧帽弁狭窄+
尿メタネフリン正常
診断:
抗リン脂質抗体症候群に伴う非感染性心内膜炎
それによるclinical scenario1の心不全
#16. バイタルから考えよう 3 生来健康な62歳男性 デスクワーク中に失神
血圧 112/68mmHg
脈拍 105/min 整
呼吸回数 14/min
体温 35.6℃
SpO2 98%
問診・診察で何をチェックする?
#17. 出血性胃潰瘍
直腸診
起立性低血圧(シェロング試験)
急性期の採血では貧血やBUN上昇はないかもしれない
意識障害の捉え方と血圧の関連性
#19. 身体所見・バイタル (出血) 起立性脈拍増加 起立性血圧低下 仰臥位頻脈 仰臥位低血圧 否定には使えないが、特異度は高い JAMA. 1999;281(11):1022-1029.
#20. 身体所見・バイタル (出血以外) 腋窩の乾燥、 眼の窪み、 毛細血管充満時間などが有用性高い JAMA. 1999;281(11):1022-1029.
#21. VSから考えよう 4 26歳男性 頭痛で早朝にERを自転車で受診
目の前でレベル低下していく(JCS 100に)
血圧 155/90mmHg
脈拍 46/min 整
呼吸回数 26/min
体温 36.2℃
SpO2 98%
何をチェックする?
#22. VSから考えよう 4 瞳孔散大あり、クッシング現象による徐脈
ERでの意識障害の初期評価のポイント
#24. 血圧と意識障害 BMJ2002 100mmHg以下なら頭の外、170mmHg以上なら頭
#25. 意識障害患者の収縮期血圧脳病変の有無による血圧の違い 収縮期血圧mmHg 患者数
#26. ERでの意識障害の初期評価(案) 血圧が高い
→
頭蓋内由来の可能性が高い
→
徐脈はないか
瞳孔不同と対光反射
その他の神経所見
早めに画像評価へ
急性胃腸炎と敗血症の診断の考察
#27. バイタルから考えよう 5 ADL自立の86歳女性 嘔吐でER walk in
腹痛なし 排便有り(普通便)
血圧 89/52mmHg
脈拍 98/min
呼吸回数 26/min
体温 37.2℃
SpO2 95%
急性胃腸炎?
#28. 血液培養からGNR 2セット陽性
胆管炎の診断
SIRSの概念(ちょっと古いが)
#30. 46歳女性 知的障害有り 数日前に尿管結石でNSAIDs処方 その他著患なし
搬送日(5月)に「暑くてしょうがなかった」ので、冷房を全開で数時間入れていた。家人が全身が冷たく、しんどそうなのに気づき救急要請
救急隊接触時 33.4℃台 意識清明で会話可能
BP 133/85mmHg p 135/min RR 30/min SpO2 98%
BT 35.6℃ (保温して搬送後)
ショックの病態とその評価方法
#31. 46歳女性 知的障害有り 数日前に尿管結石でNSAIDs処方 その他著患なし
搬送日(5月)に「暑くてしょうがなかった」ので、冷房を全開で数時間入れていた。家人が全身が冷たく、しんどそうなのに気づき救急要請
救急隊接触時 33.4℃台 意識清明で会話可能
BP 133/85mmHg p 135/min RR 30/min SpO2 98%
BT 35.6℃ (保温して搬送後)
いったん帰宅も夜にCPAで搬送され死亡
血液培養からCandida2/2 (尿培養からも同一菌+)
#32.
ショック+頻呼吸
→敗血症性ショックを考慮
(乳酸アシドーシスやエンドトキシンによる)
発熱のない敗血症は珍しくない(高齢者)
むしろ低体温かも
脱水のみでは頻呼吸にならない
#33. おまけ:ΔHR / ΔBT ΔHR / ΔBT > 20
:体温1℃上昇に対し心拍数が20/min以上上昇
細菌感染症のリスクが高い 出典不明
一般的にはΔHR / ΔBT 7程度 Am J Emerg Med. 2020
普段の血圧・脈拍と比較して判断する
#34. バイタルから考えよう 6 パニック障害のある28歳肥満女性
呼吸苦で救急搬送
血圧 80/62mmHg
脈拍 135/min
呼吸回数 32/min
体温 35.7℃
SpO2 93%
パニック発作?
ショックの種類と原因の考察
#35. 肺塞栓 パニック障害による過換気と誤認
ショックバイタル
過換気であればSpO2は下がらないはず
脈圧< sBP/4 は低心拍出量を示唆
さらにHypovolemiaか、Obstructiveかは
→ 頸静脈圧で鑑別できる
#36. ショック ショック ≠ 血圧の低下
不十分な組織灌流や細胞の酸素利用能の低下 などにより,酸素とエネルギー基質の需要・供給バランス が崩れ,細胞機能障害が生じる病態
代償起点により蒼白(pallor) 冷汗(perspiration) 虚脱(prostration) 微弱な頻脈(pulselessness) 呼吸促迫(pulmonary deficiency)が生ずる
#37. ショックを呈する4病態 ・Distributiveでは心拍出量あるいはSvO2が上昇する可能性がある
#38. ショック:おぼえかた S Sepsis, spinal
H Hypovolemic, hemorrhage
O Obstructive (PE, Tamponade, Tension pneumothorax)
C Cardiogenic
X Anaphylaxis
E Endocrine (副腎・甲状腺)
#39. 原因のよく判らないショック 高齢者のsepsis
副腎不全・クリーゼ
肺塞栓
毒物・薬物
TSS(Toxic shock syndrome)
# TSS : ブドウ球菌による毒素性ショック
筋痛・発熱などのインフルエンザ様症状や激しい下痢により判りにくい。
紅斑は一部にとどまったり、一過性のこともありえる。溶連菌性TSSなら
壊死性筋膜炎などfocusがある事が多いが、ブドウ球菌性ではfocusに乏しい。
多臓器不全を伴う原因不明のショックで考慮すべき疾患
#40. 徐脈を伴う低血圧・ショック : VF AED ON Vasovagal reflex 迷走神経反射
Freezing 低体温
AMI / AdamStokes / Acidosis
Electrolyte/Endocrine (高K・高Mg /副腎・甲状腺)
Drug (A:ntihistamine B:eta blocker C:a blocker D:igoxine)
Oxygen 低酸素血症
Neurogenic : traumatic spinal injury
徐脈+低血圧は特に背景を考える!
ERでのバイタルサインの分析と重要ポイント
#41. ADL自立の86歳女性 嘔吐でER walk in
血圧 89/52mmHg
脈拍 98/min
呼吸回数 26/min
体温 37.2℃
SpO2 95%
下肢に皮疹を認めた
バイタルから考えよう5
胆管炎・敗血症の続き Stanford medicine25
#42. Mottled skin = Livedo racemosa
Autonomic over activationによる皮膚変化.
敗血症性ショック : 死亡、q SOFA、lactateと関連 Actas Dermosifiliogr. 2008;99:598-607
#43. Intensive Care Medicine.2011 37(5):801-7 Mottling score
尿量や乳酸値より死亡と相関が強い?
#44. Take home points ERを生き残る
Vital signは意識して分析する
まず動く、動いてもらう
OMI さるもちょうしんき
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病歴は Onset と Time course から
ワーストケースシナリオの除外を意識する
最後はコミュニケーション