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重症COVID-19病棟での意思決定支援 - 家族支援チームとの協働 - L001.png

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COVID-19の症状

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山田悠史

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オンライン診療で何ができるのか

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内田直樹

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投稿者

黒田浩一

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テキスト全文

  • #1.

    重症COVID-19病棟での意思決定支援 家族支援チームとの協働 日本集中治療医学会 第7回関西支部学術集会(2023.7.29)会長企画「急性期医療でACPは可能か? ~倫理と現実のあいだ~」 神戸市立医療センター中央市民病院 感染症科 黒田浩一

  • #2.

    日本集中治療医学会 第7回関西支部学術集会COI開示 発表者名:黒田浩一 講演内容に関連し、発表者に開示すべきCOI関係にある企業などはありません。 2

  • #3.

    「COVID-19に対する薬物治療の考え方」 日本感染症学会 COVID-19治療薬タスクフォース 3

  • #4.

    本日の内容 1. 導入 - COVID-19の特殊性 - 2. 患者への病状説明・意思決定支援 - 家族支援チームとの協働 - - 病状説明の際に常に意識すべき重要なこと - 事前準備 - 直接面会はとても重要である - 病状説明の実際と工夫 - 家族支援チームとの協働 4

  • #5.

    1. 導入 - COVID-19の特殊性 - 5

  • #6.

    COVID-19は「ふつう」の病気になった 2023年7月現在... 感染症法 5類感染症 人々の 意識 致命率 重症化率 オミクロン以前(~2021年12月)は、特にワクチン非接種者で特別な感染症であった 6

  • #7.

    第5波までは... ADL自立の比較的若年者 (40~70歳) 致死的な肺炎 経験/evidence不足 臨床経過・予後(QOL・生存) 推定が難しい 医療逼迫と厳密な感染対策 業務量の著増 感染対策上の問題 直接面会が難しい 7

  • #8.

    意思決定支援が特に重要な状況であった 正しい情報の不足 インフォデミック 面会禁止 社会的スティグマ 未知の感染症への不安・恐怖 病状の理解不足や誤解が生じやすかった 患者と家族の接触機会の消失 病状の理解不足や誤解が生じやすかった 医療従事者からの正しい情報の提供・精神的サポート・意思決定支援が非常に重要な状況 冷静な判断が難しかった 8

  • #9.

    意思決定支援の障壁 患者の価値観の確認や意思決定支援の阻害要素が複数存在した 知識不足 経験不足 面会禁止 業務負担の増大 病状説明の「質」に影響した 正しさ、わかりやすさ、説明者の自信 etc 医師・病棟看護師と家族の接触機会の減少 家族ケアの機会消失 病状説明機会の減少 病棟看護師による病状説明の同席が難しい 医療チーム内の連携不足 9

  • #10.

    何か足りなかったか? 適切な病状説明 - 理解しやすい説明 - 最新の知見(エビデンス・社会のルール)を反映している説明 - 適切なタイミングの説明 病状だけでなく、社会状況についても配慮した家族ケア 直接面会するシステム 10

  • #11.

    2020年11月から本格的に感染症科が診療に関与 院内感染対策がひと段落した 当時、中心となって診療する科が不在であった 「専門診療科」としての役割を果たすべきと考えた 行ったこと - 業務分担を明確にした - 病状説明・意思決定支援の機会を増やした 11

  • #12.

    業務分担 意図したものではない要素もあったが、以下のように落ち着いた 方針決定・病状説明 主治医(感染症科・呼吸器内科) ※他診療科からの人的支援あり 全身管理 集中治療医・ICU看護師 家族ケア 家族支援チーム・主治医 意思決定支援 主治医・家族支援チーム 多職種カンファ 12

  • #13.

    病状説明・意思決定支援の機会を増やした 対面での面談 週1~2回(家族支援チーム同席) 平日は毎日電話で病状説明 TV面会の充実・予約システムの構築(2020.11~) レッドゾーンでの直接面会を可能にした(2020.12~) 13

  • #14.

    未知の感染症はいずれまた出現する 本日は、重症COVID-19患者がICUを占有していた時期(第3~5波)に、私たちが実践していた意思決定支援についてお話させていただく。特に第3波の途中までは、現在のように感染対策・治療・予防法が確立されておらず、手探り状態であった。 未知の感染症によるパンデミックはいずれやってくるため、その時の参考になれば幸いである。なお、パンデミック期であっても、意思決定支援の基本は、日常診療のそれとまったく同じである。 14

  • #15.

