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ー 症例ベースで理解する ー 小児気管支喘息の対応①症例編  L1.png

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小児科頻用薬について〜救急外来はこれで十分?〜救急担当 研修医必見!

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どっと@小児科

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テキスト全文

  • #1.

    て っ 沿 に ン イ ラ ド ガイ ︕ 認 確 を れ 流 の 療 治 ー 症例ベースで理解する ー ⼩児気管⽀喘息の対応① 症例 編 *⼩児気管⽀喘息治療・管理ガイドライン2023参照 どっと@⼩児科

  • #2.

    はじめに どっと@⼩児科医 です 今回は 2023年度のガイドライン を参考にした 「⼩児気管⽀喘息の対応」をまとめました ①では仮想症例を提⽰し、介⼊ステップを確認していきます ー このスライドの主な対象者 ー 初期研修医 ⼩児科後期研修医 救急外来対応医師

  • #3.

    ⼩児気管⽀喘息の最近の事情 • ⼩児気管⽀喘息の⼊院患者や重症患者数は、ここ10〜20年で ⼤きく減少している • 2017年には、初めて喘息死 “0” を達成 • 有病率はやや低下しつつも、横ばい傾向が続いている • 喘息によりQOLが低下している児は今も少なくない 変わらず適切な管理が必要な疾患 ガイドラインはとてもわかりやすいので、ぜひ活⽤しましょう

  • #4.

    もくじ 1. 症例 編 ・症例提⽰ 以前は数多くの⼩児が喘息で⼊院していましたが、 ・発作強度判定と急性増悪への対応 最も影響が⼤きいのは吸⼊ステロイドの導⼊だと ・⻑期管理について 最近ではかなり減っています。 されています。逆に⾔えば、適切な管理が重要で あるというのは間違いありません。 ・まとめ *慢性疾患としてのニュアンスなどの事情から、喘息発作(asthma attack)から 喘息の急性増悪(acute exacerbation)に表現が変更されています

  • #5.

    part.1 症例提⽰︓5歳7か⽉ ⼥児 体重 19 kg ・既往歴︓アトピー性⽪膚炎、アレルギー性⿐炎 ・予防接種︓up to date ・服薬歴︓特記なし ・家族歴︓⽗は⼩児喘息あり ・⽣活歴︓⽗からの受動喫煙あり、室内でネコを飼育している ・現病歴︓幼少期より感冒時に喘鳴を何度か指摘されていたが、継続的な治療は されていなかった。ここ半年程は慢性的に咳嗽が続いていた。 X-1⽇より咳嗽が悪化し、X⽇の夜間より喘鳴と呼吸困難感も出現し、 ⼊眠困難なため当院救急外来を受診した。

  • #6.

    現症 <Vital sign> 体温 37.2 度、⼼拍数 130 /分、呼吸数 42 /分、 SpO2 87%(室内気) <⾝体所⾒> ・歩⾏は困難で、抱っこされた状態で来院 ・やや顔⾊不良、単語での発語は可能 ・前かがみな起座呼吸で、聴診器なしでも明らかな呼気性喘鳴を聴取 ・軽度の陥没呼吸あり、呼気延⻑あり ・肺野では呼吸⾳が減弱しており、呼気・吸気ともに喘鳴を聴取 ・全⾝に乾燥が⽬⽴ち、肘・⼿関節部に軽度の湿疹あり → 気管⽀喘息 急性増悪(⼤発作相当) と判断 酸素投与とβ刺激薬の吸⼊を開始し、点滴路を確保

  • #7.

