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投稿者

島田利彦

1/50

テキスト全文

  • #1.

    血液ガス分析酸塩基と呼吸分析の型 2022/04/20 淡海医療センター

  • #2.

    血液ガス分析でなにをみる? ガス交換    酸素化AaDO2,  CO2蓄積 2. 酸塩基平衡  まず緩衝 →  次に呼吸性調節 →  腎による調節(24時間)  あとは Hb, 電解質(Ca), 一酸化炭素などが迅速で出る

  • #3.

    いつ動脈穿刺が必要か?静脈血液ガスの意義と注意

  • #4.

    動脈血と静脈血の差 酸塩基平衡の評価だけなら静脈で良い

  • #5.

    SpO2の注意事項 (SaO2, PaO2との解離) 【SaO2とSpO2が解離】 末梢のみの循環不全   (末梢動脈疾患, 寒冷) マニュキュアなど 【SaO2/SpO2とPaO2が解離】 酸素解離曲線と一致しない メトヘモグロビン血症 CO中毒 N Engl J Med 2019; 381:1158 Wikipedia

  • #6.

    ガス交換の評価PaO2低下(低酸素血症)の病態生理

  • #7.

    1. PaCO2上昇あり(Ⅱ型) A-a DO2非開大  CO2産生過剰  肺胞低換気

  • #8.

     2.  PaCO2上昇なし A-a DO2開大   拡散障害  VQミスマッチ  シャント(VQミスマッチの一種) 0.   酸素分圧が低い

  • #10.

    酸塩基平衡の評価  型通り順番に分析する習慣をつける

  • #11.

    分析の型 (BaseExcessは使わない) pHが7.4より上(アルカレミア)か、下(アシデミア)かから、    一次性変化を決定する    原則: 一次性変化はpHに反映される。代償性変化はovershootしない* 代償性変化は予測範囲内(ノモグラム or 予測式)にあるかをチェック  予想範囲になければ混合性障害が考えられる AnionGapを計算する。AG=「測定できない酸の上昇」があるかの検討**  AG = Na - (HCO3+Cl)    正常値は12 混合性障害のさらなる検討:  補正HCO3またはΔAGを計算する 患者病態と整合性の検討を行う *敗血症やアスピリン中毒などの例外あり **正確には後述のアルブミン補正などが必要

  • #12.

    使い方 pHをプロット HCO3をプロット pCO2確認 (カーブに沿って右上) 領域を確認 臨床像と矛盾しないか?を検討 例: pH 7.13, HCO3 26, pCO2 80  → ☆ 呼吸性アシドーシス+代謝性アシドーシスの混合性変化 動脈血液ガス ノモグラム ☆

  • #13.

    代償性変化の予測式 予測範囲に収まらなければその他の変化(混合性障害)がある

  • #14.

    Anion Gap: 電荷から求める酸直接測定できない不揮発性有機酸で、陰性に荷電(陰イオン) 【AGが低く計算される = AG acidosisが隠れることあり】 陰イオンの減少     アルブミン1g/dl低下でAG 2.5~3mol低下     (低アルブミン血症ではAGが増加する病態が見えにくい) 陽イオンの増加  IgG上昇   :IgG MyelomaではAG低値  Br       :ブロム中毒ではAG低値  Li中毒 高Ca 高K 高Mg などでも 初学者はとばす!

  • #15.

    混合性障害の分析その1  ΔAG 混合性変化は3つ以上共存しうる  (呼吸性アルカローシスと呼吸性アシドーシスの2つは混在しないが) AGが増加するタイプのアシドーシスだけなら   AGの変化(ΔAG) = AG – 12 はHCO3の変化と一致するはず。    補正HCO3=ΔAG + 測定HCO3を計算して、  正常値25以上なら別の代謝性アルカローシス、  正常値25以下ならnon AG アシドーシスが共存する。  (次頁は言い換え) 初学者はとばす!

  • #16.

