テキスト全文
左房内血栓診断の問題点とCT
#1. 左房内血栓診断の問題点 Part2 仰臥位遅延相および腹臥位遅延相心臓CT
と
経食道心エコーの危険性回避の対策
元愛知県立尾張病院循環器病センター循環器科 心臓CT担当医 やまかみ内科循環器科 山上祥司
#2. 2025.9左房内血栓 診断の問題点のスライドをAntaaに投稿したところ、多くの方々が見てくださりありがとうございました。
2025.7の循環器疾患を考える会 in 尾張西部の発表スライドでした。
1998年から2002年まで心房細動カテーテルアブレーション症例の心臓CTを担当した医師として、経験からお伝えしたいことを追加させていただきます。
仰臥位・腹臥位遅延相CTの診断精度
#4. 2021改訂版
循環器超音波検査の適応とガイドライン P20 [心臓造影CTにて左心耳内血栓の存在が否定的な場合に、経食道心エコー法(TEE)を施行しなくてもよいのか?]
遅延相の撮像追加によって感度、特異度、陽性・陰性的中率がすべて100%至ったという報告89)90)91)が順次報告されており、遅延像を含む適切なプロトコルによって撮像された造影CTにおいて、左心耳血栓陰性と判定されればTEEは推奨されないと考える。
仰臥位遅延相においてこの正診率100%にする遅延像を含む適切なプロトコルとは?
#5. 89)Sawat STら
造影剤60-80ml Isobue300 4ml/秒
早期相撮影後1分で遅延相を撮影
#6. 90)Lazoura O ら
造影剤90ml Ultravist 370 6ml/秒
標準スキャン開始から60秒後に遅延スキャンを実施した。
#7. 91)Bilchick KC ら
造影剤60ml 種類不明 注入速度不明
標準スキャン開始から40秒後に遅延スキャンを実施した。
#8. 正診率100%の報告の造影条件 総量は60-90ml; 早期相40-60秒以降
#9. 仰臥位遅延相:我々の経験 左心耳の偽陽性は心房の攪拌の悪さ
+
造影剤が重いために天井側にある左心耳に造影剤を注入できない 遅延相は5分後であったがもっと遅くの撮影で改善する
造影剤が濃い(多い)ほど偽陽性が改善する
と考えられた
#10. 仰臥位遅延相CT、腹臥位遅延相CT左房内血栓診断の報告のまとめ [仰臥位の場合]1)ファーストパスのみの撮影:偽陽性が多い。2)ファーストパス+セカンドパスの撮影(60秒までの持続注入):偽陽性がある。3)セカンドパス以後の撮影(1分-):偽陽性がある報告とない報告がある。大量急速注入および低い被ばくモードで偽陽性がない。冠動脈CTの遅延相では偽陰性がある。4)遅延相5分の撮影:注入速度が遅い場合、偽陽性は少ないが存在する。。 [腹臥位の場合]1)ファーストパスのみの撮影:偽陽性が多い報告と大量急速注入で偽陽性がない報告あり。2)ファーストパス+セカンドパス(60秒までの持続注入)の撮影:偽陽性はない。3)セカンドパス以後(1分-)のみの撮影:偽陽性はない4)仰臥位30秒腹臥位1から2分の遅延相の撮影:偽陽性はない。5)遅延相5分の撮影:注入速度が遅い場合、偽陽性はない。
仰臥位遅延相CTの改善方法
#11. 仰臥位遅延相ですべての報告で正診率100%にならない理由 CTの高機能化により早期相は短時間で撮影できるため造影剤の総量が減少傾向
そのため仰臥位遅延相にとって造影剤が少なくなり診断能が低下する
遅延相撮影ももっと遅らせると改善する
#12. 仰臥位遅延相CTの改善方法のまとめ 造影剤総量60ml-90ml
遅延相を1分でなくもっと遅く
(我々は5分後でしたがそれでも不十分)
腹臥位遅延相CTの撮影手法
#13. 腹臥位遅延相CTのまとめ 早期相を仰臥位で冠動脈CTおよび左房3D用に撮影 造影剤総量50ml-75ml
腹臥位になり待期。至急左心耳を解析。造影が悪ければ腹臥位になってから1分以上待って遅延相を撮影。
体位変換で位置がずれてしまう危険性がありスカートビューを撮影すると安心かもしれない。
経食道心エコーの危険性と事故
#15. 当院の患者さんで経食道心エコーの事故
