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離島医療会議 2025.3.8 開催レポート

投稿者プロフィール
離島医療会議

離島医療会議 運営委員会

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概要

離島のいまを知り、未来をつくる

医療の未来を考えるとき、課題先進地である離島の医療を考えることは重要な意味を持ちます。

地域医療の魅力が強く感じられる離島医療。離島医療は時代とともにどう変わっていくのか。時代が変わっても大切にしたい医療の心は何か。

離島医療のいまを知り、未来を考える会議を2025年3月8日に開催しました。

【共催】

島根県海士町、西ノ島町、知夫村、アンター株式会社、NPO法人 離島経済新聞社

本スライドの対象者

医学生/研修医/専攻医/専門医

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テキスト全文

離島医療会議の目的と背景

#1.

離島のいまを知り、未来をつくる 離島医療会議 2025.3.8 REPORT

#2.

人々が暮らし続けられる 島国を目指し 離島のいまを知り 未来をつくる 日本は今、人口減少という大きな課題に直面しています。これまで人口が増え続け ることを前提に作られてきた社会の仕組みも、これからは変化に対応していく必要 があります。「静かなる有事」と呼ばれる人口減少時代において、日本の離島は重 要な意味を持っています。 日本には、北海道・本州・四国・九州・沖縄本島をのぞく417島に人の営みがあり ます。人口密度1万人を超える首都圏と比べ、離島地域の人口密度は100人から数人 程度。人口減少問題はほとんどの島で1950年代から始まっています。つまり、日本 全体に先駆け多様な挑戦が続けられてきたのです。 少ない人口で地域内外との連携や創意工夫によって営みを維持する島には、人口減 少時代における「問い」や「未来のモデル」が存在しています。 日本海に浮かぶ隠岐諸島・島前地域もそのひとつ。海士町・西ノ島町・知夫村の3 町村の総人口は1950年代には1万6,000人を数えながら、約5,700人まで減少。1999 年から2006年にかけて行われた平成の大合併による合併協議を経て、3町村が独自 の地域づくりを選択しながら、現在に至ります。人口減少、産業衰退、財政難な ど、大きな壁に立ち向かってきた島前3町村では、創造的な解決策が生み出される 地域となり、近年は「地域づくりのトップランナー」としても注目されています。 「離島医療会議」もそのひとつ。四方を海に囲まれる「ないものはない」環境の中 で、人々の命と健康を守る医療の現在地を、医療関係者のみならず住民や行政など 幅広い関係者と共有し、未来を語り合う場は、2022年に海士町でスタートし3町村 へと広がり、全国規模に成長しようとしています。 「離島医療会議」で語られることは、人口減少時代を歩む日本列島のヒント。離島 医療に携わる医療関係者や、住民、企業、行政関係者など、この国で生きる人々の 命と健康を、この先どのように守っていけるとよいかを考えるべく、2025年3月8日 に海士町で開催された第3回「離島医療会議」には、全国各地よりオンラインを通 じて525名が参加しました。「離島医療会議」の議論が各地で創造的な実践につなが るようレポートをお届けします。

離島医療会議の開催概要と参加者

#3.

開催概要 離島医療会議 開催日時:2025年3月8日(土) 14:00 ~ 17:30 対象者:医師、医療関係者、自治体関係者、学生、離島医療に関心のある方 会場:オンライン(Zoomウェビナー)・海士町役場1階しゃばりば 参加費:無料 共催:海士町、西ノ島町、知夫村、アンター株式会社、株式会社風と土と、認定NPO法人離島経済新聞社 後援:島根県、公益財団法人日本離島センター、一般社団法人日本プライマリ・ケア連合学会 リアル会場 海士町役場新庁舎 1階 しゃばりば

#4.