    検査結果 VBG ⾎算・⽣化学 pH 7.32 PCO2 46.2 HCO3- 23.5 BE -2.3 Lac 1.6 Glu 96 mmHg 13800 Neu 62.3 /μL % TP 7.5 g/dL ALB 4.2 mg/dL AST 22 U/L ALT 19 U/L LDH 371 U/L CK 72 U/L Eos 7.2 % Hb 12.8 g/dL mg/dl Plt 33.4 万/μL mg/dl Na 138 mEq/L BUN 15.5 mg/dL K 3.9 mEq/L Cr 0.30 mg/dL Cl 108 mEq/L CRP 0.32 mg/dL Ca 10.1 mg/dL mmol/L 胸部Xp 肺野に明らかな浸潤影なし 軽度の過膨張あり WBC

  • #8.

    part.2 発作強度判定︓⼤発作相当 ⼩発作 症状 主 要 所 ⾒ ⼤発作 呼吸不全 興奮 平静 興奮 錯乱 意識 清明 やや低下 低下 不能 会話 ⽂で話す 句で区切る ⼀語区切り〜不能 起座呼吸 横になれる 座位を好む 前かがみ 喘鳴 軽度 著明 陥没呼吸 なし〜軽度 著明 チアノーゼ なし あり ⾝体所⾒ SpO2 参 考 所 ⾒ 中発作 ⾝体所⾒ PEF PaCO2 ≧ 96% 92〜95% ≦ 91% 呼気延⻑ 呼気時間が吸気の2倍未満 呼気時間が吸気の2倍以上 呼吸数 正常〜軽度増加 増加 吸⼊前 > 60% 30〜60% < 30% 吸⼊後 > 80% 50〜80% < 50% < 41 mmHg 減少または消失 41-60 mmHg 不定 測定不能 > 60 mmHg

  • #9.

    ⼤発作に対する治療 原則⼊院加療が必要 ・SpO2を95%以上保つように酸素吸⼊ ① β刺激薬吸⼊(20-30分間隔で1-3回) ② イソプロテレノール持続吸⼊療法 ③ ステロイド薬全⾝投与 ④ 輸液 ⑤ アミノフィリン持続点滴(考慮) → 改善が得られない場合 ・イソプロテレノール持続吸⼊療法 (増量可) ・ステロイド薬全⾝投与(増量可) ・アミノフィリン持続点滴 *⼈⼯呼吸器管理 → 意識障害時は積極的に考慮 回路内に気管⽀拡張薬投与 β刺激薬吸⼊反復 と プレドニン 0.5 mg /kgの静脈内投与 で呼吸は安定 酸素投与を継続しつつ、⼊院加療とした

  • #10.

    ⼊院時の説明 今回は気管⽀喘息発作のため、⼊院加療が必要な状態です。気管⽀拡張薬の吸⼊ と 酸素投与、ステロイド薬の全⾝投与 を開始し、だいぶ呼吸は落ち着いてきましたが まだ酸素投与が必要なため、引き続き治療を⾏っていきます。 酸素なしでも落ち着いて過ごせるようになってきたところで退院が可能になるため、 3-5⽇間程度の⼊院 になることが多いです。 気管⽀喘息は気道の内側に慢性的な炎症が起こる病気で、気管⽀のアトピー性⽪膚炎 のようなものとお考えください。普段から軽い炎症が起こっていた状態で、おそらく 今回は⾵邪をきっかけに、急激に気管⽀が細くなってしまい、呼吸をするのがとても ⼤変になってしまったものと思われます。 今までにも喘鳴を指摘されたことはあるようですので、今後は 気管⽀喘息としての 継続的な治療が必要 になると思います。⼊院中に、禁煙 も含めて今後の治療について 改めて相談していきましょう。

  • #11.

    ⼊院後経過 喘息としてのアセスメント ・治療反応性は良好 ・アトピー性⽪膚炎あり 酸素投与・β刺激薬 定期吸⼊ ・家族歴あり → アトピー型の喘息と判断 プレドニン 1.5 mg /kg /day 患者への指導 ・⻑期管理の導⼊ ・発作時の対応指導 陥没呼吸 ・受動喫煙のリスク 酸素需要 ・アレルゲンへの対策について 呼気性喘鳴 ⼊院 退院 day1 day2 day3

  • #12.

