#4.
②疾患分類アルゴリズム(小分類) 液疱病変 紅色病変 内容液は透明? このように分けてから,各分類に属する 疾患で鑑別していくのがおすすめ 水疱性疾患 膿疱性疾患 Yes No 隆起している? Yes Yes 表⾯はザラザラ? No 圧迫で消える? No Yes No 非紅色病変 髪・爪病変 ⽪膚色(常色) 黒褐色 ⽩色 ⻩色 紅色丘疹・結節 鱗屑性紅斑 非鱗屑性紅斑 紫斑 常色病変 黒褐色病変 ⽩色病変 ⻩色病変
#5.
02 液疱病変の分類 水疱があった場合の鑑別診断を考える!
#6.
水疱性疾患と判断した! 液疱病変の分類 水疱性疾患 液疱病変 内容液は透明? 水疱性疾患であっても,時間とともに膿疱化 することがある。 膿疱性疾患との区別が難しいこともあるが, 時間経過や周囲の皮疹をみて判断する。 Yes No 膿疱性疾患
#7.
水疱性疾患の鑑別診断 考えられる疾患 ⼩水疱(vesicle) 〜 以下 5 10mm 水疱(bulla) 〜 以上 5 10mm ⼩水疱だった! 単純ヘルペス 帯状疱疹 ⽩癬(⾜⽩癬) 湿疹(異汗性湿疹・汗疱) 伝染性膿痂疹 熱傷 褥瘡 湿疹(接触性⽪膚炎) 薬疹(SJS・TEN) 水疱性類天疱瘡 頻度・危険度 まずはヘルペス(単純ヘルペス,帯状疱疹) ,白癬を 考える。 ヘルペスは部位・分布が特徴的なので視診のみで診断 可能。難しいときは細胞診や迅速抗原検査を行う。 ヘルペス除外→白癬と湿疹を鑑別する。これは視診で 見分けることが難しいため,真菌検査を行う。
#8.
03 帯状疱疹の特徴 50歳になると途端に増える疾患!
#9.
帯状疱疹の見た目と特徴 初期対応 皮膚科紹介 視診と病歴(+検査)で診断 (内服 or 静注)抗ウイルス薬を開始 診断に迷う場合,重症例
#10.
帯状疱疹の診断 ⽪疹:⽚側性で神経分布に沿った⼩水疱 視診 B 部位:なし A〜B 細胞診(Tzanck試験) 検査 A 迅速抗原検査(デルマクイック®VZV) 病歴 C ⽪疹出現の数⽇前から痛みが先⾏ その他 − なし 片側性で神経分布に沿った小水疱をみたら帯状疱疹を疑う。 皮疹出現の数日前から痛みが先行することが多い。 視診で診断できれば検査不要。 皮疹が非典型的で判断が難しい場合は,細胞診や抗原迅速検査を行う。 A:確定診断 B:推定診断 C:参考所見
#11.
帯状疱疹の治療例 ・バラシクロビル(バルトレックス®)錠(500mg) : 1 回 2 錠,1 日 3 回内服,7 日間 ・アセトアミノフェン(カロナール®)錠(500mg) : 1 回 1 〜2 錠,1 日 4 回内服,7 日間 皮膚症状出現後,できるだけ早く抗ヘルペスウイルス薬を 7 日間投与する。 軽症例は内服薬,重症例は注射薬を用いる。 急性期の痛みに対しては非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)やアセトアミノフェ ンを使用する。
#12.
04 帯状疱疹の疾患基本データ
#13.
帯状疱疹の疾患情報① 人間に感染するヘルペスウイルスは9種類ある。 一般にヘルペス=単純ヘルペスと帯状疱疹を指す。 小児期に水痘に感染した後,水痘帯状疱疹ウイルスは感覚神経節に潜在感染 する。その後,加齢などによって細胞性免疫が低下すると,ウイルスが活性化 して帯状疱疹が発症し水疱を形成する。 合併症として顔面神経麻痺(Ramsay Hunt症候群〈Hunt症候群〉 )や角結膜 炎,脳髄膜炎などを伴うことがある。 1) 80 歳までに3 人に1 人が罹患する頻度の高い疾患である 。 2) 基本的に一生に一度のことが多いが,1~6 %の患者は2 回以上罹患する 。 最大のリスクは加齢である。50 歳を過ぎると急激に 発症頻度が上がり,年齢とともにリスクが増加する。 1) Shiraki K, et al. Herpes Zoster and Recurrent Herpes Zoster. Open Forum Infect Dis 2017;4:ofx007.(PMID)28480280 2) Kawai K, et al. Systematic review of incidence and complications of herpes zoster: towards a global perspective. BMJ Open 2014;4:e004833.(PMID)24916088 3) Hope-Simpson RE. Postherpetic neuralgia. J R Coll Gen Pract 1975; 25:571-5.(PMID)1195231 (文献3)
#14.