    混合性障害の分析 その2  Δgap   Δgap,  Gap gap  :  正常値は0 ± 6 単純なAGアシドーシスではAG が1mol/L増加すると、HCO3 が 1mol/L低下する。Δgapはこの関係が崩れていることを示す Δgap = (AG測定 – AG正常12) - (HCO3測定値– HCO3正常値24)  Δgap > 0 代謝性アルカローシスが共存    Δgap < 0 AG正常高Cl性代謝性アシドーシスが共存 初学者はとばす!

  • #17.

    臨床シナリオ型どおり読んで、解釈する

  • #18.

    60歳代女性 脳腫瘍術後  外来通院で術後放射線・化学療法中  呼吸器疾患なし 癌性髄膜炎(頭痛)で入院、その後半日で急速に進行する意識障害と血圧低下あり 敗血症性ショックの疑いでコンサルトされた 動脈血液ガス(室内気)   pH 7.072  pCO2 119.0 pO2 105.0 HCO3 33.9  Lac 0.9 mmol/L 分析と検討

  • #19.

     急性呼吸性アシドーシス アシデミア(酸血症)をおこしているのは呼吸性  代償性の代謝性アルカローシス 意識障害 → 呼吸抑制 → CO2蓄積  注意:この症例はCO2ナルコーシスではない  ナルコーシスであれば、室内気では低酸素も   あるはずで、慢性呼吸性アシドーシスとして   代償性にHCO3>50になる

  • #20.

    CO2が蓄積  ≠  CO2ナルコーシス CO2ナルコーシスの病態生理 ・慢性呼吸筋疲労によるCO2蓄積 + 低酸素血症 ・徐々にCO2センシング消失 低酸素だけで呼吸ドライブ ・酸素投与でpO2上昇し、低酸素ドライブ消失 ・呼吸減弱から停止(さらにCO2蓄積) 慢性CO2蓄積・呼吸筋疲労に注意すればCOPDの低酸素に酸素投与することは、悪いことではない

  • #21.

    47歳 男性 アルコール多飲 意識障害で搬送  ERでVfを起こして、CPR・除細動施行直後 Na 134mEq/L, K 3.6mEq/L, Cl 95mEq/L BUN 6.3mg/dl, Cr 0.99mg/dl pH 7.238, pCO2 33.2mmHg, HCO3 13.8mEq/L Lactate 8.8mmol/L 分析と検討

  • #22.

    AG開大型代謝性アシドーシス乳酸アシドーシス アシデミアの原因は代謝性アシドーシス AG は22以上に上昇 AGの上昇分は、乳酸値の上昇分と一致する 循環不全にともなう乳酸産生 ↑ 乳酸正常値 0.44-1.78mmol/L(4-16mg/dL)

  • #23.

    AG 開大型acidosisの原因

  • #24.

     AG acidosis覚え方 覚えられないけどね M: Methanol intoxication U:  Uremia D:  Diabetic Ketoacidosis P:   Paraldehyde intoxication I:   Infection (sepsis) L: Lactic acidosis E: Ethylene glycol intoxication S: Salicylate intoxication, Seizures, Shock

  • #25.

     血漿浸透圧Gap 薬剤性の AG 上昇(メタノール・エチレングリコール中毒)を疑った際には、浸透圧ギャップ の計算が有効。 (直接測定しにくい濃度の代用) OG  =  実測血漿浸透圧  ‐  計算血漿浸透圧 (2Na + BUN/2.8 + Glu/18)   OG >10 mOsm/kg であれば、測定されない浸透圧物質が示唆される 例えば OG = 70mOsm/kgの場合、エタノール分子量は46であり、血中エタノール濃度= 70mOsm/kg x 46 g/Osm÷10 =322 mg/dL 強度酩酊に相当

  • #26.

