医師・医学生のためのスライド共有

Antaa Slide

お知らせ

ログイン
診療科
乳酸アシドーシスを予防するために〜Lactateを始めからていねいに〜前編 L1.png

すでにアカウントをお持ちの方はこちら

関連テーマから出会おう。

閲覧履歴からのおすすめ

Antaa Slide
アナフィラキシーのRRS対応

アナフィラキシーのRRS対応

かんぱち

続けて閲覧
低ナトリウム血症の救急対応

低ナトリウム血症の救急対応

かんぱち

続けて閲覧
投稿者

masa1019@救急科、内科

1/29

テキスト全文

  • #1.

    乳酸アシドーシスを予防するために 〜Lactateを始めからていねいに〜 前編 masa1019@救急科集中治療、内科

  • #2.

    ⽬次 〜前編〜 • 乳酸値の解釈について • 検査値の評価 • 化学式 • ターニケット使⽤の影響 • ⾝体における乳酸の機能について • 動脈⾎ VS 静脈⾎ • 恒常性 過去と現在 • 代謝について • 乳酸アシドーシスの分類 • ⼗分な酸素化とは • 組織(臓器潅流)とは • 乳酸リンゲル液の影響 • 敗⾎症における乳酸の産⽣・排泄 • 微⼩循環不全の影響 • Occult Hypoperfusionと Cryptic Shock

  • #3.

    本スライドの要点 ① 乳酸の発⽣機序︓ 好気性代謝でも産⽣され、主に肝臓で代謝される ② 乳酸アシドーシスになる前にできること︓ Lactate(乳酸)上昇はどのような状態においても重症である認識 をし、原因検索を⾏うべし ③ 乳酸上昇の原因︓ 原因検索は組織灌流が⼗分か否かでアプローチし、不⼗分な場合は 酸素需要バランスを改善させる

  • #4.

    乳酸値の解釈について • 救急外来における乳酸値の測定は、道標と混乱の両⽅の原因と なっています • 乳酸は正しく解釈されれば有⽤なツールとなります • しかし、不適切な解釈は臨床医を惑わせ、不適切なケアや不必 要な治療を引き起こす可能性があります

  • #5.

    化学式 • 乳酸の酸解離定数(pKa)︓3.86 ⇛乳酸イオン︓乳酸=約3,000︓1 J Nutr. 2005;135:1619-1625. • 1 mmol/L = 9 mg/dL • 2つの⽴体異性体が存在 • ⼈間の体内で蓄積するのはほぼL-乳酸

  • #6.

    D-乳酸が蓄積する時は︖ • そもそも蓄積することは稀 • D-乳酸の測定は通常と異なる分析が必要、認識困難 • 短腸症候群︓炭⽔化物の消化低下⇛腸管内に糖残る⇛細菌がD乳酸作成、L-乳酸をD-乳酸に変換 • 糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)罹患やプロピレングリコー ル投与の時

  • #7.

    ⾝体における乳酸の機能について 特に重要な機能は ① 糖新⽣の炭素基質⇛⾎糖値を維持する ② 解糖やグリコーゲン分解が盛んな場所から、細胞呼吸が盛ん な場所に移動して酸化的リン酸化に関与 ⇓ Fed Proc. 1986;45:2924-2929. 『乳酸は重要なエネルギーシャトル』 CHEST 2016; 149(1):252-261

  • #8.

    ⾝体における乳酸の機能について • 敗⾎症やショックなどの代謝ストレス時において ⼼臓では代謝需要の最⼤60%、脳では最⼤25%に乳酸が使⽤される Crit Care. 2014;18:503. Circulation. 1987;75:533-541. • 脳の神経細胞や星状膠細胞(アストロサイト)は、常に乳酸を取り込 み、それを燃料として酸化してエネルギーを⽣成する J Cereb Blood Flow Metab. 2009;29:1121-1129.

  • #9.