地域存続のかなめである 地域医療の未来に向けて まずは、日々住民のいのちと暮らしを守る ために尽力してくださっている医療関係者の 皆さまに、心より感謝申し上げます。特に離 島という厳しい環境の中での医療提供には、 都市部とは異なる課題と向き合わなければな らず、そのご苦労は計り知れません。 これまで3回、隠岐島前地域で離島医療会 議を開催してきました。3町村が離島医療の 課題を共有し合うことで、その厳しさを改め て認識する貴重な機会となりました。従来は 各町村がそれぞれ独自に医療課題へ取り組ん できましたが、今では連携への機運が生ま れ、信頼関係が深まり、「一緒に考えていこ う」という流れが形成されつつあります。 海士町では、高齢化の進展や医療人材の確 保難といった問題に直面していますが、行 政、医療機関、地域住民が一体となって、住 民一人ひとりが安心して暮らせる地域づくり を進めています。 特に地域包括ケアシステムの構築や遠隔医 療の活用など、持続可能な医療提供体制の実 現に向けて模索を続けております。 また、この会議を通じて、離島医療に想い を持った医療従事者とのつながりが生まれ、 代診の相談や情報共有など、会議にとどまら ない継続的な関係性が構築されている点も大 変意義深いことです。 本日の離島医療会議でもさまざまな観点か ら、僻地医療に対する課題感や克服していく ための手立て、未来に向けた具体的な提言な どを伺えることをたのしみにしています。 今後とも、本会議での議論を通じて、離島 医療の課題と可能性を共有し、持続可能な未 来に向けた新たな一歩を共に歩んでいけるこ とを願っております。 海士町長 大江和彦

離島医療の現在地と課題

#5.

SESSION 1 SESSION 2 SESSION 3 離島医療の現在地 自治体/住民の想いを知る 離島医療の未来 白石吉彦(しらいし・よしひこ) 島根大学医学部附属病院総合診療医センター長。 1992年自治医科大学卒、徳島で研修、山間地のへ き地医療を経験。1998年に島根県の隠岐諸島にあ る島前診療所(現隠岐島前病院)に赴任。2001年 には院長。2021年より隠岐島前病院参与となり、 島根大学医学部附属病院総合診療医センター長に 就任。2022年には総合診療育成の取り組みで2022 グッドデザイン賞金賞受賞。2014年第2回日本医 師会赤ひげ大賞受賞。2021年日本プライマリ・ケ ア連合学会 第14回田坂賞受賞。2023年離島振興70 周年記念功労者国土交通大臣表彰。2024年集中医 療大賞・髙久史麿特別賞 2024 小徳羅漢(ことく・らかん) 鹿児島県立大島病院 総合診療科 産婦人科医) 1991年茨城県生まれ。中学、高校生は横浜で過ご す。2016年東京医科歯科大学卒業後に離島医療が したくて単身で鹿児島に移住。現在は奄美大島で 「お産がとれる総合診療医」として「暮らしの保 健室」や学校での「コンドームを配る性教育」に 力を入れている 中西浩之(なかにし・ひろゆき) 厚生労働省 医政局 地域医療計画課 医師確保等地 域医療対策室長。内科・公衆衛生領域等に従事し た後、厚生労働省入省。現在、医政局地域医療計 画課に在籍し、医師偏在・へき地医療等の地域医 療対策を担当 濱見優子(はまみ・ゆうこ) 海士町出身。1981年広島県立広島看護専門学校卒 業後、保健師として海士町役場に就職。2010年よ り健康福祉課長。 10 年前に退職するまでの 34 年 間、島の保健福祉活動に従事。子育てや両親の看 取り、抗がん剤治療を受けながら仕事を続けるこ とを望んだ夫の闘病、自宅での看取り支援などを 経て、海士診療所の支えを公私にわたり実感 青木さぎ里(あおき・さぎり) 東京都出身。自治医科大学看護学部講師。NPO法 人へき地保健師協会理事長。 青ヶ島村の保健師と して約7年活動した。離島で働く保健師が生き生 きと仕事をして、島で暮らす人々の健康を実現す ることが夢。著書に『離島の保健師 -狭さとつな がりをケアにする-』(青土社) 室原誉伶(むろはら・ほま

#6.

