#4.
その疾患、歯科と関係してる「かも」しれません ¡ 誤嚥性肺炎 ¡ 周術期管理 ¡ 感染性心内膜炎 ¡ 薬剤性顎骨壊死 歯科領域と関連の「可能性」を想定 ↓ 「歯科とのかかわり」が このスライドのテーマ ¡ がん口腔支持療法 ¡ 放射線治療 etc... 4
#5.
「医科と歯科の分断」 (MEDICAL/DENTAL DIVIDE)は世界的トピック 「医科と歯科の分断(Medical/Dental Divide)」は患者の利益のために世界共通の課題 ¡ アメリカでも「歯科の口腔ケアは医学的に必要である」と教育されているが、がん口腔支持療法で 歯科の役割を推進する提案には関心が低い 1) ¡ がん支持療法の専門家の国際的な調査でも、統合された歯科治療が提供されているのは関連施 設の25%で大多数は地域の歯科医療機関に受診しているとある 2) ¡ アメリカで歯痛のために救急外来を受診した患者のうち、歯科受診をしたのが50%のみであったの は、保健政策や医療提供システムから歯科医療が排除されている社会的背景のためという報告 がある 3) 5
#6.
「医科と歯科の分断」 (MEDICAL/DENTAL DIVIDE)の背景 口腔領域と全身状態についてエビデンスレベルの高い研究をすることの難しさ ¡ コクラン研究では、ランダム化比較試験(RCT)以上が中心 (Ia: システマティックレビュー/ メタアナリシス、Ib: RCT) ¡ しかし、 たとえば歯周病の治療によってある疾患Aの発生が防げることをRCTで示すため、 無作為に対象者を2群に分けて介入群のみに歯周病の治療をする一方、歯周病のある 大規模な対象者に対して長期間、治療をしないのは研究モデルとして倫理的な問題があ るなど証明が難しい ¡ 口腔疾患との関係を示すのに、横断研究や動物実験しかない報告もあり因果関係に対し て慎重になる必要がある 4) 6
#7.
歯科の特徴として、開業医が多い ¡ 医療施設従事者に勤務する歯科医師の約9割が歯科診療所に勤務、医育機関を除く病院に勤務してい る歯科医師はわずか3%程度(平成28年 医師歯科医師薬剤師調査) ¡ 施設の状況として開設主体は、診療所では個人(86.8%)、法人(12.1%)(平成18年11月 中医協) ¡ 歯科の診療科を標榜している、いわゆる病院歯科は約2割程度(平成26年 医療施設調査) ¡ 標榜診療科についてみると、診療所では、「歯科」(98.3%)が最も多く、次いで「小児歯科」(43.2%)と なっており、病院では、「歯科口腔外科」と「歯科」(ともに 57.6%)が最も多い 5) つまり、ベテランがほとんど一般歯科として開業 →このことも医科歯科連携が難しい側面につながっている 周術期口腔機能管理のために 非常勤歯科医師(長崎原爆病院) 地域の歯科医師会(京都九条病院) と連携をしている例がある4) 7
#8.
<誤嚥性肺炎の予防に他職種連携> ¡ 脳卒中後や人工呼吸器抜管後の嚥下評価や、ブラッシングと 維持できない歯の抜歯による口腔ケアが誤嚥性肺炎の予防として「評価」 ¡ ランダム化研究(患者252人):栄養補給と毎日の口腔清掃で肺炎の 発生頻度が減少(17.7→7.8% P=0.06) ¡ 経管栄養よりも経口栄養、とろみの液体の機械的軟食に努める必要 ¡ さらに、嚥下訓練と早期の運動療法による「栄養リハ」は 誤嚥性肺炎の再発を防ぐ可能性がある 6) 誤嚥性肺炎(1) <全身管理と口腔> 8
#9.
<週1回の歯科専門家による口腔ケアは誤嚥性肺炎リスクの低減に有効> 歯科の専門家に「毎週」口腔ケアを受けていた群では、専門家ではないスタッフが 「毎日」口腔衛生ケアと0.35% ポビドンヨードうがいをしていた患者群と比較して、口腔 内の細菌C. albicans、S. aureus、メチシリン耐性S. Aureus、P. Aeruginosa、E. coli は 著しく低かった 7) 誤嚥性肺炎(2) <全身管理と口腔> 9
#10.
