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投稿者

永井友基

1/95

テキスト全文

  • #1.

    研修医/コメディカルに知ってほしい ~アナフィラキシー~ アナフィラキシーガイドライン2022年ver Presented by 手稲渓仁会病院 奥山由梨佳

  • #2.

    本日の目標 アナフィラキシーの 1, 診断ができる 2, 初期対応ができる 速やかにアドレナリン筋注ができる! 2

  • #3.

    ガイドラインが新しくなりました! 2022年8月30日改訂! 以下が新しくなりました! ・診断基準 ・アドレナリン投与基準 ・アドレナリン投与量表記 3

  • #4.

    定義・疫学・病態 4

  • #5.

    定義 2022年度アナフィラキシーガイドラインによると、 ・重篤な全身性の過敏性反応 ・通常は急速に発現し、死に至ることもある 「感作された人体の生命を脅かすアレルギー反応」 5

  • #6.

    定義 アレルギー :抗原曝露による免疫反応の結果起こる病的反応 アナフィラキシー :人体の生命を脅かすアレルギー反応 アナフィラキシーショック :血圧低下や意識障害を伴うアナフィラキシー 6

  • #7.

    疫学 ・世界全体の生涯有病率は0.3〜5.1%と推定 ・アナフィラキシーで死亡する確率は100万人あたり 薬剤 :0.05〜0.51 食物 :0.03〜0.32 昆虫毒:0.09〜0.13 統計:アナフィラキシーガイドライン2022より 7

  • #8.

    疫学 ・日本における食物アナフィラキシー誘因 1位:牛乳(22%) 2位:鶏卵(20%) 3位:小麦(12%) ・食物依存性運動誘発アナフィラキシーでは 小麦の他、甲殻類、果物が多い 統計:アナフィラキシーガイドライン2022より 8

  • #9.

    病態 赤枠がⅠ型アレルギー:最多 図:アナフィラキシーガイドライン2022より 9

  • #10.

    病態 アナフィラキシーは Ⅰ型アレルギーが多い 抗原曝露を契機とした マスト細胞活性化による ヒスタミン放出が原因 図:研修医のための内科診療ことはじめ 第9章 21 アナフィラキシー p848より 10

  • #11.

    病態 ヒスタミン放出⇨全身の血管拡張 ↓ 血管内皮細胞の結合が緩くなる ↓ 血漿成分が細胞外に漏出 ↓ 間質浮腫⇨各種臓器症状 循環血漿量減少⇨失神・ショック 出典:研修医のための内科診療ことはじめ 第9章 21 アナフィラキシー p848 11

  • #12.

    病態 間質浮腫がアナフィラキシーの臓器症状の病態! ・皮膚症状⇨膨疹 ・鼻粘膜症状⇨鼻汁、くしゃみ、鼻詰まり ・気道症状⇨咳嗽、喘鳴 ・消化管症状⇨下痢(消化管浮腫)、腹痛(消化管狭窄) 出典:研修医のための内科診療ことはじめ 第9章 21 アナフィラキシー p849 12

  • #13.

    症例 とある夜間救急外来のこと。 「次の患者さんは9歳の女の子です。 主訴はくるみ食べた後からの咽頭痛です。 息も少し苦しいと言ってますよ。」 13

  • #14.

    症例 9歳女児(体重 28 kg) 【現病歴】 来院1時間前、くるみを食べた直後から咽頭痛、呼吸苦、 腹痛を自覚したため、母親に連れられて夜間救急外来を 受診した。 【既往歴】 以前くるみを食べて同様の症状が起こったことがあり、 いつもはくるみを避けていた。 14

  • #15.

    症例 【来院時現症】 General Appearance 受け答えはできるが言葉数が少なく、元気がない。 Vital Signs 意識清明, 体温 36.4 ℃ , 脈拍数 84/min, 血圧 111/86mmHg, 呼吸数 16/min, SpO2 99%(RA) 15

  • #16.