帯状疱疹の疾患情報② 高齢化により患者が増加している。宮崎県での調査では,1997 年と比べて 1) 2017 年の患者数は1.5 倍になっている 。 体のどこにでも発症するが,胸髄部(上肢~体幹部)の 2) 発症が半数以上を占める 。 特徴的なのは痛みである。70~80 %の患者で,皮疹出現 の2~3日前から痛みや知覚過敏が先行する3)。その後,紅色丘疹や紅斑が出現 し,1~2 日で水疱となる。丘疹や紅斑の時期は見逃されやすく注意する。 皮膚症状が治癒した後も痛みが残ることが多い。痛み消退までの期間の中央 値は35 日で,約25 %の患者では3 カ月以上痛みが持続する4)。 1) Toyama N, et al. Universal varicella vaccination increased the incidence of herpes zoster in the child-rearing generation as its shortterm effect. J Dermatol Sci 2018;92:89-96.(PMID)30041832 2)石川博康,ほか.多施設合同による帯状疱疹の年間統計解析の試み(2000 年 4 月~ 2001 年 3 月) .日皮会誌 2003;113:1229-39.(NAID) 130004708287 3)Dworkin RH, et al. Recommendations for the management of herpes zoster. Clin Infect Dis 2007;44 Suppl 1:S1-26.(NAID)17143845 4)Kurokawa I, et al. The change in zoster-associated pain treated with oral valaciclovir in immunocompetent patients with acute herpes zoster. Int J Clin Pract 2007;61:1223-9.(PMID)17362479
#15.
05 帯状疱疹の診断攻略
#16.
Q1. どんな検査法がありますか? A1. 主に細胞診と迅速抗原診断が用いられる。 視診での鑑別が難しい場合は迅速検査(細胞診か抗原検査)を利用する。 1.細胞診:5~10分,判定に熟練が必要。単純ヘルペスと帯状疱疹のどちらでも 判断できるが,区別はできない。 2.抗原検査:5~10分,判定が簡単。単純ヘルペスと帯状疱疹を区別できるが, どちらか一方しか判断できない。 検査方法:まず水疱を破り水疱の底面をメスや綿棒でこすって検体を採取す る。次に,ギムザ染色を行い顕微鏡で細胞 の形態変化を確認するのが細胞診(Tzanck 試験)である。また,専用の抗原検査キット を用いて診断することもできる。
#17.
Q2. 単純ヘルペスか帯状疱疹か区別できません。 A2. 迅速抗原検査で鑑別できるが,どうしても迷うときは帯状疱疹として治 療を開始する場合もある。 両者の区別がつかないケースは意外と多い。皮疹の違いは,単純ヘルペスは限 局性で,帯状疱疹は神経支配領域の広範囲に帯状にみられる点である。 しかし,初期病変の段階では鑑別が難しい場合も多い。実際,初診時に単純ヘ ルペスと診断された45 人の患者のうち9 人(20 %)が帯状疱疹だったという 1) 報告もある 。その場合は迅速抗原検査を用いて両者の鑑別を行う。 著者 Points 抗原検査キットが利用できず,どうしても診断に迷う場合は,十分な説明と同意のうえ,帯状疱疹とし て抗ウイルス薬を開始することがある。そして治療開始後2~3 日で再診して治療効果を確認する。 単純ヘルペスであればその時点で治癒傾向だが,帯状疱疹であれば皮疹が拡大していることが多い。 1) Rübben A, et al. Routine detection of herpes simplexvirus and varicella zoster virus by polymerase chainreaction reveals that initial herpeszoster is frequently misdiagnosed as herpes simplex. Br J Dermatol 1997;137:259-61.(PMID)9292077
#18.
