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初期研修医1年目におすすめの参考書まとめ

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<東京北プレゼン部>コントラストで目立たせる

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投稿者

湯浅駿

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テキスト全文

  • #1.

    健康診断で要精査 ⾼⾎圧の対応⽅法

  • #2.

    はじめに 2 健康診断で要精査「⾼⾎圧」 降圧薬処方して… はい、次の方どうぞ! こんな診療していませんか︖

  • #3.

    はじめに 3 ・これから⾼⾎圧の勉強を始める専攻医、研修医 対象 ・「降圧薬の処⽅だけ」から卒業したい⽅ ・⼆次性⾼⾎圧の精査⽅法を学びたい⽅

  • #4.

    はじめに 4 頻度の⾼い疾患だからこそ深く学びましょう 4300万⼈ ⾼⾎圧の有病者数 *⾼⾎圧治療ガイドライン2019 ⽇本⼈の3⼈に1⼈が⾼⾎圧

  • #5.

    ⾼⾎圧対応フローチャート 健康診断で⾼⾎圧 ー 基本の対応 ー ー ⼆次性⾼⾎圧の確認 ー 治療⽬的 スクリーニング 脳卒中・⼼疾患による 死亡リスクを下げるため ⾎算、Cr、Na、K、Ca GLU、HbA1c LDL-Chol、TSH 尿⼀般定性、尿沈渣、⼼電図 降圧⽬標 ⽬標⾎圧 75歳未満 糖尿病患者 抗⾎栓薬服⽤中 など 75歳以上 など 診察室⾎圧 家庭⾎圧 <130/80 <125/75 <140/90 <135/85 治療⽅法 ⽣活指導+薬物療法 確認する疾患 □ □ □ □ □ □ 睡眠時無呼吸症候群 腎実質性⾼⾎圧 腎⾎管性⾼⾎圧 原発性アルドステロン症 甲状腺機能亢進症/低下症 薬剤誘発性⾼⾎圧 3種類以上の降圧薬併⽤も⽬標⾎圧に達していない ・『治療抵抗性⾼⾎圧を疑った時のチェックリスト』確認 ・稀な⼆次性⾼⾎圧を確認

  • #6.

    初回受診 6 初回受診時から降圧薬を処⽅する 多くの教科書には投薬の前に家庭⾎圧の測定を⾏うように書いてあるが、 仕事がある中⾼年は薬の処⽅がないなら通院しなくなることが多い。 ⾼⾎圧の患者は他の動脈硬化リスクを有している場合が多いため、 初回受診時から降圧薬を処⽅して外来でフォローし、 動脈硬化リスクや⼆次性⾼⾎圧の確認を併⾏して⾏う。 フォローしていく中で家庭⾎圧を測定してもらい、家庭⾎圧が良好ならば 降圧薬を卒業するというマネジメントにデメリットは少ないと筆者は考える。

  • #7.

    ⾼⾎圧対応フローチャート 健康診断で⾼⾎圧 ー 基本の対応 ー ー ⼆次性⾼⾎圧の確認 ー 治療⽬的 スクリーニング 脳卒中・⼼疾患による 死亡リスクを下げるため ⾎算、Cr、Na、K、Ca GLU、HbA1c LDL-Chol、TSH 尿⼀般定性、尿沈渣、⼼電図 降圧⽬標 ⽬標⾎圧 75歳未満 糖尿病患者 抗⾎栓薬服⽤中 など 75歳以上 など 診察室⾎圧 家庭⾎圧 <130/80 <125/75 <140/90 <135/85 治療⽅法 ⽣活指導+薬物療法 確認する疾患 □ □ □ □ □ □ 睡眠時無呼吸症候群 腎実質性⾼⾎圧 腎⾎管性⾼⾎圧 原発性アルドステロン症 甲状腺機能亢進症/低下症 薬剤誘発性⾼⾎圧 3種類以上の降圧薬併⽤も⽬標⾎圧に達していない ・『治療抵抗性⾼⾎圧を疑った時のチェックリスト』確認 ・稀な⼆次性⾼⾎圧を確認

  • #8.

    基本の対応 8 治療⽬的、降圧⽬標、治療⽅法を患者と共有する 治療⽬的 脳卒中・⼼疾患による 死亡リスクを下げるため 動脈硬化リスクの管理 喫煙、肥満、糖尿病 脂質異常症、CKD ⾼齢、男性、家族歴など 降圧⽬標 ⽬標⾎圧 治療⽅法 診察室⾎圧 家庭⾎圧 <130/80 <125/75 75歳未満 脳⾎管障害患者 冠動脈疾患患者 CKD患者(尿蛋⽩+) 糖尿病患者 ⽣活指導 抗⾎栓薬服⽤中 75歳以上 脳⾎管障害患者 CKD患者(尿蛋⽩­) 薬物療法 <140/90 <135/85

  • #9.

    治療⽬的 9 脳卒中・⼼疾患による死亡リスクを下げるため EPOCH-JAPAN︓40-64歳の⾎圧別⼼⾎管死亡リスク ハザード⽐ 95%信頼区間 13 11 9 7 5 3 1 <120/80 120-129 /80-84 130-139 /85-89 140-149 /90-99 160-179 /100-109 ≧180 /110 ⾎圧 (mmHg) * Hypertens Res. 2012 Sep;35(9):947-53.

  • #10.

    治療⽬的 10 脳卒中・⼼疾患による死亡リスクを下げるため ・ E P O C H -J A PA N で 国 内 1 0 コ ホ ー ト ( 計 約 7 万 ⼈ ) の メ タ 解 析 が ⾏ わ れ 、 40-74歳では⾼⾎圧と脳卒中・⼼疾患リスクとの有意な関連が⽰された ・慢性腎臓病(CKD)の発症リスクも上昇するが、 降圧薬治療によるリスク低減効果は必ずしも⼀定していない ・他の動脈硬化リスクが加わると脳卒中・⼼疾患のリスクがさらに上昇する – 動脈硬化リスク – 喫煙、肥満、糖尿病、脂質異常症、CKD ⾼齢、男性、家族歴(50歳未満での脳⼼⾎管病発症)など

  • #11.