SESSION1 離島医療の 現在地 第1セッションでは、隠岐諸島で長ら く離島医療に従事してきた白石吉彦先 生と奄美大島で活躍する若手医師・小 徳羅漢先生が、離島医療と出会ったき っかけや医師としてのキャリアについ て語り、厚生労働省の中西浩之さんが 国のへき地医療対策などの「現在地」 について語りました。 白石 白石吉彦と申します。私は1998年、 「ちょっと辛いけど、1年間頑張ってこい よ」と上司に言われて島根県の隠岐諸島に 赴任しました。来てみたら全く辛いことは なく楽しくて、もう1年、もう1年……と延 長しているうちに27年が経ちました。4年 前からは、島根大学で総合診療医の育成に も携わっております。 このセッションでは、私がモデレーター を務め、奄美大島の大島病院から医師の小 徳羅漢さん、厚生労働省から中西浩之さん をお迎えして「離島医療の現在地」につい て話し合いたいと思います。 総合診療科の医師をしている小徳羅漢で す。今日は、茨城県出身の僕がなぜ離島医 療を志したのか、そして離島地域における 周産期医療の大切さについてお話しできれ ば幸いです。 小徳 鹿児島県の奄美大島で産婦人科や 小徳 広大な国土を持つオーストラリアや カナダ、アメリカなどのルーラルGP(※2) では、救急時の搬送に時間がかかるため、 総合診療医が救急分娩に対応して帝王切開 を行う事が多いため、総合診療医が産婦人 科や麻酔科の資格を取る際には、研修期間 を短くして取りやすくしています。 日本の現行制度でも、総合診療医が麻酔 科専門医をとる際は比較的とりやすい制度 になっていますが、搬送に時間のかかる離 島を多く抱えている日本でも、そろそろオ ーストラリアなどと同様の制度ができても 良い頃ではないかなと思っています。 (※1)※医療・介護の複合ニーズを有する85歳以上人口を中心とした高齢化に加え、生産年齢人口が大きく減少する中で、限りある 医療・介護資源の中で、質が高く効率的な提供体制の確保が重要となると考えられている。 (※2)オーストラリアで生まれた「Rural Generalist(へき地医療専門医)」は、General Practitioner(総合診療医)としてへき地の診 療所で働きながら、全身麻酔をかけたり外科手術や緊急の分娩に対応したり、フライングドクタ

自治体と住民の想いを知るセッション

#7.

小徳 総合診療医に関心のある若手医師は たくさんいるのですが、専門医を取得する ために医局に入る道を選んだり、子どもを 育てながらいろんな病院で勤務するのが大 変だと聞きます。 産科で数年の勤務経験があって総合診療 医として働いている方から、産婦人科の技 術を持っているのに専門医の資格がないた め活かせていない、という話も聞きまし た。そういう医者が、経験を活かせるよう な認定制度があると良いなと思います。 白石 海外のルーラルGPは麻酔科が多い ようですが、どうしてでしょうか。 小徳 救急で移送する際に挿管したり、終 末医療の緩和ケアなどで麻酔が必要になる ことが多いです。 白石 過疎地域で医療を提供する場合、マ ルチタスクできる方が効率が良いですよ ね。土台になる総合診療科に加えて産科や 麻酔科のスキルを持っていると強いです ね。東京のような人口の多い都会であれば 専門医を極めるのも良いと思いますが、島 根県は19市町村あって半数の自治体は人口 1万人以下なんです。そこで100床の病院を 持てるかというと、ランニングが難しい。 50 床となると、医者の配置は 5 〜 6 人にな ります。そういう場合に、ルーラルGPの ような得意分野を持った総合診療医を集め られるといいですよね。少なくとも、小児 科、整形外科、カメラやエコーのできる総 合診療医が、島根では必要だと思います。 中西 ジェネラル領域に加えてプラスアル ファの専門的付加価値をつけていくという 考え方は、国内ではまだ認知が進んでいな い状況だと思います。人口減少が進む中、 2040 年頃を見据えた地域の医療機関の役 割分担や連携などを含めた医療提供体制全 体の構築に向けて、 2025 年度の新たな地 域医療構想(※3)のガイドライン策定等 を通じて、国としてしっかりと議論してい きたいと思います。 併せて医師の偏在への対策やDX推進な ど、今回の離島医療会議でも共有されたさ まざまな地域課題や、地域ごとに異なる現 状などにも配慮しながら、医療の基盤を整 備していければと考えております。 白石 1万人を切る地域だと、50床の病院 でやるべきことは総合診療医がいて肩こ り・腰痛・五十肩など運動器の診療が主に なると思います。100床の病院ならちょっ と頑張ればお産ができる。そのためには麻 酔科医がいる。お