    急性増悪(発作)時の対応を指導 退院時に今後 発作が再燃した場合の対応 について指導が必要 ① 救急受診が 必要な強い喘息発作のサイン を説明 咳や息苦しさで → 遊べない、話せない、眠れない 顔⾊が悪い、ぼーっともしくは興奮している 強いゼーゼー、肋⾻の間がはっきりとへこむ → パンフレットを⽤いて説明し、受診タイミングを指導 ② アクションプランシート(喘息個別対応プラン) ▶ ・可能であれば、発作の程度に応じた対応⽅法を指導 発作時吸⼊薬の使⽤⽅法や受診の⽬安を提⽰する → 本症例では退院時点ではシートは作成していない ⻑期管理開始後の様⼦をみて相談予定とした 環境再⽣保全機構のHPで⼊⼿可能

  • #13.

    part.3 ⻑期管理について ⻑期管理の流れ ⻑期管理の必要性を説明 現状の評価 治療ステップを判断 適切なデバイスの確認 コントロール状態に注意しつつ 継続的にフォロー 現在の呼吸機能や吸⼊抗原の感作状況を評価 必要に応じて、鑑別疾患も確認する 未治療患者もしくはすでに介⼊済みかで異なる 真の重症度をもとに治療ステップを判断する 年齢・発達段階から使⽤するデバイスを確認

  • #14.

    現状の評価のために⾏う追加検査 <⼩児の喘息で評価しておきたい項⽬> アレルゲン検索 呼吸機能検査 呼気NO +可能であれば ・気道過敏性検査 ・可逆性試験 痛みなどの負担はあるものの おおむね5歳以降から可能だが、実施が難しいこともある 年齢に関わらず実施可能 → 実施したものの、指⽰理解が困難で評価できなかった → ダニ、ネコ、スギなど 複数の抗原に感作が確認された ▶ 治療反応性が悪い場合は、経過に応じて 胃⾷道逆流 や 副⿐腔炎、声帯機能不全 などの鑑別を検討する

  • #15.

    未治療患者の 重症度評価と治療ステップ 重症度 症状の 頻度と程度 開始する 治療ステップ 間⽋型 軽い症状 数回/年 β刺激薬吸⼊で改善 治療ステップ1 軽症持続型 中等症持続型 1回/⽉ 以上 1回/週 以上 特に呼吸困難 ときに中・⼤発作 ⽇常⽣活は問題なし ⽇常⽣活に弊害 治療ステップ2 治療ステップ3 重症持続型 毎⽇発作あり 1-2回/週 中・⼤発作 治療ステップ4 → 中等症持続型 と判断し、 治療ステップ3 での⻑期管理を開始

  • #16.

    ⼩児喘息の⻑期管理プラン(6〜15歳) ・ICS︓吸⼊ステロイド ・ICS/LABA︓吸⼊ステロイド/⻑時間作⽤性β刺激薬配合剤 ・LTRA︓ロイコトリエン受容体拮抗薬 治療ステップ2 治療ステップ1 基本 治療 ⻑期管理なし 下記のいずれかを使⽤ Ø 低⽤量ICS Ø LTRA 治療ステップ4 治療ステップ3 下記のいずれかを使⽤ Ø 中⽤量ICS/LABA 下記のいずれかを使⽤ Ø 低⽤量ICS/LABA Ø 中⽤量ICS Ø ⾼⽤量ICS 以下の併⽤も可 Ø LTRA Ø テオフィリン 以下を考慮 追加 治療 LTRA 基本治療の2剤併⽤ 以下のいずれかを併⽤ Ø ⽣物学的製剤 Ø LTRA Ø ⾼⽤量 ICS/LABA Ø テオフィリン Ø ICSのさらなる増量 Ø 経⼝ステロイド薬 発作時の短期追加治療(2週間以内のβ刺激薬)、増悪因⼦への対応、患者教育、パートナーシップ → 低⽤量ICS/LABA に加え、アレルギー性⿐炎の合併もあり LTRA を併⽤

  • #17.