    98歳女性 慢性心不全・認知症・るいそう 急性の呼吸困難で救急搬送  高血圧あり アゾセミドと抑肝散内服 胸部レントゲンでButterfly shadowあり BNP 720 pH 7.45, pCO2 60.7mmHg, HCO3 38.7mEq/L pO2 129mmHg (O2リザーバー10L ) Na 141mEq/L, K 2.1mEq/L, Cl 96mEq/L BUN 14.5mg/dl, Cr 0.6mg/dl 分析と検討

  • #27.

    [混合性障害] 慢性代謝性アルカローシス + 慢性呼吸性アシドーシス 偽性アルドステロン症、利尿剤による低K、 有効循環血漿量低下、呼吸筋疲労などの混在

  • #28.

    代謝性アルカローシス CO2↑から呼吸性アシドーシスとの誤認に注意 → 脱水 ・ 低K ・ アルドステロン

  • #29.

    代謝性アルカローシス   3K+ABCD 1. 体液量減少  (kawaki カワキ)2-1. 低カリウム  (慢性)      2-2. 鉱質コルチコイド過剰   (ketsuatsu ケツアツ) 多くは低Kとセット。低Kの評価へ

  • #30.

    数ヶ月前から呼吸困難感あり採血や胸腹部CTでは異常なし他に原因不明の体重減少5kg有り喫煙歴なし 呼吸器疾患既往なし  74歳 男性 これまで著患なし 分析と検討

  • #31.

    慢性+急性 呼吸性アシドーシス 身体診察で繊維束性攣縮あり ALS 筋萎縮性側索硬化症 ALSでは筋がpathyに侵される 10-20%程度は呼吸筋から初発する 呼吸性アシドーシスの本質は呼吸筋力の低下に伴う肺胞低換気!

  • #32.

    62歳男性 進行リンパ腫末期  発熱・頻呼吸あり 循環動態は問題なし(低血圧・ショックなし) 腎機能や尿酸値やLDH等にも変化無し   pH  7.15   PCO2  23   HCO3  7   Na 135, Cl 90, Lac 22 mmol/L 分析と検討 Mayo clinic proceedings 2018より改変

  • #33.

    乳酸アシドーシス(AG開大) Type B Lactic acidosis 組織低還流を伴わないタイプ

  • #34.

    乳酸アシドーシスの分類AG開大型代謝性acidosisの代表選手

  • #35.

    腫瘍に伴う乳酸アシドーシスWarburg effect  Science 2009 腫瘍細胞が有酸素下でも解糖系でATPを産生し、乳酸産生をおこす現象

  • #36.

    case1. 80代女性 CKDあり   高血圧、コントロール不良の糖尿病に長期罹患  【静脈血液ガス】 Na 143mEq/L, K 5.6mEq/L, Cl 118mEq/L BUN 37.0mg/dl, Cr 1.54mg/dl pH 7.255, pCO2 40.2mmHg, HCO3 17.0mEq/L   分析と検討 1/3

  • #37.

    case2. 42歳女性  全身倦怠感と脱力感がつよく働けない 以前から口渇感と目の渇きがある Na 135mEq/L, K 1.2mEq/L, Cl 114mEq/L BUN 12mg/dl, Cr 1.2mg/dl pH 7.28, pCO2 25mmHg, HCO3 10mEq/L 【尿 ; pH 6.6, Na 35mEq/L, K 30mEq/L, Cl 50mEq/L 】 分析と検討 2/3

  • #38.

    case3. 75歳男性 膀胱癌で膀胱全摘    回腸導管増設後 発熱で来院、肺炎の診断で入院。著明な脱水と採血で高カリウム血症を認めた。  pH  7.215  pO2  97.4  pCO2  24.1  HCO3  11.5 続く https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Diagram_showing_how_a_urostomy_is_made_(ileal_conduit)_CRUK_124.svg

  • #39.

    緊急透析含めた加療について相談あり pH 7.215, pO2 97.4, pCO2 24.1, HCO3 11.5 分析と検討 3/3

  • #40.