    乳酸の恒常性 〜過去〜 • 主に⾻格筋における嫌気性代謝の 最終産物と考えられてきた QJM. 1923;16:135-171. • 酸化型NADを供給するためのコス トとして発⽣する単なる代謝廃棄 物と考えられていた Mitochondrion. 2014;17:76-100.

  • #10.

    乳酸の恒常性 〜現在〜 • ⾻格筋が完全に酸素化されている安静時や、嫌気性閾値に達し ていない活動時に、解糖によって乳酸が産⽣される Current Topics and Trends, Vol A, Respiration-Metabolism-Circulation. 1985:208-218. • ⽣理的ストレス状態では、カテコールアミン濃度が上昇し、 代謝状態が亢進する • グルコースの使⽤量が増加し、解糖系亢進、ピルビン酸濃度が 上昇、TCAサイクル周期の酸化能⼒を超え、続いて乳酸に変換 される Crit Care. 2014;18:503.

  • #11.

    安静時 代謝亢進時 「代謝亢進時は乳酸産⽣が増える」

  • #12.

    乳酸の代謝について① • ⽣理学的に安定した状態での乳酸回転速度は、約20mmol/kg/⽇ J Clin Invest. 1986;77:690-699. • 正常な状態では、体重関係なく乳酸は約1.5mol/⽇産⽣される CHEST 2016; 149(1):252-261 • 肝臓では、循環する乳酸の約70〜75%が代謝される Am J Physiol. 1993;264(4 pt 1):C761-C782. • 肝クリアランスの低下要因︓アシドーシス、肝硬変、低灌流など Biochem J. 1977;164:185-191.

  • #13.

    乳酸の代謝について② • 腎クリアランスは、乳酸除去の約25〜30%を占める • ⼤部分は腎⽪質で⾏われ、細胞は乳酸を取り込み、エネルギーと して酸化するか、糖新⽣としてグルコースを⽣成し、腎髄質また は全⾝循環に戻す • 腎クリアランスのうち、実際に尿中排泄されるのは10%程度 Am J Physiol. 1973;224:1463-1467.

  • #14.

    乳酸アシドーシスの分類 • 乳酸アシドーシス︓pH<7.35+⾎清乳酸値の上昇 ⾼乳酸⾎症︓pHに関係なく⾎清乳酸値 2 mmol/L以上 Crit Care. 2009;13:R90. • A型乳酸アシドーシス︓ 組織の灌流や酸素化が不⼗分な状態で乳酸が蓄積する • B型乳酸アシドーシス︓ 細胞内に低酸素が存在しないのに乳酸が上昇する Blackwell Scientific Publications; 1976.

  • #15.

    A型乳酸アシドーシス︓ 組織の灌流や酸素化が不⼗分な状態で乳酸が蓄積する 全⾝性 Shock(⼼原性、閉塞性、分布性、⾎液減少性)、⾼度な低⾎圧、重度 の貧⾎、⼼停⽌、外傷、⽕傷、⼀酸化炭素、シアン化物、褐⾊細胞腫、 鉄中毒 局所的 労作 ⼿⾜や腸間膜の虚⾎、局所的な外傷や⽕傷、コンパートメント症候群、 壊死性軟部組織感染症、微⼩循環障害 痙攣または発作、呼吸作業の増加、激しい運動

  • #16.

    B型乳酸アシドーシス︓ 組織の灌流や酸素化が⼗分なのに乳酸が上昇する 基礎疾患の進⾏ 悪性腫瘍、敗⾎症、チアミン⽋乏症、肝不全、腎不全、 褐⾊細胞腫、DKA、AKA メトホルミン、アセトアミノフェン、β2 -アゴニスト(ア 薬物または毒素性 ルブテロール、エピネフリンを含む)、交感神経刺激薬、 テオフィリン、ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤、アルコー ル、毒性アルコール、プロポフォール、シアン化物、⼀酸 化炭素、イソニアジド、リネゾリド 先天性代謝異常 ピルビン酸デヒドロゲナーゼ阻害症、ピルビン酸カルボキ シラーゼ阻害症、グルコース-6-ホスファターゼ阻害症、 先天性ミトコンドリア症

  • #17.