    吸⼊薬の選び⽅ ・SLM︓サルメテロール ー ⼩児適応のある吸⼊薬 ー ネブライザー⽅式 吸⼊液 ・FM︓ホルモテロール 定量吸⼊器 pMDI (加圧噴霧式) エアゾール スペーサー パルミコート®︓ブデゾニド(BUD) ・オルベスコ®︓シクレソニド(CIC) ・キュバール®︓ベクロメタゾン(BDP) ・アドエア®︓フルチカゾン(FP)+SLM ・フルティフォーム®︓フルチカゾン(FP)+FM DPI (ドライパウダー) ディスカス タービュヘイラー ・フルタイド®︓フルチカゾン(FP) ・パルミコート®︓ブデゾニド(BUD) ・アドエア®︓フルチカゾン(FP)+SLM 乳児 から使⽤可能 スペーサーの使⽤で 乳児 から使⽤可能 おおむね 6歳以降 から使⽤可能 吸⼊器が必要で時間もかかる 基本的に親の介助が必要 吸⼊⼒が必要だが、管理が容易 → スペーサー を使⽤した アドエア50エアゾール® での治療を選択

  • #18.

    ICS単剤、ICS/LABAの⽤量⽬安 低⽤量 中容量 ⾼⽤量 100 200 400 200 400 800 250 500 1000 FP/SLM(アドエア®)1⽇2回 100/50 200/100 400-500/100 FP/FM(フルティフォーム®) 1⽇2回 100/10 200/20 400-500/20 FP(フルタイド®) 1⽇2回 BDP(キュバール®)1⽇2回 CIC(オルベスコ®) 1⽇1回 BUD(パルミコート®)1⽇2回 BIS(パルミコート®)1⽇2回 *懸濁液製剤 → アドエア50エアゾール® 1回1吸⼊、1⽇2吸⼊(低⽤量ICS/LABA)

  • #19.

    外来フォロー時の経過 低⽤量ICS/LABA+LTRA JPAC 喘 息 コ ン ト ロ ' ル テ ス ト 15 今後の⽅針 14 ・3〜6か⽉安定していれば 13 治療を ステップダウン 12 吸⼊⼿技確認 11 アドヒアランス強化指導 10 患者教育 9 環境整備 8 ・悪化時はアドヒアランスと ⼿技確認の上、原因を検索 ・アレルギー性⿐炎の治療を 強化し⾆下免疫療法を導⼊

  • #20.

    症例のまとめ 急性増悪への対応 ・⼗分な管理がされていなかった喘息患者における、感冒に伴う気管⽀喘息の急性増悪 ・⼤発作相当と判断し、酸素投与に加えて気管⽀拡張薬とステロイド薬全⾝投与を⾏った ・治療反応性は良好であり、day4で退院可能となった ⻑期管理の選択 ・以前より喘息様のエピソードを繰り返しており、今回は⼤発作を起こしたことから 中等症持続型 と判断し、治療ステップ3 から⻑期管理を開始とした ・吸⼊は⼿技の不安定さを考慮し、スペーサー付きのpMDI製剤を選択 ・呼吸機能検査やFeNOなどは現時点では評価できなかったが、半年〜1年後に再検予定 ・並⾏して、アレルギー性⿐炎やアトピー性⽪膚炎の治療を強化していく

  • #21.

    Take Home Message • 急性増悪(発作)は重症度を判定して、必要な治療を確認しよう • ⼊院時は 時間をかけた説明のチャンス︕ ⼗分に評価して、今後の⻑期管理につなげよう • 年齢や発達段階で 適切なデバイス が異なることに注意しよう

  • #22.

    後半スライドに続きます 本スライドは仮想症例をもとに介⼊の進め⽅をまとめました 後半は、ガイドラインに沿った診断と治療の流れについてです 気管⽀喘息は患者数も少なくないため なんとなく治療介⼊してしまうことも 少なくないと思います。 できれば、⼀⼈ひとりの重症度を ⼗分に吟味して、治療ステップを 判断していきましょう。

ー 症例ベースで理解する ー 小児気管支喘息の対応①症例編

  • 救急科

  • 小児科

  • 初期研修医

  • ステロイド
  • 吸入薬
  • 気管支喘息
  • アトピー性皮膚炎
  • β刺激薬
  • プレドニン
  • エアゾール

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どっと@小児科

総合病院

概要

今回は 2023年度のガイドライン を参考にした「小児気管支喘息の対応」をまとめました。仮想症例を提示し、介入ステップを確認していきましょう。初期研修医、小児科後期研修医、救急外来対応医師を主な対象としています。

◎目次

・はじめに

・小児気管支喘息の最近の事情

・症例提示

・発作強度判定と急性増悪への対応

・長期管理について

・まとめ

本スライドの対象者

研修医/専攻医/専門医

参考文献

  • 小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2023

テキスト全文

  • #1.

