慢性便秘症〜薬の使い分けと処方の考え方〜

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吉長 正紘

吉長 正紘(薬剤師)

近畿大学医学部堺病院

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日々の臨床で遭遇する便秘に対して、いつもワンパターンな処方になっていませんか? このスライドを通して、便秘へのアプローチ法や処方の組み立て方を学び、患者さんを快便へ導いてみましょう。

慢性便秘症〜薬の使い分けと処方の考え方〜

1. 慢性便秘症 手数が増える処方の考え方
2. There is no single definition of constipation. -Anthony Lembo and Michael Camilleri, NEJM, 2003, 349,1360 便秘の定義 日本内科学会 日本消化器病学会 日本大腸肛門病学会 日本緩和医療学会 3日以上排便がない or 毎日排便しても残便感あり 明確な定義はない。(数日に1回の排便、硬便など) 排便の悩みの一つ。 腸管内容物の通過遅延、停滞で排便に困難を伴う 患者さんが何を指して便秘と言っているのか訴えをしっかり聞く必要がある!
3. 便秘の分類方法 ー日本の伝統的な分類ー 慢性便秘 器質性 機能性 腫瘍 炎症 その他(巨大結腸症、癒着) 症候性 習慣性 弛緩性(蠕動運動、筋緊張の低下) 痙攣性(大腸の過緊張。IBSに多い) 直腸性(直腸の排便反射障害) 中島淳編, 臨床医のための慢性便秘マネジメントの必須知識, 2015
4. 慢性便秘 特発性 続発性 腸管拡張あり 腸管拡張なし 結腸通過時間正常型(NTC) 結腸通過時間遅延型(STC) 便排出障害型(DD) 慢性偽性腸閉塞(CIPO) 巨大結腸症 器質性疾患、内分泌疾患 神経性疾患、筋性疾患 薬剤性、直腸肛門異常 中島淳編, 臨床医のための慢性便秘マネジメントの必須知識, 2015 便秘の分類方法 ー国際的な分類ー
5. 混在する定義 慢性便秘症に対する日本のガイドラインの欠如 混在する分類方法 便秘薬の少ないバリエーション 便秘の診療、フォローアップの難しさ 治療のガラパゴス状態 明確なエビデンスに根差した治療法が少ない。
6. 経験、伝統に基づいた治療 この重要性は否定できない
7. もっと広い視野に立った 便秘治療を提案したい! それでも、明日から使える
8. 薬物療法と平行してやっておきたい事 便秘薬の使い方と適応を超えた使い方 コンテンツ
9. ①便秘の言語化 ②器質性、薬剤性、続発性便秘症の診断と除外 ③補正できるものをできる限り補正  生活習慣の改善(食事・運動など)、  原疾患の治療、被疑薬の中止、  外科・理学療法科へのコンサルト、排便指導(姿勢等) etc. ④OTCの使用歴調査 ⑤良好な患者-医療者関係の構築 慢性便秘を治すためにやっておきたいこと
10. 便秘の言語化 便秘に関するOPQRST、SAMPLERを明らかにする GI red flagsが無いか?手術歴、家族歴など ブリストル排便スケールで便の性状を評価する 便の量と質を知り、 薬物療法の方向性を考える!
