テキスト全文
急性上気道炎の基本知識
#1. 急性上気道炎 2026年
感染症科レクチャー
関川喜之
#2. 今日の目的 風邪を風邪と診断できる
風邪以外の疾患を鑑別できる
抗菌薬は必要な時のみ処方できる
風邪の診断と鑑別疾患
#5. 風邪症候群とは 急性に、
鼻炎症状(くしゃみ・鼻汁・鼻閉)
咽頭炎症状(咽頭痛)
下気道炎(咳、痰)
が同時に存在する
#7. 風邪症候群の分類 ①典型的な“風邪”(鼻症状=咳=咽頭痛) →普通感冒型
②鼻メイン(鼻症状>咳、咽頭痛) →鼻炎・副鼻腔炎型
③のどメイン(咽頭痛>咳、鼻症状) →咽頭炎型
④咳メイン(咳>鼻症状、咽頭痛) →気管支炎型 上・下気道症状メイン
#8. 風邪症候群の分類のイメージ かぜ診療マニュアル第2版 日本医事新報社
#9. 風邪症候群以外 ①高熱のみ型
②微熱・倦怠感型
③下痢型
④頭痛型
⑤発疹型
⑥関節痛型 上・下気道症状が目立たない!
#10. 風邪症候群の注意点 「かぜっぽい」で来院した患者を気道症状のあるなしで分類
気道症状のないものを、「上気道炎」としない
風邪診療で重要なことは
「風邪でないものを風邪ではない」と見極められること
風邪症候群の原因と治療
#11. 風邪症候群の原因ウイルス Lancet 2003; 361:51. どのウイルスも似たような症状を呈するため、症状から区別することは難しい
#12. 風邪 咳、鼻、咽頭の症状が、同時期から同程度、存在する病態
小児6-8回/年、20‐39歳2-4回/年、40歳以降1-2回/年 罹患 風邪の自然経過 かぜ診療マニュアル第2版 日本医事新報社
#13. 風邪の治療 経過観察
患者さんの心配や訴えに合わせて
発熱や痛み:アセトアミノフェン
咳:デキストロメトルファン
咽頭痛:トローチ
漢方薬もいいかも
葛根湯、麻黄湯など
#14. 風邪症候群の診療のポイント ウイルス性疾患でありself-limited
➡抗菌薬投与は不要な症候群
診療のmanagementで変わるものは
・抗菌薬を投与する疾患があるかどうか
・緊急疾患を見落としていないか
・咳、咽頭痛、鼻汁のない“風邪”は要注意!
急性鼻・副鼻腔炎の診断と治療
#15. Delayed Antibiotic Prescription 少し様子を見てよくならなかったら抗菌薬を使うことを考慮
英国 2週間以内の成人の咽頭痛12829人 コホート研究
合併症(膿瘍、副鼻腔炎、中耳炎、蜂窩織炎・丹毒)ありは1.4%
合併症のリスクは、抗菌薬をすぐに処方と症状悪化時でほぼ差なし
Lancet Infect Dis.2014;14:213-9
#18. 急性鼻・副鼻腔炎型 くしゃみ、鼻汁、鼻閉が主症状。発熱の有無は問わない
内科では、発熱や頭痛が主訴
典型例:上気道炎の7-10日後に再び悪化(double sickening)
細菌性を示唆:上顎洞痛・顔や歯の痛み・膿性鼻汁が7日以上続く
症状7日未満は細菌性少ない
かぜ診療マニュアル第2版 日本医事新報社
#19. 急性鼻・副鼻腔炎型 以下は抗菌薬治療を検討
症状が10日間以上、39度を超える発熱
上気道炎が5日間以上続き、いったん軽快後悪化
歯性上顎洞炎に注意
かぜ診療マニュアル第2版 日本医事新報社
#20. 急性鼻・副鼻腔炎 治療期間 5-10日間 JAID/JSC感染症治療ガイド2023
急性咽頭炎の診断と治療
#22. まずは 本当に“咽頭痛”なのかどうかを確認
「つばを飲み込んで痛い」=「嚥下時痛」=いわゆる“咽頭痛”
→咽頭炎やkiller sore throatの鑑別を考える
※よくよく聴くと、“頚が痛い”、“顎が痛い”ということあり。
#23. 急性咽頭炎の起因微生物 NEJM 2001;344:205-211.