    2. 患者への病状説明・意思決定支援 - 家族支援チームとの協働 - 15

  • #16.

    このセクションの内容 病状説明の際に常に意識すべき重要なこと 事前準備 病状説明の実際と工夫 直接面会はとても重要である 家族支援チームとの協働 16 家族支援チーム 家族支援チーム 家族支援チーム

  • #17.

    1. 病状説明の際に常に意識すべき重要なこと わかりやすい病状説明が一番重要(知識・経験・練習が必要)  状況を理解することがすべての前提となる(全てはここから始まる) 事前準備 患者の価値観・(推定)意思の確認 全体的な方向性を、患者・家族と医療従事者で決定する 具体的な方針は医療者側が提案する(患者・家族に丸投げしない) 17 家族支援チーム 家族支援チーム

  • #18.

    家族と医療従事者の対立の根本的な原因 説明不足・説明がわかりにくい(医師側の知識・理解不足) 患者・家族の価値観を尊重しない、意思を確認しない - 一方的に治療方針を決定する - 家族の推定意思を信用しない 感情に配慮していない 倫理的な問題は、実際にはほとんどなかった 18

  • #19.

    医師の説明がわかりにくい 多くの場合、医師の知識不足・理解不足や対話能力が原因 患者・家族が病状を理解できていないことが原因で対立する 19

  • #20.

    患者・家族の価値観・意思を尊重しない 自分たちの「常識」を押し付けていないか? 医療従事者の「ダブル・スタンダード」  「自身と同じ価値観」の患者・家族の価値観を尊重しない 20

  • #21.

    倫理的な問題 本人の希望と家族の希望が全く逆であった事例  - 本人(挿管中)は治療希望、家族は治療に強く拒否的  - それぞれが許容できるQOLが異なっていた ECMOが延命治療となってしまった事例 本人の意思不明、かつ、代理意思決定者不在(稀) 医療従事者が、本人と家族の価値観を受け入れ難い事例 21 どの患者を入院させるかというトリアージは、十分な倫理的検討はなされずに、行政サイドの判断で行われた 「終末期」ではないのに withhold/withdraw を希望する患者と家族

  • #22.

    2. 事前準備 22 面談の目標を決める(必ず医療側で目標と説明する内容を共有する) ①診断や経過の説明 ②推定意思の確認・治療方針の決定 参加者の決定 患者側 どの家族を呼ぶか 代理意思決定者・家族関係 オンライン機器の活用 医療者側の同席者 家族支援チーム(看護師・MSW) 病棟看護師 集中治療医

  • #23.

    人が多ければよいというわけではない 事前に役割分担を共有した上で、適切な人員でのぞむ 23

  • #24.

    3. 病状説明の実際と工夫 家族面談(病状説明)の流れ - 自己紹介をした後で、まず最初に、話し合う内容を共有する - 理解状況を確認する - わかりやすく、ゆっくりと、自信をもって説明する - 適宜、要約しつつ、質問がないか確認する - 質問には、簡潔かつ明確に回答する 24 家族支援チームの同席

  • #25.

    病状説明の要点 25 わかりやすい説明を心がける 丁寧な字で紙に書く・録音許可 必要な内容に限定する 今後の見通しを必ず説明する 感情への対応・気配り 患者に対して興味を持つ 共感する 感情移入はしない 患者の価値観を確認する それを基に方向性を決定する 価値観に合った治療方針に提案 「各」医療行為の希望の確認は不要 重大な決定は2回目に 家族支援チーム 家族支援チーム

  • #26.

    説明は、紙に書く・録音希望あれば許可する 口頭の説明だけだと、忘れてしまう 非専門医が知らない内容を、患者・家族が記憶できると思いますか? 26

  • #27.

    今度の見通しをわかる範囲で必ず話す 患者・家族がもっとも知りたいことの1つである わからないことは、わからないとはっきり伝える 27

  • #28.

    COVID-19の特殊性 パンデミック期の重症COVID-19の病状説明・意思決定支援は、常時の重症感染症の患者と基本は同じである 28 家族自身について 感染対策 患者宅での対応 体調相談 インフォデミック対策 情報リテラシー 臨床経過・治療 死亡退院後の対応 スティグマへの対応 共感 類似例の情報共有 対処法

  • #29.