Q3. 血液検査で診断できますか? A3. IgG 抗体のペア血清で診断できるが,判定は治癒後になる。 帯状疱疹でウイルスのIgM 抗体が陽性になる患者は12 %と少なく1),IgM抗体 で診断するのは難しい。 一方,IgG 抗体は2 週間以上空けたペア血清での診断が可能である。帯状疱疹 の発症前からIgG 抗体は陽性だが,発症後に抗体値が上昇し,酵素免疫測定法 2) (enzyme im-munoassay:EIA 法)で2 倍以上の上昇を有意とみなす 。 ただし上昇するのが早いので,初回の検査時期が遅いと有意な変化がみられな い場合がある。また判定が治癒後になるため,治療の選択には役立たない。 これらの理由から,抗体検査が帯状疱疹の診断に役立つ場面は限られる。 1) Ihara H, et al. Relationship between serum anti-varicella zoster virus antibody titer and time from onset of herpes zoster. J Dermatol 2018;45:189-93. (PMID)29239011 2) 山河和博,ほか.顔面神経麻痺における抗 VZV 抗体価の比較検討:CF, FA, EIA 法.Facial N Res Jpn 2004;24:53-6.(NAID)10024480261
#19.
Q4. 皮疹はないですが帯状疱疹を疑っています。 A4. もし帯状疱疹であれば,数日以内に皮疹が出現する可能性が高い。 皮疹出現時点で早期再診するように伝える。 片側の痛みがあれば,皮疹がなくても帯状疱疹の前駆痛を考える必要がある。 しかし皮疹がない時点で確実に診断できる方法はなく,痛みだけの患者に抗ウ イルス薬を投与すべきかは悩ましい。 片側性の痛みが出現する疾患は多く,帯状疱疹の前駆症状ではない可能性も高 い。実際,帯状疱疹の前駆症状を疑う患者57 人を1 カ月追跡すると,本当に帯 1) 状疱疹だったのは2 人(3.5 %)だけという報告もある 。そのため,皮疹のな い時期から抗ウイルス薬を使用することは推奨されていない2)。 著者 Points 著者は片側の痛みで帯状疱疹を疑う場合は,その旨を患者 に説明し「皮疹が出たらすぐに来てください」と伝えるよ うにしている。もし帯状疱疹であれば数日以内に皮疹が出 現する可能性が高い。 1)McKendrick MW, et al. Is VZV reactivation a common cause of unexplained unilateral pain? Results of a prospective study of 57 patients. J Infect 1999;39:209-12.(PMID)10714797 2) 渡辺大輔,ほか.帯状疱疹の診断・治療・予防のコンセンサス.臨床医 薬 2012;28:161-73.
#20.
Q5. 合併症に注意するのはどんなときですか? A5. 眼周囲と鼻と耳の病変に注意する。 日常診療において最も問題になるのは顔面・頭部での合併症である。 1) 顔面・頭部の帯状疱疹は脳髄膜炎のリスクが高い 。さらに13% に眼病変,1% 2) にHunt症候群が合併すると報告されている 。 眼病変が角膜に及ぶと視力障害,Hunt 症候群は顔面神経麻痺の後遺症を残す 可能性がある(詳しくは次スライド) 。 これらの合併症を見逃さないためには,眼周囲,鼻,耳に皮疹があるかどうか に注目するとよい。 1) Kim SH, et al. Risk factors for aseptic meningitis in Herpes Zoster patients. Ann Dermatol 2017;29:283-7.(PMID)28566903 2)石川博康,ほか.多施設合同による帯状疱疹の年間統計解析の試み(2000 年 4 月~ 2001 年 3 月) .日皮会誌 2003;113:1229-39.(NAID)130004708287
#21.