    て っ 沿 に ン イ ラ ド ガイ ︕ 認 確 を れ 流 の 療 治 ー 症例ベースで理解する ー ⼩児気管⽀喘息の対応① 症例 編 *⼩児気管⽀喘息治療・管理ガイドライン2023参照 どっと@⼩児科

  • #2.

    はじめに どっと@⼩児科医 です 今回は 2023年度のガイドライン を参考にした 「⼩児気管⽀喘息の対応」をまとめました ①では仮想症例を提⽰し、介⼊ステップを確認していきます ー このスライドの主な対象者 ー 初期研修医 ⼩児科後期研修医 救急外来対応医師

  • #3.

    ⼩児気管⽀喘息の最近の事情 • ⼩児気管⽀喘息の⼊院患者や重症患者数は、ここ10〜20年で ⼤きく減少している • 2017年には、初めて喘息死 “0” を達成 • 有病率はやや低下しつつも、横ばい傾向が続いている • 喘息によりQOLが低下している児は今も少なくない 変わらず適切な管理が必要な疾患 ガイドラインはとてもわかりやすいので、ぜひ活⽤しましょう

  • #4.

    もくじ 1. 症例 編 ・症例提⽰ 以前は数多くの⼩児が喘息で⼊院していましたが、 ・発作強度判定と急性増悪への対応 最も影響が⼤きいのは吸⼊ステロイドの導⼊だと ・⻑期管理について 最近ではかなり減っています。 されています。逆に⾔えば、適切な管理が重要で あるというのは間違いありません。 ・まとめ *慢性疾患としてのニュアンスなどの事情から、喘息発作(asthma attack)から 喘息の急性増悪(acute exacerbation)に表現が変更されています

  • #5.

    part.1 症例提⽰︓5歳7か⽉ ⼥児 体重 19 kg ・既往歴︓アトピー性⽪膚炎、アレルギー性⿐炎 ・予防接種︓up to date ・服薬歴︓特記なし ・家族歴︓⽗は⼩児喘息あり ・⽣活歴︓⽗からの受動喫煙あり、室内でネコを飼育している ・現病歴︓幼少期より感冒時に喘鳴を何度か指摘されていたが、継続的な治療は されていなかった。ここ半年程は慢性的に咳嗽が続いていた。 X-1⽇より咳嗽が悪化し、X⽇の夜間より喘鳴と呼吸困難感も出現し、 ⼊眠困難なため当院救急外来を受診した。

  • #6.

    現症 <Vital sign> 体温 37.2 度、⼼拍数 130 /分、呼吸数 42 /分、 SpO2 87%(室内気) <⾝体所⾒> ・歩⾏は困難で、抱っこされた状態で来院 ・やや顔⾊不良、単語での発語は可能 ・前かがみな起座呼吸で、聴診器なしでも明らかな呼気性喘鳴を聴取 ・軽度の陥没呼吸あり、呼気延⻑あり ・肺野では呼吸⾳が減弱しており、呼気・吸気ともに喘鳴を聴取 ・全⾝に乾燥が⽬⽴ち、肘・⼿関節部に軽度の湿疹あり → 気管⽀喘息 急性増悪(⼤発作相当) と判断 酸素投与とβ刺激薬の吸⼊を開始し、点滴路を確保

  • #7.