#8.

SESSION2 自治体/住民 の想いを知る 離島における医療現場と住民の距離感 や課題について語る第2セッション「自 治体/住民の想いを知る」。令和のDr. コトーとして活躍する室原誉怜先生 と、全国最小人数自治体である青ヶ島 の保健師を経験した青木さぎ里さん、 海士町住民であり海士町初の保健師と して活躍した濱見優子さんと、全国の 離島住民の声にふれる離島経済新聞社 の鯨本あつこさんが語りました。 鯨本 皆さんが経験されてきた離島医療 と、住民との距離についての考えを教えて ください。 室原 僕は上五島で初めて離島医療のおも しろさを知り、西ノ島で修行させていただ いた後、下甑島に着任して5年目になりま す。島の人口規模はそれぞれ違っていて、 上五島は2万人弱。西ノ島は約3,000人で、 周囲も含めた医療圏は6,000人程の患者を 抱えていました。下甑島は2,000人弱。人 口規模によって、必要とされる医療は全く 変わってきます。 鯨本 具体的には? 室原 下甑島で働くようになって、診察を して薬を出すだけでは地域の方々の暮らし を守れないことが分かってきました。僕が 暮らす集落にはスーパーが 1 軒あるだけ で、高齢者が出かける機会が少ない。外来 では笑顔で話している人が、実は、受診の 時ぐらいしか家を出て人と話す機会がない ことを教えてもらいました。 そこで、自分の後任が決まっていたこと もあり、いちど医者を離れ、御用聞きとし て高齢者の家事代行をしたり、耕作放棄地 を開墾して米をつくったりしました。 鯨本 住民側に寄り添った経験は貴重です ね。青木さんはいかがでしょうか。 約 2,300 人の命と健康を守る「海士診療 所」には1日平均約80人が来院。隣に歯科 も併設されている 青木 大学卒業後に東京都の青ヶ島村で7 年間ほど保健師をしていました。現在人口 約160人という日本で一番人口が少ない自 治体です。医療は、診療所に医者と看護師 が1人ずつ。それまで保健師がいなかった ため手探りで活動を始めました。都市部に ある大規模な病院と地域の診療所の、それ ぞれを効果的に活用してもらうサポートを するのが保健師の役割だと思っています。 青ヶ島では、診療所の医師は6カ月交代 でした。住人の方は新しく着任した先生の 専門を聞いて「足が痛いけどこの先生は専

#9.