11. GI red flags BAD NEWS for Family Bloody diarrhea:血便、下血 Anemia:貧血 Dysphagia:嚥下困難 Nocturnal diarrhea:夜間の下痢 Emesis:おう吐 Weight loss:体重減少 Steatorrhea:脂肪便 Family Hx of carcinoma:癌の家族歴(大腸癌など) 山口裕, GI red flags, Hospitalist,    2014, 2(3), 618(一部変更)
12. ブリストル排便スケール
13. 慢性便秘症の評価アルゴリズム 病歴聴取・身体診察・検体検査・画像検査 診断的治療 食物繊維±下剤 治療反応なし 肛門直腸圧力検査、バルーン排出試験 正常 異常 不確定 排便造影検査 結腸通過時間検査 便排出障害 結腸通過時間遅延型・正常型 Management of chronic constipation in adults(一部改変) 専門施設での検査 プライマリ・ケア
14. 結腸通過時間正常型便秘(NTC) 慢性便秘症の過半数(59%)がこれに分類される。 便排出障害とオーバーラップすることがある。 便秘型の過敏性腸症候群(IBS-C)としばしば合併する。 IBS-Cと同じ病態であるとする学説もある。 Anthony L., Michael C., Chronic Constipation, NEJM, 2003, 349, 1360 中島淳編, 臨床医のための慢性便秘マネジメントの必須知識, 2015 【参考】
15. 結腸通過時間遅延型便秘(STC) 初潮後の女性に好発する。 便排出障害とオーバーラップ(3%)することがある。 このタイプの便秘症は難治性であり、 大腸刺激性緩下剤が乱用されている場合がある。 食物繊維の摂取は逆効果であることが多い。 重症の場合は外科的治療が考慮される。 特発性慢性便秘症の13%程度 【参考】 Anthony L., Michael C., Chronic Constipation, NEJM, 2003, 349, 1360 中島淳編, 臨床医のための慢性便秘マネジメントの必須知識, 2015
16. 便排出障害型便秘(DD) 骨盤底機能障害に起因する便秘(ODS) 肛門括約筋の過緊張 骨盤底筋強調障害 脊髄神経障害 など バイオフィードバック、排便訓練、精神療法など 特発性慢性便秘症の25%程度 【参考】 Anthony L., Michael C., Chronic Constipation, NEJM, 2003, 349, 1360 中島淳編, 臨床医のための慢性便秘マネジメントの必須知識, 2015
17. まずは、便秘の仕分けが重要!(オーバーラップあり) 器質性 機能性 薬剤性 続発性 IBS以外のFBD (NTC,STC,DD type) IBS RomeⅢ IBS診断基準 慢性便秘症 ・・・・然るべきところにコンサルト ・・・・原因薬剤中止 ・・・・基礎疾患の治療 ただし、機能性便秘は器質性疾患とも合併していることもあるので、RomeⅢ満たした≠器質性疾患除外である! ー山口裕, GI red flags, Hospitalist, 2014, 2(3), 618
18. 薬剤性便秘症の原因  抗ヒスタミン薬  鎮痙薬  抗うつ薬  抗精神病薬 抗コリン薬  金属イオン含有サプリメント  アルミニウム(制酸剤、スクラルファート)  バリウム 陽イオン含有製剤 神経作動薬  オピオイド  降圧薬  神経節遮断薬  ビンカアルカロイド  Ca2+チャネル遮断薬  5-HT3拮抗薬 Management of chronic constipation in adults