¡ 手術部位感染(SSI: Surgical Site Infection)が周術期口腔機能管理により頭頸部がんや大腸がんで 抑制したという報告がある 8)9) ¡ 「消化器外科SSI予防のための周術期管理ガイドライン2018」 10) では、周術期口腔機能管理 (口腔ケア)がSSI予防に有用かRCTなど質の高いエビデンスがないため現時点で評価は困難とする 一方、術後肺炎には有意差を認めている(現状で口腔ケアが広く実施、介入群と非介入群に分ける 難しさも背景) 周術期管理(1) <全身管理と口腔> 10
#11.
CDCガイドライン 手術部位と異なる部位に存在する感染がSSIのリスクに なることから、待機手術では遠隔感染巣の治療が推奨されている 11) CDCガイドラインの 原則に沿えば、 感染源となる歯は 術前に治療、予後 不良なら抜歯 ¡ 感染巣除去のため必要な抜歯は、抜歯後感染のリスクを考慮して術前1週間、できれば2週間まで に行う 12) (歯の保存治療や義歯などの処置をするためには、さらに治療期間が必要) ¡ 肝移植では術後6ヶ月以内に歯性感染症がおきると、免疫抑制剤の使用のため対応が難しいため、 感染源になりうる歯を肝移植前に抜歯することが望ましいとされている 13) 周術期管理(2) <全身管理と口腔> 11
#12.
感染性心内膜炎の予防と治療に関するガイドライン (2017 年改訂版) 14) ¡ 耳鼻科領域や心血管領域と並んで歯科口腔外科領域でのIEの予防的抗菌薬投与 が強く推奨されている (抜歯などの口腔外科手術、歯石除去、出血を伴い菌血症 を誘発するすべての侵襲的歯科処置) ¡ ガイドラインでは、アモキシシリン2gの術前1時間以内の経口単回投与を推奨 感染性心内膜炎 のリスクがある患 者の歯科治療に は予防的抗菌薬 が推奨 ¡ ブラッシングなど日常生活の口腔内出血でも菌血症が考えられ 日常の口腔衛生が必要と考えられている 感染性心内膜炎(1) 歯科併診では、全身状態の リスクの程度と予防投薬の 必要性を伝えるとよい <歯科疾患との関連> 12
#13.
成人の IE の基礎心疾患別リスクと歯科に際する予防的抗菌薬投与の推奨とエビデンスレベル 14) IE リスク 推奨クラ ス エビデン スレベル 1.高度リスク群(感染しやすく重症化しやすい患者) • 生体弁・機械弁による人工弁置換術患者、弁輪リング装着例 • IE の既往 • 複雑性チアノーゼ性先天性心疾患(単心室・完全大血管転位・ファロー四徴症) 、 体循環系 と肺循環系の短絡造設例 I B 2.中等度リスク群(必ずしも重篤とならないが,心内膜炎発症の可能性が高い患者) • ほとんどの先天性心疾患 • 後天性弁膜症*2 • 閉塞性肥大型心筋症 • 弁逆流を伴う僧帽弁逸脱 IIa C • 人工ペースメーカ、植込み型除細動器などデバイス植込み患者 、長期中心静脈カテーテル IIb 留置例 C 感染性心内膜炎(2) <歯科疾患との関連> 13
#14.
¡ ワルファリン休薬1%未満で血栓・塞栓症が発生し、心原性脳塞栓症で死亡・寝たきりの症例が約6割 →普通抜歯では抗凝固薬を継続することが推奨されている 15) ¡ 日本循環器学会のガイドライン 16)17)では、日本人の推奨治療域 PT-INR 2.0-3.0 (70歳以上の 高齢者は1.6-2.6)ではワルファリン内服継続下での抜歯を推奨(PT-INRが日本人の至適治療域とされ る 3.0 未満でも 0-26.6%で後出血が出現)15) →局所の止血処置が必要 →歯科対診ではPT-INRのコントロール状態を知る必要がある 歯科との併診では、全身状態の リスクの程度と、PT-INRのコント ロール状態を伝える (状況によって高度医療機関へ依頼する) ¡ DOAC (direct oral anticoagulant)はワルファリンに準じて継続下での抜歯(血中濃度の減衰で抗血栓 効果が下がる内服6時間以上経過した後)が推奨 15) 抗凝固薬と抜歯(1) <全身管理と歯科治療> 14
#15.