    検査結果 VBG ⾎算・⽣化学 pH 7.32 PCO2 46.2 HCO3- 23.5 BE -2.3 Lac 1.6 Glu 96 mmHg 13800 Neu 62.3 /μL % TP 7.5 g/dL ALB 4.2 mg/dL AST 22 U/L ALT 19 U/L LDH 371 U/L CK 72 U/L Eos 7.2 % Hb 12.8 g/dL mg/dl Plt 33.4 万/μL mg/dl Na 138 mEq/L BUN 15.5 mg/dL K 3.9 mEq/L Cr 0.30 mg/dL Cl 108 mEq/L CRP 0.32 mg/dL Ca 10.1 mg/dL mmol/L 胸部Xp 肺野に明らかな浸潤影なし 軽度の過膨張あり WBC

  • #8.

    part.2 発作強度判定︓⼤発作相当 ⼩発作 症状 主 要 所 ⾒ ⼤発作 呼吸不全 興奮 平静 興奮 錯乱 意識 清明 やや低下 低下 不能 会話 ⽂で話す 句で区切る ⼀語区切り〜不能 起座呼吸 横になれる 座位を好む 前かがみ 喘鳴 軽度 著明 陥没呼吸 なし〜軽度 著明 チアノーゼ なし あり ⾝体所⾒ SpO2 参 考 所 ⾒ 中発作 ⾝体所⾒ PEF PaCO2 ≧ 96% 92〜95% ≦ 91% 呼気延⻑ 呼気時間が吸気の2倍未満 呼気時間が吸気の2倍以上 呼吸数 正常〜軽度増加 増加 吸⼊前 > 60% 30〜60% < 30% 吸⼊後 > 80% 50〜80% < 50% < 41 mmHg 減少または消失 41-60 mmHg 不定 測定不能 > 60 mmHg

  • #9.

    ⼤発作に対する治療 原則⼊院加療が必要 ・SpO2を95%以上保つように酸素吸⼊ ① β刺激薬吸⼊(20-30分間隔で1-3回) ② イソプロテレノール持続吸⼊療法 ③ ステロイド薬全⾝投与 ④ 輸液 ⑤ アミノフィリン持続点滴(考慮) → 改善が得られない場合 ・イソプロテレノール持続吸⼊療法 (増量可) ・ステロイド薬全⾝投与(増量可) ・アミノフィリン持続点滴 *⼈⼯呼吸器管理 → 意識障害時は積極的に考慮 回路内に気管⽀拡張薬投与 β刺激薬吸⼊反復 と プレドニン 0.5 mg /kgの静脈内投与 で呼吸は安定 酸素投与を継続しつつ、⼊院加療とした

  • #10.

    ⼊院時の説明 今回は気管⽀喘息発作のため、⼊院加療が必要な状態です。気管⽀拡張薬の吸⼊ と 酸素投与、ステロイド薬の全⾝投与 を開始し、だいぶ呼吸は落ち着いてきましたが まだ酸素投与が必要なため、引き続き治療を⾏っていきます。 酸素なしでも落ち着いて過ごせるようになってきたところで退院が可能になるため、 3-5⽇間程度の⼊院 になることが多いです。 気管⽀喘息は気道の内側に慢性的な炎症が起こる病気で、気管⽀のアトピー性⽪膚炎 のようなものとお考えください。普段から軽い炎症が起こっていた状態で、おそらく 今回は⾵邪をきっかけに、急激に気管⽀が細くなってしまい、呼吸をするのがとても ⼤変になってしまったものと思われます。 今までにも喘鳴を指摘されたことはあるようですので、今後は 気管⽀喘息としての 継続的な治療が必要 になると思います。⼊院中に、禁煙 も含めて今後の治療について 改めて相談していきましょう。

  • #11.

    ⼊院後経過 喘息としてのアセスメント ・治療反応性は良好 ・アトピー性⽪膚炎あり 酸素投与・β刺激薬 定期吸⼊ ・家族歴あり → アトピー型の喘息と判断 プレドニン 1.5 mg /kg /day 患者への指導 ・⻑期管理の導⼊ ・発作時の対応指導 陥没呼吸 ・受動喫煙のリスク 酸素需要 ・アレルゲンへの対策について 呼気性喘鳴 ⼊院 退院 day1 day2 day3

  • #12.