19. 慢性便秘症の原因疾患  末梢神経障害   糖尿病、自律神経障害   Hirschsprung病   偽腸管閉塞  中枢神経障害   多発性硬化症   脊髄損傷、パーキンソン病 過敏性腸症候群 薬剤性便秘症  甲状腺機能低下症  低カリウム血症  拒食症  妊娠  下垂体機能低下症  全身性硬化症  筋強直性ジストロフィー 神経障害性便秘症 非神経障害性便秘症 特発性便秘症  結腸通過時間正常型  結腸通過時間遅延型  便排出障害型 Management of chronic constipation in adults
20. まずは、便秘の仕分けが重要!(オーバーラップあり) 器質性 機能性 薬剤性 続発性 IBS以外のFBD (NTC,STC,DD type) IBS RomeⅢ IBS診断基準 慢性便秘症 ・・・・然るべきところにコンサルト ・・・・原因薬剤中止 ・・・・基礎疾患の治療 ただし、機能性便秘は器質性疾患とも合併していることもあるので、RomeⅢ満たした≠器質性疾患除外である! ー山口裕, GI red flags, Hospitalist, 2014, 2(3), 618
21. 便秘の診断基準 ーROMEⅢ分類ー   【参考】 過去3か月間、月に3日以上にわたり、腹痛・腹部不快感を繰り返す。 次の2項目以上がある。 ①排便によって症状が軽減する ②発症時に排便の頻度に変化がある。 ③発症時に便形状(外観)の変化がある。 6か月以上前から症状があり、 最近3か月間は上記基準を満たしていること。 IBSの診断基準
22. 1.次の2つ以上の項目を満たすこと 排便の25%に1回以上、いきみがあり      〃        兎糞状便 or 硬便あり      〃        残便感あり      〃        直腸肛門の閉塞感or詰まった感じ      〃        用手的排便促進(摘便・骨盤外圧迫・・・) 排便が週に3回未満である 2. 下剤を使わないときに軟便になることはまれである 3. IBSの診断基準を満たさない IBS以外の機能性便秘の診断基準 6か月以上前から症状があり、 最近3か月間は上記基準を満たしていること。 【参考】
23. なぜ、IBSかどうかの診断が重要なのか? IBSと診断がつけば、治療の選択肢が多くなる! IBSのみに適応が通っている薬  ポリカルボフィルCa  IBSのガイドラインで使用が推奨される薬  モサプリド、リナクロチド(未承認) 心理的背景に配慮した治療  心療内科的介入、患者-医療者関係の改善 おそらく、多くの病院が採用している唯一の膨潤性下剤・・・
24. IBSの治療 続発性便秘症の基礎疾患の治療 薬剤性便秘症の休薬・薬剤変更による治療 従来の薬物療法 便秘に対するアプローチに幅が生まれる!
25. 良い便の条件 ー排便の力学ー  便の大きさ 小さい 大きい 便の固さ 固い 軟らかい 排便困難 不快な排便 排便容易 中島淳編, 臨床医のための慢性便秘マネジメントの必須知識, 2015
26. 良い便を目指した薬物療法  便の大きさ 小さい 大きい 便の固さ 固い 軟らかい 排便困難 不快な排便 排便容易 軟便化 軟便化 膨潤化 膨潤化 + 蠕動運動促進
27. 薬物療法の考え方 膨潤化 軟便化 蠕動運動促進
28. 便秘薬の分類 刺激性下剤 浸透圧下剤 消化管運動改善薬 食物繊維・膨潤性下剤 プロバイオティクス 消化管分泌促進薬 漢方薬・生薬 5-HT4受容体作動薬:モサプリド コリンエステラーゼ阻害薬:ネオスチグミン モチリン受容体作動薬:エリスロマイシン プロスタグランジン製剤:  ルビプロストン、ミソプロストール GC-C受容体作動薬:リナクロチド 浸潤性下剤 水溶性食物繊維、難溶性デキストリン 半合成セルロース 塩類下剤、ポリエチレングリコール(PEG) 糖類:二糖類・単糖・グリセリン ジオクチルスルホサクシネート(DSS)製剤 大腸:アントラキノン系・ジフェニルメタン系 小腸:ヒマシ油 直腸:炭酸水素ナトリウム坐剤
29. 作用発現時間(目安) 1~3日 膨潤性下剤 食物繊維 浸潤性下剤 浸透圧下剤(糖類) 6~8時間 刺激性下剤 (アントラキノン系、 ジフェニルメタン系) 1~3時間 浸透圧下剤 (塩類下剤) 15~30分 新レシカルボン グリセリン 24時間以内 ルビプロストン リナクロチド