¡ ワルファリン療法中に抗菌薬を投与するとビタミンKの産生が低下、PT-INR を上昇させるが 局所の止血処置が適切に行われていれば抜歯後出血のリスクは低く、抗菌薬の投与が長引 く場合は PT-INR のモニタリング ¡ 英国歯科医師会のガイドライン 18) では「ワルファリンと併用してはならない」とされているが、 日本のガイドライン 15)ではNSAIDsやCOX-2の使用は「最小限」としている ¡ 口腔外科手術など出血リスクが高い場合は日常的にヘパリンブリッジングが行われているが、 抜歯ではヘパリンブリッジの必要はなく至適治療域にコントロールされたワルファリン継続下 での処置が推奨 ¡ ヘパリンによる代替療法を行っても観血的処置に伴う出血が凝固系を亢進、術中にヘパリン を投与できないことから血栓・塞栓症のリスクを完全に取り除くことは不可能→休薬時は必ず 十分な説明に基づく同意文書 抗凝固薬と抜歯(2) <全身管理と歯科治療> 15
#16.
循環器疾患と歯周病の関連について ¡ 集中的な歯周治療により血管内皮細胞機能の改善が得られた報告がある 19) ¡ 歯周病でCRPが上がるが、炎症性メディエーターの高値は循環器疾患発症 循環器疾患と歯周病の 関連については世界的 に多くの報告があり、 研究が進められている リスクを上昇させるため、歯周病と循環器に関連があるという指摘 20) ¡ 口腔病原体Porphyromonas gingivalisの投与でアテロームの形成が増加するマウスの実験報告 21) ¡ 慢性歯周炎が1,200名のコホート研究から冠動脈性心疾患(狭心症、心筋梗塞、致命的CHD: coronary heart disease)の発生と関連しているという報告 22)があるが、因果関係が明らかでない面もある ¡ 歯周病治療によってCHDの再発予防ができるというエビデンスは不十分というレビューがある 23) →基礎研究などで関係が示唆され、現在も研究が続いている 24) 循環器疾患と歯周病 (1) <歯科疾患との関連> 16
#17.
循環器疾患と歯周病の関連 カルシウム拮抗薬(のほかシクロスポリンA、フェニトインなど)の投薬で薬物性歯肉増殖がおきる →歯周治療のガイドライン2022 25)では相互理解による患者の利益のため主治医に 薬物性歯肉増殖の可能性を照会することが記載されている (口腔衛生の改善で予防、外科的処置が必要になることも) カルシウム拮抗薬・シクロスポリン・ フェニトインなどで著しい歯肉の増殖 が生じ、歯科併診を要することがある 循環器疾患と歯周病(2) <歯科疾患との関連> 17
#18.
化学療法で引き起こされる口腔内の有害事象 4) がん患者には口腔有害事象がおきるため、多くの 臨床ガイドラインでがん治療前の歯科治療を推奨 cf. National Cancer Institute 26) ・口腔粘膜炎 化学療法の開始から7-10日後に40-70%、口を含む頭頸部放射線治療では100%でおきる 中止2-4週間で治癒するが予防は難しく、口腔ケアなどの保清、対症療法による支持療法が中心 ・口腔感染症(歯周病の悪化、易感染性) がん治療前からの口腔内の炎症が悪化、全身の感染状態で化学療法を中止になることがある ・このほかの有害事象としてヘルペス、カンジダ、口腔乾燥症、味覚障害、歯肉出血、歯の知覚過敏 MASCC粘膜障害に対する臨床診療ガイドライン 27)28) 化学療法や放射線療法による口腔粘膜障害の軽減のため、がんの治療中からフォローアップ期まで 口腔の疼痛や状態を歯科(歯科医師・歯科衛生士)が他職種連携で関わることを提言している Multinational Association of Supportive Care in Cancer (MASCC) がん口腔支持療法(1) <全身管理と口腔> 18
#19.
