#4.
皮膚科医は軟膏が好き 4 そんな中,皮膚科医はやっぱり軟膏が好きです.あのベトッとした感じが最高です(これは皮膚科医ではなく私の好みかもしれませんが).
しかし,軟膏は油が衣類に染み付いてしまうため,患者やその家族からの評判は悪いようです.塗りにくいとアドヒアランスは下がります.
ただ,軟膏は皮膚の保護作用が強く,基剤による効果もあり,有効性が高いことが多いのです.いろいろな剤形がある外用薬であれば,基本的に軟膏を選んでおけば間違いはありません.とは言え,さまざまな剤形の特徴と利点,欠点を理解しておく必要はあるでしょう.
#5.
剤形の種類とその特徴 剤形ごとの特徴や使いどころを表にまとめました.それぞれの剤形について,特徴と利点,欠点を次のスライド以降でさらに細かくみていきましょう. 5
#6.
軟膏(Ointment) ワセリンなどの油脂性の基剤からなる外用薬です.油で皮膚を包み,その閉塞性によって主剤の皮膚への浸透を高め,皮膚により長く残留することで効果を発揮します.また,皮膚科医は基剤による保湿効果も期待して使用しています. 6 利点 油脂で閉塞させることで主剤の効果が高まる
主剤が残留し,効果の持続性が高い
保湿力がある
刺激性が少ないため,傷やびらんにも使える 欠点 ベタつきが強く,使用感が悪い
衣服や寝具に付着しやすく嫌厭されることがある
毛の多い部位には使いにくい
ワセリンと比べ,ラノリン基剤では接触皮膚炎を起こすことがある
#7.
クリーム(Cream) 油脂と水分が混ざった乳剤性の基剤からなる外用薬です.その混ざり方の違いで,よりクリームらしい水中油型と軟膏に近い油中水型に分けられます.皮膚科医は塗りやすさを優先し,アドヒアランスを上げたい場合に使用することが多いと思います.
7 利点 皮膚への浸透が速い
伸びがよく,塗布しやすい
ベタつきが少なく,使用感が良好
欠点 刺激性があり,びらん面には使いにくい
乳化剤や防腐剤が添加されており接触皮膚炎のリスクが高い
#8.
ローション(Lotion) クリームよりも水分が多く含まれる乳液状の基剤からなる外用薬です.また,アルコール基剤のローションもあります.毛髪のある頭皮の病変に対して使用することが多いですが,頭部以外でもサラッとしていて広い範囲にも塗りやすいため,クリームと同様にアドヒアランス向上が期待できます.また,手は頻回に洗う部位であり外用薬が効きにくいですが,皮膚への浸透の速さを期待してローション剤を使用することもあります. 8 利点 皮膚への浸透が速い
毛髪部位などにも塗布しやすい
ベタつきがほとんどないため,快適に外用できる
アルコール基剤では,蒸散作用により患部が冷却され清涼感がある 欠点 効果の持続性が軟膏やクリームに比べて劣る
水分が多く蒸発が早いため,保湿性は低い
特にアルコール基剤では刺激性が強い.傷があると痛い
#9.
ゲル剤(Gel) 水分を含む半固形の透明な剤形で,親水性基剤を使用しています.毛包内への浸透が期待され,ニキビに対する外用薬にゲル基剤のものが多くなっています.ローション剤よりも患部に残留しやすいとされています. 9 利点 毛包を介して,皮膚深部に浸透する
患部に残留しやすいように設計されている
清涼感があり,塗りやすい 欠点 軟膏やクリームよりも使用期限が短いことが多い
蒸発により皮膚を乾燥させやすい
刺激性がある
#10.