    急性増悪(発作)時の対応を指導 退院時に今後 発作が再燃した場合の対応 について指導が必要 ① 救急受診が 必要な強い喘息発作のサイン を説明 咳や息苦しさで → 遊べない、話せない、眠れない 顔⾊が悪い、ぼーっともしくは興奮している 強いゼーゼー、肋⾻の間がはっきりとへこむ → パンフレットを⽤いて説明し、受診タイミングを指導 ② アクションプランシート(喘息個別対応プラン) ▶ ・可能であれば、発作の程度に応じた対応⽅法を指導 発作時吸⼊薬の使⽤⽅法や受診の⽬安を提⽰する → 本症例では退院時点ではシートは作成していない ⻑期管理開始後の様⼦をみて相談予定とした 環境再⽣保全機構のHPで⼊⼿可能

  • #13.

    part.3 ⻑期管理について ⻑期管理の流れ ⻑期管理の必要性を説明 現状の評価 治療ステップを判断 適切なデバイスの確認 コントロール状態に注意しつつ 継続的にフォロー 現在の呼吸機能や吸⼊抗原の感作状況を評価 必要に応じて、鑑別疾患も確認する 未治療患者もしくはすでに介⼊済みかで異なる 真の重症度をもとに治療ステップを判断する 年齢・発達段階から使⽤するデバイスを確認

  • #14.

    現状の評価のために⾏う追加検査 <⼩児の喘息で評価しておきたい項⽬> アレルゲン検索 呼吸機能検査 呼気NO +可能であれば ・気道過敏性検査 ・可逆性試験 痛みなどの負担はあるものの おおむね5歳以降から可能だが、実施が難しいこともある 年齢に関わらず実施可能 → 実施したものの、指⽰理解が困難で評価できなかった → ダニ、ネコ、スギなど 複数の抗原に感作が確認された ▶ 治療反応性が悪い場合は、経過に応じて 胃⾷道逆流 や 副⿐腔炎、声帯機能不全 などの鑑別を検討する

  • #15.

    未治療患者の 重症度評価と治療ステップ 重症度 症状の 頻度と程度 開始する 治療ステップ 間⽋型 軽い症状 数回/年 β刺激薬吸⼊で改善 治療ステップ1 軽症持続型 中等症持続型 1回/⽉ 以上 1回/週 以上 特に呼吸困難 ときに中・⼤発作 ⽇常⽣活は問題なし ⽇常⽣活に弊害 治療ステップ2 治療ステップ3 重症持続型 毎⽇発作あり 1-2回/週 中・⼤発作 治療ステップ4 → 中等症持続型 と判断し、 治療ステップ3 での⻑期管理を開始

  • #16.

    ⼩児喘息の⻑期管理プラン(6〜15歳) ・ICS︓吸⼊ステロイド ・ICS/LABA︓吸⼊ステロイド/⻑時間作⽤性β刺激薬配合剤 ・LTRA︓ロイコトリエン受容体拮抗薬 治療ステップ2 治療ステップ1 基本 治療 ⻑期管理なし 下記のいずれかを使⽤ Ø 低⽤量ICS Ø LTRA 治療ステップ4 治療ステップ3 下記のいずれかを使⽤ Ø 中⽤量ICS/LABA 下記のいずれかを使⽤ Ø 低⽤量ICS/LABA Ø 中⽤量ICS Ø ⾼⽤量ICS 以下の併⽤も可 Ø LTRA Ø テオフィリン 以下を考慮 追加 治療 LTRA 基本治療の2剤併⽤ 以下のいずれかを併⽤ Ø ⽣物学的製剤 Ø LTRA Ø ⾼⽤量 ICS/LABA Ø テオフィリン Ø ICSのさらなる増量 Ø 経⼝ステロイド薬 発作時の短期追加治療(2週間以内のβ刺激薬)、増悪因⼦への対応、患者教育、パートナーシップ → 低⽤量ICS/LABA に加え、アレルギー性⿐炎の合併もあり LTRA を併⽤

  • #17.