    降圧⽬標 11 *⾼⾎圧治療ガイドライン2019 ⽬標⾎圧 診察室⾎圧(mmHg) 家庭⾎圧(mmHg) <130/80 <125/75 <140/90 <135/85 75歳未満の成⼈ 脳⾎管障害患者 (両側側頭動脈狭窄や脳主幹動脈閉塞なし) 冠動脈疾患患者 CKD患者(尿蛋⽩陽性) 糖尿病患者 抗⾎栓薬服⽤中 75歳以上の⾼齢者 脳⾎管障害患者 (両側側頭動脈狭窄や脳主幹動脈閉塞あり、 または未評価) CKD患者(尿蛋⽩陰性) ・随時尿で0.15g /gCr以上を尿蛋⽩陽性とする ・75歳以上でも忍容性があれば個別に判断して130/80mmHg未満を⽬指す

  • #12.

    降圧⽬標 併存疾患を踏まえて降圧⽬標を確認する ・収縮期⾎圧10mmHg、または拡張期⾎圧5mmHgの低下により、 脳卒中30-40%、⼼不全約40%、全死亡10-15%と それぞれの発症リスクが減少する ・⾼齢者では130mmHg未満、⾮⾼齢者では120mmHg未満に 降圧した場合、ふらつきなど有害事象が出現する可能性に注意する 12

  • #13.

    治療⽅法 -⽣活指導⾷塩制限 ・6g /⽇未満を⽬標 ・『⾷塩を控えるための12ヶ条』 13 バランスのとれた⾷事 ・⾷事バランスガイド、DASH⾷、 地中海⾷などを参考に指導 https://www.ncvc.go.jp/hospital/pub/knowledge/diet/diet02/ などを利⽤して指導 運動 ・軽強度の有酸素運動を毎⽇30分、 または180分/週以上⾏う 節酒 ・男性はエタノール20-30mL/⽇以下、 (⽇本酒 1 合,ビール中瓶 1 本相当) ⼥性その半分以下 ・おつまみの塩分に注意 減量 ・⽬標︓BMI<25kg /m2 ・⽬標に達しなくても、 約4kgの減量で有意な降圧効果あり 禁煙

  • #14.

    治療⽅法 -薬物療法- 14 Ca拮抗薬を第1選択として使⽤ ・ガイドラインでは併存疾患を踏まえて サイアザイド系利尿薬、Ca拮抗薬、ACE阻害薬/ARBから選択するように 記載があるが、筆者は以下の理由からCa拮抗薬を第1選択とすることが多い ・メタ解析より脳卒中、⼼疾患の予防効果は降圧薬の種類によらず、降圧度で決まる *BMJ. 2009 May 19;338:b1665.doi: 10.1136/bmj.b1665. ・サイアザイド系利尿薬︓尿酸値上昇、⾎糖上昇の副作⽤があるため 降圧薬以外の内服薬が次第に増えていく可能性がある ・ACE阻害薬/ARB︓副作⽤も少なく使いやすいが、今後原発性アルドステロン症の 検索をする場合に検査結果に影響を及ぼす可能性がある

  • #15.

    治療⽅法 -薬物療法- 15 ・細かい降圧薬の使い⽅はスライド数の都合上省略する 詳しくは以下の本がお勧めである *WEBに無料版PDF公開 *2018年出版であり最新のガイドラインには対応していない

  • #16.

    ⾼⾎圧対応フローチャート 健康診断で⾼⾎圧 ー 基本の対応 ー ー ⼆次性⾼⾎圧の確認 ー 治療⽬的 スクリーニング 脳卒中・⼼疾患による 死亡リスクを下げるため ⾎算、Cr、Na、K、Ca GLU、HbA1c LDL-Chol、TSH 尿⼀般定性、尿沈渣、⼼電図 降圧⽬標 ⽬標⾎圧 75歳未満 糖尿病患者 抗⾎栓薬服⽤中 など 75歳以上 など 診察室⾎圧 家庭⾎圧 <130/80 <125/75 <140/90 <135/85 治療⽅法 ⽣活指導+薬物療法 確認する疾患 □ □ □ □ □ □ 睡眠時無呼吸症候群 腎実質性⾼⾎圧 腎⾎管性⾼⾎圧 原発性アルドステロン症 甲状腺機能亢進症/低下症 薬剤誘発性⾼⾎圧 3種類以上の降圧薬併⽤も⽬標⾎圧に達していない ・『治療抵抗性⾼⾎圧を疑った時のチェックリスト』確認 ・稀な⼆次性⾼⾎圧を確認

  • #17.

    ⼆次性⾼⾎圧の確認 全患者で⼆次性⾼⾎圧を確認 『基本の対応』と合わせて⾏うべきなのが『⼆次性⾼⾎圧の確認』である 「太っているので本態性⾼⾎圧」と考えてしまいがちだが、 逆に太っているからこそ睡眠時無呼吸症候群などの⼆次性⾼⾎圧を確認したい。 もちろん痩せていても⼆次性⾼⾎圧の確認は必須である。 この時に重要となるのが「有病率」である。 ⼆次性⾼⾎圧をきたす疾患は数多く存在するため頻度の⾼いものを確実に除外し、 治療への反応が乏しければ稀な疾患を検索する。 17

  • #18.

    ⼆次性⾼⾎圧の確認 18 有病率の⾼い⼆次性⾼⾎圧は5個+薬剤性 ⾼⾎圧患者における⼆次性⾼⾎圧の有病率 睡眠時無呼吸症候群 5-15% 腎実質性⾼⾎圧 1.6-8.0% 腎⾎管性⾼⾎圧 1.0-8.0% 原発性アルドステロン症 甲状腺機能亢進症/低下症 薬剤誘発性⾼⾎圧 Cushing症候群 褐⾊細胞腫 ⼤動脈縮窄症 * Eur Heart J. 2014 May 14;35(19):1245-54. ⼀部改変 1.4-10.0% 1-2% 不明 0.5% 0.2-0.5% < 1%

  • #19.