    本人の意思をできる限り直接確認する 挿管前の本人と可能な限り時間をとって面談する - ベッドサイドのイスに座って、30~45分くらい その場で決められないことは、家族と方針を決めて良いか確認する 本人と家族の話し合いの機会を持てるように工夫する - スマートフォン(LINE・Facetime・通話)、直接面会 29

  • #30.

    本人の意思が不明の場合 家族の希望、ではなく、患者の価値観にあった治療を模索する 家族による推定が難しい場合でも、本人の生き方から推定できるよう、医療側は支援を行う(対話・質問)。家族に全ての責任を負わせない。 家族の推定を手伝いつつ、医療チームで医学的に妥当と考えられる治療を検討して提案する。その場合、多職種カンファレンスが有用である(内科医、集中治療医、病棟看護師、家族支援チーム、リハビリ技師、MSW、病院管理職など)。 30 家族支援チーム

  • #31.

    代理意思決定支援時の注意点 31 本人の価値観にあった治療 共に考える (家族の希望ではない) 家族ケア 家族の精神的負担が大きい 共感と支援 生死を決める判断 代理人に丸投げしない 患者の価値観にあった 医学的に妥当な治療 医療側から提案・推奨する 家族支援チーム

  • #32.

    治療の差し控え・治療中止を検討する際 治療の差し控え・治療中止は、可能な限り、チーム(多職種)で検討する 患者の考える最低限のQOLで余命が望める可能性があるか どうやって生きていきたいか 必ずしも「終末期」(3学会合同ガイドライン)とは限らない 症状緩和治療はしっかりと行う(治療の最適化) 何もしない訳ではない(「撤退」という言葉は使わない) 患者の尊厳、快適さ、症状緩和を大切にしていくことを伝える 32

  • #33.

    4. 直接面会はとても重要である 患者と家族が直接話し合うことができる(時間的猶予がある場合) 家族が本人の状態を理解しやすくなる - Web画面上では、患者の状態を誤解することがある(e.g. 顔色がよい) 直接、見て・聞いて・触れることは非常に重要である オンライン面会は、家族の満足度の向上に有用ではあるが、直接面会に代わるものではない 33 J Pain Symptom Manage. 60(2):e79-e80, 2020.

  • #34.

    5. 家族支援チームとの協働 病状説明時の同席 - 説明中の家族の様子の評価(理解しているか、表情・感情の動き) - わかりにくい説明にブレーキを掛ける - わかりにくい説明に対して、患者に代わって質問する役割 34 家族支援チーム

  • #35.

    5. 家族支援チームとの協働 病状説明後の家族面談 - 病状説明の理解状況の把握と補足説明(再度説明する機会を調整) - 患者は、医師には、なかなか「わかりません」とはいえない - 患者は、心のうち・感情を表出するハードルは高い 病状説明の話し方・内容についてのフィードバック 35 家族支援チーム コミュニケーションは「技術」であると言われるが... そのためには多くの経験が必要であり、体験を経験にするために振り返りとfeedbackが必要

  • #36.

    36 事例 2回目以降の病状説明時は 経過・予想される経過と対応・方針について話す

  • #37.

    医師の仕事でもっとも重要なこと 医学的適応を適切に評価すること 見通しも含めて、病状を、患者・家族に理解できるように説明すること 患者の価値観にあった、医学的に妥当な治療を提案すること 患者に興味を持ち、最後までサポートしつづけること 他の専門職をリスペクトして、協働すること(お任せすること) 診療の責任を引き受けること 37

  • #38.

    本日の内容 1. 導入 - COVID-19の特殊性 - 2. 患者への病状説明・意思決定支援 - 家族支援チームとの協働 - - 病状説明の際に常に意識すべき重要なこと - 事前準備 - 直接面会はとても重要である - 病状説明の実際と工夫 - 家族支援チームとの協働 38

重症COVID-19病棟での意思決定支援 - 家族支援チームとの協働 -

  • 救急科

  • 緩和ケア科

  • 感染症科

  • ACP
  • 集中治療
  • COVID-19
  • 意思決定支援
  • 終末期ケア
  • 家族ケア

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投稿者プロフィール
黒田浩一

神戸市立医療センター中央市民病院

概要

2023年7月末の日本集中治療医学会 第7回関西支部学術集会の会長(当院麻酔科部長の先生)企画「急性期医療でACPは可能か? ~倫理と現実のあいだ~」で、「重症COVID-19病棟での意思決定支援(家族支援チームとの協働)」というテーマで、ちょろっと10分程度、個人的なやり方をお話することになりました。はじめての集中治療関連の学会への参加です。なお、私は、まったく臨床倫理や意思決定支援や終末期医療の専門家ではありませんので、その点はご了承ください。