冠動脈バイパス術の手術の際、咽頭穿孔となり、修復術を受けた。無事回復された。
その病院の循環器内科医はその事故のことを知らなかった。つまり合併症のため事故として院内へも報告されていない。
したがって日本において事故の総数は全く不明。
シカゴ大学のように症例数の多い病院の事故の報告が望まれます。
経食道心エコーの同意書問題
#16. 説明書と同意書の問題点
その病院の患者への説明書を取り寄せたが、前回Antaaで提示した日本心エコー図学会の同意書のような食道の病気に対する問診が書かれていなかった。
患者に聞いても食道の病気について聞かれた認識がなかった。
私は日本心エコー図学会の経食道心エコーの同意書を全国のDrにしっかりと認識していただくために、前回のAntaaのスライドに全文を掲載しました。
#17. 経食道心エコーによる食道の事故を防ぐためにすぐにできること
内視鏡付き経食道心エコーの開発はすぐには困難
病院のDrが食道の病気を問診で聞き取るだけになっている以上、またそれさえ認識されていない病院がある以上、患者さんが正確に問診に答えることができるように、紹介する我々開業医が心臓外科や循環器内科へ紹介する前に患者さんに胃内視鏡をその紹介する病院に手配するべきではないか。胃内視鏡の所見用紙を添えて紹介状を用意すべきではないか。
それが患者さんの無事な治療を願う働きかけと考えられた。
内視鏡を利用した経食道心エコーの方法
#18. 内視鏡を利用した経食道心エコー1)
経食道心エコーに内視鏡が付属しなくても、内視鏡を併用することでより安全に施行できると考えた。
耳鼻咽喉ビデオスコープを鼻腔から挿入し、経食道心エコーが食道入口部にうまく入れられるように見守る方法
#19. 内視鏡を利用した経食道心エコー2)
経鼻内視鏡で鼻から入れて食道を観察し咽頭上部まで引き抜く。
経食道心エコーが食道入口部にうまく入れられるように見守る方法
#20. 内視鏡を利用した経食道心エコー3)経食道心エコーガイド内視鏡
気管支用内視鏡や気管支ファイバーに1.8-2.2mmのファイバーや2.8mmのカメラがあります。
これを例えば幅1cm長さ1mの細長いビニール袋に入れ、ファイバーの先のレンズの前のビニールの緩みがないようにファイバーの周囲をセロテープで止めます。レンズの前のビニールにゆるみがあると、光が筋状になり画像がみにくくなります。
これをプローブカバーをつけた経食道心エコーの背側に配置します。
経食道心エコーガイド内視鏡の工夫
#21. 内視鏡を利用した経食道心エコー3)経食道心エコーガイド内視鏡
トランスデューサーの先、先から5cm、あとは数カ所を内視鏡とエコーを一周セロテープで巻きます。
トランスデューサーにセロテープがかかるとわずかにエコーに干渉しますので細いテープで先のみかかるようにします。
このビニール袋にはいった内視鏡と一体になった経食道心エコーを口から食道の奥まで挿入し、経食道心エコーを動かないようにマウスピースのところで保持して内視鏡を抜去します。ビニールは経食道心エコーに残ったままですが干渉は最小限になると思います。
#22. 内視鏡を利用した経食道心エコー3)経食道心エコーガイド内視鏡
ビニール越しの画面でも盲目的な経食道心エコーよりは安全です。内視鏡の消毒が不要になります。
ビニールで見づらいと思えばビニールの先を切って開放してください。内視鏡の消毒が必要になります。
内視鏡は保険点数をとることができません。なるべく内視鏡カバーとつけて施行できたらよいと思います。
しかし内視鏡は安全のために併用するだけですので、このような数百万円の高価なものは必要ないと思われます。
もっと安価な経食道心エコーガイド内視鏡の開発が望まれます。
経食道心エコーの重要性と安全性
#23. 最後に: 経食道心エコーの重要性
左房内血栓については腹臥位遅延相CTを施行することで経食道心エコーを施行する必要がなくなります。
しかし経食道心エコーの重要性は確立されています。
危険だから施行しないのではなく、内視鏡を併用することでより安全に経食道心エコーを施行していただきたいと思います。