    ⼗分な酸素化とは • ⼗分な酸素化︓組織の酸素需要に対して、酸素供給が充⾜している状態 • 組織の酸素需要︓発熱、炎症、交感神経賦活により代謝が亢進すると需 要増加する。逆に低体温、鎮静下だと需要は減少する。 • 酸素供給︓ ≒⼼拍出量(l/min)×13.4×Hb(g/dl)×SaO2(動脈⾎酸素飽和度,ml/min) • ScvO2は酸素供給の間接的指標となる 酸素需要を減らし、酸素供給(⼼拍出量、Hb、SaO2)を増加させる

  • #18.

    組織(臓器)潅流とは • ⼗分な組織(臓器)潅流とは︓ 組織(臓器)にある⼀定以上の圧がかかっていること 腎臓なら尿量>0.5ml/kg/h,脳なら意識障害がないこと • ある⼀定以上の圧とは︓ MAP(平均動脈圧)≧ 65 mmHg ⾼⾎圧既往なら⾼めに設定すべし MAP>65mmHg⽬標に、尿量>0.5ml/kg/h維持する

  • #19.

    検査値の評価 • 採⾎後、⾚⾎球の代謝により乳酸が⽣成され続ける ⇛正確な評価のため、採⾎から15分以内に分析する • 予防⽅法︓ 1)⾎液サンプルを直ちに冷却する 2)細胞の代謝を阻害する防腐剤であるフッ化ナトリウムを含 む「グレートップ」採⾎管を使⽤する

  • #20.

    ターニケット使⽤の影響 • 虚⾎を誘発するために⼿術室で動脈側の⽌⾎帯を使⽤した際 ⽌⾎帯を使⽤してから75分後に⾎清乳酸値が直線的に上昇し、 ベースライン値の206%まで上昇した Anesthesiology. 2000;93:1407-1412. • 静脈の⽌⾎帯を装着しても、静脈の乳酸値は有意に変化しない CJEM. 2016;18:358-362.

  • #21.

    動脈⾎ VS 静脈⾎ • 正常範囲内であれば⾮常によく相関 r = 0.94 (95% CI, 0.91-0.96) Ann Emerg Med. 1997;29(4):479-483. • ⾼乳酸⾎症では軽度の不⼀致が⽣じる Eur J Clin Nutr. 2018;72:82-86. • 中⼼静脈の乳酸値は、動脈⾎の値と⾮常によく相関 Emerg Med J. 2006;23:622-624. • 動脈⾎と中⼼⾎の検体は全⾝を循環する乳酸を表し、末梢静脈の検体は 局所環境を反映する Vital signが崩れていないのに、静脈⾎乳酸が上昇している場合 動脈⾎で再検し、隠れた重症病態を⾒逃さないようにしている

  • #22.

    乳酸リンゲル液の影響 • 乳酸リンゲル液注⼊部位のすぐ近くで静脈穿刺を⾏った場合、 ⼀過性の上昇が観察されることがある N Engl J Med. 2018;378:819-828. • 肝不全または重⼤な肝低灌流の患者では、肝臓が追加の乳酸負 荷を代謝できないため、⾎清乳酸値が上昇する可能性がある Acta Anaesthesiol Scand. 2011;55:558-564.

  • #23.

    敗⾎症における乳酸の産⽣ • 産⽣源は肺>⾻格筋の2つ という有⼒な根拠あり Crit Care Resusc. 2000;2:181-187. • 乳酸産⽣にカテコールアミンによる好中球b­2受容体刺激が関与。 肺にはこれらの受容体が多数存在する、という仮説。 Metabolism. 1999;48:779-785. • 炎症細胞(WBC)の好気的解糖亢進 Metabolism. 1999;48:779-785. • 微⼩循環障害 という説 Acad Emerg Med. 2016;23:690-693.