30. 膨潤性下剤・食物繊維 ポリカルボフィルカルシウム (コロネル、ポリフル) カルメロースナトリウム 別名:カルボキシメチルセルロースナトリウム (バルコーゼ) n オオバコ・サイリウム
31. 膨潤性下剤・食物繊維 軽症~中等症の便秘の第一選択になり得る。 便の量を増やすことが出来る唯一のグループ。 IBSや便秘薬による下痢症状を緩和する可能性がある。 メリット:薬物相互作用、副作用が少なく使いやすい。 デメリット:散剤の飲みづらさ。即効性は期待できない。腹部膨満感。       結腸通過時間遅延型便秘(STC)では症状が増悪する。 ※Lawrence L et al., Chronic Constipation An Evidence Based Review, JABFM, 2011,24, 436 推奨レベル※文献より抜粋 サイリウム ポリカルボフィル メチルセルロース(未承認) A B B 3つのデザインの良いRCTあり 1つの症例集積試験 1つの中等度のデザインの前向き試験
32. 膨潤性下剤 各論 ポリカルボフィルカルシウム(コロネル、ポリフル): カルメロースナトリウム(バルコーゼ顆粒75%): メリット:散剤が苦手な場合、錠剤という選択肢がある。 デメリット:便秘症への適応は無い。使うにはIBSの診断が必要。 注意点:カルシウムを含むので、薬物相互作用がそれなりにある。 メリット:便秘症への適応があり、堂々と使える。薬物相互作用がほぼ無い。 デメリット:使用経験のある医師が少ない。やや飲みづらい。 注意点:妊婦に対しては大量投与を避ける。 1.5~6g(本剤2.0~8.0g)分3(適宜増減) 多量の水とともに服用。 1.5~3g分3 十分量の水(コップ一杯程度)とともに服用。
33. 食物繊維 サイリウム Psyllium オオバコ科オオバコ属植物の種子外皮(ハスク)を粉砕したもの。 基源植物は、ブロンドサイリウム、ブラックサイリウムが多い。 日本では特定保健用食品の成分となっている。 主な成分:プランタサン、プランタゴムチラーゲA 標準用量:2.5~10.0g 1日2~3回※ 少なくとも250 mLの水分とともに服用  ※1日20g 6ヶ月安全に服用した報告あり メリット:薬局で購入可能。多くのエビデンスが集積されている。      ミソプロストール・IBSの下痢、潰瘍性大腸炎の再発予防などに有効。 デメリット:保険が効かない。アレルギー、消化器症状など副作用がある。 注意点:血糖降下作用があるため糖尿病患者は避ける。薬物相互作用がある。      妊婦への使用は賛否両論あり、慎重になる必要あり。(授乳はOK) 「健康食品」の安全性・有効性情報 http://hfnet.nih.go.jp/contents/detail761.html
34. 浸透圧下剤(塩類下剤・PEG) マクロゴール※4000 (ニフレック、モビプレップ) n=59-84 MgO:酸化マグネシウム (マグラックス、カマグ) Mg(OH)2:水酸化マグネシウム (ミルマグ) MgSO4: 硫酸マグネシウム クエン酸Mg (マグコロールP) リン酸二水素ナトリウム (ビジクリア) ※ マクロゴール:別名ポリエチレングリコール(PEG)
35. マグネシウム製剤は薬物相互作用が多く、電解質異常に注意が必要である。 日本では処方量が非常に多い。 PEG製剤は便秘に有用な下剤であるが、便秘での使用は適応外となる。 リン酸塩製剤は腎障害などの特徴的な副作用がある。 浸透圧下剤(塩類下剤・PEG) ※Lawrence L et al., Chronic Constipation An Evidence Based Review, JABFM, 2011,24, 436 推奨レベル※文献より抜粋 水酸化マグネシウム PEG製剤 C A プラセボより優位なエビデンスなし 少なくとも3つのRCTで有効性あり