    症例 【来院時現症】 身体所見 頭頸部:咽頭発赤を認めない 呼吸音:清, wheeze聴取しない 腹部:平坦, 圧痛を認めない 皮膚:皮疹を認めない, 掻痒感なし 16

  • #17.

    ディスカッション1 1, 診断してみましょう! 診断基準は知っていますか? 2, 上記診断なら、初期治療は何をしますか? 具体的に何を、どのくらい使うのか、 パッと思い浮かびますか? 17

  • #18.

    アナフィラキシーの診断 Step1, 症状から疑う Step2, 診断する 上記の根拠は全て臨床所見!! 18

  • #19.

    症状 19

  • #20.

    症状で一番多いのは皮膚症状!だが・・・ 皮膚粘膜症状 80-90% 気道症状 70% 消化器症状 45% 循環器症状 45% 中枢神経症状 15% ※つまり、10〜20%で皮膚症状は出現しない!! 出典:アナフィラキシーガイドライン2022 20

  • #21.

    アナフィラキシーの致死的反応 呼吸停止・心停止に至るまでの時間(中央値) 薬剤 (経静脈) ハチ毒(経皮下) 5分! 15分 食物 (経腸管) 30分 ※蘇生に成功しても、重篤な低酸素脳症を残すことも 迅速な対応が必要!! 出典:アナフィラキシーガイドライン2022 21

  • #22.

    診断 22

  • #23.

    今までの診断基準 23

  • #24.

    旧診断基準 臨床所見から3パターン 1, 急速に皮膚粘膜症状 + 呼吸器症状 or 循環器症状のうち1つ以上が出現 アレルゲンはなくてもよい! 図:アナフィラキシーガイドライン2014より 24

  • #25.

    旧診断基準 臨床所見から3パターン 2, アレルゲン + 以下の2つ以上の臓器症状 皮膚症状はなくてもよい! 図:アナフィラキシーガイドライン2014より 25

  • #26.

    旧診断基準 臨床所見から3パターン 3, 既知のアレルゲン + 血圧低下 皮膚症状はなくてもよい! 図:アナフィラキシーガイドライン2014より 26

  • #27.

    新しい診断基準 27

  • #28.

    診断基準 どちらかを満たせば非常に可能性が高い 1, 急速に(数分〜数時間)皮膚・粘膜症状 +気道・循環器・重篤な消化器症状が出現 注意:アレルゲンはなくてもよい! 出典:アナフィラキシーガイドライン2022 28

  • #29.

    診断基準 どちらかを満たせば非常に可能性が高い 図:アナフィラキシーガイドライン2022より 29

  • #30.

    診断基準 どちらかを満たせば非常に可能性が高い 2, アレルゲン +血圧低下・気管支攣縮・喉頭症状 が急速に(数分〜数時間で)発症 注意:皮膚症状はなくてもよい! 出典:アナフィラキシーガイドライン2022 30

  • #31.

    診断基準 どちらかを満たせば非常に可能性が高い 図:アナフィラキシーガイドライン2022より 31

  • #32.

    診断基準 新旧比較 旧ガイドライン 新ガイドライン 急速に皮膚粘膜症状 + 呼吸器 or 循環器 症状が出現 アレルゲン不要 急速に皮膚・粘膜症状 + 気道 or 循環器 or 重篤な消化器症状が出現 アレルゲン + 皮膚粘膜 or 呼吸器 or 循環器 or 消化器症状の うち2つ以上 皮膚症状不要 アレルゲン + 血圧低下 or 気管支攣縮 or 喉頭症状が急速に発症 既知のアレルゲン + 血圧低下 皮膚症状不要 ー 出典:アナフィラキシーガイドライン2014, 2022 32

  • #33.

    診断基準 つまり、 ・皮疹がなくても、 ・アレルゲンがなくても、 ・消化器症状でも、 急速発症はアナフィラキシーを疑え! 33

  • #34.

    アナフィラキシーの診断 Step1, 症状から疑う 世界アレルギー機構の 診断基準と一緒です! Step2, 診断する 正しく診断することが大事!! 出典: Up To Date Anaphylaxis:Acute diagnosis 34

  • #35.

