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乳酸アシドーシスを予防するために〜Lactateを始めからていねいに〜後編

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masa1019@救急科、内科

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アナフィラキシーのRRS対応

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どっと@小児科

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テキスト全文

  • #1.

    り よ た い 思って ︕ い す や 扱い 救急外来でも活⽤できる ⼩児科の頻⽤漢⽅薬 どっと@⼩児科

  • #2.

    はじめに どっと@⼩児科医 です 今回は、使ってみたいけど使い所がわかりにくい 「⼩児科での頻⽤漢⽅薬」 についてまとめます ー このスライドの主な対象者 ー ・初期研修医の先⽣ ・⼩児科後期研修医 ・救急外来担当医師

  • #3.

    ⼩児科で使⽤する漢⽅薬のポイント • ⻑引く症状や不定愁訴に対して処⽅を考えやすい • 年齢制限などで⻄洋薬が使いにくい 精神症状 に処⽅が可能 • 最⼤の障壁はもちろん 味と臭い • ⼗分な 服薬指導 と 本⼈・保護者のやる気 が⼤切 • 各種ガイドラインに基づいた治療に優先されるものではない 悩める⼩児に対する使いやすい武器の⼀つ ご家族の希望もある場合は特に扱いやすい選択肢

  • #4.

    漢⽅薬の即効性について 漢⽅薬はある程度の期間飲み続けないと意味がない︖ → 薬によって異なる 例︓ ・芍薬⽢草湯︓こむら返りに対して即効性あり ・五苓散︓頭痛や吐気に対して即効性あり、⾞酔いの予防にも 救急外来や⼀般⼩児科外来では即効性が⾼いものだけを 活⽤するのも⼀つだと思います

  • #5.

    もくじ 1. ⼩児に対する漢⽅薬の基本 ① 投与量 ② 服薬指導のコツ ③ 覚えておきたい 3つの漢⽅薬 2. 症状から考える⼩児科の頻⽤漢⽅薬 ① ⾵邪 ② 腹部症状 ③ 反復感染症 ④ 精神的な症状 3. 頻⽤漢⽅薬まとめ 漢⽅薬はときどき著効する⽅がいる ので、いつも選択肢に⼊れています しかし、詳しくはないので漢⽅薬の 併⽤は⽣薬の相互作⽤を考慮して、 なるべく控えて処⽅しています

  • #6.

    ① 投与量 ⻄洋薬のように ○g /kg という 明確な指標はない 成⼈量を意識した 換算量を分2-3・頓⽤ でOK 1. 成⼈の投与量から推測する⻄洋薬⾵の投与量 0.15 g /kg /day → 成⼈ 7.5 g /⽇ = 0.15 g /kg /day(50kgの場合) 2. 年齢を意識した投与量 6ヶ⽉︓1/6量 1歳︓1/4量 3歳︓1/3量 7歳︓半分 12歳︓2/3量 3. 1包(2.5 g)を重視した投与量 10 kg - 1包 20 kg - 2包 30 kg - 3包(成⼈量) 覚えやすいものを 活⽤しましょう

  • #7.

    保管期間を意識すると1包扱いが無難︖ 漢⽅薬の保管期間︓通常の梱包状態でおおむね3年 保管期限︓3年 保管期限︓3ヶ⽉程度 製剤が⾒た⽬でわかりやすい 細かい量での処⽅が可能 開封後は1-2⽇内に使⽤ 製剤名を忘れやすい 漢⽅薬は吸湿性が⾼く、再度の分包で劣化しやすくなる 1包という単位をなるべく活⽤することが無難という印象 *保管時はできるだけ乾燥剤とともに密封容器に⼊れておくのもポイント

  • #8.

    ② 服薬指導のコツ 意欲を⾼めるため 服薬意義をしっかり伝える 苦⼿意識が強くならないように 味の調整法を説明する 本⼈・家族の飲もうとする意欲が⼤事 内服のハードルは⾼いため希望しない場合に無理強いは不要 ・症状に対して効果が期待できる薬があること ・少し苦いが⼯夫すれば思いのほか飲みやすいこと ・少しでも飲めれば、頑張りを認めていただくこと 上記を説明し、希望された⽅には味の調整法を伝えておきましょう

  • #9.