    Non AG metabolic acidosisアニオンギャップ正常(高Cl性)代謝性アシドーシス Case1. RTA type4 (アルドステロン作用不全)      高カリウム型尿細管性アシドーシス Case2. Sjogren症候群に伴うRTA type1 Case3. 回腸導管による高Cl性NAGアシドーシス     長時間尿貯留によりCl再吸収とHCO3排泄が促進

  • #41.

    Normal AG acidosis ≒  「HCO3がもれている」【Na正常のときのCl高値はなにかある】 腎から: 尿細管性アシドーシス(RTA type2 type1,4) 炭酸脱水酵素阻害薬 (eg. アセタゾラミド) アルドステロン阻害薬、低アルドステロン血症 消化管から: 重度の下痢 尿路変更・回腸導管  正常 AG増大 AG正常

  • #42.

    Non AG acidosis ≒ RTA (腎>> 消化管) 臨床的には(いわゆる)Type4RTAがもっとも多い. 中等度のDMやCHFに合併し、Kがやや高い RTA1   酸排泄障害    管腔内pHが低下しない事による尿酸性化障害 RTA2  重炭酸吸収障害  重炭酸がもれていくとやがてプラトーに達する。     尿中重炭酸排泄増加 UAGはnegative (RTA4) 低レニン低アルドステロン   アルドステロン作用不全     

  • #43.

    RTAを疑ったら、血清K, 尿pH, 尿AGをチェックする Non AG acidosis RTAの鑑別

  • #44.

    Non AG acidosis RTAの鑑別尿アニオンギャップ  Urinary net charge        Urine AG = Una + UK – Ucl        尿中の酸(代表はNH4+)排泄を間接的に表す    (酸が排泄されないと尿Cl排泄が低下)    正常は0より低い(特にアシデミアでは酸排泄が亢進するはず)     酸排泄障害で尿AGがプラス(> 0)になる  ・ UAG+ (NH4排泄障害あり) ; RTA1 or 4     ・ UAG- ; RTA2 初学者はとばす!

  • #45.

    Non AG acidosis RTAの鑑別  尿中NH4排泄評価 その2尿浸透圧ギャップ  尿浸透圧ギャップ  OG = 実測尿浸透圧  ‐  計算尿浸透圧 計算尿浸透圧(mosm/kg) = 2 × (尿Na + 尿K ) + 尿UN/2.8 + 尿Glc/18 尿アンモニウム塩は、尿浸透圧を形成する溶質の中で、計算式に入っていない主要な浸透圧物質。代謝性アシドーシスに際し て、腎臓は NH4 + 排泄を増やす。 RTAではアシドーシスに対する腎臓の応答が十分でなく、尿 OG <150 mosm/Lになる。 腎機能が保たれて、腎以外からの重炭酸塩の喪失(下痢や回腸瘻など)では尿 OG >400 mosm/Lになる。 初学者はとばす!

  • #46.

    Five Medical gaps臨床で使える5つの内科的ギャップ Anion Gap : AG正常アシドーシス 尿Anion Gap : AG正常アシドーシス 尿浸透圧Gap : AG正常アシドーシス 血漿浸透圧Gap : メタノール中毒etc. Saturation GAP

  • #47.

    Take home points 病態(ガス交換+酸塩基平衡)を把握するために血液ガスをとるのだ! 呼吸性アシドーシスでは肺胞低換気の原因を 代謝性アシドーシスでは最低限Anion gapまで 代謝性アルカローシスを呼吸性アシドーシスと間違えない。K, 血圧, 脱水をチェック

血液ガスの紐解き方

  • 内科

  • 救急科

  • 初期研修医

  • #アシドーシス #アルカローシス
  • #静脈血液ガス #RTA #尿細管性アシドーシス
  • #ABG #血液ガス #ガス交換 #酸塩基平衡

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投稿者プロフィール
島田利彦

医仁会武田総合病院

概要

血液ガスデータの分析手順、評価を実際の症例データでトレーニングする。初期研修医向け 

本スライドの対象者

医学生/研修医/専攻医

テキスト全文

  • #1.