てきました。そこに挑戦できたのが一番の やりがいだったと思います。 濱見 地域住民でもある離島の保健師は、 住民の方の生活の実態や背景を把握しやす いのが特長です。地域の実態に基づいて事 業を計画し、実践したときの成果も都市部 に比べて分かりやすい。住民との信頼関係 が築けていれば、役に立っている手応えを 感じられると思います。 海士町では、役場に反対されたり「予算 がない」と却下されることもなく、さまざ まな保健師活動に挑戦することができまし た。ありがたいことだったなと思っていま す。 室原 断られることがないとはすごいです ね。 鯨本 では、離島地域で人がよく生き、よ く死ぬためには何が必要でしょうか。 青木 医療資源が限られている地域では、 往々にして介護資源も限られます。そうす ると、人が最期を迎える時や、大病をして 大病院での治療が必要になった時には、一 度地域を離れる必要があります。 その後、地域に戻ってこられるかどう か。青ヶ島の場合、戻らない選択をする方 が多く見られました。島の中でも「こうな ったらもう戻ってこれないよね」という暗 黙の了解があり、本土の先生方もそれを強 く意識していているように感じることがあ りました。退院支援の場面でも「戻れない だろう」というバイアスがかかっているよ うに思います。本来なら、島で最期を迎 えるという選択肢もあり得るはずなのに 「医療資源の限られた島では大変だろう」 という周囲の判断によって、その選択肢 を持てないことがあると感じています。 室原 地域によって文化的背景が違うの だろうなと感じます。僕は熊本と下甑島 を行ったり来たりしながら働いています が、熊本では経鼻胃管の挿入や胃ろうを 造設して療養されている方もいますが、 甑島ではそれを管理できる施設がないの で、希望する場合は島外に移るか在宅で ご家族がケアしなければいけなくなりま す。 そんな背景もあって、甑島では胃ろう の造設は一般的ではなく、必要とする文 化も根付いていません。食べられなくな ったら、その時はその時、と皆さん自然 と納得されているところがあります。 鯨本 よく生きる、よく死ぬ、というこ とは「どう納得するか」ということでも あるんですね。 濱見 私が保健師として働いていた10年 前頃までの統計ですと、8割の方が島前管 内で亡くなっ

離島医療の未来に向けた取り組み

#10.

SESSION3 離島医療の 未来 新しい仕組みやテクノロジーの進歩 がもたらす未来の臨床風景について 語り合った第3セッション「離島医 療の未来」。4つの有人離島を有する 三重県鳥羽市の島と本土側の医療体 制をDXで改革する小泉圭吾医師、エ レコムヘルスケア代表であり総合診 療医でもある葉田甲太さん、アンタ ー代表取締役の中山俊さんが語った 未来とは? 中山 葉田先生は離島医療にも携わってい たのですよね。 葉田 はい。与那国島では半年間研修しま したが、指導医の先生にはじめに言われた のは、「まず遊びなさい」。医者が島民に医 療を施すのではなく、島民が医者でもある んだよ、医者になる前にまず島民になりな さい、とアドバイスをいただいたんです。 島のことを何も知らなかった僕でした が、島を楽しみながら2週間ほど過ごすう ちに「この子は、あのお母さんの子か」 と、だんだん住民の顔がつながっていきま した。与那国島の人たちには、本当にお世 話になりましたね。 中山 島ならではのコミュニティの力を感 じますね。大変だったのは、どんな点です か? 葉田 離島医療はめちゃめちゃ楽しかった し、めちゃめちゃキツかった。180日間、 休みがなかったから。3年くらいなら頑張 れると思いましたが、10年続けるのはしん どいなと感じました。 医者でなくてもできることはたくさんあ るので、サステナブルな離島医療のため に、多業種での対応や、ちょっとしたテク ノロジー活用が必要だと思っています。離 島やへき地での診療看護師(NP)(※)活 用も進めていきたいですね。与那国島で一 緒に働いたNPは、研修医1年目くらいの実 力があると感じました。オンライン診療の 場でも、そうしたNPに活躍していただけ ればと思います。 中山 小泉先生がこの5〜6年の間に進めて きた取り組みは、ほかのどの地域と比べて も先進的だと感じます。 小泉 神島のある鳥羽市は、半島と4つの 離島から成り、各島に1つずつと市内に4 つ、合計8つの市立診療所があり、中心部 に開業医のクリニックが何軒かあります が、入院機能は隣の伊勢市の病院に依存し ています。 市内の離島地域はこの20年で軒並み40〜 50パーセント人口減少が進んでおり、中で も坂手島は、約63パーセント減少していま す。地域の人口が減ると、患者数が

#11.