    内服の仕⽅、味の調整法 シンプル ・粉のまま内服 年⻑児は⽔を⼝に含んでから 薬を⼊れると飲みやすい ・少量の⽔で練って ⼝腔内になすりつけ 乳児期に扱いやすい ・お湯に溶かす レンチンするとよく溶けます ・服薬ゼリーを使⽤ 軽い⼯夫 ・単シロップの活⽤ ① 少量の単シロップで練って 団⼦状にして内服 ② お湯で溶かし、単シロップを ⼊れたものを冷やして内服 ・デザートの活⽤ アイス、練乳、チョコクリーム、 あんこ、ハチミツで混ぜる ・ココアの活⽤ ココアと⼀緒に溶かす・⾷べる 上級編 ・汁物と⼀緒に カレーや味噌汁、スープなどに 混ぜて内服 ・調味料として活⽤ ホットケーキやクッキー、ハン バーグの材料として混ぜる 単シロップやアイス、 ココア、味噌汁などが 扱いやすい印象です

  • #10.

    年代毎の服薬難易度と注意点 ① 乳児期︓⽐較的容易 ⾷物アレルギーの合併(⼩⻨や⽜乳アレルギーに注意) ミルクに混ぜるとミルク拒否に繋がりやすいため避ける ハチミツは1歳未満では禁忌 ② 幼児期︓個⼈差はあるが、拒否が強く難しい年代 無理強いはトラウマや信頼関係を崩すことに繋がりかねない 薬を混ぜることにも気がつきやすく、個々で相談が必要 ③ 学童期︓本⼈の理解があれば内服しやすい あくまで本⼈を主役に意思を確認することが⼤切 ⾃分で理解すれば頑張って飲んでくれることが多い

  • #11.

    ③ 覚えておきたい 3つ の漢⽅薬(私⾒) 五苓散 ⼩建中湯 柴胡桂枝湯 17 99 10 ⽔のバランスを整える 胃腸の機能を整える ⾵邪にも ⼼にも 急性症状の多くに有効 虚弱な⼩児の優しい味⽅ 免疫の強化と緊張の緩和 頭痛・吐気・腹痛・胃腸炎 めまい・乗り物酔い 腹痛・下痢/便秘・しぶり腹 不安・不眠・不定愁訴 感冒・反復感染症 頭痛・起⽴性調節障害 頓⽤で有効 適応が広く、味も飲みやすい ツウは 坐剤 を院内で製剤 膠飴(⻨芽糖・⽔飴)が多く ⽢くてとても飲みやすい AQP4阻害が主な作⽤とされる 膠飴により腸内環境を整える 感染症初期は⿇⻩湯や葛根湯が優先 緊張をリラックスさせるイメージ

  • #12.

    2.症状から考える⼩児科の頻⽤漢⽅薬 効果と飲みやすさから扱いやすい主な漢⽅薬まとめ ⾵邪 腹部症状 初期︓⿇⻩湯(⾼熱)、葛根湯(微熱) 腹痛・下痢︓⼩建中湯、五苓散 それ以降︓柴胡桂枝湯 便秘︓⼩建中湯+⻄洋薬 咳嗽︓五⻁湯(湿性)、⻨⾨冬湯(乾性) 胃腸炎︓五苓散 反復感染症 反復嘔吐・胃⾷道逆流︓六君⼦湯 ⾵邪︓柴胡桂枝湯 精神症状 反復性中⽿炎︓⼗全⼤補湯 不眠︓抑肝散、⼩建中湯 肛⾨周囲膿瘍︓⼗全⼤補湯 不安︓⼩建中湯、⽢⻨⼤棗湯 なかなかすっきりしない︓補中益気湯 イライラ︓抑肝散、柴胡桂枝湯

  • #13.