完全experience-basedの「私のやり方」の発表(小中学生の発表会に近い)なのですが、「それでオーケーだYO!」とのことでしたので、引き受けさせていただきました。家族支援チームは、最近診療報酬がついた「入院時重症患者対応メディエーター」のようなものです(多分)。パンデミック期に、未知の部分が多く、感染力が高く、社会的な差別が問題となった、重症呼吸器感染症の患者の主治医をした内科医が、どのように考え、説明してきたか、という内容にしたつもりです。せっかく作ったので、共有させていただきます。皆様の勉強にならない内容ですが、もし読まれた方がいましたら、ご意見いただければ幸いです。

本スライドの対象者

医学生/研修医/専攻医/専門医

テキスト全文

  • #1.

    重症COVID-19病棟での意思決定支援 家族支援チームとの協働 日本集中治療医学会 第7回関西支部学術集会(2023.7.29)会長企画「急性期医療でACPは可能か? ~倫理と現実のあいだ~」 神戸市立医療センター中央市民病院 感染症科 黒田浩一

  • #2.

    日本集中治療医学会 第7回関西支部学術集会COI開示 発表者名:黒田浩一 講演内容に関連し、発表者に開示すべきCOI関係にある企業などはありません。 2

  • #3.

    「COVID-19に対する薬物治療の考え方」 日本感染症学会 COVID-19治療薬タスクフォース 3

  • #4.

    本日の内容 1. 導入 - COVID-19の特殊性 - 2. 患者への病状説明・意思決定支援 - 家族支援チームとの協働 - - 病状説明の際に常に意識すべき重要なこと - 事前準備 - 直接面会はとても重要である - 病状説明の実際と工夫 - 家族支援チームとの協働 4

  • #5.

    1. 導入 - COVID-19の特殊性 - 5

  • #6.

    COVID-19は「ふつう」の病気になった 2023年7月現在... 感染症法 5類感染症 人々の 意識 致命率 重症化率 オミクロン以前(~2021年12月)は、特にワクチン非接種者で特別な感染症であった 6

  • #7.

    第5波までは... ADL自立の比較的若年者 (40~70歳) 致死的な肺炎 経験/evidence不足 臨床経過・予後(QOL・生存) 推定が難しい 医療逼迫と厳密な感染対策 業務量の著増 感染対策上の問題 直接面会が難しい 7

  • #8.

    意思決定支援が特に重要な状況であった 正しい情報の不足 インフォデミック 面会禁止 社会的スティグマ 未知の感染症への不安・恐怖 病状の理解不足や誤解が生じやすかった 患者と家族の接触機会の消失 病状の理解不足や誤解が生じやすかった 医療従事者からの正しい情報の提供・精神的サポート・意思決定支援が非常に重要な状況 冷静な判断が難しかった 8

  • #9.

    意思決定支援の障壁 患者の価値観の確認や意思決定支援の阻害要素が複数存在した 知識不足 経験不足 面会禁止 業務負担の増大 病状説明の「質」に影響した 正しさ、わかりやすさ、説明者の自信 etc 医師・病棟看護師と家族の接触機会の減少 家族ケアの機会消失 病状説明機会の減少 病棟看護師による病状説明の同席が難しい 医療チーム内の連携不足 9

  • #10.

    何か足りなかったか? 適切な病状説明 - 理解しやすい説明 - 最新の知見(エビデンス・社会のルール)を反映している説明 - 適切なタイミングの説明 病状だけでなく、社会状況についても配慮した家族ケア 直接面会するシステム 10

  • #11.

    2020年11月から本格的に感染症科が診療に関与 院内感染対策がひと段落した 当時、中心となって診療する科が不在であった 「専門診療科」としての役割を果たすべきと考えた 行ったこと - 業務分担を明確にした - 病状説明・意思決定支援の機会を増やした 11

  • #12.

    業務分担 意図したものではない要素もあったが、以下のように落ち着いた 方針決定・病状説明 主治医(感染症科・呼吸器内科) ※他診療科からの人的支援あり 全身管理 集中治療医・ICU看護師 家族ケア 家族支援チーム・主治医 意思決定支援 主治医・家族支援チーム 多職種カンファ 12

  • #13.