Q5. 合併症に注意するのはどんなときですか? 眼病変 眼周囲(三叉神経第1 枝領域)に皮疹がある症例では結膜炎などの眼 病変が出現する頻度が高い(59 %)1)。 さらに水疱が鼻背部~鼻尖部に存在すると(Hutchinson徴候),角膜 2) に病変が及ぶリスクが4.02 倍と報告されている 。角膜病変は視力障 害を生じる可能性があり,眼症状がないようにみえても眼科紹介が望 ましいだろう。 Hunt 症候群 顔面神経の帯状疱疹によって生じ,顔面神経麻痺を主徴とする。 顔面神経は耳介の知覚を司っており, 耳の帯状疱疹は Hunt症候群を 3) 発症する頻度が高い(24 %) 。 治療開始が発症4 日目以降になると治癒率が低下するため,速やかな 耳鼻科紹介を心掛けたい4)。 1) Yoshida M, et al. Ocular findings in Japanese patients with varicella-zoster virus infection. Ophthalmologica 2005;219:272-5.(PMID)16123552 2)Zaal MJ, et al. Prognostic value of Hutchinson's sign in acute herpes zoster ophthalmicus. Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol 2003;241:187-91.(PMID)12644941 3)本田まりこ,ほか.耳のヘルペスウィルス感染症.耳展 1994;37:219-24.(NAID)130003794848 4) Murakami S, et al. Treatment of Ramsay Hunt syndrome with acyclovir-prednisone: significance of early diagnosis and treatment. Ann Neurol 1997; 41:353-7.(PMID)9066356
#22.
06 帯状疱疹の治療攻略 1. ウイルスに対する治療
#23.
Q1. 治療の注意点は? A1. ①効果発現まで時間がかかる(②は次スライド) 帯状疱疹の治療を行っていると, 「薬で症状が悪化した」という患者の言葉をし ばしば耳にする。 この理由は,抗ウイルス薬の作用がウイルスの増殖抑制であり,速効性がない からである。そのため皮疹の進行が停止するまでには2~3 日程度かかり,治療 を開始しても数日間は症状が進行する。 著者 Points このことを患者に説明しておかなければ,薬で症状が悪化したと勘違いし転院してしまうことが多いよ うだ。著者は治療開始2~3日後に再診してもらい,皮疹の状態の変化と副作用の有無の確認を行うこと が多い。 投与開始⽇ 0% ⽇後 20% 1 ⽇後 44% 2 ⽇後 89% 3 ⽇後 94% 4 バラシクロビル開始後,皮疹の新生が停止するまでの 日数と皮疹の進行停止率 Kawashima M, et al. Amenamevir, a novel helicase-primase inhibitor, for treatment of herpes zoster: A randomized, double-blind, valaciclovir-controlled phase 3 study. J Dermatol 2017;44:1219-27.(PMID)28681394
#24.
Q1. 治療の注意点は? A1. ②できるだけ早く治療を開始する(①は前スライド) 抗ウイルス薬は皮疹出現後できるだけ早く開始する必要がある。最も適した投 与開始時期は3 日以内といわれている。 これまでの抗ウイルス薬の臨床研究では,発症72 時間以内の患者が組み入れ基 準になっており,72 時間以降でのエビデンスは乏しい。 しかし皮疹出現後3 日目以降に受診する患者は多く,抗ウイルス薬を投与する か迷うことがある。 添付文書には「皮疹出現後5 日以内に投与を開始するのが望ましい」と記載さ れており,著者は5 日以内であれば投与を行っている。 また5 日目以降であっても皮疹の新生がある場合や合併症がある場合は,ウイ ルスの増殖が続いている可能性があり,抗ウイルス薬を投与したほうがよいと されている1)。 1)渡辺大輔,ほか.帯状疱疹の診断・治療・予防のコンセンサス.臨床医薬 2012;28:161-73.
#25.
Q2. 外用抗ウイルス薬で治療したいのですが。 A2. 外用抗ウイルス薬の効果は期待できない。 外用抗ウイルス薬は表皮のウイルスに対して効果を発揮するが,神経内のウイ ルスには効果がない。皮膚だけでなく神経細胞内でもウイルスが増殖している ため,帯状疱疹に対して外用抗ウイルス薬で治療を行うことは推奨されておら ず,避けるべきである1)。 また治療効果の上乗せを狙って,抗ウイルス薬の内服に外用を併用している症 例を見かけることがある。しかしランダム化比較試験では,外用薬の併用に有 2) 意な効果は示されておらず ,積極的には勧められない。 著者 Points 外用薬は主にびらん・潰瘍に対する治療目的で使用するのがよいだろう。著者は皮膚保護作用がある油 脂性基剤の潰瘍治療薬を選択することが多い。 1)Dworkin RH, et al. Recommendations for the management of herpes zoster. Clin Infect Dis 2007;44 Suppl 1:S1-26.(NAID)17143845 2) Satyaprakash AK, et al. Viremia in acute herpes zoster. J Infect Dis 2009;200:26-32.(PMID)19469706
#26.