    ⼆次性⾼⾎圧の確認 19 全患者で⼆次性⾼⾎圧を確認 ・「⼆次性⾼⾎圧を⽰唆する所⾒」に加えて、 個々の疾患の「疑う所⾒」に該当すれば追加検査を⾏う ⼆次性⾼⾎圧を⽰唆する所⾒ ・30歳未満での発症 スクリーニング検査 ⾎算、Cr、Na、K、Ca ・普通〜痩せ体型 GLU、HbA1c ・急激に発症した⾼⾎圧 LDL-Chol*、TSH ・降圧薬を3種類併⽤しても ⽬標⾎圧に達しない など Up To Date 『Evaluation of secondaryhypertension』 尿⼀般定性、尿沈渣、⼼電図 Up To Date 『Initial evaluation of the hypertensive adult』

  • #20.

    睡眠時無呼吸症候群 20 ⼆次性⾼⾎圧の原因で最多 疑う所⾒ ・肥満体型 ・無呼吸の指摘、強いいびき ・昼間の眠気 ・早朝、夜間⾼⾎圧 *Int J Hypertens. 2017;2017:1848375. 検査 以下のいずれかを⾏う アプノモニター(簡易検査、⾃宅で可能) ポリソムノグラフィ(原則⼊院) * ⾼⾎圧治療ガイドライン2019 ⼀部改変 ・診断基準︓⾼⾎圧+AHI(睡眠1時間あたりの無呼吸と低呼吸の合計回数)5以上 ・スクリーニングツール(ESS、STOP-BANGなど)は精度が不⼗分であるため、 既に⾼⾎圧があり検査前確率が⾼い患者に対して筆者は⽤いない ・治療︓CPAP(保険適⽤基準に注意)、減量などの⽣活習慣改善

  • #21.

    腎実質性⾼⾎圧 21 定義︓腎疾患によって引き起こされる⾼⾎圧 全例でスクリーニングを実施︓ ⾎清クレアチニン 尿⼀般定性、尿沈渣 *尿蛋⽩(+)であれば 尿蛋⽩定量、尿クレアチニンを追加 以下に該当すれば専⾨医へ紹介 ・⾼⾎圧に先⾏する腎機能障害の存在 ・(尿蛋⽩/尿クレアチニン)︓1.0g/gCr以上 ・尿潜⾎、変形⾚⾎球、円柱(硝⼦円柱以外) ・⾼⾎圧に⻑期間罹患していると腎機能が低下するが、 その場合の尿蛋⽩は多くても1⽇1.0g以下(ほとんどの場合は1⽇0.5g以下)である

  • #22.

    腎⾎管性⾼⾎圧 22 疑う所⾒ ⼆次性⾼⾎圧を⽰唆する所⾒がある場合 ・30歳未満での発症 ・普通〜痩せ体型 ・急激に発症した⾼⾎圧 より強く疑う所⾒ ・腹部⾎管雑⾳ ・ ACE阻害薬・ARB投与後の 急激な腎機能悪化 ・治療︓薬物療法(ACE阻害薬/ARB) ⾎⾏再建術(専⾨医と相談) 検査 ・腎動脈エコー 以下の条件を満たすと陽性 PSV>100-200 cm/秒 [感度85%、特異度92%] *強く疑うが腎動脈の狭窄が 確定できない場合は 腎 動 脈 M R A や 造 影 C TA を 実 施 *AJR Am J Roentgenol. 2007 Mar;188(3):798-811 *両側腎動脈狭窄の場合は禁忌

  • #23.

    原発性アルドステロン症 23 疑う所⾒ 検査 ・低カリウム⾎症(利尿薬投与例含む) ・⾎漿アルドステロン濃度 (PAC [CLEIA法]) ・40歳未満 ・⾎漿レニン活性 (PRA) ・150/100mmHg以上 ・治療抵抗性⾼⾎圧 ・睡眠時無呼吸症候群、副腎腫瘍、 若年の脳⾎管障害などの合併症 以下の条件を満たすと陽性であり専⾨医へ紹介 ARR [PAC /PRA ]>200 + PAC>60 (pg/mL) *2021年4⽉に測定⽅法の変更があり、 ARR=100〜200も暫定的に陽性とみなす * 原発性アルドステロン症診療ガイドライン2021 ・検査は早朝空腹時、起床後2時間以降、安静臥位15分後に実施 ・降圧薬の種類により検査結果に影響する可能性があるため Ca拮抗薬、α遮断薬に変更した後に検査を⾏う ・治療︓MR拮抗薬(スピロノラクトンなど)、副腎摘出術など

  • #24.

    甲状腺機能亢進症/低下症 ・以下の所⾒があればTSH、FT3、FT4を測定する 甲状腺機能亢進症︓頻脈、発汗、体重減少、コレステロール低値 甲状腺機能低下症︓徐脈、浮腫、活動性減少、脂質・CK・LDH⾼値 薬剤誘発性⾼⾎圧 ・⾼⾎圧全例で内服薬、市販薬・サプリ・健康⾷品の使⽤を確認する ・原因薬剤︓NSAIDs、⽢草(漢⽅などに含有)、ステロイド、 シクロスポリン、エリスロポエチン、経⼝避妊薬、 交感神経刺激薬(抗うつ薬など)、分⼦標的薬など 24

  • #25.