36. 酸化マグネシウム(マグラックス、マグミット): 浸透圧下剤(塩類下剤・PEG) 各論 リン酸二水素ナトリウム(ビジクリア): マクロゴール4000配合剤(ニフレック): 1日2g分3 (適宜増減) メリット:使用経験が豊富。副作用が少ない。小児、妊婦にも使える。 デメリット:薬物相互作用が多い。高マグネシウム血症を見落としやすい。 注意点:腎機能低下およびMg製剤不応の患者への漫然投与は避ける 便秘への適応がなく、禁忌が非常に多いので、ほぼ使用されない。 治療薬マニュアル2016参照 メリット:エビデンスが高く、糖類浸透圧下剤よりも腹満を起こしにくい。 デメリット:保険適応外であり、高価。 1日250~500 mL(溶解後)
37. 浸透圧下剤(糖類)・浸潤性下剤 ラクツロース (ラグノス・モニラック) マンニトール ソルビトール グリセリン (グリセリンG浣腸液) DSS:ジオクチルスルホサクシネートNa 別名ドキュセートナトリウム +カサンスラノール (ビーマス) +ビサコジル (コーラックⅡ)
38. 浸透圧下剤(糖類)・浸潤性下剤 糖類の下剤は塩類下剤ほど電解質異常は起こさない。 保険適応上の問題で便秘に対して堂々と使えない事がある。 浸潤性下剤は下剤の中で効果が弱いと考えられ、合剤の形をとる。 ※Lawrence L et al., Chronic Constipation An Evidence Based Review, JABFM, 2011,24, 436 推奨レベル※文献より抜粋 ソルビトール ラクツロース DSS B A B 1つの二重盲検RCTで有効性あり 2つのsystematic reviewで有効性あり 1つの二重盲検RCTで有効性あり
39. ラクツロース(ピアーレ、モニラック、ラグノスなど): 浸透圧下剤(糖類)・浸潤性下剤 各論 DSS+カサンスラノール(ビーマス): マンニトール、ソルビトール: 1回15~30mL 1日1~2回 メリット:副作用が少なく、小児、妊婦に使える。      塩類下剤と比較して、水分制限下でも使いやすい。 デメリット:保険適応が基本的にない。 注意点:使用数日で腹部膨満感などを生じるが、連用すると通常治まる。 カサンスラノールという腸管刺激薬との配合剤。詳細は添付文書参照。
40. 刺激性下剤(アントラキノン系・ジフェニルメタン系) 腸内細菌 レインアンスロン 大黄 (ダイオウ末) センナ葉・実 (アローゼン、 センナ末) センノサイド (プルゼニド、センノシド) エキス センナエキス (ヨーデル、 アジャストA) ピコスルファートNa(ラキソベロン、ピコベン) ビサコジル(テレミンソフト坐剤) 腸内細菌 pH エステラーゼ 活性体 活性体
41. 刺激性下剤(アントラキノン系・ジフェニルメタン系) 有効性、使用経験ともに優れている。 市販薬でもポピュラーな成分であり、乱用されやすい。 連用により耐性が生じると言われている。 噂1:ジフェニルメタン系がアントラキノン系に比べ作用が緩徐である。 噂2:アントラキノン系の連用で大腸黒皮症や大腸がんのリスクが上がる。 ※Lawrence L et al., Chronic Constipation An Evidence Based Review, JABFM, 2011,24, 436 推奨レベル※文献より抜粋 センナ ビサコジル A B 少なくとも3つのRCTで有効性あり 1つの二重盲検RCTと 1つのオープンラベル試験で有効性あり
42. 刺激性下剤(アントラキノン系) センナとダイオウの違い  センノサイドの含量はダイオウの場合、一定でない。 (日本薬局方では1g中2.5mg以上のセンノサイドA含有のみが条件)  ただし、ダイオウには他の生理活性物質が含まれており、  血行改善などを期待して使用できる可能性がある。 センノシド含量による用量比較 センナ原末製剤 1g=センナエキス製剤 120mg =センノシド製剤 24mg 例:アローゼン顆粒1g =ヨーデル錠80mg 1.5錠=センノシド錠12mg  2錠  どの薬剤も有効成分であるセンノシドが腸内細菌に分解され、 活性体のレインアンスロンが腸壁を刺激して蠕動運動を促進する機序が基本。