Q3. 内服薬はどれを選べばよいですか? A3. バラシクロビル,ファムシクロビル,アメナメビルの優劣を示したエビ デンスはない。 アメナメビルは腎機能に基づく用量の調整が不要だが,髄液移行性が低い。 内服抗ウイルス薬は表に示す4剤である。 1) アシクロビルの臨床効果は他剤と比べてやや劣る可能性があり ,内服回数も多い ので積極的に選択する理由はない。 バラシクロビル,ファムシクロビル,アメナメビルの効果は,臨床試験では有意 な差は示されていない2, 3)。この3剤について次スライドで詳説する。 ⼀般名(商品名) 内服回数 アシクロビル(ゾビラックス®) 1⽇5回 バラシクロビル(バルトレックス®) 1⽇3回 ファムシクロビル(ファムビル®) 1⽇3回 アメナメビル(アメナリーフ®) 1⽇1回 排泄経路 腎排泄 腎排泄 腎排泄 糞中排泄 1)Beutner KR, et al. Valaciclovir compared with acyclovir for improved therapy for herpes zoster in immunocompetent adults. Antimicrob Agents Chemother 1995;39:1546-53.(PMID)7492102 2) Kawashima M, et al. Amenamevir, a novel helicase-primase inhibitor, for treatment of herpes zoster: A randomized, double-blind, valaciclovir-controlled phase 3 study. J Dermatol 2017;44:1219-27.(PMID)28681394 3) Tyring SK, et al. Antiviral therapy for herpes zoster: randomized, controlled clinical trial of valacyclovir and famciclovir therapy in immunocompetent patients 50 years and older. Arch Fam Med 2000;9:863-9.(PMID)11031393
#27.
Q3. 内服薬はどれを選べばよいですか? バラシクロビル,ファムシクロビル:腎排泄型。腎機能が低下していると薬物血 中濃度が上昇し,精神神経症状や急性腎不全の危険性が高い。そのため投与前の 血液検査が必須で,腎機能に基づいて減量する必要がある。腎機能低下が多い高 齢者では,血液検査せずに通常量を投与して急性腎不全を起こす可能性がある。 アメナメビル:主に糞便中に排泄されるため,腎機能に基づく減量が必要ない。 使用実績の蓄積は乏しいが,血液検査の結果が当日にわからないケース(クリニ ックでの診察)ではメリットが大きい。 ファムシクロビルとアメナメビルは髄液移行性が低く,脳髄膜炎リスクが高い症 1) 例ではバラシクロビルが望ましいという意見もある 。 なお,抗ウイルス薬は高額である。特にアメナメビルは後発品がなく(2024 年12 月時点) ,薬価が高い。 1) 谷口葉子,ほか.三叉神経領域の帯状疱疹をアメナメビルで治療後に帯状疱疹性髄膜脳炎と脳血管炎を合併した 1 例.臨床神経学 2021;61:239-42. (NAID)130008028371
#28.
Q4. どんなときに入院が必要ですか? A4. 重症化・合併症リスクが高い患者や,症状が重症の患者。 帯状疱疹の治療は外来での抗ウイルス薬内服が中心である。 しかし以下のように,重症化・合併症リスクが高い患者や,症状が重篤な患者で は,入院での抗ウイルス薬点滴治療を考慮する。 免疫低下を伴う基礎疾患(膠原病や悪性腫瘍,ステロイドや 重症化・合併症リスク 抗がん剤投与中など)をもつ が高い患者 三叉神経第1枝領域 ⽪疹や痛みの程度が高い 重症の患者 発熱や頭痛を伴う 合併症を伴う(眼病変・Hunt症候群など) 渡辺大輔,浅野 喜造,伊東 秀記,ほか.帯状疱疹の診断・治療・予防のコンセンサス.臨床医薬 2012;28:161-73.