    重症度 新ガイドラインでは参考程度です! 35

  • #36.

    皮膚・粘膜症状の重症度 部分的か、全体的かで分ける! 軽症 中等症 重症 紅斑・膨疹 部分的 全身性 ⇦ 掻痒 自制内 自制外 ⇦ 口唇や眼瞼の腫脹 部分的 顔全体 ⇦ 出典:アナフィラキシーガイドライン2022 36

  • #37.

    消化器症状の重症度 咽頭痛、腹痛、嘔吐・下痢がないかチェック! 軽症 中等症 重症 口腔内・咽頭 違和感 喉の違和感 咽頭痛 ⇦ 腹痛 弱い 強いが自制内 持続性・自制外 嘔吐・下痢 嘔気 単回の嘔吐・下痢 複数回の 嘔吐・下痢 繰り返す 嘔吐・便失禁 出典:アナフィラキシーガイドライン2022 37

  • #38.

    呼吸器症状の重症度 咳嗽や喘鳴がないかチェック! 軽症 咳嗽、鼻汁・鼻閉 くしゃみ 喘鳴、呼吸困難 間欠的 ー 中等症 重症 断続的 持続的 犬吠様 聴診上の喘鳴 軽度呼吸苦 明らかな喘鳴 呼吸困難 SpO2≦92% 嗄声・嚥下困難 チアノーゼ 呼吸停止 出典:アナフィラキシーガイドライン2022 38

  • #39.

    循環器症状の重症度 循環器症状が出現すれば中等症以上! 軽症 頻脈・血圧低下 ー 中等症 重症 頻脈(+15回/min) 血圧軽度低下 蒼白 不整脈 血圧低下 重度徐脈 心停止 出典:アナフィラキシーガイドライン2022 39

  • #40.

    神経症状の重症度 アナフィラキシーは意識状態にも要注意! 軽症 意識状態 元気がない 中等症 重症 眠気 軽度頭痛 恐怖感 ぐったり 不穏 失禁 意識消失 出典:アナフィラキシーガイドライン2022 40

  • #41.

    重症度のまとめ 皮 膚 症 状 消 化 器 症 状 呼 吸 器 症 状 循 環 器 ・ 神 経 出典:アナフィラキシーガイドライン2022 軽症 中等症 重症 紅斑・膨疹 部分的 全身性 ⇦ 掻痒 自制内 自制外 ⇦ 口唇や眼瞼の腫脹 部分的 顔全体 ⇦ 口腔内・咽頭の違和感 喉の違和感 咽頭痛 ⇦ 腹痛 弱い 強いが自制内 持続性・自制外 嘔吐・下痢 嘔気、単回の嘔吐・下 痢 複数回の嘔吐・下痢 繰り返す嘔吐・便失禁 咳嗽、鼻汁・鼻閉 くしゃみ 間欠的 断続的 ー 聴診上の喘鳴 軽度呼吸苦 頻脈・血圧低下 ー 頻脈(+15回/min) 血圧軽度低下、蒼白 意識状態 元気がない 眠気、軽度頭痛、恐怖感 喘鳴、呼吸困難 持続的 犬吠様 明らかな喘鳴、呼吸困難 SpO2≦92%、嗄声・嚥下困難 チアノーゼ、呼吸停止 不整脈、血圧低下 重度徐脈、心停止 ぐったり、不穏、失禁 意識消失 41

  • #42.

    初期対応 42

  • #43.

    初期対応 1, 患者を評価する 2, 人を多く集め、必要物品を揃える 3, アドレナリンを筋注する 43

  • #44.

    初期対応 1, 患者を評価する 何においても、まずは A・B・C・D・E A B C D E 気道:会話可能か? Stridorの有無 呼吸:呼吸数、SpO2、 Wheezeの有無 循環:血圧、脈拍数 意識:意識レベル 皮膚:蕁麻疹の範囲と部位 +問診で臓器別に症状の情報を集める 44

  • #45.