    ⾼⾎圧対応フローチャート 健康診断で⾼⾎圧 ー 基本の対応 ー ー ⼆次性⾼⾎圧の確認 ー 治療⽬的 スクリーニング 脳卒中・⼼疾患による 死亡リスクを下げるため ⾎算、Cr、Na、K、Ca GLU、HbA1c LDL-Chol、TSH 尿⼀般定性、尿沈渣、⼼電図 降圧⽬標 ⽬標⾎圧 75歳未満 糖尿病患者 抗⾎栓薬服⽤中 など 75歳以上 など 診察室⾎圧 家庭⾎圧 <130/80 <125/75 <140/90 <135/85 治療⽅法 ⽣活指導+薬物療法 確認する疾患 □ □ □ □ □ □ 睡眠時無呼吸症候群 腎実質性⾼⾎圧 腎⾎管性⾼⾎圧 原発性アルドステロン症 甲状腺機能亢進症/低下症 薬剤誘発性⾼⾎圧 3種類以上の降圧薬併⽤も⽬標⾎圧に達していない ・『治療抵抗性⾼⾎圧を疑った時のチェックリスト』確認 ・稀な⼆次性⾼⾎圧を確認

  • #26.

    稀な⼆次性⾼⾎圧を確認 26 3種類以上の降圧薬併⽤も⽬標⾎圧に達していない場合は 稀な⼆次性⾼⾎圧の原因を確認することとなる 合わせて『治療抵抗性⾼⾎圧を疑った時のチェックリスト』を⽤いて ⼆次性⾼⾎圧以外の要因で治療効果が 得られていない可能性がないか確認する 特に治療抵抗性⾼⾎圧患者の80%が適切に内服できていないとの 報告もあり、処⽅通りに服薬できているか注意して確認する * Hypertension. 2017 Apr;69(4):678-684.

  • #27.

    治療抵抗性⾼⾎圧を疑った時のチェックリスト 要因 27 チェック事項 本当に治療抵抗性⾼⾎圧か □ カフが⼩さすぎないか︖(カフ幅は上腕周囲の40%、かつ、⻑さは少なくとも上腕周囲を80%取り囲むものを使⽤する) ⾎圧測定とその評価は正しいか □ 家庭⾎圧を正しく測定できているか︖(家庭⾎圧計の精度、⾎圧の⾃⼰測定⼿技) □ 診察室外⾎圧も本当に治療抵抗性︖(⽩⾐⾼⾎圧、⽩⾐効果) □ 残薬はないか︖ 処⽅通りに服薬できているか □ 患者の服薬に対する意識に問題はないか︖(特定の薬剤を飲まない、服薬回数を意識的に減らしている、など患者による⾃⼰調節) □ 認知機能に問題はないか︖ □ 3剤以上処⽅されているか︖ □ 3剤は異なる作⽤機序を持つ降圧薬の組み合わせか︖ 薬剤の処⽅は適切か □ 利尿薬は処⽅されているか︖(腎機能低下例ではサイアザイド系利尿薬ではなくループ利尿薬が必要) □ 処⽅量は適切か︖(利尿薬は少量、ほかは忍容性がある範囲で通常量~最⼤⽤量) □ 薬効の持続は⼗分︖(1⽇1回型か︖1⽇1回型でも分2が良い場合や夜の内服に移すことが良い場合もある) 治療抵抗性⾼⾎圧の要因のスクリーニング □ ⾷塩の過剰摂取はないか︖ ⽣活習慣修正はできているか □ 肥満の影響は︖ □ 節酒はできている︖ □ 睡眠不良や精神的・⾁体的ストレスは︖ ⾎圧を上昇させうる薬剤や⾷品はないか □ NSAIDs、⽢草、ステロイド、シクロスポリン、エリスロポエチン、経⼝避妊薬、交感神経刺激薬(抗うつ薬など)、分⼦標的薬など ⼆次性⾼⾎圧はないか □ 有病率の⾼い⼆次性⾼⾎圧は除外できているか * ⾼⾎圧診療ガイド2020 ⼀部改変

  • #28.

    稀な⼆次性⾼⾎圧の原因疾患 ▶Cushing症候群 中⼼性肥満、満⽉様顔貌、多⽑症が頻度の⾼い所⾒である スクリーニング︓1mgデキサメタゾン抑制試験 (前⽇23時にデキサメタゾン1mg内服、翌⽇8-9時にコルチゾール測定) 早朝コルチゾール>1.8μg/dLで専⾨医へ紹介 ▶褐⾊細胞腫 頭痛、動悸、発汗過多を三徴とする スクリーニング︓24時間蓄尿における尿中メタネフリン分画 *降圧薬の多くが検査結果に影響を及ぼすため、予め確認する ▶⼤動脈縮窄症 前胸部〜背部の⾎管雑⾳、上下肢の⾎圧差で疑い、検査は胸腹部CT、MRA、⾎管造影 ▶副甲状腺機能亢進症 ⾼カルシウム⾎症、低リン⾎症で疑い、検査はintact PTH 28

  • #29.

    『⾼⾎圧治療ガイドライン2019』の記載を中⼼に 健康診断後の⾼⾎圧の対応をまとめました。 ご⾃⾝の働いているセッティングによって 今回紹介した⼿順と異なる点も多いかと思います。 総合病院であれば「稀な⼆次性⾼⾎圧」が受診する 検査前確率が⾼いかもしれません。 医療機関へのアクセスが良い地域であれば ⽣活指導のみで頻回にフォローする場合もあります。 それぞれのセッティングで⾼⾎圧の診療を⾏なうにあたり、 本スライドが参考になれば幸いです。

  • #30.

    参考⽂献 30 ・⾼⾎圧治療ガイドライン2019 ・⾼⾎圧診療ガイド2020 ・ホスピタリストのための内科診療フローチャート 第2版 ・ジェネラリストのための内科診断リファレンス ・トップジャーナルから学ぶ総合診療アップデート 第3版 ・動脈硬化御三家 Gノート2018

  • #31.