放射線治療で引き起こされる口腔内の有害事象 4) ・急性期:口腔粘膜炎、味覚障害 ・急性-慢性期:口腔乾燥、ヘルペス感染、カンジダ症 ・晩発期:開口障害、組織壊死、放射線骨髄炎、放射線う蝕症 高齢者・有病者の口腔内には 本人の希望(抜きたくない)や 通院が困難などの理由で予後 不良の歯が残されていること が少なくない 放射線骨壊死(PRON: post-radiation osteonecrosis): 治癒しない骨露出 27) ¡ 下顎では2.6-22%生じるとされる ¡ 初期は骨細胞、骨芽細胞、破骨細胞などが原因、続いて血管系の損傷によっておきる ¡ 放射線療法後2年以内におきる自発性 / 抜歯や外科処置、歯周病や衛生不良によって遅発する外傷性 →予防として保存不可能な歯の抜歯を含めた歯科治療をあらかじめ行なっておく 放射線治療中の歯科治療はPRONのリスクを極端に高めるので行わないことが強く勧められる 29) 放射線治療:がん口腔支持療法(2) <全身管理と口腔> 19
#20.
がんでは非がん(骨粗鬆症など)の患者より多い用量のビスフォスフォネート(BP)を投与 ¡ 大規模疫学調査で、静脈注射のBP製剤による治療を受けた16073人のがん患者と対照群としてBP投与 を受けていないがん患者28697人の比較:6年間で炎症を有する状態、骨髄炎、顎顔面の手術を要するリ スクについて100人中BP治療群では5.48人、対照群では0.30人の事象と報告 30) 骨吸収抑制薬関連顎骨壊死の病態と管理:顎骨壊死検討委員会ポジションペーパー2016 31) ¡ 基本的に最も大切なことは、主治医である医師と歯科医師が緊密な連携によって相互に理解し、患者が 適切ながん、骨粗鬆症、歯科治療を受けられず、不利益をこうむることの防止 ¡ 骨吸収抑制薬投与前に口腔内衛生状態を改善して顎骨壊死発生の減少に努め、全ての歯科治療は骨 吸収抑制薬治療開始の2週間前までに終えておくことが望ましい ¡ がん患者では骨吸収抑制剤の治療開始を待てない場合があるが、歯科医師による定期的な診査、歯科 医師の口腔内診査結果の主治医への連絡、主治医の問診などにより患者の口腔内の状態に留意する 薬剤性顎骨壊死:がん口腔支持療法(3) <全身管理と口腔> 20
#21.
¡ 医学部と臨床や研究で連携があるケースがある ¡ 歯科医師が医科の病院で研修をうけることがある ¡ 医師会・歯科医師会などを通して地域の共同事業(乳幼児健診など) ¡ 東北震災では、誤嚥性肺炎や歯周病などの口腔内疾患を予防するため、避難所などへ歯科チーム の派遣がなされ、5年間以上にわたり被災地域への継続的な歯科支援が行われた(延 1,503 名) ¡ 熊本地震ではこの経験が活かされ、発災直後からJMAT(日本医師会災害医療チーム)とともに歯科 医師が被災地へ出向き、支援活動を行った(延 1,477 名) 32) 併診以外にも医科と歯科の接点 21
#22.
TIPS ■医科歯科連携は世界のトピック 原因 / 相互関係のある疾患・治療前の併診・投薬などに際する連携は患者の利益 ■歯科領域とのかかわりを想定 誤嚥性肺炎・周術期管理をはじめ、全身管理の観点から口腔領域の影響を検討 ■歯科は開業医が多い 特殊な科もあるが、まずはかかりつけの歯科医師の受診から 22
#23.
References 1) Epstein JB et al. A survey of National Cancer Institute-designated comprehensive cancer center’s oral health supportive care practices and resources in the USA. Support Care Cancer. 2007, 15 (4), 357-62. 2) Baker GJ. Current practice and knowledge of oral care for cancer patients: a survey of supportive health care providers. Support Care Cancer. 2005, 13 (1), 32-41. 3) Simon L. Inequity Along the Medical/Dental Divide, AMA Journal of Ethics. 2022, Volume 24, Number 1: E1-105. 4) 藤本篤士 et al. 5疾病の口腔ケア. 医師薬出版. 2019. 5) 中医協. 平成18年度診療報酬改定結果検証に係る調査ー歯科診療における文書提供に対する患者意識調査報告書. https://www.wam.go.jp/wamappl/bb11GS20.nsf/0/c7abbf184f2e5d56492572de000b1613/$FILE/20070517_2shiryou8_1.pdf (参照2022-07-02) 6) Mandell L, Niederman S. Review Article Aspiration Pneumonia. N Eng J Med. 2019, 380. 7) Khadka S., et al. Poor oral hygiene, oral microorganisms and aspiration pneumonia risk in older people in residential aged care: a systematic review. Age and Ageing. 2021, Vol. 50, Issue 1. 8) F