#4.
乳癌診断の流れ①初期評価 自覚症状 あり • • • • なし しこりを触れる 乳房表面に窪みがある 乳頭の向きが変わった 乳頭から出血がある 乳腺外来 どんな背景で受診しても 最初の検査は エコーとMMGです • がん検診で指摘された • ほかの疾患治療中のCT で指摘された など 問診 & 診触診 乳腺エコー & マンモグラフィ(MMG)
#5.
乳腺エコー • 腫瘤の形態や内部構造を見て、悪性 or 良性疾患の鑑別が可能 • 形態評価を得意とし、組織学的に何の癌なのか、おおよその診断が可能 • MMGとエコーのどちらかでしか発見できない癌もあり、併用が有効 マンモグラフィ(MMG) • 石灰化病変や腫瘍の引きつれ、広がりを見ることが得意 • 検診ではなく診断目的の場合、患者年齢に関係なく2方向(CC,MLO)撮影する • 高濃度乳腺(若年に多い)の場合は癌を見つけづらい →この二つで大まかな良悪性の推測が可能
#6.
乳癌診断の流れ②組織評価 乳腺エコーとMMGで悪性疑い 癌の確定診断:組織生検 癌の確定診断は組織検査です。画像診断による腫瘍の「影」では確定診断は下せず、 実際の組織をとってきて行う病理診断により癌の確定診断を行います。 良性疑いであれば、念のために数回、エコーやMMGでフォローアップ(乳腺外来受診) 増殖病変でないと確認できれば終診 ↓ 以後は普通の乳癌検診(2年おきのMMG)でOK
#7.
Tip 1 乳癌検診とは 検診には任意型(人間ドック)と対策型(自治体や職域)があります。 任意はなんでもありです。対策型は評価が乳癌死の減少なので、エビデンスがある検査のみ承認され 、無ければ消去、良さそうでも統計学的な数字を提示できなければ採用されません。 2024年現在の対策型検診は、40歳以上で隔年、項目は問診とMMGのみ (40代はMLO,CCの2方向、50歳以降はMLO1方向撮影) • • • 2016年より視触診は推奨しない。(死亡率減少効果不十分、精度管理問題) エコーの併用は導入の可能性があるが今は未承認。(J –START試験を参照) デジタル化が進み、同じ機関で受診すると、前回・前々回データと比較しての読影が 容易に可能となり、検診精度の向上が期待できます。
#8.
乳癌診断の流れ②組織評価 確定診断:組織生検 悪性を強く疑う場合は、通常エコー or MMGガイド下、局所麻酔を利用して針生検:CNB or VABを行います。組織型やバイオマーカーの検索が可能です。(←FNBでは無理) ※臨床的に良性の可能性が高い場合は、比較的診断精度の高い穿刺吸引細胞診(FNB)を検討します。FNBで癌の判定 となると追加でCNBなどの組織生検が必要であり、はじめから悪性疑いの場合は生検を選びます。 特徴 CNB:Core Needle Biopsy VAB:Vaccume Assisted Biopsy 針のサイズ(G) 組織量 診断精度 費用 出血リスク 14−16 G 少ない 高い 安価(26.700円ほど) あり 8−11 G 多い 非常に高い 高価(78.700円ほど) 高い可能性あり
#9.
乳癌診断の流れ③画像評価 自覚症状、他院からなどの紹介受診 ↓ 乳腺外来(問診、視触診、MMG、エコー) ↓ 悪性所見あり=組織生検 ↓ 悪性の確定診断 ↓ 両側乳房造影MRI、全身CT(PET) ①良性を確信 → 終診→検診 ②良性っぽい ↓ 念のため数回フォロー (半年後か一年後) →終診→検診 悪性っぽいのに悪性の組織診断がつかない ↓ 3ヶ月後フォロー、外科的生検など 悪性所見があれば、MRIやCTが保険適用になります。 (注意:エコーやMMGで評価が難しい場合の乳房MRI撮影はOKですが、単純な良性疾患へのやみくもなMRI やCTは保険適用外です!前医が細胞診で悪性の診断をしていれば、組織診断前のCT,MRI撮影はOKです。) MRI:同側・対側乳房内評価、皮膚や筋への浸潤、所属リンパ節評価目的 CT :全身への転移巣評価目的 脳転移も起こし得る乳癌ですが、一般的な初期評価範囲は首から骨盤まで
#10.
乳癌診断の流れ③画像評価 広がり診断≒ステージ評価≒術前診断 1. 両側乳房造影MRI • • • • 癌の局所での広がり診断 組織生検後でも2週間ほど間を空ければ撮影可能 撮影は月経開始後7~15日目が望ましい ガドリニウム造影剤投与に伴うアレルギーリスクあり うつ伏せの姿勢で約30分 2. 全身(頸部-骨盤)造影CT 癌の転移の有無を評価 • 乳癌が転移しやすい臓器は骨が最多、次いで肺、肝臓、脳の順だが、サブタイプでも異なる。 • HER2タイプで腫瘍サイズが大きいもの、リンパ節転移があるものは頭蓋内CTも考慮。 • ヨード系造影剤投与によるアレルギーリスクあり 3. PET-CT 全例には行わない (→保険を切られてもステージ2以上なら症状詳記でセーフ、局所進行癌ならOKのイメージ) 保険適用:他の検査又は画像診断により病期診断又は転移・再発の確定診断ができない患者 乳癌の局所評価はエコー、MRIが優れるが、同側腋窩・鎖骨上下・内胸等の所属リンパ節転移、 頸部・対側リンパ節への遠隔転移は代謝の情報も併せたPET-CTが優れる。
#11.