    ① ⾵邪 原則︓基本的には アセトアミノフェン のみで⼗分 少しでも早く治したい、なかなか治らない インフルエンザかもしれないけど検査陰性 漢⽅の出番︖ 感染症全般 咳や⿐⽔など 熱の出始め︓ ⿇⻩湯、葛根湯 → ⻄洋薬の有効性も乏しい… 漢⽅の⽅が効くかも︖ 短期の使⽤で体を温めるイメージ 以降︓ 柴胡桂枝湯 熱 ・RSウイルスのような痰絡みの強い咳嗽︓五⻁湯 ・感染後咳嗽や喘息のような乾性咳嗽︓⻨⾨冬湯 *いずれも ハチミツ を混ぜると鎮咳効果が⾼まるかも ⿇⻩の主成分=エフェドリン 過剰投与に注意が必要 ちなみに⿇⻩湯は乳児期の⿐閉・⿐汁にも有効です 期間

  • #14.

    ② 腹部症状 原則︓基本的には整腸剤や便秘薬以外に選択肢はない 痛み⽌めの効きにくい腹痛に耐えられない 気持ち悪さや下痢をなんとかしたい 腹痛・しぶり腹 蠕動痛や腹部の疝痛には鎮痛薬の効果が乏しい → 筋緊張を緩める漢⽅は有効 ・ 即効性を期待︓芍薬⽢草湯(頓⽤) ・痛みが続くことが多い︓⼩建中湯(継続服⽤) ⼩建中湯は芍薬と⽢草を含み、痛みにも有効 ⼼的要素もある場合、特に⼩建中湯がベター 漢⽅の出番︖

  • #15.

    ② 腹部症状 嘔気・嘔吐 便秘 ドンペリドンも使⽤可能だが 錐体外路症状に注意が必要 有効な便秘薬は⻄洋薬にも多く 漢⽅薬は必要に応じて併⽤する程度 即効性もあり 五苓散 が第⼀選択 ⾞酔いに対しても有効 腹痛が強いタイプには ⼩建中湯 が選択肢 乳幼児期の繰り返す嘔吐は 胃⾷道逆流を疑い、六君⼦湯 も選択肢 蠕動が弱いタイプは⼤建中湯も有効 ⼩建中湯・⼤建中湯の併⽤(中建中湯)も選択肢 五苓散 は坐薬にして胃腸炎患児に使⽤する施設もあり *坐剤が販売されているわけではないため、事前に院内での製剤が必要

  • #16.

    ③ 反復感染症 原則︓免疫不全など基礎疾患がなければ、経過観察のみ なんとか⾵邪を繰り返すのを減らせないか 中⽿炎を何回も繰り返して困っています 漢⽅の出番︖ 反復感染・虚弱 → 柴胡桂枝湯 のような適応範囲の広い漢⽅や 補剤 が有⽤ 補中益気湯 や ⼗全⼤補湯 実際に処⽅して感染が減ってきた場合に、成⻑に伴う感染の減少 なのか 区別できませんが、ご家族から感謝されることは思いの外よくあります また、実際に ⼗全⼤補湯は報告も多く、ガイドラインにも記載があります → 詳細は次のスライド

  • #17.

    ③ 反復感染症 報告があるもの ① 反復性中⽿炎に ⼗全⼤補湯 が有効 ⼗全⼤補湯により急性中⽿炎が57%減少し、⿐かぜの発症、抗菌薬投与回数も減少 Ito M, et al. Randomized controlled trial of juzen-taiho-to in children with recurrent acute otitis media. Auris Nasus Larynx. 2017︓44︓390-7 ② 肛⾨周囲膿瘍の再発に ⼗全⼤補湯 が有効 ⼗全⼤補湯により肛⾨周囲膿瘍の再発率は低下し、外科的介⼊が必要になることも少ない *肛⾨周囲膿瘍の急性期には排膿散及湯が使われることも多い 増本幸⼆ら. 乳児肛⾨周囲膿瘍に対する⼗全⼤補湯の⻑期使⽤経験. 臨牀と研究 2010︔87︓1164-1167 ⼩児急性中⽿炎ガイドライン︓ 推奨の強さ︓推奨 エビデンスの強さ︓B 肛⾨疾患ガイドライン︓近年多く報告されているが有効性や⻑期成績は明らかでない ⼩児急性中⽿炎診療ガイドライン 2018年版、肛⾨疾患・直腸脱診療ガイドライン2020年版 改訂第2版

  • #18.

