#4.
長期挿管の弊害 • • • • • • • • 人工呼吸器関連肺炎合併 無気肺の形成 鎮静の長期化 筋力低下 人工呼吸器離脱成功率低下 ICU死亡率増加 ICU滞在期間の延長 医療費の高騰 ・ ・
#5.
早期抜管を目指す管理 ABCDEF bundle (Liberation bundle) Acute Med Surg. 2024 Feb 20;11(1):e929.
#6.
早期抜管を目指す管理 PANDEM Guidelines •鎮痛 •鎮静:デクスメデトミジンがfirst line •筋弛緩:TOFモニターのルーチン使用 •ICUせん妄:CAPDスケール •薬物離脱症候群 小児患者でABCDEF bundleを 実践するための道しるべ •環境整備:家族の参加 赤文字は成育PICUで未達成 Pediatr Crit Care Med. 2022 Feb 1;23(2):e74-e110.
#7.
12歳男児 不整脈原性心筋症 ECMO離脱1週間後 2歳女児 肺炎, 気管支喘息発作
#8.
呼吸器装着期間における6段階 入院 退院 1. 急性期呼吸不全の治療 2. 離脱可能性の検討 3. 離脱可能か評価 4. SAT・SBT 5. 抜管 (6. 再挿管) 人工呼吸器装着期間の40-50%の時間が 呼吸器離脱プロセスに費やされる
#9.
呼吸器装着期間における6段階 入院 退院 1. 急性期呼吸不全の治療 2. 離脱可能性の検討 3. 離脱可能か評価 4. SAT・SBT ここの遅れが 全体の遅れにつながる 5. 抜管 (6. 再挿管) 人工呼吸器装着期間の40-50%の時間が 呼吸器離脱プロセスに費やされる
#10.
呼吸器離脱評価の遅れ • 臨床医の多くは患者の呼吸器離脱の可能性について過小評価している Chest. 1993;103(4):1220-1226. • 呼吸器装着患者の66-75%で初回SBTと同日に抜管可能 Am J Respir Crit Care Med. 1999;159(2):512-518. N Engl J Med. 1995;332(6):345-350. • 事故抜管した症例の50%で再挿管が不要 Am J Respir Crit Care Med. 2000;161(6):1912-1916. • 小児の事故抜管成功率は60%以上?? J Intensive Care Med. 2015;30:89-96. Crit Care Med. 2003;31:2657-2664. 離脱可能性の検討は毎日行う!
#11.
SAT・SBT もともと挿管されていなかった患者が挿管された後の 急性期の標準的な抜管前評価方法 •SAT加算 1日100点(上限14日) •SBT加算 1日60点 ※実施に当たっては関係学会が定めるプロトコル等を 参考とすること
#12.
人工呼吸器離脱に関する3学会合同プロトコル 2015年 •日本集中治療医学会 •日本呼吸療法医学会 •日本クリティカルケア看護学会 15歳以上が対象 SATとSBTの実践に向けたプロトコル https://www.jsicm.org/pdf/kokyuki_ridatsu1503b.pdf
#13.
成育PICU版 抜管マニュアル 実際のマニュアルをみてみましょう 01 抜管マニュアル.pdf
#14.
抜管困難症例に対しては 抜管困難が予測される症例に対しては気管切開を検討する • 早期に気管切開を行うことで,長期挿管に伴うデメリットを回避 • 早期に気管切開を行うことで,人工呼吸器離脱を目指す 早期とは?
#15.
成人領域では Consensus conference on artificial airways in patients receiving mechanical ventilation • 10日以内は挿管継続 • 3週間以上は気管切開 Chest. 1989;96(1):178-180. 挿管期間が3週間をこえると 呼吸器離脱失敗率↑,ICU期間↑, ICU死亡率↑ Crit Care. 2005;9(1):R46-R52. あえて3週間以上の挿管を主張する臨床科はいない
#16.
成人領域では 気管切開前の挿管日数 報告者 Freeman, et al. Esteban, et al. Blot, et al. 挿管日数(中央値) 9日 11日 20日 N 2,473 386 2,738 Crit Care Med. 2005;33(11):2513-2520. Am J Respir Crit Care Med. 2000;161(5):1450-1458. Chest. 2005;127(4):1347-1352.
#17.