貼付剤(テープ剤・パッチ剤) 主剤をシートやフィルムに塗布した製剤で,皮膚に貼り付けて使用します.密閉されることで局所に持続的な効果を発揮する薬剤と,吸収されることで全身に作用する薬剤があります.皮膚科領域以外では,消炎鎮痛薬である湿布や,オピオイド,気管支拡張薬などは全身療法として用いられています.皮膚科領域ではステロイド外用薬として,デプロドンプロピオン酸エステル貼付剤(エクラー®プラスター)があります. 10 利点 一定の薬物濃度を長時間維持できる
貼るだけなのでアドヒアランスが高い
手を汚さず清潔に貼付できる 欠点 接触皮膚炎を起こしやすい
密閉されることでジュクジュクすることがある
毛が多い部位には貼りにくい
#11.
パウダー剤(粉末剤) 粉末状の製剤で,患部の乾燥や保護のために使用されます.市販薬としてはタルク(含水ケイ酸マグネシウムを主成分とする鉱物)を主成分とするシッカロールが有名です.保険承認されているパウダー剤としては酸化亜鉛デンプンがありますが,利便性が低いためか使われることは少なくなっています. 11 利点 吸水作用により患部を乾燥させる
ジュクジュクした病変に適している
塗布することにより摩擦を軽減し,皮膚を保護する 欠点 均一な塗布が難しい
#12.
フォーム剤(泡製剤) 最近,増えてきている剤形です.容器をプッシュすると薬剤が泡として出てくるので,直接患部に噴霧したり,手のひらに出してから患部に塗布したりします.とても塗りやすいので重宝しています. 12 利点 皮膚表面に均一に広げやすい
皮膚への浸透が速い
その使いやすさからアドヒアランスが高い 欠点 プッシュ式なので,押しにくいことがある
#13.
軟膏という名前でも軟膏ではない外用薬がある 軟膏がすべて油脂性基剤というわけではありません.
マクロゴールという基剤は親水性です.吸水作用があるため,それを利用して軟膏の基剤として使われています.例えば,皮膚潰瘍治療薬として使われるポビドンヨード製剤であるユーパスタ®軟膏,カデックス◇軟膏,ヨードコート®軟膏やブクラデシンナトリウム(アクトシン®)軟膏はマクロゴール基剤です.滲出液が多い潰瘍や周囲の角質が水分でふやけてしまっている創傷に対して使用し,吸水することで創環境を整え,治癒を促進します. 13
#14.
軟膏という名前でも軟膏ではない外用薬がある また,クリームには水中油型と油中水型があると書きましたが,ビタミンA(ザーネ®)軟膏やビタミンE・A(ユベラ®)軟膏は水中油型クリームであり,ヘパリン類似物質(ヒルドイド®)ソフト軟膏は油中水型クリームです.
軟膏と名乗っているのに実際は違うというのはとてもややこしいですが,商品名と剤形が異なる場合があることも覚えておきましょう. 14
#15.
コラム:「軟膏塗ってると日焼けして黒くなるんですよね?」 患者さんからよく言われる言葉です.軟膏で日焼けをするというのは,サンオイルからの発想だと思うのですが,サンオイルとワセリンは異なります.ワセリン,基剤クリーム,グリセリン,オリーブオイル塗布時でUVA照射による最小光毒量(MPD:minimal phototoxic dose,光毒性反応を起こすのに必要な最小の紫外線量)を比較した報告では,ワセリン塗布時のみMPDの増加が示され,紫外線障害を防ぐことが明らかにされています※1.
ちなみにステロイドを塗ると黒くなるとも言われますが,それも都市伝説で,慢性湿疹にステロイドを塗ろうが塗るまいが,炎症後色素沈着で黒くなります. 15 文献 ※1 Akarsu S, et al:Blocking or enhancing effects of some basic emollients in UVA penetration. An Bras Dermatol, 93:238-241, 2018(PMID:29723354)
#16.
16 書籍案内 皮膚外用薬の使いどころ・使わずどころ
皮膚科医が伝えたい、外用療法の診療プロセス 安田正人/著
■定価4,620円(本体4,200円+税) ■発行:羊土社 ■ 2026年06月30日発行 病棟・救急外来・一般外来など,日常診療で欠かせない「皮膚外用薬」を適切に使うために必要な基本知識,使いどころを,研修医・若手医師向けに皮膚科医がホンネを交えて語りました.
#17.
17 書籍案内