    ④ 精神的な症状 原則︓状況を把握することで環境整備を進める *⼩児期に使⽤できる⻄洋薬は限られている 夜なきが激しい、不安が強い 漢⽅の出番︖ ⼩児期も不安はあり、神経発達症などで苦しんでいる児も多い 乳幼児期の精神的な症状に検討できる⻄洋薬は 抗ヒスタミン薬 くらい ASDの易刺激性 に対する薬剤適応︓早くても 5歳以降 神経発達症に伴う⼊眠困難 に対する薬剤適応︓早くても 6歳以降 ADHD に対する薬剤適応︓早くても 6歳以降 *リスパダール® *メラトベル® *コンサータ®、インチュニブ® もちろん薬物療法が全てではないが、漢⽅薬が有効なことは少なくない

  • #19.

    ④ 精神的な症状 不安 イライラ 扱いやすい薬 扱いやすい薬 ・⼩建中湯 ・抑肝散/抑肝散加陳⽪半夏 ・⽢⻨⼤棗湯 ・柴胡桂枝湯 どちらも不安が強い⽅に有効 抑肝散は「疳の⾍を抑える」漢⽅ お腹が弱い⼦は ⼩建中湯 がお勧め お腹が弱い児は 抑肝散加陳⽪半夏 がお勧め どちらも⽢くて飲みやすい ⺟⼦内服もよく⾏います *⺟でなくとも神経質な他の養育者にも提案します ⺟⼦内服︓夜なきなどでは家族(特に⺟)も⼼⾝に余裕がないことが 多いため、⼀緒に内服することで治療効果を⾼める⽅法

  • #20.

    夜なきの漢⽅ 使い分け 夜なきは家族への負担が極めて⼤きいが、⻄洋薬での対処法はない 漢⽅は必須ではないが、試してみる価値は⼗分にあると感じている 抑肝散 ⼩建中湯 ⽢⻨⼤棗湯 54 99 72 イライラ・神経の⾼まり 下痢や便秘を伴う ビクビク・不安が強い 夜なき漢⽅の代表 お腹に優しい 敏感なお⼦さんに 神経過敏を緩和する 乳児期は便通関係も多い ⼼⾝の興奮を鎮める ⺟⼦内服も有⽤ ⽢くてとても飲みやすい ⽣薬が⾷材で⽢く美味しい

  • #21.

    3. 頻⽤漢⽅薬まとめ 効果と飲みやすさから扱いやすい主な漢⽅薬まとめ(前回から抜粋) いずれも患者訴えに対して ⻄洋薬のスキマを埋める⼀つの選択肢 必須知識ではないが、使えると困ったときに頼りになる ⾵邪︓柴胡桂枝湯・⿇⻩湯 腹部症状︓⼩建中湯、五苓散 反復感染症︓柴胡桂枝湯・⼗全⼤補湯 精神症状︓抑肝散、⼩建中湯、⽢⻨⼤棗湯

  • #22.

    Take Home Message • ⼩児の投与量は厳密ではなくてOK︕ 体格で⼤まか に判断しよう • 五苓散 や ⼩建中湯 、 柴胡桂枝湯 など扱いやすい漢⽅を覚えておこう • ガイドラインに基づいた治療に優先されるものではないことを理解する

  • #23.

    参考 • 坂﨑弘美・新⾒正則 著. フローチャートこども漢⽅薬 びっくり・おいしい飲ませ⽅. 新興医学出版社 • ⽇本東洋医学会 http://www.jsom.or.jp /medical /faq /index.html • ⽇本⼩児東洋医学会 ⼦どもたちに上⼿に漢⽅を使うために. https://jpsom.org /theme /syouni_touyou /img /common /case1.pdf

思っていたより扱いやすい!救急外来でも活用できる小児科の頻用漢方薬

  • 内科

  • 救急科

  • 小児科

  • 麻黄湯
  • 服薬指導
  • 小建中湯
  • 十全大補湯
  • 柴胡桂枝湯
  • 甘麦大棗湯
  • 夜なき
  • 嘔吐
  • 反復感染症
  • 抑肝散

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投稿者プロフィール
どっと@小児科

総合病院

概要

漢方薬は悩める小児に対する使いやすい選択肢の一つです。初期研修医の先生・小児科後期研修医・救急外来担当医師へ向けて、使ってみたいけど使い所がわかりにくい「小児科での頻用漢方薬」についてまとめます。

◎目次

・はじめに

・小児科で使用する漢方薬のポイント

・漢方薬の即効性について

・もくじ

・① 投与量

・保管期間を意識すると1包扱いが無難?