    病状説明・意思決定支援の機会を増やした 対面での面談 週1~2回(家族支援チーム同席) 平日は毎日電話で病状説明 TV面会の充実・予約システムの構築(2020.11~) レッドゾーンでの直接面会を可能にした(2020.12~) 13

  • #14.

    未知の感染症はいずれまた出現する 本日は、重症COVID-19患者がICUを占有していた時期(第3~5波)に、私たちが実践していた意思決定支援についてお話させていただく。特に第3波の途中までは、現在のように感染対策・治療・予防法が確立されておらず、手探り状態であった。 未知の感染症によるパンデミックはいずれやってくるため、その時の参考になれば幸いである。なお、パンデミック期であっても、意思決定支援の基本は、日常診療のそれとまったく同じである。 14

  • #15.

    2. 患者への病状説明・意思決定支援 - 家族支援チームとの協働 - 15

  • #16.

    このセクションの内容 病状説明の際に常に意識すべき重要なこと 事前準備 病状説明の実際と工夫 直接面会はとても重要である 家族支援チームとの協働 16 家族支援チーム 家族支援チーム 家族支援チーム

  • #17.

    1. 病状説明の際に常に意識すべき重要なこと わかりやすい病状説明が一番重要(知識・経験・練習が必要)  状況を理解することがすべての前提となる(全てはここから始まる) 事前準備 患者の価値観・(推定)意思の確認 全体的な方向性を、患者・家族と医療従事者で決定する 具体的な方針は医療者側が提案する(患者・家族に丸投げしない) 17 家族支援チーム 家族支援チーム

  • #18.

    家族と医療従事者の対立の根本的な原因 説明不足・説明がわかりにくい(医師側の知識・理解不足) 患者・家族の価値観を尊重しない、意思を確認しない - 一方的に治療方針を決定する - 家族の推定意思を信用しない 感情に配慮していない 倫理的な問題は、実際にはほとんどなかった 18

  • #19.

    医師の説明がわかりにくい 多くの場合、医師の知識不足・理解不足や対話能力が原因 患者・家族が病状を理解できていないことが原因で対立する 19

  • #20.

    患者・家族の価値観・意思を尊重しない 自分たちの「常識」を押し付けていないか? 医療従事者の「ダブル・スタンダード」  「自身と同じ価値観」の患者・家族の価値観を尊重しない 20

  • #21.

    倫理的な問題 本人の希望と家族の希望が全く逆であった事例  - 本人(挿管中)は治療希望、家族は治療に強く拒否的  - それぞれが許容できるQOLが異なっていた ECMOが延命治療となってしまった事例 本人の意思不明、かつ、代理意思決定者不在(稀) 医療従事者が、本人と家族の価値観を受け入れ難い事例 21 どの患者を入院させるかというトリアージは、十分な倫理的検討はなされずに、行政サイドの判断で行われた 「終末期」ではないのに withhold/withdraw を希望する患者と家族

  • #22.

    2. 事前準備 22 面談の目標を決める(必ず医療側で目標と説明する内容を共有する) ①診断や経過の説明 ②推定意思の確認・治療方針の決定 参加者の決定 患者側 どの家族を呼ぶか 代理意思決定者・家族関係 オンライン機器の活用 医療者側の同席者 家族支援チーム(看護師・MSW) 病棟看護師 集中治療医

  • #23.

    人が多ければよいというわけではない 事前に役割分担を共有した上で、適切な人員でのぞむ 23

  • #24.

    3. 病状説明の実際と工夫 家族面談(病状説明)の流れ - 自己紹介をした後で、まず最初に、話し合う内容を共有する - 理解状況を確認する - わかりやすく、ゆっくりと、自信をもって説明する - 適宜、要約しつつ、質問がないか確認する - 質問には、簡潔かつ明確に回答する 24 家族支援チームの同席

  • #25.

    病状説明の要点 25 わかりやすい説明を心がける 丁寧な字で紙に書く・録音許可 必要な内容に限定する 今後の見通しを必ず説明する 感情への対応・気配り 患者に対して興味を持つ 共感する 感情移入はしない 患者の価値観を確認する それを基に方向性を決定する 価値観に合った治療方針に提案 「各」医療行為の希望の確認は不要 重大な決定は2回目に 家族支援チーム 家族支援チーム

  • #26.

    説明は、紙に書く・録音希望あれば許可する 口頭の説明だけだと、忘れてしまう 非専門医が知らない内容を、患者・家族が記憶できると思いますか? 26

  • #27.