    参考⽂献 31

健康診断で要精査 高血圧の対応方法

  • 内科

  • 総合診療科

  • プライマリケア
  • 総合診療
  • 研修医
  • プライマリ・ケア
  • 内科
  • 高血圧
  • 腎血管性高血圧
  • 睡眠時無呼吸症候群
  • 健康診断

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投稿者プロフィール
湯浅駿

順天堂大学医学部附属順天堂医院

概要

新規に指摘された高血圧に対しての対応方法をまとめました。

フローチャートに沿って対応することで

二次性高血圧の確認からフォロー方法までを完遂できます。

高血圧診療の入り口としてぜひこのスライドを活用ください。

本スライドの対象者

研修医/専攻医

参考文献

  • 高血圧治療ガイドライン2019

  • 高血圧診療ガイド2020

  • ホスピタリストのための内科診療フローチャート 第2版

  • ジェネラリストのための内科診断リファレンス

  • トップジャーナルから学ぶ総合診療アップデート 第3版

  • 動脈硬化御三家 Gノート2018

テキスト全文

  • #1.

    健康診断で要精査 ⾼⾎圧の対応⽅法

  • #2.

    はじめに 2 健康診断で要精査「⾼⾎圧」 降圧薬処方して… はい、次の方どうぞ! こんな診療していませんか︖

  • #3.

    はじめに 3 ・これから⾼⾎圧の勉強を始める専攻医、研修医 対象 ・「降圧薬の処⽅だけ」から卒業したい⽅ ・⼆次性⾼⾎圧の精査⽅法を学びたい⽅

  • #4.

    はじめに 4 頻度の⾼い疾患だからこそ深く学びましょう 4300万⼈ ⾼⾎圧の有病者数 *⾼⾎圧治療ガイドライン2019 ⽇本⼈の3⼈に1⼈が⾼⾎圧

  • #5.

    ⾼⾎圧対応フローチャート 健康診断で⾼⾎圧 ー 基本の対応 ー ー ⼆次性⾼⾎圧の確認 ー 治療⽬的 スクリーニング 脳卒中・⼼疾患による 死亡リスクを下げるため ⾎算、Cr、Na、K、Ca GLU、HbA1c LDL-Chol、TSH 尿⼀般定性、尿沈渣、⼼電図 降圧⽬標 ⽬標⾎圧 75歳未満 糖尿病患者 抗⾎栓薬服⽤中 など 75歳以上 など 診察室⾎圧 家庭⾎圧 <130/80 <125/75 <140/90 <135/85 治療⽅法 ⽣活指導+薬物療法 確認する疾患 □ □ □ □ □ □ 睡眠時無呼吸症候群 腎実質性⾼⾎圧 腎⾎管性⾼⾎圧 原発性アルドステロン症 甲状腺機能亢進症/低下症 薬剤誘発性⾼⾎圧 3種類以上の降圧薬併⽤も⽬標⾎圧に達していない ・『治療抵抗性⾼⾎圧を疑った時のチェックリスト』確認 ・稀な⼆次性⾼⾎圧を確認

  • #6.

    初回受診 6 初回受診時から降圧薬を処⽅する 多くの教科書には投薬の前に家庭⾎圧の測定を⾏うように書いてあるが、 仕事がある中⾼年は薬の処⽅がないなら通院しなくなることが多い。 ⾼⾎圧の患者は他の動脈硬化リスクを有している場合が多いため、 初回受診時から降圧薬を処⽅して外来でフォローし、 動脈硬化リスクや⼆次性⾼⾎圧の確認を併⾏して⾏う。 フォローしていく中で家庭⾎圧を測定してもらい、家庭⾎圧が良好ならば 降圧薬を卒業するというマネジメントにデメリットは少ないと筆者は考える。

  • #7.

    ⾼⾎圧対応フローチャート 健康診断で⾼⾎圧 ー 基本の対応 ー ー ⼆次性⾼⾎圧の確認 ー 治療⽬的 スクリーニング 脳卒中・⼼疾患による 死亡リスクを下げるため ⾎算、Cr、Na、K、Ca GLU、HbA1c LDL-Chol、TSH 尿⼀般定性、尿沈渣、⼼電図 降圧⽬標 ⽬標⾎圧 75歳未満 糖尿病患者 抗⾎栓薬服⽤中 など 75歳以上 など 診察室⾎圧 家庭⾎圧 <130/80 <125/75 <140/90 <135/85 治療⽅法 ⽣活指導+薬物療法 確認する疾患 □ □ □ □ □ □ 睡眠時無呼吸症候群 腎実質性⾼⾎圧 腎⾎管性⾼⾎圧 原発性アルドステロン症 甲状腺機能亢進症/低下症 薬剤誘発性⾼⾎圧 3種類以上の降圧薬併⽤も⽬標⾎圧に達していない ・『治療抵抗性⾼⾎圧を疑った時のチェックリスト』確認 ・稀な⼆次性⾼⾎圧を確認

  • #8.

    基本の対応 8 治療⽬的、降圧⽬標、治療⽅法を患者と共有する 治療⽬的 脳卒中・⼼疾患による 死亡リスクを下げるため 動脈硬化リスクの管理 喫煙、肥満、糖尿病 脂質異常症、CKD ⾼齢、男性、家族歴など 降圧⽬標 ⽬標⾎圧 治療⽅法 診察室⾎圧 家庭⾎圧 <130/80 <125/75 75歳未満 脳⾎管障害患者 冠動脈疾患患者 CKD患者(尿蛋⽩+) 糖尿病患者 ⽣活指導 抗⾎栓薬服⽤中 75歳以上 脳⾎管障害患者 CKD患者(尿蛋⽩­) 薬物療法 <140/90 <135/85

  • #9.

    治療⽬的 9 脳卒中・⼼疾患による死亡リスクを下げるため EPOCH-JAPAN︓40-64歳の⾎圧別⼼⾎管死亡リスク ハザード⽐ 95%信頼区間 13 11 9 7 5 3 1 <120/80 120-129 /80-84 130-139 /85-89 140-149 /90-99 160-179 /100-109 ≧180 /110 ⾎圧 (mmHg) * Hypertens Res. 2012 Sep;35(9):947-53.

  • #10.