    血液ガス分析酸塩基と呼吸分析の型 2022/04/20 淡海医療センター

  • #2.

    血液ガス分析でなにをみる? ガス交換    酸素化AaDO2,  CO2蓄積 2. 酸塩基平衡  まず緩衝 →  次に呼吸性調節 →  腎による調節(24時間)  あとは Hb, 電解質(Ca), 一酸化炭素などが迅速で出る

  • #3.

    いつ動脈穿刺が必要か?静脈血液ガスの意義と注意

  • #4.

    動脈血と静脈血の差 酸塩基平衡の評価だけなら静脈で良い

  • #5.

    SpO2の注意事項 (SaO2, PaO2との解離) 【SaO2とSpO2が解離】 末梢のみの循環不全   (末梢動脈疾患, 寒冷) マニュキュアなど 【SaO2/SpO2とPaO2が解離】 酸素解離曲線と一致しない メトヘモグロビン血症 CO中毒 N Engl J Med 2019; 381:1158 Wikipedia

  • #6.

    ガス交換の評価PaO2低下(低酸素血症)の病態生理

  • #7.

    1. PaCO2上昇あり(Ⅱ型) A-a DO2非開大  CO2産生過剰  肺胞低換気

  • #8.

     2.  PaCO2上昇なし A-a DO2開大   拡散障害  VQミスマッチ  シャント(VQミスマッチの一種) 0.   酸素分圧が低い

  • #9.

    COPD末期や重症喘息でCO2蓄積が起こるのは、 “閉塞性”疾患だからではない https://thoracickey.com/assessment-and-treatment-of-hypoxemia-and-shunting/

  • #10.

    酸塩基平衡の評価  型通り順番に分析する習慣をつける

  • #11.

    分析の型 (BaseExcessは使わない) pHが7.4より上(アルカレミア)か、下(アシデミア)かから、    一次性変化を決定する    原則: 一次性変化はpHに反映される。代償性変化はovershootしない* 代償性変化は予測範囲内(ノモグラム or 予測式)にあるかをチェック  予想範囲になければ混合性障害が考えられる AnionGapを計算する。AG=「測定できない酸の上昇」があるかの検討**  AG = Na - (HCO3+Cl)    正常値は12 混合性障害のさらなる検討:  補正HCO3またはΔAGを計算する 患者病態と整合性の検討を行う *敗血症やアスピリン中毒などの例外あり **正確には後述のアルブミン補正などが必要

  • #12.

    使い方 pHをプロット HCO3をプロット pCO2確認 (カーブに沿って右上) 領域を確認 臨床像と矛盾しないか?を検討 例: pH 7.13, HCO3 26, pCO2 80  → ☆ 呼吸性アシドーシス+代謝性アシドーシスの混合性変化 動脈血液ガス ノモグラム ☆

  • #13.

    代償性変化の予測式 予測範囲に収まらなければその他の変化(混合性障害)がある

  • #14.

    Anion Gap: 電荷から求める酸直接測定できない不揮発性有機酸で、陰性に荷電(陰イオン) 【AGが低く計算される = AG acidosisが隠れることあり】 陰イオンの減少     アルブミン1g/dl低下でAG 2.5~3mol低下     (低アルブミン血症ではAGが増加する病態が見えにくい) 陽イオンの増加  IgG上昇   :IgG MyelomaではAG低値  Br       :ブロム中毒ではAG低値  Li中毒 高Ca 高K 高Mg などでも 初学者はとばす!

  • #15.