#29.
07 帯状疱疹の治療攻略 2. 痛みに対する治療
#30.
Q1. 痛みが強くて鎮痛薬が効きません。 A1. 痛みの性状に基づいて薬剤の追加を検討する。 帯状疱疹に関連する痛みは,時期によってメカニズムが異なり,薬剤の効果も異 なる。疼痛の種類を正確に判断し,痛みのメカニズムに応じた薬剤を選択する。 大雑把に1 カ月以内を急性期,1~3 カ月を亜急性期,3カ月以上を慢性期に分け て考えるとわかりやすい。 急性期:主に皮膚や神経の炎症によって起こる侵害受容性疼痛。 慢性期:主に神経細胞の変性や機能障害によって起こる神経障害性疼痛。 亜急性期:侵害受容性疼痛と神経障害性疼痛が混在。 まずは侵害受容性疼痛の治療を中心に行いつつ,神経 障害性疼痛の出現を早期に発見し投薬を開始する。 著者 Points 神経障害性疼痛では,知覚の低下やアロディニア(軽く触れただけで 痛む)を合併する。著者はこれらの症状があれば神経障害性疼痛の治 療を開始している。
#31.
Q2. 侵害受容性疼痛に対する薬剤はどれを選べばよいですか? A2. 解熱鎮痛薬に弱オピオイド,ステロイド内服,神経ブロックを併用する。 侵害受容性疼痛に対する治療薬として以下がある。次スライドにて詳説する。 第⼀選択薬 解熱鎮痛薬 NSAIDs アセトアミノフェン 弱オピオイド トラマドール 第⼆選択薬 ステロイド プレドニゾロン そのほか 神経ブロック
#32.
Q2. 侵害受容性疼痛に対する薬剤はどれを選べばよいですか? ①NSAIDs・アセトアミノフェン 侵害受容性疼痛に対する第一選択はNSAIDsである。ウイルスによる組織の傷害 で生じたプロスタグランジンを抑制し,抗炎症効果と鎮痛効果を発揮する。 ただし,高齢者では胃粘膜障害や腎機能障害などの副作用が起こりやすい。65 歳 以上の患者では抗ウイルス薬とNSAIDsの併用で腎障害のリスクが上がることが示 され,NSAIDs ではなくアセトアミノフェンの使用が勧められている。 しかし,アセトアミノフェンには抗炎症作用がなく鎮痛作用もやや弱い。十分な 鎮痛効果を得るためには高用量(1 回1,000mg)が必要である。 無治療 抗ウイルス薬のみ NSAIDsのみ 抗ウイルス薬+NSAIDs オッズ比(95%CI) 1 ( ) 1.4(1.2-1.6) 26(19.2-35.3) 65歳以上の帯状疱疹患者の腎障害リスク (抗ウイルス薬:バラシクロビル,NSAIDs:ロキソプロフェン) 4.6 4.1-5.2 Yue Z, Shi J, Jiang P, et al. Acute kidney injury during concomitant use of valacyclovir and loxoprofen:detecting drug-drug interactions in a spontaneous reporting system. Pharmacoepidemiol Drug Saf 2014;23:1154-9.(PMID)24788910
#33.
Q2. 侵害受容性疼痛に対する薬剤はどれを選べばよいですか? ②弱オピオイド・ステロイド・神経ブロック アセトアミノフェン,NSAIDs で改善しない侵害受容性疼痛に対しては弱オピオ イドの併用を考慮する。 1) また,ステロイド内服の有効性も示されている 。 さらに,硬膜外ブロックや末梢神経ブロックも急性期疼痛の緩和に有用である。 国際疼痛学会2)は,薬物療法がうまくいかない場合に行うよう推奨している。 1) Whitley RJ, et al. Acyclovir with and without prednisone for the treatment of herpes zoster. A randomized, placebo-controlled trial. The National Institute of Allergy and Infectious Diseases Collaborative Antiviral Study Group. Ann Intern Med 1996;125:376-83.(PMID)8702088 2) Dworkin RH, et al. Interventional management of neuropathic pain:NeuPSIG recommendations. Pain 2013;154:2249-61.(PMID)23748119
#34.