    治療⽬的 10 脳卒中・⼼疾患による死亡リスクを下げるため ・ E P O C H -J A PA N で 国 内 1 0 コ ホ ー ト ( 計 約 7 万 ⼈ ) の メ タ 解 析 が ⾏ わ れ 、 40-74歳では⾼⾎圧と脳卒中・⼼疾患リスクとの有意な関連が⽰された ・慢性腎臓病(CKD)の発症リスクも上昇するが、 降圧薬治療によるリスク低減効果は必ずしも⼀定していない ・他の動脈硬化リスクが加わると脳卒中・⼼疾患のリスクがさらに上昇する – 動脈硬化リスク – 喫煙、肥満、糖尿病、脂質異常症、CKD ⾼齢、男性、家族歴(50歳未満での脳⼼⾎管病発症)など

  • #11.

    降圧⽬標 11 *⾼⾎圧治療ガイドライン2019 ⽬標⾎圧 診察室⾎圧(mmHg) 家庭⾎圧(mmHg) <130/80 <125/75 <140/90 <135/85 75歳未満の成⼈ 脳⾎管障害患者 (両側側頭動脈狭窄や脳主幹動脈閉塞なし) 冠動脈疾患患者 CKD患者(尿蛋⽩陽性) 糖尿病患者 抗⾎栓薬服⽤中 75歳以上の⾼齢者 脳⾎管障害患者 (両側側頭動脈狭窄や脳主幹動脈閉塞あり、 または未評価) CKD患者(尿蛋⽩陰性) ・随時尿で0.15g /gCr以上を尿蛋⽩陽性とする ・75歳以上でも忍容性があれば個別に判断して130/80mmHg未満を⽬指す

  • #12.

    降圧⽬標 併存疾患を踏まえて降圧⽬標を確認する ・収縮期⾎圧10mmHg、または拡張期⾎圧5mmHgの低下により、 脳卒中30-40%、⼼不全約40%、全死亡10-15%と それぞれの発症リスクが減少する ・⾼齢者では130mmHg未満、⾮⾼齢者では120mmHg未満に 降圧した場合、ふらつきなど有害事象が出現する可能性に注意する 12

  • #13.

    治療⽅法 -⽣活指導⾷塩制限 ・6g /⽇未満を⽬標 ・『⾷塩を控えるための12ヶ条』 13 バランスのとれた⾷事 ・⾷事バランスガイド、DASH⾷、 地中海⾷などを参考に指導 https://www.ncvc.go.jp/hospital/pub/knowledge/diet/diet02/ などを利⽤して指導 運動 ・軽強度の有酸素運動を毎⽇30分、 または180分/週以上⾏う 節酒 ・男性はエタノール20-30mL/⽇以下、 (⽇本酒 1 合,ビール中瓶 1 本相当) ⼥性その半分以下 ・おつまみの塩分に注意 減量 ・⽬標︓BMI<25kg /m2 ・⽬標に達しなくても、 約4kgの減量で有意な降圧効果あり 禁煙

  • #14.

    治療⽅法 -薬物療法- 14 Ca拮抗薬を第1選択として使⽤ ・ガイドラインでは併存疾患を踏まえて サイアザイド系利尿薬、Ca拮抗薬、ACE阻害薬/ARBから選択するように 記載があるが、筆者は以下の理由からCa拮抗薬を第1選択とすることが多い ・メタ解析より脳卒中、⼼疾患の予防効果は降圧薬の種類によらず、降圧度で決まる *BMJ. 2009 May 19;338:b1665.doi: 10.1136/bmj.b1665. ・サイアザイド系利尿薬︓尿酸値上昇、⾎糖上昇の副作⽤があるため 降圧薬以外の内服薬が次第に増えていく可能性がある ・ACE阻害薬/ARB︓副作⽤も少なく使いやすいが、今後原発性アルドステロン症の 検索をする場合に検査結果に影響を及ぼす可能性がある

  • #15.

    治療⽅法 -薬物療法- 15 ・細かい降圧薬の使い⽅はスライド数の都合上省略する 詳しくは以下の本がお勧めである *WEBに無料版PDF公開 *2018年出版であり最新のガイドラインには対応していない

  • #16.

    ⾼⾎圧対応フローチャート 健康診断で⾼⾎圧 ー 基本の対応 ー ー ⼆次性⾼⾎圧の確認 ー 治療⽬的 スクリーニング 脳卒中・⼼疾患による 死亡リスクを下げるため ⾎算、Cr、Na、K、Ca GLU、HbA1c LDL-Chol、TSH 尿⼀般定性、尿沈渣、⼼電図 降圧⽬標 ⽬標⾎圧 75歳未満 糖尿病患者 抗⾎栓薬服⽤中 など 75歳以上 など 診察室⾎圧 家庭⾎圧 <130/80 <125/75 <140/90 <135/85 治療⽅法 ⽣活指導+薬物療法 確認する疾患 □ □ □ □ □ □ 睡眠時無呼吸症候群 腎実質性⾼⾎圧 腎⾎管性⾼⾎圧 原発性アルドステロン症 甲状腺機能亢進症/低下症 薬剤誘発性⾼⾎圧 3種類以上の降圧薬併⽤も⽬標⾎圧に達していない ・『治療抵抗性⾼⾎圧を疑った時のチェックリスト』確認 ・稀な⼆次性⾼⾎圧を確認

  • #17.

    ⼆次性⾼⾎圧の確認 全患者で⼆次性⾼⾎圧を確認 『基本の対応』と合わせて⾏うべきなのが『⼆次性⾼⾎圧の確認』である 「太っているので本態性⾼⾎圧」と考えてしまいがちだが、 逆に太っているからこそ睡眠時無呼吸症候群などの⼆次性⾼⾎圧を確認したい。 もちろん痩せていても⼆次性⾼⾎圧の確認は必須である。 この時に重要となるのが「有病率」である。 ⼆次性⾼⾎圧をきたす疾患は数多く存在するため頻度の⾼いものを確実に除外し、 治療への反応が乏しければ稀な疾患を検索する。 17

  • #18.