成人領域では 長期人工呼吸管理が予測される患者に対して 気管切開を行う時期は? COPD, 肺炎 内野滋彦. JSEPTIC簡単アンケート第4回:気管切開, ICUとは, 終末期医療. INTENSIVIST 2012; 4:406-420.より改変
#18.
成人領域では 早期 vs. 晩期 気管切開の臨床研究における挿管日数の設定 報告者 Young D, et al. Trouillet, et al. Terragni, et al. 早期群 1-4日 5日 6-8日 後期群 11日以降 15日 13-15日 N 909 216 419 早期気管切開≒1週間以内 JAMA. 2013;309(20):2121-2129. Ann Intern Med. 2011;154(6):373-383. JAMA. 2010;303(15):1483-1489.
#19.
小児領域では 気管切開前の挿管日数 報告者 Tsuboi, et al.(当院) Dursun, et al. Karapinar, et al. 挿管日数 21 (14-59) 30 32 N 212 30 31 中央値 (25%ile-75%ile) Int J Pediatr Otorhinolaryngol. 2016;89:81-85. Pediatr Int. 2011;53(2):202-206. Turk J Pediatr. 2008;50(4):366-372.
#20.
小児領域では 長期人工呼吸管理が予測される患者に対して 気管切開を行う時期は? 重症頭部外傷 ARDS Intensive Care Med. 2008;34(8):1498-1502.より改変
#21.
小児領域では 小児救急患者救命後の長期入院に関する全国調査 入院期間別の療養環境の変化 入院期間 (月) 気管切開 気管挿管 <6 48% 23% 6-12 68% 18% 13-36 83% 5% >36 67% 13% 長期にわたり気管挿管のまま管理されている患者が多 数いると推察される 江原朗ら. 日児誌. 2011; 115:143-8.より改変
#22.
小児気管切開にまつわる問題点 なぜ小児気管切開に対する抵抗感や敗北感が強いのか? (保護者だけでなく医療者も) 小児の気管切開に対する正しい理解が不足 1. 小児気管切開の長期転帰 2. 気管切開のメリット vs. 長期挿管 3. 小児科医はNICU領域で長期挿管を経験 (未熟児≠小児)
#23.
小児気管切開の長期転帰 対象:気管切開術後に当院PICUで管理した16歳未満の症例 期間:2002年4月-2013年12月 症例数 月齢 観察日数 212 13 (6-63) 902 (152-1,881) 中央値 (25%ile-75%ile) 疾患 (primary) N (%) 神経疾患 80 (38) 気道狭窄 23 (11) 多発奇形 22 (10) 腫瘍 16 (8) 頭蓋顔面奇形 12 (6) 肺疾患 10 (5) 心疾患 10 (5) 肝疾患 10 (5) その他 29 Int J Pediatr Otorhinolaryngol. 2016;89:81-85.
#24.
小児気管切開の長期転帰 生存率 1年 86% 5年 71% 死亡原因の半数は原疾患の悪化
#25.
小児気管切開の長期転帰 呼吸器離脱率 3ヶ月 50% 6ヶ月 55% 1年 58% 呼吸器離脱した症例の約半数は 呼吸器からの離脱困難のため 気管切開に至った
#26.
小児気管切開の長期転帰 カニューレ 抜去率 神経障害なし (PCPC 1-2) 1年 20% 5年 54% 神経障害あり (PCPC 3-6) PCPC: Pediatric Cerebral Performance Category
#27.
気管切開のメリット vs. 長期挿管 • 患者の快適性が向上する • 気道分泌物の吸引が容易になる • 気道抵抗が減少する • 患者の活動性が上昇する • 発声, 経口摂取できる可能性が高まる • より安全な気道管理ができる • 呼吸器離脱が促進される • 人工呼吸器関連肺炎が減少する • 呼吸器依存患者のICU外での管理が可能になる Chest. 2001;120(6 Suppl):375S-95S.
#28.
小児ならではの長期挿管の問題点 成人に比べて気道の安全性を保つのが困難 • 患者の理解が得られない • 鎮静レベルの変動が大きい • プロポフォールが持続鎮静に使えない • チューブ固定長の安全域が狭い 対策 • 経鼻挿管 • 環境整備 ➡どうしても深い鎮静が必要になることも多い
#29.