  • #24.

    微⼩循環不全の影響 • DOB、アセチルコリン、ニトログリセリンは全⾝の⾎⾏動態とは無関係 に微⼩⾎管灌流を改善し、⾼乳酸⾎症と予後も改善する Crit Care Med 2013;41:791-9. • 微⼩循環障害や治療必要性については、 今後の研究が必要 Annals of Emergency Medicine, 2020-02-01, Volume 75, Issue 2, Pages 287-298, • 微⼩循環障害は治療により改善するかどうか、 わからない INTENSIVIST Vol.12 No.1 2020 ⽣理学

  • #25.

    Occult HypoperfusionとCryptic Shock • 定義︓⾎圧が正常なのに乳酸値上昇(4mmol/L)している状態 • 感染症が疑われる患者では、乳酸値の上昇が⾎圧に関係なく 28⽇死亡率の上昇と関連していた Intensive Care Med. 2007;33:1892-1899. • overt shock(輸液チャレンジ後なのに低⾎圧)の敗⾎症患者と ⽐較し、プロトコルに従った治療後の死亡率が同等 Resuscitation. 2011;82:1289-1293. 『感染+Lactate↑=重症』という認識を

  • #26.

    乳酸アシドーシスを予防するために 〜Lactateを始めからていねいに〜 前編 終了 masa1019@救急科集中治療、内科

乳酸アシドーシスを予防するために〜Lactateを始めからていねいに〜前編

  • 内科

  • 救急科

  • 初期研修医

  • 代謝
  • 微小循環不全
  • Lactate
  • 組織潅流

89,133

268

更新

シェア

ツイート

投稿者プロフィール
masa1019@救急科、内科

総合病院

概要

乳酸アシドーシスを予防するためには、乳酸の発生機序、上昇原因、予防方法の理解が重要です。正しい解釈は適切なケアや治療に繋がります。前編では乳酸値の解釈や乳酸の機能について解説します。

後編はこちら→ https://slide.antaa.jp/article/view/b68648c93a5b4b08

◎目次

・乳酸値の解釈について

・化学式

・身体における乳酸の機能について

・恒常性 過去と現在

・代謝について

・乳酸アシドーシスの分類

・十分な酸素化とは

・組織(臓器潅流)とは

・検査値の評価

・ターニケット使用の影響

・動脈血 VS 静脈血

・乳酸リンゲル液の影響

・敗血症における乳酸の産生・排泄

・微小循環不全の影響

・Occult HypoperfusionとCryptic Shock

本スライドの対象者

医学生/研修医/専攻医

参考文献

  • J Nutr. 2005;135:1619-1625.

  • Fed Proc. 1986;45:2924-2929.

  • CHEST 2016; 149(1):252-261

  • Crit Care. 2014;18:503.

  • Circulation. 1987;75:533-541.

  • J Cereb Blood Flow Metab. 2009;29:1121-1129.

  • QJM. 1923;16:135-171.

  • Mitochondrion. 2014;17:76-100.

  • Current Topics and Trends, Vol A, Respiration-Metabolism-Circulation. 1985:208-218.

  • J Clin Invest. 1986;77:690-699.

  • Am J Physiol. 1993;264(4 pt 1):C761-C782.

  • Biochem J. 1977;164:185-191.

  • Am J Physiol. 1973;224:1463-1467.

  • Crit Care. 2009;13:R90.

  • Blackwell Scientific Publications; 1976.

  • Anesthesiology. 2000;93:1407-1412

  • CJEM. 2016;18:358-362.

  • Eur J Clin Nutr. 2018;72:82-86.

  • Emerg Med J. 2006;23:622-624.