43. 刺激性下剤(アントラキノン系) 各論 センノシド(プルゼニド): 1日1回 12~24mg 就寝前 (最大48mg)(適宜増減) メリット:使用経験が豊富。効果が実感しやすい。 デメリット:妊婦には原則禁忌。 注意点:長期使用による耐性化、大腸黒皮症からの大腸がんリスクが指摘。 センナ末・ダイオウ末: 1回 0.5~1g 1日1~2回 (目安) センナ実・センナ葉製剤(アローゼン): センナエキス製剤(ヨーデル、アジャストA): 1日1回 80mg 就寝前 (最大240mg)
44. 刺激性下剤(ジフェニルメタン系) 各論 ビサコジル(テレミンソフト、デルデランス坐剤): 1日1~2回 1回10mg (乳幼児 2mg) メリット:体内にほとんど吸収されないため、妊婦・授乳婦に使用できる。 デメリット:市販薬でもよく含まれる成分であり、乱用されやすい。 注意点:長期使用による耐性化が指摘。 ピコスルファートナトリウム(ピコベン、ラキソベロン): 1日1回 1回5~7.5mg(液剤で10~15滴) Max:大腸検査で 150mg
45. 刺激性下剤(小腸刺激下剤・直腸刺激下剤) ヒマシ油 Castor Oil 炭酸水素ナトリウム坐剤 (新レシカルボンS、新レシカルボン) ※市販品、医療用ともに同用量
46. プロバイオティクス・漢方・生薬 プロバイオティクス 漢方薬 大黄 体力低下高齢者 大建中湯 大黄+芒硝 麻子仁丸、潤腸湯 大黄甘草湯、桂枝加芍薬大黄湯 桃核承気湯、通導散、調胃承気湯、 防風通聖散、大承気湯 腸血流量改善 プロバイオティクスの有効性は議論の余地がある。 副作用の少なさから、腸内環境の改善を期待して投与されることがある。
47. 消化管運動改善薬 モサプリド(ガスモチン) エリスロマイシン(エリスロシン) ネオスチグミン(ワゴスチグミン) ベタネコール(ベサコリン)
48. ネオスチグミン ベタネコール エリスロマイシン モサプリド Chunhuan J et al., Acta Pharmaceutica Sinica B, 2015, 5, 300
49. モサプリドのエビデンス 用法・用量 1日3回 1回5mg (適宜増減) P:便秘(週3回未満の排便)の糖尿病患者32人 I:モサプリド5mg/回 1日3回投与(Mo) C:ドンペリドン10mg/回 1日3回の投与(Do) O: 8週間投与後、排便回数などで評価 T:非盲検無作為化比較試験 排便回数 Mo vs Do :5.0±0.5 vs 2.6±0.2回/週(p<0.01)  上野尚彦 ほか, Pharma Medica, 2010, 28, 133
50. モチリン受容体作動薬:エリスロマイシン(適応外) コリンエステラーゼ阻害薬:ネオスチグミン(適応外)、ベタネコール(適応外) 小腸運動の改善:40mg iv  強皮症による便秘や小腸閉塞などに有効とされる。  耐性菌や連用による耐性などの問題から  緊急時や他の手段が場合時のみに限定される。 ネオスチグミン(ワゴスチグミン)  2~2.5mg iv  3分かけて ※ECG, O2モニター等の下 アトロピンivを準備   麻痺性イレウス、Ogilvie症候群に用いられることがある。 ベタネコール(ベサコリン)  10mg po 毎日服用   三環系抗うつ薬による便秘の改善に有効だったという報告あり。
51. 消化管分泌促進薬 ルビプロストン(アミティーザ) ミソプロストール(サイトテック) リナクロチド コルヒチン
52. ミソプロストール ルビプロストン リナクロチド コルヒチン ? 腸管毒性によって 分泌促進? Chunhuan J et al., Acta Pharmaceutica Sinica B, 2015, 5, 300