    ⼆次性⾼⾎圧の確認 18 有病率の⾼い⼆次性⾼⾎圧は5個+薬剤性 ⾼⾎圧患者における⼆次性⾼⾎圧の有病率 睡眠時無呼吸症候群 5-15% 腎実質性⾼⾎圧 1.6-8.0% 腎⾎管性⾼⾎圧 1.0-8.0% 原発性アルドステロン症 甲状腺機能亢進症/低下症 薬剤誘発性⾼⾎圧 Cushing症候群 褐⾊細胞腫 ⼤動脈縮窄症 * Eur Heart J. 2014 May 14;35(19):1245-54. ⼀部改変 1.4-10.0% 1-2% 不明 0.5% 0.2-0.5% < 1%

  • #19.

    ⼆次性⾼⾎圧の確認 19 全患者で⼆次性⾼⾎圧を確認 ・「⼆次性⾼⾎圧を⽰唆する所⾒」に加えて、 個々の疾患の「疑う所⾒」に該当すれば追加検査を⾏う ⼆次性⾼⾎圧を⽰唆する所⾒ ・30歳未満での発症 スクリーニング検査 ⾎算、Cr、Na、K、Ca ・普通〜痩せ体型 GLU、HbA1c ・急激に発症した⾼⾎圧 LDL-Chol*、TSH ・降圧薬を3種類併⽤しても ⽬標⾎圧に達しない など Up To Date 『Evaluation of secondaryhypertension』 尿⼀般定性、尿沈渣、⼼電図 Up To Date 『Initial evaluation of the hypertensive adult』

  • #20.

    睡眠時無呼吸症候群 20 ⼆次性⾼⾎圧の原因で最多 疑う所⾒ ・肥満体型 ・無呼吸の指摘、強いいびき ・昼間の眠気 ・早朝、夜間⾼⾎圧 *Int J Hypertens. 2017;2017:1848375. 検査 以下のいずれかを⾏う アプノモニター(簡易検査、⾃宅で可能) ポリソムノグラフィ(原則⼊院) * ⾼⾎圧治療ガイドライン2019 ⼀部改変 ・診断基準︓⾼⾎圧+AHI(睡眠1時間あたりの無呼吸と低呼吸の合計回数)5以上 ・スクリーニングツール(ESS、STOP-BANGなど)は精度が不⼗分であるため、 既に⾼⾎圧があり検査前確率が⾼い患者に対して筆者は⽤いない ・治療︓CPAP(保険適⽤基準に注意)、減量などの⽣活習慣改善

  • #21.

    腎実質性⾼⾎圧 21 定義︓腎疾患によって引き起こされる⾼⾎圧 全例でスクリーニングを実施︓ ⾎清クレアチニン 尿⼀般定性、尿沈渣 *尿蛋⽩(+)であれば 尿蛋⽩定量、尿クレアチニンを追加 以下に該当すれば専⾨医へ紹介 ・⾼⾎圧に先⾏する腎機能障害の存在 ・(尿蛋⽩/尿クレアチニン)︓1.0g/gCr以上 ・尿潜⾎、変形⾚⾎球、円柱(硝⼦円柱以外) ・⾼⾎圧に⻑期間罹患していると腎機能が低下するが、 その場合の尿蛋⽩は多くても1⽇1.0g以下(ほとんどの場合は1⽇0.5g以下)である

  • #22.

    腎⾎管性⾼⾎圧 22 疑う所⾒ ⼆次性⾼⾎圧を⽰唆する所⾒がある場合 ・30歳未満での発症 ・普通〜痩せ体型 ・急激に発症した⾼⾎圧 より強く疑う所⾒ ・腹部⾎管雑⾳ ・ ACE阻害薬・ARB投与後の 急激な腎機能悪化 ・治療︓薬物療法(ACE阻害薬/ARB) ⾎⾏再建術(専⾨医と相談) 検査 ・腎動脈エコー 以下の条件を満たすと陽性 PSV>100-200 cm/秒 [感度85%、特異度92%] *強く疑うが腎動脈の狭窄が 確定できない場合は 腎 動 脈 M R A や 造 影 C TA を 実 施 *AJR Am J Roentgenol. 2007 Mar;188(3):798-811 *両側腎動脈狭窄の場合は禁忌

  • #23.

    原発性アルドステロン症 23 疑う所⾒ 検査 ・低カリウム⾎症(利尿薬投与例含む) ・⾎漿アルドステロン濃度 (PAC [CLEIA法]) ・40歳未満 ・⾎漿レニン活性 (PRA) ・150/100mmHg以上 ・治療抵抗性⾼⾎圧 ・睡眠時無呼吸症候群、副腎腫瘍、 若年の脳⾎管障害などの合併症 以下の条件を満たすと陽性であり専⾨医へ紹介 ARR [PAC /PRA ]>200 + PAC>60 (pg/mL) *2021年4⽉に測定⽅法の変更があり、 ARR=100〜200も暫定的に陽性とみなす * 原発性アルドステロン症診療ガイドライン2021 ・検査は早朝空腹時、起床後2時間以降、安静臥位15分後に実施 ・降圧薬の種類により検査結果に影響する可能性があるため Ca拮抗薬、α遮断薬に変更した後に検査を⾏う ・治療︓MR拮抗薬(スピロノラクトンなど)、副腎摘出術など

  • #24.

    甲状腺機能亢進症/低下症 ・以下の所⾒があればTSH、FT3、FT4を測定する 甲状腺機能亢進症︓頻脈、発汗、体重減少、コレステロール低値 甲状腺機能低下症︓徐脈、浮腫、活動性減少、脂質・CK・LDH⾼値 薬剤誘発性⾼⾎圧 ・⾼⾎圧全例で内服薬、市販薬・サプリ・健康⾷品の使⽤を確認する ・原因薬剤︓NSAIDs、⽢草(漢⽅などに含有)、ステロイド、 シクロスポリン、エリスロポエチン、経⼝避妊薬、 交感神経刺激薬(抗うつ薬など)、分⼦標的薬など 24

  • #25.