  • N Engl J Med. 2018;378:819-828.

  • Acta Anaesthesiol Scand. 2011;55:558-564.

  • Crit Care Resusc. 2000;2:181-187.

  • Metabolism. 1999;48:779-785.

  • Acad Emerg Med. 2016;23:690-693.

  • Crit Care Med 2013;41:791-9.

  • Annals of Emergency Medicine, 2020-02-01, Volume 75, Issue 2, Pages 287-298.

  • INTENSIVIST Vol.12 No.1 2020 生理学

  • Intensive Care Med. 2007;33:1892-1899.

  • Resuscitation. 2011;82:1289-1293.

テキスト全文

  • #1.

    乳酸アシドーシスを予防するために 〜Lactateを始めからていねいに〜 前編 masa1019@救急科集中治療、内科

  • #2.

    ⽬次 〜前編〜 • 乳酸値の解釈について • 検査値の評価 • 化学式 • ターニケット使⽤の影響 • ⾝体における乳酸の機能について • 動脈⾎ VS 静脈⾎ • 恒常性 過去と現在 • 代謝について • 乳酸アシドーシスの分類 • ⼗分な酸素化とは • 組織(臓器潅流)とは • 乳酸リンゲル液の影響 • 敗⾎症における乳酸の産⽣・排泄 • 微⼩循環不全の影響 • Occult Hypoperfusionと Cryptic Shock

  • #3.

    本スライドの要点 ① 乳酸の発⽣機序︓ 好気性代謝でも産⽣され、主に肝臓で代謝される ② 乳酸アシドーシスになる前にできること︓ Lactate(乳酸)上昇はどのような状態においても重症である認識 をし、原因検索を⾏うべし ③ 乳酸上昇の原因︓ 原因検索は組織灌流が⼗分か否かでアプローチし、不⼗分な場合は 酸素需要バランスを改善させる

  • #4.

    乳酸値の解釈について • 救急外来における乳酸値の測定は、道標と混乱の両⽅の原因と なっています • 乳酸は正しく解釈されれば有⽤なツールとなります • しかし、不適切な解釈は臨床医を惑わせ、不適切なケアや不必 要な治療を引き起こす可能性があります

  • #5.

    化学式 • 乳酸の酸解離定数(pKa)︓3.86 ⇛乳酸イオン︓乳酸=約3,000︓1 J Nutr. 2005;135:1619-1625. • 1 mmol/L = 9 mg/dL • 2つの⽴体異性体が存在 • ⼈間の体内で蓄積するのはほぼL-乳酸

  • #6.

    D-乳酸が蓄積する時は︖ • そもそも蓄積することは稀 • D-乳酸の測定は通常と異なる分析が必要、認識困難 • 短腸症候群︓炭⽔化物の消化低下⇛腸管内に糖残る⇛細菌がD乳酸作成、L-乳酸をD-乳酸に変換 • 糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)罹患やプロピレングリコー ル投与の時

  • #7.

    ⾝体における乳酸の機能について 特に重要な機能は ① 糖新⽣の炭素基質⇛⾎糖値を維持する ② 解糖やグリコーゲン分解が盛んな場所から、細胞呼吸が盛ん な場所に移動して酸化的リン酸化に関与 ⇓ Fed Proc. 1986;45:2924-2929. 『乳酸は重要なエネルギーシャトル』 CHEST 2016; 149(1):252-261

  • #8.

    ⾝体における乳酸の機能について • 敗⾎症やショックなどの代謝ストレス時において ⼼臓では代謝需要の最⼤60%、脳では最⼤25%に乳酸が使⽤される Crit Care. 2014;18:503. Circulation. 1987;75:533-541. • 脳の神経細胞や星状膠細胞(アストロサイト)は、常に乳酸を取り込 み、それを燃料として酸化してエネルギーを⽣成する J Cereb Blood Flow Metab. 2009;29:1121-1129.