深鎮静の悪影響 • ICU期間の延長 • 呼吸器期間の延長 • 入院期間の延長 • 死亡率の悪化 • せん妄 • 筋力低下 ・ ・ ・ Chest. 1998;114(2):541-548. Crit Care Med. 2009;37(9):2527-2534. Am J Respir Crit Care Med. 2012;186(8):724-731.
#30.
小児気管切開の正しい理解 長期転帰は比較的良好 • 気管切開後の死亡原因の半数は原病の悪化 • 呼吸器離脱は比較的速やかに60%に達する • 神経障害がなければ将来的にカニューレ抜去 気管切開によるメリット • 気道安全性の担保 • 鎮静不要 • 呼吸器離脱が進む可能性 → 必要な患者には遅滞なく気管切開を
#31.
気管切開が必要な小児患者を急性期に予測可能? 対象: 当院PICUで1週間以上挿管管理した16歳未満の症例 期間: 2010年1月-2012年12月 方法: 挿管後1週間の時点での状態から気切予測因子を後方視的に検討
#32.
気管切開が必要な小児患者を急性期に予測可能? 予測因子 オッズ比 95%信頼区間 P値 挿管困難の既往 15.9 3.32-76.6 <0.001 発症前PCPC 2.03 1.46-2.81 <0.001 予測死亡率 (PIM2) 1.03 1.01-1.05 0.002 異常呼吸 14.6 2.14-100 0.006 神経障害 3.04 1.29-7.14 0.011 慢性肺実質障害 2.75 1.14-6.65 0.025 筋力障害 6.33 1.10-36.4 0.039 緊急手術 1.98 0.922-4.24 0.080 器質的気道病変 1.95 0.577-6.61 0.282 抜管失敗の既往 1.85 0.592-5.77 0.290 月齢 1.00 0.996-1.01 0.358 心疾患 1.45 0.612-3.44 0.398 急性疾患 1.24 0.610-2.52 0.552 機能的気道病変 1.04 0.233-4.64 0.939 PCPC: Pediatric Cerebral Performance Category, PIM2:Pediatric Index of Mortality 2
#33.
小児気管切開の判断 • 過度の長期挿管は避ける • 1-2週間以上の挿管管理となった場合には気管切開の適応を日々評 価する (小児耳鼻科医・外科医との連携, 当院では手術室予定枠を確保) • 早期呼吸器離脱, 離床にむけた前向きな気管切開について検討 → 小児気管切開の正しい理解がないと保護者へも説明できない
#34.
小児気管切開術後の急性期管理 当院では術後急性期はPICUで管理 • 術当日~POD 1 深鎮静管理(±筋弛緩) • POD 2以降 鎮静減量, 呼吸器離脱評価 • POD 7~10 頸部造影CTで気管切開チューブ先端と腕頭動脈との 位置関係を確認後に初回カニューレ交換 初回カニューレ交換が終わったら病棟転棟 転棟後RST(respiratory support team)が関与
#35.
症例1 7歳男児 頸部悪性リンパ腫による気道緊急 人工呼吸管理 (12日間) HFNC 化学療法 挿管 ICU管理 喉頭Fiber 抜管困難 抜管 呼吸器離脱 病棟転棟 病日 day 1 day 5 day 13 day 19 HFNC: High Flow Nasal Cannula
#36.
症例1 • 事故抜管時の気道閉塞のリスク回避のため深鎮静管理 • 無気肺形成を反復, 人工呼吸器関連肺炎を発症 • 抜管後, 薬物離脱症候群を発症 • 呼吸筋力, 四肢筋力の低下から病棟転棟後も長期リハビリ 気管切開を回避したが, その管理でよかったのか悩ましい症例
#37.
症例2 14歳女児 肺炎, 21トリソミー, 高度肥満 人工呼吸管理 (101日間) 挿管 ICU管理 気管切開 病棟転棟 呼吸器離脱 病日 day 1 day 15 day 35 day 102 気管切開後, 鎮静中止し人工呼吸器下に立位を含めたリハビリ実施
#38.
小児気管切開の情報発信 http://www.c2-factory.com/re140425164037/index.html
#39.
Take Home Message • 挿管患者の抜管評価は毎日行う • 過度の長期挿管はさける • 小児気管切開を正しく理解する