#24. 咽頭所見 咽頭・扁桃所見だけは起因菌は推察できない
#25. A群溶連菌性咽頭炎 咽頭痛、扁桃の白苔、頸部リンパ節の圧痛、発熱
2~5日で自然に良くなる
咽頭痛が1週間以上続いたら、通常、GAS咽頭炎ではない
臨床上、抗菌薬が必要な唯一の咽頭炎 N Engl J Med. 2011;364(7):648.
#26. GAS咽頭炎の治療の意義 急性リウマチ熱の予防
有症状期間の短縮:発症2~3日以内の投与で、約3日間の症状改善
化膿性合併症の予防:扁桃周囲膿瘍、咽後膿瘍、化膿性リンパ節炎、中耳炎・副鼻腔炎、乳突蜂巣炎
周囲への感染防止:特に家族内発症や医療機関内、軍隊
急性糸球体腎炎予防のevidenceはない
A群溶連菌性咽頭炎の管理
#28. Centor’s criteria (Mclsaac modification) 2点以上で迅速検査を行う
1点以下なら迅速検査なし
4点以上なら抗菌薬治療開始
ただ、4点以上でも、実際にGAS咽頭炎のことは51%とされている JAMA 284(22): 2912-2918, 2000
#29. A群溶連菌性咽頭炎の検査
迅速検査
培養検査
#31. GAS咽頭炎の治療 AMPC 500mg 1日3回10日間
アレルギーなら・・・
CEX 500mg 1日3回 10日間
CLDM 300mg 1日3回 10日間 Clin Infect Dis, 55:e86-102, 2012
#32. 治療期間に関して リウマチ熱の予防 10日間必要
治療期間5-6日間でよい、という意見もあり
先進国でリウマチ熱は減少し
臨床治癒率は5日間 vs 10日間(89.6 vs 93.8%)で非劣勢
ただ、GAS根絶率は80vs90%
発症後のGAS保菌がリウマチ熱などの免疫疾患を引き起こす
5日間では、リウマチ熱の予防になるか不明
⇒10日間、が依然推奨されている BMJ. 2019;367:l5337. Epub 2019 Oct 4.
JAID/JSC感染症治療ガイド2023
#33. 急性咽頭炎 治療期間 10日間 JAID/JSC感染症治療ガイド2023
伝染性単核球症の症状と治療
#37. 伝染性単核球症 発熱、咽頭痛、頸部リンパ節腫脹(とくに後頚部)
肝脾腫、皮疹を伴う場合もある
急性咽頭炎にしては発熱の経過が長い、 全身倦怠感が強い
検査は
血算(血球減少、末梢血異型リンパ球)
LFTが上昇していることが多い
EBV、CMVの抗体検査
#39. 抗体検査 ・VCA IgM抗体
・VCA IgG抗体
・EBNA抗体
誰も教えてくれなかった風邪の診かた:医学書院
#40. 伝染性単核球症の治療と対応 対症療法
コンタクトスポーツを一定期間
(少なくとも3週間)避ける
(脾破裂を防ぐため)
急性喉頭蓋炎とLemierre症候群
#43. 扁桃周囲膿瘍 口蓋垂が偏位していないか
耳鼻科でドレナージが必要 かぜ診療マニュアル第2版 日本医事新報社
#44. 急性喉頭蓋炎 喉が痛くて、つばも飲み込めない… N Engl J Med 2011; 365:447August 4, 2011
#45. Lemierre 症候群 咽頭炎(口腔内感染症)ののち頸静脈に炎症が波及した感染性血栓性静脈炎
若年者に多い、咽頭痛、開口障害、内頚静脈に沿った圧痛 N Engl J Med 2004; 350:e14
#46. Ludwig’s angina(submandibular space infection) 口底蜂窩織炎とも
Submandibular spaceから広がる
両側性、リンパ節腫脹なし
発熱、咽頭痛、項部硬直、嚥下障害
気道閉塞することあり
※自験例、許可済
せきメインの急性気道感染症
#48. せきメイン 発熱や痰はあってもなくてもよい
急性気道感染症による咳(感冒後咳嗽):平均17.8日間つづく
咳の分類
急性咳嗽 3週間未満
遷延性咳嗽 3~8週間
慢性咳嗽 8週間以上
#49. せきの主な鑑別診断 痰Gram染色 ※気管支炎は
ウイルス多く
自然軽快 かぜ診療マニュアル第2版 日本医事新報社
#50. 細菌性気管支炎・肺炎 治療期間 5-7日間 JAID/JSC感染症治療ガイド2023