    ⾼⾎圧対応フローチャート 健康診断で⾼⾎圧 ー 基本の対応 ー ー ⼆次性⾼⾎圧の確認 ー 治療⽬的 スクリーニング 脳卒中・⼼疾患による 死亡リスクを下げるため ⾎算、Cr、Na、K、Ca GLU、HbA1c LDL-Chol、TSH 尿⼀般定性、尿沈渣、⼼電図 降圧⽬標 ⽬標⾎圧 75歳未満 糖尿病患者 抗⾎栓薬服⽤中 など 75歳以上 など 診察室⾎圧 家庭⾎圧 <130/80 <125/75 <140/90 <135/85 治療⽅法 ⽣活指導+薬物療法 確認する疾患 □ □ □ □ □ □ 睡眠時無呼吸症候群 腎実質性⾼⾎圧 腎⾎管性⾼⾎圧 原発性アルドステロン症 甲状腺機能亢進症/低下症 薬剤誘発性⾼⾎圧 3種類以上の降圧薬併⽤も⽬標⾎圧に達していない ・『治療抵抗性⾼⾎圧を疑った時のチェックリスト』確認 ・稀な⼆次性⾼⾎圧を確認

  • #26.

    稀な⼆次性⾼⾎圧を確認 26 3種類以上の降圧薬併⽤も⽬標⾎圧に達していない場合は 稀な⼆次性⾼⾎圧の原因を確認することとなる 合わせて『治療抵抗性⾼⾎圧を疑った時のチェックリスト』を⽤いて ⼆次性⾼⾎圧以外の要因で治療効果が 得られていない可能性がないか確認する 特に治療抵抗性⾼⾎圧患者の80%が適切に内服できていないとの 報告もあり、処⽅通りに服薬できているか注意して確認する * Hypertension. 2017 Apr;69(4):678-684.

  • #27.

    治療抵抗性⾼⾎圧を疑った時のチェックリスト 要因 27 チェック事項 本当に治療抵抗性⾼⾎圧か □ カフが⼩さすぎないか︖(カフ幅は上腕周囲の40%、かつ、⻑さは少なくとも上腕周囲を80%取り囲むものを使⽤する) ⾎圧測定とその評価は正しいか □ 家庭⾎圧を正しく測定できているか︖(家庭⾎圧計の精度、⾎圧の⾃⼰測定⼿技) □ 診察室外⾎圧も本当に治療抵抗性︖(⽩⾐⾼⾎圧、⽩⾐効果) □ 残薬はないか︖ 処⽅通りに服薬できているか □ 患者の服薬に対する意識に問題はないか︖(特定の薬剤を飲まない、服薬回数を意識的に減らしている、など患者による⾃⼰調節) □ 認知機能に問題はないか︖ □ 3剤以上処⽅されているか︖ □ 3剤は異なる作⽤機序を持つ降圧薬の組み合わせか︖ 薬剤の処⽅は適切か □ 利尿薬は処⽅されているか︖(腎機能低下例ではサイアザイド系利尿薬ではなくループ利尿薬が必要) □ 処⽅量は適切か︖(利尿薬は少量、ほかは忍容性がある範囲で通常量~最⼤⽤量) □ 薬効の持続は⼗分︖(1⽇1回型か︖1⽇1回型でも分2が良い場合や夜の内服に移すことが良い場合もある) 治療抵抗性⾼⾎圧の要因のスクリーニング □ ⾷塩の過剰摂取はないか︖ ⽣活習慣修正はできているか □ 肥満の影響は︖ □ 節酒はできている︖ □ 睡眠不良や精神的・⾁体的ストレスは︖ ⾎圧を上昇させうる薬剤や⾷品はないか □ NSAIDs、⽢草、ステロイド、シクロスポリン、エリスロポエチン、経⼝避妊薬、交感神経刺激薬(抗うつ薬など)、分⼦標的薬など ⼆次性⾼⾎圧はないか □ 有病率の⾼い⼆次性⾼⾎圧は除外できているか * ⾼⾎圧診療ガイド2020 ⼀部改変

  • #28.

    稀な⼆次性⾼⾎圧の原因疾患 ▶Cushing症候群 中⼼性肥満、満⽉様顔貌、多⽑症が頻度の⾼い所⾒である スクリーニング︓1mgデキサメタゾン抑制試験 (前⽇23時にデキサメタゾン1mg内服、翌⽇8-9時にコルチゾール測定) 早朝コルチゾール>1.8μg/dLで専⾨医へ紹介 ▶褐⾊細胞腫 頭痛、動悸、発汗過多を三徴とする スクリーニング︓24時間蓄尿における尿中メタネフリン分画 *降圧薬の多くが検査結果に影響を及ぼすため、予め確認する ▶⼤動脈縮窄症 前胸部〜背部の⾎管雑⾳、上下肢の⾎圧差で疑い、検査は胸腹部CT、MRA、⾎管造影 ▶副甲状腺機能亢進症 ⾼カルシウム⾎症、低リン⾎症で疑い、検査はintact PTH 28

  • #29.

    『⾼⾎圧治療ガイドライン2019』の記載を中⼼に 健康診断後の⾼⾎圧の対応をまとめました。 ご⾃⾝の働いているセッティングによって 今回紹介した⼿順と異なる点も多いかと思います。 総合病院であれば「稀な⼆次性⾼⾎圧」が受診する 検査前確率が⾼いかもしれません。 医療機関へのアクセスが良い地域であれば ⽣活指導のみで頻回にフォローする場合もあります。 それぞれのセッティングで⾼⾎圧の診療を⾏なうにあたり、 本スライドが参考になれば幸いです。

  • #30.

    参考⽂献 30 ・⾼⾎圧治療ガイドライン2019 ・⾼⾎圧診療ガイド2020 ・ホスピタリストのための内科診療フローチャート 第2版 ・ジェネラリストのための内科診断リファレンス ・トップジャーナルから学ぶ総合診療アップデート 第3版 ・動脈硬化御三家 Gノート2018

  • #31.

    参考⽂献 31

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