  • #9.

    乳酸の恒常性 〜過去〜 • 主に⾻格筋における嫌気性代謝の 最終産物と考えられてきた QJM. 1923;16:135-171. • 酸化型NADを供給するためのコス トとして発⽣する単なる代謝廃棄 物と考えられていた Mitochondrion. 2014;17:76-100.

  • #10.

    乳酸の恒常性 〜現在〜 • ⾻格筋が完全に酸素化されている安静時や、嫌気性閾値に達し ていない活動時に、解糖によって乳酸が産⽣される Current Topics and Trends, Vol A, Respiration-Metabolism-Circulation. 1985:208-218. • ⽣理的ストレス状態では、カテコールアミン濃度が上昇し、 代謝状態が亢進する • グルコースの使⽤量が増加し、解糖系亢進、ピルビン酸濃度が 上昇、TCAサイクル周期の酸化能⼒を超え、続いて乳酸に変換 される Crit Care. 2014;18:503.

  • #11.

    安静時 代謝亢進時 「代謝亢進時は乳酸産⽣が増える」

  • #12.

    乳酸の代謝について① • ⽣理学的に安定した状態での乳酸回転速度は、約20mmol/kg/⽇ J Clin Invest. 1986;77:690-699. • 正常な状態では、体重関係なく乳酸は約1.5mol/⽇産⽣される CHEST 2016; 149(1):252-261 • 肝臓では、循環する乳酸の約70〜75%が代謝される Am J Physiol. 1993;264(4 pt 1):C761-C782. • 肝クリアランスの低下要因︓アシドーシス、肝硬変、低灌流など Biochem J. 1977;164:185-191.

  • #13.

    乳酸の代謝について② • 腎クリアランスは、乳酸除去の約25〜30%を占める • ⼤部分は腎⽪質で⾏われ、細胞は乳酸を取り込み、エネルギーと して酸化するか、糖新⽣としてグルコースを⽣成し、腎髄質また は全⾝循環に戻す • 腎クリアランスのうち、実際に尿中排泄されるのは10%程度 Am J Physiol. 1973;224:1463-1467.

  • #14.

    乳酸アシドーシスの分類 • 乳酸アシドーシス︓pH<7.35+⾎清乳酸値の上昇 ⾼乳酸⾎症︓pHに関係なく⾎清乳酸値 2 mmol/L以上 Crit Care. 2009;13:R90. • A型乳酸アシドーシス︓ 組織の灌流や酸素化が不⼗分な状態で乳酸が蓄積する • B型乳酸アシドーシス︓ 細胞内に低酸素が存在しないのに乳酸が上昇する Blackwell Scientific Publications; 1976.

  • #15.

    A型乳酸アシドーシス︓ 組織の灌流や酸素化が不⼗分な状態で乳酸が蓄積する 全⾝性 Shock(⼼原性、閉塞性、分布性、⾎液減少性)、⾼度な低⾎圧、重度 の貧⾎、⼼停⽌、外傷、⽕傷、⼀酸化炭素、シアン化物、褐⾊細胞腫、 鉄中毒 局所的 労作 ⼿⾜や腸間膜の虚⾎、局所的な外傷や⽕傷、コンパートメント症候群、 壊死性軟部組織感染症、微⼩循環障害 痙攣または発作、呼吸作業の増加、激しい運動

  • #16.

    B型乳酸アシドーシス︓ 組織の灌流や酸素化が⼗分なのに乳酸が上昇する 基礎疾患の進⾏ 悪性腫瘍、敗⾎症、チアミン⽋乏症、肝不全、腎不全、 褐⾊細胞腫、DKA、AKA メトホルミン、アセトアミノフェン、β2 -アゴニスト(ア 薬物または毒素性 ルブテロール、エピネフリンを含む)、交感神経刺激薬、 テオフィリン、ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤、アルコー ル、毒性アルコール、プロポフォール、シアン化物、⼀酸 化炭素、イソニアジド、リネゾリド 先天性代謝異常 ピルビン酸デヒドロゲナーゼ阻害症、ピルビン酸カルボキ シラーゼ阻害症、グルコース-6-ホスファターゼ阻害症、 先天性ミトコンドリア症

  • #17.