53. ルビプロストンのエビデンス 用法・用量 1日2回 1回24mcg (適宜増減) P:慢性特発性便秘症と診断された患者170人(妊婦、授乳婦は除外) I:ルビプロストン16mcg, 32mcg, 48mcg/日の単独投与(3群) C:プラセボ(PS)の単独投与(1群) O:2週間投与後に自発排便回数、救済薬使用、便秘症状などを評価 T:二重盲検無作為化比較試験 主要評価項目の自発排便回数が統計的に有意な用量反応性あり  PS: 1.5±2.4, 16: 2.3±2.3, 32: 3.5±3.1, 48: 6.8±7.4 回/週 p<0.0001 本郷道夫 ほか, 新薬と臨牀, 2012, 61, 2471
54. ミソプロストールの適応外使用の方法とエビデンス 用法・用量 1日4回 1回200mcg (適宜増減) P:既存の便秘治療を受けている患者18人 I:ミソプロストール追加後 600~2400 mcg/day C:ミソプロストール追加前 O:最低4週間の継続投与後に腸管運動の評価 T:非盲検化オープンラベル試験    6人の患者が副作用で離脱  腸管運動の間隔が有意に短縮(11.25→4.8日 p=0.0004) Roarty TP et al., Aliment Pharmacol Ther, 1997, 11, 1059
55. コルヒチンの適応外使用の方法とエビデンス 用法・用量 1日1回 1回1mg P:結腸通過時間遅延がみられる慢性便秘症(STC)  (刺激性下剤、膨潤性下剤、浸透圧下剤の使用歴あり)の患者60人 I:コルヒチン 1mg/day 2ヶ月間投与 C:プラセボ 2ヶ月間投与 O: 2か月後のKESSスコア(便秘症状の評価指標)の改善度の観察 T:二重盲検無作為化比較試験   コルヒチン投与群でKESSスコアが有意(p=0.0001)に改善。    11.67±3.91 vs 18.66±3.72(プラセボ) Taghavi SA et al., Int J Colorectal Dis, 2010, 25, 389
56. リナクロチド(本邦未承認)のエビデンス 用法・用量 1日1回 1回290mcg P:慢性便秘症の患者1276人 ※Trial 303および01の2試験の合計  (泥状便、ブリストル排便スケール7の便の既往があれば除外) I:リナクロチド(LC)145mcg, 290 mcg /日の単独投与(2群) C:プラセボ(PS)の単独投与(1群) O: 12週間投与後に週3回以上の腸管運動の有無を評価 T:多施設協同無作為化二重盲検比較試験 主要評価項目の達成率 ※前者Trial 303 後者 Trial 01の結果  145mcg:21.2, 16.0% 290mcg:19.4, 21.3% PS:3.3, 6.0% (LC vs PS p<0.01) Lembo AJ et al., NEJM, 2011, 365, 527
57. 座薬・浣腸薬をどう使い分けるか? 新レシカルボン ビサコジル坐剤 グリセリン浣腸 CO2 NaHCO3 座位or立位 15~30分 放屁 指定なし 約60分※ 下痢、腹痛 5-6cm(大人) 3-6cm(小児) 3-4cm(乳児) 左側臥位 15~30分 直腸穿孔、貧血、腎不全 ※再使用時は3時間以上空ける 挿入時体位 作用発現 副作用
58. 様々な便秘に関連する裏技 オピオイド誘発性の便秘  オピオイドローテーション   モルヒネ、オキシコンチン ⇒ フェンタニル 便秘薬による下痢がひどい  膨潤性下剤、食物繊維の追加を行う。 排便時に腹圧をかけたり、努責を行ったりする場合  トイレに足置きを導入する(考える人のポーズ)  ウォシュレットによる直腸刺激
59. Take Home Message 便秘の定義は様々なので、きちんと言語化をしておく。 続発性、器質性、薬剤性便秘に注意して診療にあたる。 IBSかどうかで使用できる薬剤、治療戦略が大きく変わる。 従来の治療法以外にも目を向けて使ってみる。