小泉 次に、本土側まで離島の医師で支え るための仕組みづくりを考えました。2023 年度から内閣府デジタル田園都市国家構想 交付金を活用し、施設によらない診療体制 の構築を進めています。 中山 施設によらない診療体制とは、どん なものなのでしょうか? 小 泉 医 療 用 Maas ( Mobility as a Service)(※)車両の配備です。鳥羽市本 土の半島部に3つの市営診療所があります が、大学から派遣された医師が日替わりで 勤務しているため、診療時間が週のうち3 時間や7時間と短いのが課題。施設維持に も多くの経費がかかっています。これを離 島の医師たちでカバーできないかと考えま した。 1台の車両に「移動」「オンライン診療」 「患者の搬送」の機能を持たせた医療用 Maasで、診療機会を提供しつつ将来的に3 つの診療所を集約化したときにも患者に不 便がないような体制を構築しているところ です。 中山 オンライン診療の実績はどれくらい になりますか? 小泉 2020 年 11 月から始めて、 2 月末で 710 例になります。離島の中ではかなり多 い方なのではないかと思います。人口減少 と高齢化が進み、社会構造が変わってしま ったへき地や離島では、地域にあったさま ざまな機能が失われつつあります。必要な 機能を、うまく外部に委託することを考え ていかないといけない。 2020 年からへき地の人口減少が顕著に なっていて、そんな中でどうしたら適切 な医療を提供できるのか。誰もやったこ とのない、答えのない問いに直面してい ます。できるだけ多くの方が長く地元で 暮らしていけるよう、ICTなどの先端技術 を活用して「新しいへき地医療のかたち」 をつくっていくのが僕らの使命だと思っ ています。 中山 参加者の方々へメッセージをお願い します。 中山 制度面で変わってほしいところは ありますか? 小泉 鳥羽市は、16,000人しかいないすご く小さな市なんです。それでも何とか、今 日紹介したような医療の仕組みを構築する ことができました。皆さんの自治体でも、 絶対にできると思います。 小泉 少数の医師で複数の地域をカバー する際に、外来とオンライン診療を同時 にできないことがネックになっていま す。例えば、僕が神島で対面診療をして いる期間は、別の島の患

#12.

申込者 参加者の声 医師、医療関係者、自治体関係者、学生、離島医療に関 心のある方など500人以上が参加した「離島医療会議」。 参加者の声を紹介します 名 525 東京都 13% その他 44.7% 60代 70代 9.8% 1.1% 島根県 10.2% 居住地 沖縄県 3.3% %が離島地域居住/66.5%が離島以外の居住者でした 33.5 40代 30.9% 20代 11.6% 年代 神奈川県 4.4% 鹿児島県 8.8% 香川県 5.5% 自治体職員等 8.4% 看護師等コメディカル 25.1% 医師 32% 職業 50代 22.8% 30代 23.8% なぜ離島医療会議に興味を持ちましたか? 少子高齢社会の課題に向き合う最先端が離島医療だと感じています。都市の小さな地域でも容易に孤 立化はすすみます。皆さんの高い解像度での取り組みを、是非うかがいたいと思いました。 持続可能な離島医療を行うためにどのようなことに取り組めばいいのか? 離島の輸血供給体制の悪化について、大規模離島、中小規模離島の声が本土に届いていません。離島 の集合体としての全国への発信・要望が必要と感じています。 命をつなぐ医療が限られる離島において、人が住み続けるための考え・アイデア・想いを具現化する ための方策を考えたい。 オンラインでどこまで医療を実現できるのかについて興味があります。 その他 34.5% 小豆島には4カ所の パブリックビューイング会場も 香川県の離島・小豆島では島の看 護師の呼びかけにより「離島医療 会議を見る会」が立ち上がり、島 内4カ所のパブリックビューイン グ会場から多数の住民や医療従事 者が参加しました。

参加者の声と医療への関心

#13.