Q3. 神経障害性疼痛に対する薬剤はどれを選べばよいですか? A3. ①ガバペンチノイドと三環系抗うつ薬,②弱オピオイド。 日本ペインクリニック学会の『神経障害性疼痛薬物療法ガイドライン』 では, 第一選択薬としてガバペンチノイドと三環系抗うつ薬が挙げられている。 第二選択薬として推奨されているのは弱オピオイドのトラマドールで,帯状疱疹後 神経痛に対する有効性が示されている2)。オピオイドのなかでは精神依存の発生が 少なく比較的安全性が高いが,長期使用に際しては疼痛医療専門医の併診が望まし いとされている。 慢性期移行前の時点で速やかにペインクリニックへ紹介するのが望ましいだろう。 1) 第⼀選択薬 第⼆選択薬 ガバペンチノイド プレガバリン 三環系抗うつ薬 弱オピオイド アミトリプチリン ミロガバリン ノルトリプチリン トラマドール 1) 日本ペインクリニック学会 神経障害性疼痛薬物療法ガイドライン 改訂版作 成ワーキンググループ編.帯状疱疹後神経痛(慢性期).神経障害性疼痛薬物療 法ガイドライン改訂第 2 版.真興交易医書出版部,2016, p90-3. 2) Boureau F, et al. Tramadol in post-herpetic neuralgia:a randomized, double-blind, placebo-controlled trial. Pain 2003;104:323-31. (PMID)12855342
#35.
まとめ 初期の丘疹や紅斑の時期は見逃しやすいので注意して おきたい。 抗ウイルス薬の作用機序から,治療はなるべく早く始 める必要がある。そして,治療開始後も数日間は症状 が進行する可能性を説明しておくのがよいだろう。 痛みに関しては,疼痛の種類を正確に判断し,メカニ ズムに応じた薬剤の選択を心掛けている。
#36.
液疱病変の分類 水疱性疾患の鑑別診断 小水疱 単純ヘルペス 帯状疱疹 白癬(足白癬) 湿疹(異汗性湿疹・汗疱) 水疱 伝染性膿痂疹 熱傷 褥瘡 湿疹(接触皮膚炎) 薬疹(SJS・TEN) 水疱性類天疱瘡 膿疱性疾患の鑑別診断 毛包炎・尋常性ざ瘡 薬疹(急性汎発性発疹性膿疱症) 掌蹠膿疱症 て べ す 患 この疾 ! す ま べ 1冊で学 紅色病変の分類 紅色丘疹・結節の鑑別診断 紅色丘疹 帯状疱疹 虫刺症 毛包炎・尋常性ざ瘡 老人性血管腫 疥癬 紅色結節 粉瘤(炎症性粉瘤) 膿瘍 毛細血管拡張性肉芽腫 有棘細胞癌 鱗屑性紅斑の鑑別診断 白癬(体部白癬・股部白癬) 湿疹 日光角化症 Bowen病 乾癬 非鱗屑性紅斑の鑑別診断 境界明瞭 蕁麻疹 薬疹(紅斑丘疹型・多形紅斑型) ウイルス性発疹症 帯状疱疹 水疱性類天疱瘡(非水疱型) 境界不明瞭 蜂窩織炎 結節性紅斑 紫斑の鑑別診断 老人性紫斑 血管炎 非紅色病変の分類 常色病変の鑑別診断 角化性 鶏眼・胼胝 ウイルス性疣贅 皮角 非角化性 伝染性軟属腫 尖圭コンジローマ 粉瘤 脂肪腫 黒褐色病変の鑑別診断 色素細胞母斑 脂漏性角化症 基底細胞癌 悪性黒色腫 白色病変の鑑別診断 尋常性白斑 黄色病変の鑑別診断 黄色腫 毛髪・爪病変 円形脱毛症 白癬(爪白癬) 著 松田光弘 あさひ皮膚科クリニック 院長 福岡県福岡市生まれ。2007 年に久留米大学医学部卒業後,久留米大学病院で初期臨 床研修。2009 年に久留米大学皮膚科へ入局。2015 年より公立八女総合病院や大牟田 市立病院などで医長を務め, 地域医療に従事。 2020 年よりブログ(皮膚科の豆知識 ブログ https://www.derma-derma.net)などで情報発信を行う。2025年より現職。