テキスト全文
心不全の早期介入と定義
#1. 心不全に対する早期介入とは? ― Stage A/Bから始める心不全予防 ―
#3. 心不全とは?(一般向けの定義) 「心不全とは、心臓が悪いために、息切れやむくみが起こり、だんだん悪くなり、生命を縮める病気です」
根治しない≒不治の病
5年生存率 50%
フラミンガム基準とLVEF評価
#4. フラミンガムうっ血性心不全診断基準 大項目 小項目 大項目あるいは小項目
発作性夜間呼吸困難あるいは起座呼吸
頸静脈怒張
ラ音聴取
心拡大
急性肺水腫
III音奔馬調律
静脈圧上昇>16cmH2O
循環時間≧25秒
肝頸静脈逆流
足の浮腫
夜間の咳
労作時呼吸困難
肝腫大
胸水
肺活量最大量から1/3低下
頻脈(心拍≧120拍/分)
治療に反応して5日で4.5kg以上体重が減少した場合 大項目を2項目、あるいは大項目を1項目および小項目を2項目を有するもの
HFpEFの類似疾患とBNP測定
#7. ※MIMICS of HFpEF HFpEFの類似疾患(LVEF≥50%=HFpEFではない!)
左室肥大の症例
肥大型心筋症
浸潤性障害; アミロイドーシス、ヘモクロマトーシス、サルコイドーシス
貯蔵障害; ファブリー病
心膜疾患、弁膜症、肺高血圧症、肺性心、脚気、右室不全など
若年者で注意が必要
#8. LVEF評価法 方法 侵襲性 再現性
心臓超音波検査 低 低
心臓核医学検査 中 高
心臓CT検査 中 高
心臓カテーテル検査 高 高
心臓MRI検査(非造影) 低 高
#10. ※BNP測定の位置付け スクリーニング目的 Class II b
治療効果判定 Class II a
心不全の診断、重症度、予後判定 Class I
注意すべき点
一般集団を対象にした健診におけるBNPの有用性については未だ結論が出ていない
BNPの有用性はその“陰性的中率”が大変に高いということ
心不全診断のパラダイムシフト
#11. 心不全診断(除外)に有用な診察所見
JAMA 294(15):1944-1956 2005 心不全らしくない項目 尤度比
心不全の既往(-) 0.45
労作性呼吸困難(-) 0.48
肺野のラ音 0.51
胸部X線写真での心拡大(-) 0.33
心電図異常(-) 0.64
BNP<100pg/ml 0.11
#12. 心不全診療のパラダイムシフト 心不全を治療する
症状コントロール
QOL改善
入院・再入院予防
死亡回避
心不全を予防する
危険因子管理
器質心疾患出現抑制
器質心疾患進展抑制
発症予防
Stage A/Bの定義と介入
#15. Stage Aとは 高血圧、糖尿病、CKD、肥満、冠動脈疾患、心房細動などの心臓病のリスクとなる要素を持ち合わせる状態(@RISK)
日常診療で頻繁に遭遇する症例 発症予防心不全診療の主戦場は、
循環器外来ではなく一般内科外来
#16. Stage Bとは 無症状だが、左室肥大、左室収縮機能低下、心筋梗塞既往、弁膜症、BNP高値など既に機能形態異常をきたした状態
症状はないが、心臓にはすでに異常がある
「静かに進行する前心不全」状態
心不全の薬物療法と治療効果
#17. ■心不全の薬物療法
どんな患者に何が有効なのか?
#19. Stage Aへの介入 血圧管理、糖尿病管理、体重管理、禁煙、運動習慣
心不全予防に特別な治療は不要
生活習慣病を適切に管理
併存症による適切な薬剤選択
高血圧管理は依然として最も重要な介入(目標降圧達成が全て;薬剤による特異性はない)
Stage B介入のエビデンスと薬剤
#21. FIDELITY pooled analysis;フィネレノンはStage AおよびStage Bにおける心不全一次予防薬と して位置づけられる可能性がある
#22. Stage B介入のエビデンス ① ACE阻害薬(Stage Bの薬物療法で最も確立したエビデンスあり)
主要試験:
1) SOLVD-Prevention試験
無症候性左室収縮不全(LVEF <35%)例
エナラプリルにより心不全発症、心不全入院、総死亡を有意に抑制
2) SAVE試験
心筋梗塞後LVEF≦40%例
カプトプリルにより総死亡率、心不全発症、入院を有意に抑制
3) TRACE試験
心筋梗塞後左室機能低下例
トランドラプリルで死亡率を有意に低下
ガイドラインでLVEF ≤40%のStage B患者に対するACE阻害薬投与するがClass I, Level A
#23. Stage B介入のエビデンス ② ARB
ACE阻害薬不耐容例で推奨
ACE阻害薬ほどの直接的エビデンスはない
主な根拠:
1) OPTIMAAL
2) VALIANTなど
心筋梗塞後患者の解析
ACEIと比較して非劣性
#24. Stage B介入のエビデンス ③ β遮断薬
ACE阻害薬ほど強固ではないが、有効性が支持
主要根拠:
1) SAVE試験のサブ解析
2) SOLVDの後解析
3) CAPRICORN試験
虚血性心疾患心筋梗塞後LVEF低下例で死亡率低下
ガイドラインでMI既往+LVEF≤40%にはエビデンスのあるβ遮断薬の使用がClass I推奨
心不全予防の新たなアプローチ
#25. Stage B介入のエビデンス ④ スタチン
心不全薬ではないが、心筋梗塞/ACS既往のStage B患者 では心不全発症抑制効果あり
ガイドラインではClass I推奨
#26. Stage B介入のエビデンス ⑤ ARNI(サクビトリル/バルサルタン)
現在のところ無症候性左室収縮不全Stage Bに対する確立した RCTエビデンスなし
Stage Bへの routine use は非推奨
⑥ MRA
ステロイド性MRA(スピロノラクトン・エプレレノン)の効果はStage Cに限定的だが、FIDELITY pooled analysis;フィネレノンはStage A およびStage Bにおける心不全一次予防薬として位置づけられ る 可能性がある
#27. SGLT2阻害薬が変えたもの DAPA-HF、EMPEROR-Reduced、DELIVERなどで心不全予防・予後改善効果が示された
→ 対象は基本的に症候性心不全(Stage C)
現時点ではStage B無症候性左室機能低下に対する直接 的RCTエビデンスは不足
ただし糖尿病、CKDなどの心血管リスクの高い症例で心不 全発症予防効果が示されている
→ Pre-HF段階(Stage A/B)への適応が拡大
ガイドラインでも糖尿病患者の心不全予防目的で推奨
#28. Beyond Blood Pressure Lowering Effect