あまり満足でない 1.1% まあ満足 各セッション の満足度 特に変わらない 25.7% 23.6% まあ満足 あまり満足でない 満足でない 100 離島医療 への関心 満足度 とても満足 80 60 40 とても満足 75.3% 20 関わりたい気持ちが強くなった 74.3% 「離島医療会議」のご感想 少子高齢化・人口減少が進む日本において、今回のイベントは離島だけでなく本土でもとても 参考になるイベントだったと思います。 医療に関係ない人も視聴できることが本当に素晴らしいと思います。 葉田さんの本を読んで、映画を見て、世界を変えられないと自分も打ちひしがれていた大学時 代。この機会にまたお話を伺えたこと、とても嬉しく思っています。 DXの話から島に住む人の視点までの知見を得ることができ大変勉強になりました。 登壇者が予想以上に離島医療に貢献していており貴重な話を拝聴でき満足しております。離島 医療に関する法令改正の最新情報が特に参考になった、今後も情報があったら欲しいです。 今の離島の医療について学ぶことは、すべての医療従事者にとって光を見いだせるきっかけに なると感じています。ぜひ今後も、医療従事者の方に離島の現状を伝え、ともに考える機会を 提供していただきたいと願ってやみません。 あっという間の3時間でした。小豆島でパブリックビューイングが開催されていると聞きまし たが、医療関係者であってもなくても住民が関心を持ってこの会議を視聴することで各島の医 療について話せる時間が持てる、離島医療会議がそんな草の根運動的な役割を果たすきっかけ になるのではないか、そんな希望を感じました。ぜひ継続しながら認知度を上げて、医療従事 者はもちろん、官民公私にわたって島や僻地に暮らすすべての方が知っているイベントになっ てほしいと思いました。 多職種の活躍や行政、住民の協力と理解があってすべてが支え合って作り上げていくことは、 その島それぞれでまだまだ可能性がいっぱいあふれているんだと改めて思いました。 参加者500人!それだけ島の医療に今できる事を考えようと興味を持ってる人がいる!いろん なお話、意見が伺えて本当によかったです。 0 セッション1 セッション2 セッション3 今後の「離島医療会議」で聞いてみたい話題 予防医療の取り組み

#14.

講評 多様な島の特色をふまえて 需要者の視点に立ち、工夫をすれば むしろ離島医療のほうが充実している という未来もありえるのではないか 非常におもしろかったです。私は国土 交通省では離島振興法、奄美振興法、小 笠原振興法を担当しており、内閣府では 有人国境離島法も担当しながら、どうや ったら島に住み続けていただけるのか、 また、外部の人がどうやったら島に関心 を持ち、協力してもらえるかを一所懸命 考える役回りとして仕事をさせていただ いています。 外部の人が島に住むには、特に「雇用」 「教育」「医療」が重要になります。今回 のセッションでは、第1セッションで医療 の現在や工夫が語られ、第3セッションで は離島医療の未来に向けた工夫が感じら れました。 私は小笠原諸島に行ったことがあるの ですが、小笠原では出産ができないた め、妊娠 8 ヶ月になった段階で本土に行 き、 4 ヶ月間過ごして出産をされていま す。そこで私は不用意に「出産できるよ うな医療体制があると便利ですよね」と 島の人に話したところ「いやいや、違う んです」と言われました。小笠原の人た ちは、歴史的に一度は全員が本土に行か されていて、もともと小笠原に由来のあ る人は一部です。出産は安産ばかりでは ない。本土にも親戚がいるため、そこで 安心して出産したほうがいい、むしろホ テル代など出してもらって大変ありがた いと言われたのです。 このこともあり、第2セッションではさ まざまな島の特色を踏まえて、医療体制 を考えていくことが島の医療を考える時 に大事だと感じました。 医療というサービスの供給者側の視点 で語られた第 1 、第 3 セッションに加え て、第2セッションで需要者側の視点も見 えたことは非常に良かった。これまでの ように供給者側の視点から「こういう理 想の医療を提供しよう」と思うと、離島 の医療には難しいところもあります。し かし、患者さんという需要者の視点に立 つとどうでしょう。しっかり個々人を見 守ってくれる先生方がいらっしゃる離島 は、むしろ住民にとって安心なのではな いか?今後 色々な工夫をもってサービス の提供内容をいかに本土並にしてけるか を考え実行していけば、むしろ離島のほ うが医療は充実しているという状況も可 能ではないでしょうか。 皆さんが色々なご苦労をなされながら