・② 服薬指導のコツ

・内服の仕方、味の調整法

・年代毎の服薬難易度と注意点

・③ 覚えておきたい 3つ の漢方薬(私見)

・2.症状から考える小児科の頻用漢方薬

・① 風邪

・② 腹部症状

・③ 反復感染症

・④ 精神的な症状

・夜なきの漢方 使い分け

・3. 頻用漢方薬まとめ

・Take Home Message

本スライドの対象者

研修医/専攻医/専門医

参考文献

テキスト全文

  • #1.

    り よ た い 思って ︕ い す や 扱い 救急外来でも活⽤できる ⼩児科の頻⽤漢⽅薬 どっと@⼩児科

  • #2.

    はじめに どっと@⼩児科医 です 今回は、使ってみたいけど使い所がわかりにくい 「⼩児科での頻⽤漢⽅薬」 についてまとめます ー このスライドの主な対象者 ー ・初期研修医の先⽣ ・⼩児科後期研修医 ・救急外来担当医師

  • #3.

    ⼩児科で使⽤する漢⽅薬のポイント • ⻑引く症状や不定愁訴に対して処⽅を考えやすい • 年齢制限などで⻄洋薬が使いにくい 精神症状 に処⽅が可能 • 最⼤の障壁はもちろん 味と臭い • ⼗分な 服薬指導 と 本⼈・保護者のやる気 が⼤切 • 各種ガイドラインに基づいた治療に優先されるものではない 悩める⼩児に対する使いやすい武器の⼀つ ご家族の希望もある場合は特に扱いやすい選択肢

  • #4.

    漢⽅薬の即効性について 漢⽅薬はある程度の期間飲み続けないと意味がない︖ → 薬によって異なる 例︓ ・芍薬⽢草湯︓こむら返りに対して即効性あり ・五苓散︓頭痛や吐気に対して即効性あり、⾞酔いの予防にも 救急外来や⼀般⼩児科外来では即効性が⾼いものだけを 活⽤するのも⼀つだと思います

  • #5.

    もくじ 1. ⼩児に対する漢⽅薬の基本 ① 投与量 ② 服薬指導のコツ ③ 覚えておきたい 3つの漢⽅薬 2. 症状から考える⼩児科の頻⽤漢⽅薬 ① ⾵邪 ② 腹部症状 ③ 反復感染症 ④ 精神的な症状 3. 頻⽤漢⽅薬まとめ 漢⽅薬はときどき著効する⽅がいる ので、いつも選択肢に⼊れています しかし、詳しくはないので漢⽅薬の 併⽤は⽣薬の相互作⽤を考慮して、 なるべく控えて処⽅しています

  • #6.

    ① 投与量 ⻄洋薬のように ○g /kg という 明確な指標はない 成⼈量を意識した 換算量を分2-3・頓⽤ でOK 1. 成⼈の投与量から推測する⻄洋薬⾵の投与量 0.15 g /kg /day → 成⼈ 7.5 g /⽇ = 0.15 g /kg /day(50kgの場合) 2. 年齢を意識した投与量 6ヶ⽉︓1/6量 1歳︓1/4量 3歳︓1/3量 7歳︓半分 12歳︓2/3量 3. 1包(2.5 g)を重視した投与量 10 kg - 1包 20 kg - 2包 30 kg - 3包(成⼈量) 覚えやすいものを 活⽤しましょう

  • #7.

    保管期間を意識すると1包扱いが無難︖ 漢⽅薬の保管期間︓通常の梱包状態でおおむね3年 保管期限︓3年 保管期限︓3ヶ⽉程度 製剤が⾒た⽬でわかりやすい 細かい量での処⽅が可能 開封後は1-2⽇内に使⽤ 製剤名を忘れやすい 漢⽅薬は吸湿性が⾼く、再度の分包で劣化しやすくなる 1包という単位をなるべく活⽤することが無難という印象 *保管時はできるだけ乾燥剤とともに密封容器に⼊れておくのもポイント

  • #8.