ステージ分類と治療戦略 早期乳癌 Stage 0, I →手術先行 TNM分類 ①腫瘤の大きさ T ②リンパ節転移 N ③他臓器転移 M Stage II -III →NAC適応 局所進行乳癌 Stage III 進行乳癌 Stage IV →全身薬物 療法優先
#12.
Tip 2 DCIS vs IDC 乳管内にとどまるが、乳管壁を超えて浸潤しているかで治療方針が異なります。 (実際は細かい分類がありますが、まずは浸潤癌か否かで分類しましょう) DCIS:Ductal Carcinoma in situ, 非浸潤がん → 乳管の中に癌がとどまっている → 転移しない ← どんなに癌が大きくても Stage 0 (Tis) → 全身薬物療法が基本的に不要 IDC:Invasive Ductal Carcinoma, 浸潤がん →乳管の外側に癌が浸潤している ← Stage I - IV →転移する →全身薬物療法が有効かつ必要
#13.
病理診断:サブタイプ分類 Q:なぜサブタイプ分類をするのか? A:治療方針がサブタイプ別で異なるから。 組織で乳癌の診断がつく ↓ 免疫組織化学法(IHC)を行う ER、PgR、HER2の+/- ↓ Luminal、HER2、TNに分類 ※Ki-67は増殖能力のこと カットオフ ER:ER陽性細胞占有率1%以上(以前は10%) HER2:3+は陽性、1+は陰性、2+の時はFISHかDISH法で評価
#14.
サブタイプ別基本治療選択 ホルモン感受性があれば 全例ホルモン療法、約10年 HER2陽性→全員抗HER2療法、18コース 基本的に抗HER2療法には化学療法がセット
#15.
Tip 3 Q:なぜ治療方針を理解できないのか? A:ステージよりもサブタイプ重視だから。 A-1:ステージ次第で化学療法の上乗せを判断する臓器が多く、そのイメージに引きづられている。 Ex)大腸癌:Stage1だから手術だけでOK, Stage3だから術後化学療法の適応など。 A-2:「ステージ進行=化学療法」というイメージは正しい、一方でStage1でもTNなら化学療法適応。 ↓ 乳癌は治療選択肢が多い=適応治療を上乗せできるイメージが良いでしょう。 化学療法は癌が進行すればどんなサブタイプでも利用します。 例えば、 • ホルモン感受性があるからホルモン剤を利用できる。 Ex) 化学療法が適応だけど、ホルモン剤も利用する 。 • HER2発現があるから抗HER2療法(トラスツヅマブ、ペルツヅマブ)を利用できる。 • 逆に、ホルモン感受性もHER2発現もない(トリプルネガティブ乳癌)から、化学療法しか選択肢がない。
#16.
治療戦略 ①ステージにより→治療内容・順序決定 ②ステージ&サブタイプ&バイオマーカーにより K i-67、PD-L1 、核グレード、変異遺伝子など →治療内容・薬剤選択 複数要因から判断するので、治療方針決定は非常に複雑です。 「乳癌?何かあるかも?」程度でぜひご紹介ください。むしろ未精査で丸投げの方 が、同じ検査を行わずに済みます。結果的に乳癌ではなく、良性でも、本当に増殖 性病変でないかを確認するため、3ヶ月〜数年フォローすることが多いです。
#17.
化学療法 NAC vs Adjuvant NAC:Neoadjuvant Chemotherapy 術前化学療法 Adjuvant Chemotherapy 術後化学療法 Stage II以上の場合、NACが適応になります。それぞれの患者状況を踏 まえて、NACかAdjuvantを選択します。 NACのメリットが大きいStage III以上、つまり腫瘍が5cmを超えて いる、リンパ節転移がある場合などは基本的にNAC優先です。
#18.
術前化学療法 Neoadjuvant chemotherapy Stage II以上が適応、Stage IIIなら基本的にNACを選択します。 メリット:①手術で組織を切除するため、使用薬剤の治療効果を確認できる ②手術時に腫瘍が縮小していることが期待できる 注意:NACで浸潤癌が100%消えること(pCR)も少なくありません。腫瘍がどこにあったかわからなく なると困るので、針生検の際にマーカーを留置することもあります。 基本レジメンはアンスラサイクリン系4コース→タキサン系4コースの順 Tip HER2陽性の場合はトラスツヅマブとペルツヅマブ(HP)を上乗せで18コース、タキサン開始時から 上乗せで開始し、残りの14コースは術後に繰り越します。
#19.