    混合性障害の分析その1  ΔAG 混合性変化は3つ以上共存しうる  (呼吸性アルカローシスと呼吸性アシドーシスの2つは混在しないが) AGが増加するタイプのアシドーシスだけなら   AGの変化(ΔAG) = AG – 12 はHCO3の変化と一致するはず。    補正HCO3=ΔAG + 測定HCO3を計算して、  正常値25以上なら別の代謝性アルカローシス、  正常値25以下ならnon AG アシドーシスが共存する。  (次頁は言い換え) 初学者はとばす!

  • #16.

    混合性障害の分析 その2  Δgap   Δgap,  Gap gap  :  正常値は0 ± 6 単純なAGアシドーシスではAG が1mol/L増加すると、HCO3 が 1mol/L低下する。Δgapはこの関係が崩れていることを示す Δgap = (AG測定 – AG正常12) - (HCO3測定値– HCO3正常値24)  Δgap > 0 代謝性アルカローシスが共存    Δgap < 0 AG正常高Cl性代謝性アシドーシスが共存 初学者はとばす!

  • #17.

    臨床シナリオ型どおり読んで、解釈する

  • #18.

    60歳代女性 脳腫瘍術後  外来通院で術後放射線・化学療法中  呼吸器疾患なし 癌性髄膜炎(頭痛)で入院、その後半日で急速に進行する意識障害と血圧低下あり 敗血症性ショックの疑いでコンサルトされた 動脈血液ガス(室内気)   pH 7.072  pCO2 119.0 pO2 105.0 HCO3 33.9  Lac 0.9 mmol/L 分析と検討

  • #19.

     急性呼吸性アシドーシス アシデミア(酸血症)をおこしているのは呼吸性  代償性の代謝性アルカローシス 意識障害 → 呼吸抑制 → CO2蓄積  注意:この症例はCO2ナルコーシスではない  ナルコーシスであれば、室内気では低酸素も   あるはずで、慢性呼吸性アシドーシスとして   代償性にHCO3>50になる

  • #20.

    CO2が蓄積  ≠  CO2ナルコーシス CO2ナルコーシスの病態生理 ・慢性呼吸筋疲労によるCO2蓄積 + 低酸素血症 ・徐々にCO2センシング消失 低酸素だけで呼吸ドライブ ・酸素投与でpO2上昇し、低酸素ドライブ消失 ・呼吸減弱から停止(さらにCO2蓄積) 慢性CO2蓄積・呼吸筋疲労に注意すればCOPDの低酸素に酸素投与することは、悪いことではない

  • #21.

    47歳 男性 アルコール多飲 意識障害で搬送  ERでVfを起こして、CPR・除細動施行直後 Na 134mEq/L, K 3.6mEq/L, Cl 95mEq/L BUN 6.3mg/dl, Cr 0.99mg/dl pH 7.238, pCO2 33.2mmHg, HCO3 13.8mEq/L Lactate 8.8mmol/L 分析と検討

  • #22.

    AG開大型代謝性アシドーシス乳酸アシドーシス アシデミアの原因は代謝性アシドーシス AG は22以上に上昇 AGの上昇分は、乳酸値の上昇分と一致する 循環不全にともなう乳酸産生 ↑ 乳酸正常値 0.44-1.78mmol/L(4-16mg/dL)

  • #23.

    AG 開大型acidosisの原因

  • #24.

     AG acidosis覚え方 覚えられないけどね M: Methanol intoxication U:  Uremia D:  Diabetic Ketoacidosis P:   Paraldehyde intoxication I:   Infection (sepsis) L: Lactic acidosis E: Ethylene glycol intoxication S: Salicylate intoxication, Seizures, Shock

  • #25.

     血漿浸透圧Gap 薬剤性の AG 上昇(メタノール・エチレングリコール中毒)を疑った際には、浸透圧ギャップ の計算が有効。 (直接測定しにくい濃度の代用) OG  =  実測血漿浸透圧  ‐  計算血漿浸透圧 (2Na + BUN/2.8 + Glu/18)   OG >10 mOsm/kg であれば、測定されない浸透圧物質が示唆される 例えば OG = 70mOsm/kgの場合、エタノール分子量は46であり、血中エタノール濃度= 70mOsm/kg x 46 g/Osm÷10 =322 mg/dL 強度酩酊に相当

  • #26.