    ② 服薬指導のコツ 意欲を⾼めるため 服薬意義をしっかり伝える 苦⼿意識が強くならないように 味の調整法を説明する 本⼈・家族の飲もうとする意欲が⼤事 内服のハードルは⾼いため希望しない場合に無理強いは不要 ・症状に対して効果が期待できる薬があること ・少し苦いが⼯夫すれば思いのほか飲みやすいこと ・少しでも飲めれば、頑張りを認めていただくこと 上記を説明し、希望された⽅には味の調整法を伝えておきましょう

  • #9.

    内服の仕⽅、味の調整法 シンプル ・粉のまま内服 年⻑児は⽔を⼝に含んでから 薬を⼊れると飲みやすい ・少量の⽔で練って ⼝腔内になすりつけ 乳児期に扱いやすい ・お湯に溶かす レンチンするとよく溶けます ・服薬ゼリーを使⽤ 軽い⼯夫 ・単シロップの活⽤ ① 少量の単シロップで練って 団⼦状にして内服 ② お湯で溶かし、単シロップを ⼊れたものを冷やして内服 ・デザートの活⽤ アイス、練乳、チョコクリーム、 あんこ、ハチミツで混ぜる ・ココアの活⽤ ココアと⼀緒に溶かす・⾷べる 上級編 ・汁物と⼀緒に カレーや味噌汁、スープなどに 混ぜて内服 ・調味料として活⽤ ホットケーキやクッキー、ハン バーグの材料として混ぜる 単シロップやアイス、 ココア、味噌汁などが 扱いやすい印象です

  • #10.

    年代毎の服薬難易度と注意点 ① 乳児期︓⽐較的容易 ⾷物アレルギーの合併(⼩⻨や⽜乳アレルギーに注意) ミルクに混ぜるとミルク拒否に繋がりやすいため避ける ハチミツは1歳未満では禁忌 ② 幼児期︓個⼈差はあるが、拒否が強く難しい年代 無理強いはトラウマや信頼関係を崩すことに繋がりかねない 薬を混ぜることにも気がつきやすく、個々で相談が必要 ③ 学童期︓本⼈の理解があれば内服しやすい あくまで本⼈を主役に意思を確認することが⼤切 ⾃分で理解すれば頑張って飲んでくれることが多い

  • #11.

    ③ 覚えておきたい 3つ の漢⽅薬(私⾒) 五苓散 ⼩建中湯 柴胡桂枝湯 17 99 10 ⽔のバランスを整える 胃腸の機能を整える ⾵邪にも ⼼にも 急性症状の多くに有効 虚弱な⼩児の優しい味⽅ 免疫の強化と緊張の緩和 頭痛・吐気・腹痛・胃腸炎 めまい・乗り物酔い 腹痛・下痢/便秘・しぶり腹 不安・不眠・不定愁訴 感冒・反復感染症 頭痛・起⽴性調節障害 頓⽤で有効 適応が広く、味も飲みやすい ツウは 坐剤 を院内で製剤 膠飴(⻨芽糖・⽔飴)が多く ⽢くてとても飲みやすい AQP4阻害が主な作⽤とされる 膠飴により腸内環境を整える 感染症初期は⿇⻩湯や葛根湯が優先 緊張をリラックスさせるイメージ

  • #12.

    2.症状から考える⼩児科の頻⽤漢⽅薬 効果と飲みやすさから扱いやすい主な漢⽅薬まとめ ⾵邪 腹部症状 初期︓⿇⻩湯(⾼熱)、葛根湯(微熱) 腹痛・下痢︓⼩建中湯、五苓散 それ以降︓柴胡桂枝湯 便秘︓⼩建中湯+⻄洋薬 咳嗽︓五⻁湯(湿性)、⻨⾨冬湯(乾性) 胃腸炎︓五苓散 反復感染症 反復嘔吐・胃⾷道逆流︓六君⼦湯 ⾵邪︓柴胡桂枝湯 精神症状 反復性中⽿炎︓⼗全⼤補湯 不眠︓抑肝散、⼩建中湯 肛⾨周囲膿瘍︓⼗全⼤補湯 不安︓⼩建中湯、⽢⻨⼤棗湯 なかなかすっきりしない︓補中益気湯 イライラ︓抑肝散、柴胡桂枝湯

  • #13.