    吸⼊薬の選び⽅ ・SLM︓サルメテロール ー ⼩児適応のある吸⼊薬 ー ネブライザー⽅式 吸⼊液 ・FM︓ホルモテロール 定量吸⼊器 pMDI (加圧噴霧式) エアゾール スペーサー パルミコート®︓ブデゾニド(BUD) ・オルベスコ®︓シクレソニド(CIC) ・キュバール®︓ベクロメタゾン(BDP) ・アドエア®︓フルチカゾン(FP)+SLM ・フルティフォーム®︓フルチカゾン(FP)+FM DPI (ドライパウダー) ディスカス タービュヘイラー ・フルタイド®︓フルチカゾン(FP) ・パルミコート®︓ブデゾニド(BUD) ・アドエア®︓フルチカゾン(FP)+SLM 乳児 から使⽤可能 スペーサーの使⽤で 乳児 から使⽤可能 おおむね 6歳以降 から使⽤可能 吸⼊器が必要で時間もかかる 基本的に親の介助が必要 吸⼊⼒が必要だが、管理が容易 → スペーサー を使⽤した アドエア50エアゾール® での治療を選択

  • #18.

    ICS単剤、ICS/LABAの⽤量⽬安 低⽤量 中容量 ⾼⽤量 100 200 400 200 400 800 250 500 1000 FP/SLM(アドエア®)1⽇2回 100/50 200/100 400-500/100 FP/FM(フルティフォーム®) 1⽇2回 100/10 200/20 400-500/20 FP(フルタイド®) 1⽇2回 BDP(キュバール®)1⽇2回 CIC(オルベスコ®) 1⽇1回 BUD(パルミコート®)1⽇2回 BIS(パルミコート®)1⽇2回 *懸濁液製剤 → アドエア50エアゾール® 1回1吸⼊、1⽇2吸⼊(低⽤量ICS/LABA)

  • #19.

    外来フォロー時の経過 低⽤量ICS/LABA+LTRA JPAC 喘 息 コ ン ト ロ ' ル テ ス ト 15 今後の⽅針 14 ・3〜6か⽉安定していれば 13 治療を ステップダウン 12 吸⼊⼿技確認 11 アドヒアランス強化指導 10 患者教育 9 環境整備 8 ・悪化時はアドヒアランスと ⼿技確認の上、原因を検索 ・アレルギー性⿐炎の治療を 強化し⾆下免疫療法を導⼊

  • #20.

    症例のまとめ 急性増悪への対応 ・⼗分な管理がされていなかった喘息患者における、感冒に伴う気管⽀喘息の急性増悪 ・⼤発作相当と判断し、酸素投与に加えて気管⽀拡張薬とステロイド薬全⾝投与を⾏った ・治療反応性は良好であり、day4で退院可能となった ⻑期管理の選択 ・以前より喘息様のエピソードを繰り返しており、今回は⼤発作を起こしたことから 中等症持続型 と判断し、治療ステップ3 から⻑期管理を開始とした ・吸⼊は⼿技の不安定さを考慮し、スペーサー付きのpMDI製剤を選択 ・呼吸機能検査やFeNOなどは現時点では評価できなかったが、半年〜1年後に再検予定 ・並⾏して、アレルギー性⿐炎やアトピー性⽪膚炎の治療を強化していく

  • #21.

    Take Home Message • 急性増悪(発作)は重症度を判定して、必要な治療を確認しよう • ⼊院時は 時間をかけた説明のチャンス︕ ⼗分に評価して、今後の⻑期管理につなげよう • 年齢や発達段階で 適切なデバイス が異なることに注意しよう

  • #22.

    後半スライドに続きます 本スライドは仮想症例をもとに介⼊の進め⽅をまとめました 後半は、ガイドラインに沿った診断と治療の流れについてです 気管⽀喘息は患者数も少なくないため なんとなく治療介⼊してしまうことも 少なくないと思います。 できれば、⼀⼈ひとりの重症度を ⼗分に吟味して、治療ステップを 判断していきましょう。

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