    ⼗分な酸素化とは • ⼗分な酸素化︓組織の酸素需要に対して、酸素供給が充⾜している状態 • 組織の酸素需要︓発熱、炎症、交感神経賦活により代謝が亢進すると需 要増加する。逆に低体温、鎮静下だと需要は減少する。 • 酸素供給︓ ≒⼼拍出量(l/min)×13.4×Hb(g/dl)×SaO2(動脈⾎酸素飽和度,ml/min) • ScvO2は酸素供給の間接的指標となる 酸素需要を減らし、酸素供給(⼼拍出量、Hb、SaO2)を増加させる

  • #18.

    組織(臓器)潅流とは • ⼗分な組織(臓器)潅流とは︓ 組織(臓器)にある⼀定以上の圧がかかっていること 腎臓なら尿量>0.5ml/kg/h,脳なら意識障害がないこと • ある⼀定以上の圧とは︓ MAP(平均動脈圧)≧ 65 mmHg ⾼⾎圧既往なら⾼めに設定すべし MAP>65mmHg⽬標に、尿量>0.5ml/kg/h維持する

  • #19.

    検査値の評価 • 採⾎後、⾚⾎球の代謝により乳酸が⽣成され続ける ⇛正確な評価のため、採⾎から15分以内に分析する • 予防⽅法︓ 1)⾎液サンプルを直ちに冷却する 2)細胞の代謝を阻害する防腐剤であるフッ化ナトリウムを含 む「グレートップ」採⾎管を使⽤する

  • #20.

    ターニケット使⽤の影響 • 虚⾎を誘発するために⼿術室で動脈側の⽌⾎帯を使⽤した際 ⽌⾎帯を使⽤してから75分後に⾎清乳酸値が直線的に上昇し、 ベースライン値の206%まで上昇した Anesthesiology. 2000;93:1407-1412. • 静脈の⽌⾎帯を装着しても、静脈の乳酸値は有意に変化しない CJEM. 2016;18:358-362.

  • #21.

    動脈⾎ VS 静脈⾎ • 正常範囲内であれば⾮常によく相関 r = 0.94 (95% CI, 0.91-0.96) Ann Emerg Med. 1997;29(4):479-483. • ⾼乳酸⾎症では軽度の不⼀致が⽣じる Eur J Clin Nutr. 2018;72:82-86. • 中⼼静脈の乳酸値は、動脈⾎の値と⾮常によく相関 Emerg Med J. 2006;23:622-624. • 動脈⾎と中⼼⾎の検体は全⾝を循環する乳酸を表し、末梢静脈の検体は 局所環境を反映する Vital signが崩れていないのに、静脈⾎乳酸が上昇している場合 動脈⾎で再検し、隠れた重症病態を⾒逃さないようにしている

  • #22.

    乳酸リンゲル液の影響 • 乳酸リンゲル液注⼊部位のすぐ近くで静脈穿刺を⾏った場合、 ⼀過性の上昇が観察されることがある N Engl J Med. 2018;378:819-828. • 肝不全または重⼤な肝低灌流の患者では、肝臓が追加の乳酸負 荷を代謝できないため、⾎清乳酸値が上昇する可能性がある Acta Anaesthesiol Scand. 2011;55:558-564.

  • #23.

    敗⾎症における乳酸の産⽣ • 産⽣源は肺>⾻格筋の2つ という有⼒な根拠あり Crit Care Resusc. 2000;2:181-187. • 乳酸産⽣にカテコールアミンによる好中球b­2受容体刺激が関与。 肺にはこれらの受容体が多数存在する、という仮説。 Metabolism. 1999;48:779-785. • 炎症細胞(WBC)の好気的解糖亢進 Metabolism. 1999;48:779-785. • 微⼩循環障害 という説 Acad Emerg Med. 2016;23:690-693.