術後化学療法 Adjuvant Chemothetapy 基本レジメンはNACと同じ アンスラサイクリン系4コース→タキサン系4コース Tip 1: NACと同じく、HER2陽性の場合はHPを18コース、タキサン開始時から上乗せします。ホルモン感 受性もある場合、化学療法終了後HPだけになったら、残りの14コースとホルモン療法は併用可能です。 Tip 2:ホルモン感受性があっても、化学療法中にホルモン剤を併用はしません。ですので、基本的なホルモ ン剤の使用時期は、術後、化学療法後と思ってOKです。放射線療法中の併用の可否は各医師判断です。
#20.
手術:センチネルリンパ節生検(SLNB) SLNの定義:原発巣からのリンパ流を最初に受けるリンパ節 ここへの転移がなければ理論上、他のリンパ節転移はなく腋窩郭清を 省略でき、手術中にSLNBを行い術中迅速検査に提出します。 真のDCISであればリンパ節転移はあり得ないはずですが、、腫瘍生検時のエラーで浸潤癌 領域が見つけられていない場合もあり、術前診断がDCISでもSLNBは適応です。 逆に、術前診断で明らかな転移が複数ある場合は、SLNBではなく腋窩郭清術を行います。 手技:SLNBはトレーサー(色素、ラジオアイソトープ、インドシアニングリーン)を乳輪下に注 射し、トレーサーが集積したリンパ節を同定します。色素法に、ラジオアイソトープ法か蛍光法 (両者とも専用の機械が必要)を併用することが多いです。
#21.
手術:乳房温存術(部分切除術) 適応は腫瘍長径が5cm以下ですが、整容性が保てるか次第です。腫瘍から2c mマージン(余白)を確保する必要があります。 イメージしてみてください。 もし腫瘍が2cmなら直径6cmですが、5cmなら9cmの円柱状に切除することになります。日本人の場合、こ れらのボリュームロスに耐えられるほどの乳房のサイズを持った人は少なく、温存術適応であっても、切除 術+再建術を選択することもあります。 2cm 腫瘍がどんなに小さくても、DCISでも、 温存療法を選択した場合は術後の 放射線治療が必ずセットです。 入院期間は術後3ー5日程です。 2cm Tumor 2cm 2cm
#22.
手術:乳房切除術 人工物による乳房再建が保険適応となり、再建を前提とした皮膚温存、 乳頭温存乳房全切除術が増えています。 ただし、腫瘍の大きさや皮膚・乳頭との位置関係で推奨されない場合もあります。術式選択 は医学的適応だけでなく、患者の意思決定権を尊重することも大切です。 乳房全切除術を選択しても、病理結果によっては放射線治療追加が推奨 されることもあります。 入院期間は皮弁下ドレーンの廃液量にも左右され、術後5−7日程度が一 般的です。
#23.
術後放射線療法 乳房部分切除術後の全乳房照射 様々な対象、種類があります が、ここでは最も一般的な部分切 除後の治療だけ紹介します。 • 通常分割法:50Gy, 25回, 5週間 • 寡分割法:42.56Gy, 16回, 4週間 • ブーストを加える場合は電子線で10.64Gy, 4回、4日 連日5週間なので就労上の理由で、部分切除術の適応内でも希望しない人もいます。ただし 、照射時間はかなり短く、例えば夕方4時半頃に予約することで就労継続が可能になることも 。術式決定時の説明が重要です。 ブースト照射とは:切除断端に腫瘍が残っていたり近接しているなどの再発リスクが高い場 合、その周囲の組織に追加照射を行うこをいいます。多くは電子線を用いて、4−8回の分割照 射法が選択されます。
#24.
術後薬物(ホルモン)療法 閉経前 vs 閉経後 • 閉経前後の主な違いは卵巣機能です。閉経前は卵巣からの女性ホル モン産生を強力に抑える必要があり、LH-RHアゴニストの併用が必 須です。製剤により投与頻度は異なりますが、いずれも注射です。 • ホルモン剤は経口薬で、閉経前はタモキシフェン、閉経後はアロマ ターゼ阻害薬が選択されます。 • 治療期間は、今は10年が推奨です。 • タイミングは手術と化学療法の後から開始します。HP療法との同時併用はOKです。 • 再発リスクが高いと内服化学療法やCDK4/6阻害剤併用を検討します。
#25.
術後フォローアップ 乳癌は局所(手術)より全身治療がメインになる疾患なので、 術後は化学療法や放射線療法、内分泌療法で定期受診が続けら れます。 逆に、DCISで乳房全切除術を選択した場合、創部が安定した 後の再受診は術後一年頃です。 フォローアップ検査で推奨されているのは年一回のMMGだけ です。とはいえ、再発リスクに応じて血液検査、乳腺エコーや 腹部エコー、CTが定期的に追加されることが多いです。
#26.
Take home message • 画像診断:MMGとエコーとMRIは局在、CTは転移評価 • 薬物選択:ステージ+サブタイプ+αから判断 • 予後への影響:NAC=Adjuvant、温存手術=全切除術 乳房に何かあれば、診断は不要ですので乳腺科へご紹介ください。
#27.
References 2022年度版乳がん診療ガイドライン https://jbcs.xsrv.jp/guideline/2022/b_index/bq1/