    98歳女性 慢性心不全・認知症・るいそう 急性の呼吸困難で救急搬送  高血圧あり アゾセミドと抑肝散内服 胸部レントゲンでButterfly shadowあり BNP 720 pH 7.45, pCO2 60.7mmHg, HCO3 38.7mEq/L pO2 129mmHg (O2リザーバー10L ) Na 141mEq/L, K 2.1mEq/L, Cl 96mEq/L BUN 14.5mg/dl, Cr 0.6mg/dl 分析と検討

  • #27.

    [混合性障害] 慢性代謝性アルカローシス + 慢性呼吸性アシドーシス 偽性アルドステロン症、利尿剤による低K、 有効循環血漿量低下、呼吸筋疲労などの混在

  • #28.

    代謝性アルカローシス CO2↑から呼吸性アシドーシスとの誤認に注意 → 脱水 ・ 低K ・ アルドステロン

  • #29.

    代謝性アルカローシス   3K+ABCD 1. 体液量減少  (kawaki カワキ)2-1. 低カリウム  (慢性)      2-2. 鉱質コルチコイド過剰   (ketsuatsu ケツアツ) 多くは低Kとセット。低Kの評価へ

  • #30.

    数ヶ月前から呼吸困難感あり採血や胸腹部CTでは異常なし他に原因不明の体重減少5kg有り喫煙歴なし 呼吸器疾患既往なし  74歳 男性 これまで著患なし 分析と検討

  • #31.

    慢性+急性 呼吸性アシドーシス 身体診察で繊維束性攣縮あり ALS 筋萎縮性側索硬化症 ALSでは筋がpathyに侵される 10-20%程度は呼吸筋から初発する 呼吸性アシドーシスの本質は呼吸筋力の低下に伴う肺胞低換気!

  • #32.

    62歳男性 進行リンパ腫末期  発熱・頻呼吸あり 循環動態は問題なし(低血圧・ショックなし) 腎機能や尿酸値やLDH等にも変化無し   pH  7.15   PCO2  23   HCO3  7   Na 135, Cl 90, Lac 22 mmol/L 分析と検討 Mayo clinic proceedings 2018より改変

  • #33.

    乳酸アシドーシス(AG開大) Type B Lactic acidosis 組織低還流を伴わないタイプ

  • #34.

    乳酸アシドーシスの分類AG開大型代謝性acidosisの代表選手

  • #35.

    腫瘍に伴う乳酸アシドーシスWarburg effect  Science 2009 腫瘍細胞が有酸素下でも解糖系でATPを産生し、乳酸産生をおこす現象

  • #36.

    case1. 80代女性 CKDあり   高血圧、コントロール不良の糖尿病に長期罹患  【静脈血液ガス】 Na 143mEq/L, K 5.6mEq/L, Cl 118mEq/L BUN 37.0mg/dl, Cr 1.54mg/dl pH 7.255, pCO2 40.2mmHg, HCO3 17.0mEq/L   分析と検討 1/3

  • #37.

    case2. 42歳女性  全身倦怠感と脱力感がつよく働けない 以前から口渇感と目の渇きがある Na 135mEq/L, K 1.2mEq/L, Cl 114mEq/L BUN 12mg/dl, Cr 1.2mg/dl pH 7.28, pCO2 25mmHg, HCO3 10mEq/L 【尿 ; pH 6.6, Na 35mEq/L, K 30mEq/L, Cl 50mEq/L 】 分析と検討 2/3

  • #38.

    case3. 75歳男性 膀胱癌で膀胱全摘    回腸導管増設後 発熱で来院、肺炎の診断で入院。著明な脱水と採血で高カリウム血症を認めた。  pH  7.215  pO2  97.4  pCO2  24.1  HCO3  11.5 続く https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Diagram_showing_how_a_urostomy_is_made_(ileal_conduit)_CRUK_124.svg

  • #39.