#15.

離島医療会議にご参加・ご協力いただいたすべての皆さまに、 心より感謝申し上げます。 医療者、行政、住民、それぞれの立 場から語り合い、交わされた想いや工夫が、新たな視点やつな がりを生み出しました。 2025年3月8日、島で交わした言葉やま なざしが、このレポートを通じてまた誰かの心に届き、これか らをともに考え歩むきっかけになれば嬉しく思います。 次はど んな景色に出会えるでしょうか。 詳細はQRよりご覧ください。 離島医療会議運営チーム 離島医療会議 の詳細レポートはこちらの パートナーメディアからご覧いただけます 医師・医学生のためのスライド共有 島に学ぶメディア 『Antaa Slide(アンタースライド)』 『ritokei(リトケイ)』 最新情報は 公式ホームページへ 離島医療会議 公式ホームページ

離島医療会議のパートナーと地域の紹介

#16.

離島医療会議を共に創り、育てるパートナー 海士町 島根県隠岐諸島中ノ島にある 約2300人が暮らす小さな町。 人口の流 出と財政破綻の危機の中、産業振興による雇用拡大や高校魅力化によ る教育改革を進めてきました。 18 年間で 800 人を超える移住者が集 い、新しい挑戦をしたい若者が集う島となっています。 西ノ島町 西ノ島町は隠岐諸島の島前地域で最も大きな島にある人口約2,600人の 町。隠岐を代表する景勝地の国賀海岸には、「摩天崖」と呼ばれる大絶 壁があり、海面からの高さは257mで、海食崖としては国内トップクラ スの高さを誇ります。隠岐世界ジオパークを形成する起伏に富んだ景 観、美しい写真スポットが満載の島です。 知夫村 島根県知夫村(知夫里島)は、隠岐諸島の中で最南端に位置し、人口 600人程度の島根県唯一の村です。「島留学制度」「大人の島留学制度」 などの移住施策に積極的取り組み、限られた社会資源の維持を図り、 持続可能な島づくりを行ってます。 アンター株式会社 目の前の患者の命を救いたいと願う医師の想いに応えるため、地域・ 診療科を超えた医師同士の質問解決プラットフォーム「AntaaQA」医 療現場等で蓄積された臨床知見をスライド形式でシェアする 「AntaaSlide」などを運営。「医療をつなぎ、いのちをつなぐ」をミッ ションに掲げ、医師と医師をつなぐサービスを提供しています。 株式会社風と土と 2008 年海士町にて 3 人の若者が創業。社名には、風の人(よそもの) と土の人(地元)で、ともに風土をつくっていくという想いを込めて います。持続可能な地域の未来に貢献する「地域づくり事業」、都会の 企業人向けに海士町で研修プログラムを提供する「人材育成事業」、”人 と人、人と自然の温かい関係性ある社会”への知恵を生み出す「出版事 業(出版社名:海士の風)」を行っています。 認定NPO法人離島経済新聞社 国内には400島余りの有人離島があり、それぞれに固有の文化・自然・ 暮らし・経済があります。 リトケイは有人離島にフォーカスし、島と 島国の可能性を拓き、 島と島国の宝を未来につなぐことをミッション に活動する民間NPOです。有人離島専門WEBメディア『ritokei』、有 人離島専門フリーペーパー『ritokei』の発刊、また地域振興事業を行

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