  • #24.

    微⼩循環不全の影響 • DOB、アセチルコリン、ニトログリセリンは全⾝の⾎⾏動態とは無関係 に微⼩⾎管灌流を改善し、⾼乳酸⾎症と予後も改善する Crit Care Med 2013;41:791-9. • 微⼩循環障害や治療必要性については、 今後の研究が必要 Annals of Emergency Medicine, 2020-02-01, Volume 75, Issue 2, Pages 287-298, • 微⼩循環障害は治療により改善するかどうか、 わからない INTENSIVIST Vol.12 No.1 2020 ⽣理学

  • #25.

    Occult HypoperfusionとCryptic Shock • 定義︓⾎圧が正常なのに乳酸値上昇(4mmol/L)している状態 • 感染症が疑われる患者では、乳酸値の上昇が⾎圧に関係なく 28⽇死亡率の上昇と関連していた Intensive Care Med. 2007;33:1892-1899. • overt shock(輸液チャレンジ後なのに低⾎圧)の敗⾎症患者と ⽐較し、プロトコルに従った治療後の死亡率が同等 Resuscitation. 2011;82:1289-1293. 『感染+Lactate↑=重症』という認識を

  • #26.

    乳酸アシドーシスを予防するために 〜Lactateを始めからていねいに〜 前編 終了 masa1019@救急科集中治療、内科

投稿された先生へ質問や勉強になったポイントをコメントしてみましょう!

0 件のコメント

コメントするにはログインしてください >

masa1019@救急科、内科さんの他の投稿スライド

救急専門医が教える怖い咽頭痛〜まずすべき対応〜

#溶連菌 #咽頭痛 #救急科 #耳鼻咽喉科 #上気道閉塞 #急性喉頭蓋炎 #Lemierre症候群 #扁桃周囲膿瘍 #咽後膿瘍

398

83,617

最終更新:2022年3月6日

乳酸アシドーシスを予防するために〜Lactateを始めからていねいに〜後編

#β2アゴニスト #チアミン #ジクロロアセテート

178

22,754

最終更新:2022年11月18日

救急専門医が教える 怖い胸痛 まずすべき対応

#救急科 #肺塞栓症 #心電図 #胸痛 #急性冠症候群 #ACS #急性大動脈解離 #トロポニン

329

51,716

最終更新:2021年12月29日



診療科ごとのスライド

内科(539)

消化器内科(69)

循環器内科(91)

呼吸器内科(135)

血液内科(37)

糖尿病内分泌代謝内科(69)

腎臓内科(51)

アレ膠リウマチ内科(51)

脳神経内科(115)

総合診療科(234)

救急科(433)

外科(39)

消化器外科(4)

呼吸器外科(38)

乳腺外科(0)

整形外科(92)

脳神経外科(23)

泌尿器科(25)

形成外科(24)

皮膚科(35)

眼科(19)

耳鼻咽喉科(14)

歯科口腔外科(9)

リハビリテーション科(12)

心臓血管外科(8)

小児科(66)

産婦人科(52)

精神科(73)

放射線科(88)

麻酔科(14)

緩和ケア科(29)

感染症科(236)

産業医(9)

初期研修医(533)

医学生(65)

その他(368)


Antaa Slide Post Banner
今すぐ投稿
Antaa Slide Post Banner今すぐ投稿

Antaa Slide

医師・医学生のためのスライド共有

投稿者インタビュー
Antaa QA

医師同士の質問解決プラットフォーム

App StoreからダウンロードGoogle Play Storeからダウンロード

会社概要

Antaa, Inc. All rights reserved.

Follow us on Facebook
Follow us on Twitter