    今度の見通しをわかる範囲で必ず話す 患者・家族がもっとも知りたいことの1つである わからないことは、わからないとはっきり伝える 27

  • #28.

    COVID-19の特殊性 パンデミック期の重症COVID-19の病状説明・意思決定支援は、常時の重症感染症の患者と基本は同じである 28 家族自身について 感染対策 患者宅での対応 体調相談 インフォデミック対策 情報リテラシー 臨床経過・治療 死亡退院後の対応 スティグマへの対応 共感 類似例の情報共有 対処法

  • #29.

    本人の意思をできる限り直接確認する 挿管前の本人と可能な限り時間をとって面談する - ベッドサイドのイスに座って、30~45分くらい その場で決められないことは、家族と方針を決めて良いか確認する 本人と家族の話し合いの機会を持てるように工夫する - スマートフォン(LINE・Facetime・通話)、直接面会 29

  • #30.

    本人の意思が不明の場合 家族の希望、ではなく、患者の価値観にあった治療を模索する 家族による推定が難しい場合でも、本人の生き方から推定できるよう、医療側は支援を行う(対話・質問)。家族に全ての責任を負わせない。 家族の推定を手伝いつつ、医療チームで医学的に妥当と考えられる治療を検討して提案する。その場合、多職種カンファレンスが有用である(内科医、集中治療医、病棟看護師、家族支援チーム、リハビリ技師、MSW、病院管理職など)。 30 家族支援チーム

  • #31.

    代理意思決定支援時の注意点 31 本人の価値観にあった治療 共に考える (家族の希望ではない) 家族ケア 家族の精神的負担が大きい 共感と支援 生死を決める判断 代理人に丸投げしない 患者の価値観にあった 医学的に妥当な治療 医療側から提案・推奨する 家族支援チーム

  • #32.

    治療の差し控え・治療中止を検討する際 治療の差し控え・治療中止は、可能な限り、チーム(多職種)で検討する 患者の考える最低限のQOLで余命が望める可能性があるか どうやって生きていきたいか 必ずしも「終末期」(3学会合同ガイドライン)とは限らない 症状緩和治療はしっかりと行う(治療の最適化) 何もしない訳ではない(「撤退」という言葉は使わない) 患者の尊厳、快適さ、症状緩和を大切にしていくことを伝える 32

  • #33.

    4. 直接面会はとても重要である 患者と家族が直接話し合うことができる(時間的猶予がある場合) 家族が本人の状態を理解しやすくなる - Web画面上では、患者の状態を誤解することがある(e.g. 顔色がよい) 直接、見て・聞いて・触れることは非常に重要である オンライン面会は、家族の満足度の向上に有用ではあるが、直接面会に代わるものではない 33 J Pain Symptom Manage. 60(2):e79-e80, 2020.

  • #34.

    5. 家族支援チームとの協働 病状説明時の同席 - 説明中の家族の様子の評価(理解しているか、表情・感情の動き) - わかりにくい説明にブレーキを掛ける - わかりにくい説明に対して、患者に代わって質問する役割 34 家族支援チーム

  • #35.

    5. 家族支援チームとの協働 病状説明後の家族面談 - 病状説明の理解状況の把握と補足説明(再度説明する機会を調整) - 患者は、医師には、なかなか「わかりません」とはいえない - 患者は、心のうち・感情を表出するハードルは高い 病状説明の話し方・内容についてのフィードバック 35 家族支援チーム コミュニケーションは「技術」であると言われるが... そのためには多くの経験が必要であり、体験を経験にするために振り返りとfeedbackが必要

  • #36.

    36 事例 2回目以降の病状説明時は 経過・予想される経過と対応・方針について話す

  • #37.

    医師の仕事でもっとも重要なこと 医学的適応を適切に評価すること 見通しも含めて、病状を、患者・家族に理解できるように説明すること 患者の価値観にあった、医学的に妥当な治療を提案すること 患者に興味を持ち、最後までサポートしつづけること 他の専門職をリスペクトして、協働すること(お任せすること) 診療の責任を引き受けること 37

  • #38.

    本日の内容 1. 導入 - COVID-19の特殊性 - 2. 患者への病状説明・意思決定支援 - 家族支援チームとの協働 - - 病状説明の際に常に意識すべき重要なこと - 事前準備 - 直接面会はとても重要である - 病状説明の実際と工夫 - 家族支援チームとの協働 38

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