    緊急透析含めた加療について相談あり pH 7.215, pO2 97.4, pCO2 24.1, HCO3 11.5 分析と検討 3/3

  • #40.

    Non AG metabolic acidosisアニオンギャップ正常(高Cl性)代謝性アシドーシス Case1. RTA type4 (アルドステロン作用不全)      高カリウム型尿細管性アシドーシス Case2. Sjogren症候群に伴うRTA type1 Case3. 回腸導管による高Cl性NAGアシドーシス     長時間尿貯留によりCl再吸収とHCO3排泄が促進

  • #41.

    Normal AG acidosis ≒  「HCO3がもれている」【Na正常のときのCl高値はなにかある】 腎から: 尿細管性アシドーシス(RTA type2 type1,4) 炭酸脱水酵素阻害薬 (eg. アセタゾラミド) アルドステロン阻害薬、低アルドステロン血症 消化管から: 重度の下痢 尿路変更・回腸導管  正常 AG増大 AG正常

  • #42.

    Non AG acidosis ≒ RTA (腎>> 消化管) 臨床的には(いわゆる)Type4RTAがもっとも多い. 中等度のDMやCHFに合併し、Kがやや高い RTA1   酸排泄障害    管腔内pHが低下しない事による尿酸性化障害 RTA2  重炭酸吸収障害  重炭酸がもれていくとやがてプラトーに達する。     尿中重炭酸排泄増加 UAGはnegative (RTA4) 低レニン低アルドステロン   アルドステロン作用不全     

  • #43.

    RTAを疑ったら、血清K, 尿pH, 尿AGをチェックする Non AG acidosis RTAの鑑別

  • #44.

    Non AG acidosis RTAの鑑別尿アニオンギャップ  Urinary net charge        Urine AG = Una + UK – Ucl        尿中の酸(代表はNH4+)排泄を間接的に表す    (酸が排泄されないと尿Cl排泄が低下)    正常は0より低い(特にアシデミアでは酸排泄が亢進するはず)     酸排泄障害で尿AGがプラス(> 0)になる  ・ UAG+ (NH4排泄障害あり) ; RTA1 or 4     ・ UAG- ; RTA2 初学者はとばす!

  • #45.

    Non AG acidosis RTAの鑑別  尿中NH4排泄評価 その2尿浸透圧ギャップ  尿浸透圧ギャップ  OG = 実測尿浸透圧  ‐  計算尿浸透圧 計算尿浸透圧(mosm/kg) = 2 × (尿Na + 尿K ) + 尿UN/2.8 + 尿Glc/18 尿アンモニウム塩は、尿浸透圧を形成する溶質の中で、計算式に入っていない主要な浸透圧物質。代謝性アシドーシスに際し て、腎臓は NH4 + 排泄を増やす。 RTAではアシドーシスに対する腎臓の応答が十分でなく、尿 OG <150 mosm/Lになる。 腎機能が保たれて、腎以外からの重炭酸塩の喪失(下痢や回腸瘻など)では尿 OG >400 mosm/Lになる。 初学者はとばす!

  • #46.

    Five Medical gaps臨床で使える5つの内科的ギャップ Anion Gap : AG正常アシドーシス 尿Anion Gap : AG正常アシドーシス 尿浸透圧Gap : AG正常アシドーシス 血漿浸透圧Gap : メタノール中毒etc. Saturation GAP

  • #47.

    Take home points 病態(ガス交換+酸塩基平衡)を把握するために血液ガスをとるのだ! 呼吸性アシドーシスでは肺胞低換気の原因を 代謝性アシドーシスでは最低限Anion gapまで 代謝性アルカローシスを呼吸性アシドーシスと間違えない。K, 血圧, 脱水をチェック

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