    ① ⾵邪 原則︓基本的には アセトアミノフェン のみで⼗分 少しでも早く治したい、なかなか治らない インフルエンザかもしれないけど検査陰性 漢⽅の出番︖ 感染症全般 咳や⿐⽔など 熱の出始め︓ ⿇⻩湯、葛根湯 → ⻄洋薬の有効性も乏しい… 漢⽅の⽅が効くかも︖ 短期の使⽤で体を温めるイメージ 以降︓ 柴胡桂枝湯 熱 ・RSウイルスのような痰絡みの強い咳嗽︓五⻁湯 ・感染後咳嗽や喘息のような乾性咳嗽︓⻨⾨冬湯 *いずれも ハチミツ を混ぜると鎮咳効果が⾼まるかも ⿇⻩の主成分=エフェドリン 過剰投与に注意が必要 ちなみに⿇⻩湯は乳児期の⿐閉・⿐汁にも有効です 期間

  • #14.

    ② 腹部症状 原則︓基本的には整腸剤や便秘薬以外に選択肢はない 痛み⽌めの効きにくい腹痛に耐えられない 気持ち悪さや下痢をなんとかしたい 腹痛・しぶり腹 蠕動痛や腹部の疝痛には鎮痛薬の効果が乏しい → 筋緊張を緩める漢⽅は有効 ・ 即効性を期待︓芍薬⽢草湯(頓⽤) ・痛みが続くことが多い︓⼩建中湯(継続服⽤) ⼩建中湯は芍薬と⽢草を含み、痛みにも有効 ⼼的要素もある場合、特に⼩建中湯がベター 漢⽅の出番︖

  • #15.

    ② 腹部症状 嘔気・嘔吐 便秘 ドンペリドンも使⽤可能だが 錐体外路症状に注意が必要 有効な便秘薬は⻄洋薬にも多く 漢⽅薬は必要に応じて併⽤する程度 即効性もあり 五苓散 が第⼀選択 ⾞酔いに対しても有効 腹痛が強いタイプには ⼩建中湯 が選択肢 乳幼児期の繰り返す嘔吐は 胃⾷道逆流を疑い、六君⼦湯 も選択肢 蠕動が弱いタイプは⼤建中湯も有効 ⼩建中湯・⼤建中湯の併⽤(中建中湯)も選択肢 五苓散 は坐薬にして胃腸炎患児に使⽤する施設もあり *坐剤が販売されているわけではないため、事前に院内での製剤が必要

  • #16.

    ③ 反復感染症 原則︓免疫不全など基礎疾患がなければ、経過観察のみ なんとか⾵邪を繰り返すのを減らせないか 中⽿炎を何回も繰り返して困っています 漢⽅の出番︖ 反復感染・虚弱 → 柴胡桂枝湯 のような適応範囲の広い漢⽅や 補剤 が有⽤ 補中益気湯 や ⼗全⼤補湯 実際に処⽅して感染が減ってきた場合に、成⻑に伴う感染の減少 なのか 区別できませんが、ご家族から感謝されることは思いの外よくあります また、実際に ⼗全⼤補湯は報告も多く、ガイドラインにも記載があります → 詳細は次のスライド

  • #17.

    ③ 反復感染症 報告があるもの ① 反復性中⽿炎に ⼗全⼤補湯 が有効 ⼗全⼤補湯により急性中⽿炎が57%減少し、⿐かぜの発症、抗菌薬投与回数も減少 Ito M, et al. Randomized controlled trial of juzen-taiho-to in children with recurrent acute otitis media. Auris Nasus Larynx. 2017︓44︓390-7 ② 肛⾨周囲膿瘍の再発に ⼗全⼤補湯 が有効 ⼗全⼤補湯により肛⾨周囲膿瘍の再発率は低下し、外科的介⼊が必要になることも少ない *肛⾨周囲膿瘍の急性期には排膿散及湯が使われることも多い 増本幸⼆ら. 乳児肛⾨周囲膿瘍に対する⼗全⼤補湯の⻑期使⽤経験. 臨牀と研究 2010︔87︓1164-1167 ⼩児急性中⽿炎ガイドライン︓ 推奨の強さ︓推奨 エビデンスの強さ︓B 肛⾨疾患ガイドライン︓近年多く報告されているが有効性や⻑期成績は明らかでない ⼩児急性中⽿炎診療ガイドライン 2018年版、肛⾨疾患・直腸脱診療ガイドライン2020年版 改訂第2版

  • #18.

    ④ 精神的な症状 原則︓状況を把握することで環境整備を進める *⼩児期に使⽤できる⻄洋薬は限られている 夜なきが激しい、不安が強い 漢⽅の出番︖ ⼩児期も不安はあり、神経発達症などで苦しんでいる児も多い 乳幼児期の精神的な症状に検討できる⻄洋薬は 抗ヒスタミン薬 くらい ASDの易刺激性 に対する薬剤適応︓早くても 5歳以降 神経発達症に伴う⼊眠困難 に対する薬剤適応︓早くても 6歳以降 ADHD に対する薬剤適応︓早くても 6歳以降 *リスパダール® *メラトベル® *コンサータ®、インチュニブ® もちろん薬物療法が全てではないが、漢⽅薬が有効なことは少なくない

  • #19.

    ④ 精神的な症状 不安 イライラ 扱いやすい薬 扱いやすい薬 ・⼩建中湯 ・抑肝散/抑肝散加陳⽪半夏 ・⽢⻨⼤棗湯 ・柴胡桂枝湯 どちらも不安が強い⽅に有効 抑肝散は「疳の⾍を抑える」漢⽅ お腹が弱い⼦は ⼩建中湯 がお勧め お腹が弱い児は 抑肝散加陳⽪半夏 がお勧め どちらも⽢くて飲みやすい ⺟⼦内服もよく⾏います *⺟でなくとも神経質な他の養育者にも提案します ⺟⼦内服︓夜なきなどでは家族(特に⺟)も⼼⾝に余裕がないことが 多いため、⼀緒に内服することで治療効果を⾼める⽅法

  • #20.

    夜なきの漢⽅ 使い分け 夜なきは家族への負担が極めて⼤きいが、⻄洋薬での対処法はない 漢⽅は必須ではないが、試してみる価値は⼗分にあると感じている 抑肝散 ⼩建中湯 ⽢⻨⼤棗湯 54 99 72 イライラ・神経の⾼まり 下痢や便秘を伴う ビクビク・不安が強い 夜なき漢⽅の代表 お腹に優しい 敏感なお⼦さんに 神経過敏を緩和する 乳児期は便通関係も多い ⼼⾝の興奮を鎮める ⺟⼦内服も有⽤ ⽢くてとても飲みやすい ⽣薬が⾷材で⽢く美味しい

  • #21.

    3. 頻⽤漢⽅薬まとめ 効果と飲みやすさから扱いやすい主な漢⽅薬まとめ(前回から抜粋) いずれも患者訴えに対して ⻄洋薬のスキマを埋める⼀つの選択肢 必須知識ではないが、使えると困ったときに頼りになる ⾵邪︓柴胡桂枝湯・⿇⻩湯 腹部症状︓⼩建中湯、五苓散 反復感染症︓柴胡桂枝湯・⼗全⼤補湯 精神症状︓抑肝散、⼩建中湯、⽢⻨⼤棗湯

  • #22.

    Take Home Message • ⼩児の投与量は厳密ではなくてOK︕ 体格で⼤まか に判断しよう • 五苓散 や ⼩建中湯 、 柴胡桂枝湯 など扱いやすい漢⽅を覚えておこう • ガイドラインに基づいた治療に優先されるものではないことを理解する

  • #23.

    参考 • 坂﨑弘美・新⾒正則 著. フローチャートこども漢⽅薬 びっくり・おいしい飲ませ⽅. 新興医学出版社 • ⽇本東洋医学会 http://www.jsom.or.jp /medical /faq /index.html • ⽇本⼩児東洋医学会 ⼦どもたちに上⼿に漢⽅を使うために. https://jpsom.org /theme /syouni_touyou /img /common /case1.pdf

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