    初期対応 2, 人を多く集め、必要物品を揃える ・アドレナリン製剤(1mg/mL) ・細胞外液バッグ ・酸素(酸素ボンベ・延長チューブ) ・リザーバー付きアンビューマスク ・経鼻エアウェイ、ラリンジアルマスク ・鼻カニューレ、フェイスマスク ・挿管用医療機器、吸引用医療機器 ・静脈ルート確保・輸液のための用具一式 ・手袋(ラテックス不使用のものを) ・バックボード 45

  • #46.

    初期対応 3, アドレナリンを筋注する(以前は) いつ:Grade3の症状がある or Grade2の症状が複数ある 何を:アドレナリン製剤(1mg/1mL) 量は:成人は0.3mg、小児は0.01mg/kg どこ:大腿外側に筋注 ※投与時間を記録すること! ※症状が消失するまで、5〜15分おきに何度でも筋注可能! 出典:アナフィラキシーガイドライン2014 46

  • #47.

    初期対応 3, アドレナリンを筋注する いつ:アナフィラキシーと診断、または強く疑う場合!! 何を:アドレナリン製剤(1mg/1mL) 量は:0.01mg/kg 成人は最大0.5mg、小児は最大0.3mg どこ:大腿外側に筋注 ※投与時間を記録すること! ※症状が消失するまで、5〜15分おきに何度でも筋注可能! 出典:アナフィラキシーガイドライン2022 47

  • #48.

    アドレナリンの薬理作用 α1作用:血管収縮・血管抵抗増加→血圧上昇 気道粘膜浮腫抑制 β1作用:心収縮力増大・心拍数増加 β2作用:気管支拡張 メディエーターの放出低下 ショックの防止・緩和 上気道閉塞の軽減 血管浮腫の軽減 出典:アナフィラキシー ガイドライン2022 48

  • #49.

    アナフィラキシーには直ちにアドレナリン筋注を! ヒスタミン放出⇨全身の血管拡張 ↓ 血管内皮細胞の結合が緩くなる アドレナリン ↓ ヒスタミン放出と間質浮腫を抑制する 血漿成分が細胞外に漏出 =症状の原因と根本に作用する ↓ 間質浮腫⇨各種臓器症状 循環血漿量減少⇨失神・ショック 出典:研修医のための内科診療ことはじめ 第9章 21 アナフィラキシー p848 49

  • #50.

    アナフィラキシーの致死的反応 再掲 呼吸停止・心停止に至るまでの時間(中央値) 薬剤 (経静脈) ハチ毒(経皮下) 5分! 15分 食物 (経腸管) 30分 ※蘇生に成功しても、重篤な低酸素脳症を残すことも 迅速な対応が必要!! 出典:アナフィラキシーガイドライン2022 50

  • #51.

    アドレナリンの有害事象 アドレナリン投与に禁忌なし!!ためらうな!! 有害事象 :蒼白、振戦、不安、動悸、浮動性めまい、頭痛 →これらは薬理作用量が投与された指標でもある 過量投与では心室性不整脈、高血圧、肺水腫リスク! 出典:アナフィラキシーガイドライン2022 51

  • #52.

    アドレナリンの有害事象は回復する 出典:アナフィラキシーガイドライン2022 52

  • #53.

    アドレナリン投与量 <今までの表記> 1回投与量は0.01mg/kg (最大量:成人0.5mg、小児0.3mgは表のみに記載) <新しい表記> 「アドレナリンの最大投与量は、 成人0.5mg、小児0.3mgであり・・・」と本文に明文化 出典:アナフィラキシーガイドライン2022 53

  • #54.

    アドレナリン投与量 新しい表記 ・シリンジに吸う量は1回量 ・プレフィルドでは先に余剰分を破棄 必ず1回量だけシリンジ内 に入ってるようにしてか ら投与する! 54

  • #55.

    アドレナリン 1回投与量は0.01mg/kg 以下のような投与量の簡素化も可能 出典:アナフィラキシーガイドライン2022 55

  • #56.

    アドレナリン製剤:どれも1mg/mL(0.1%)製剤 56

  • #57.

    アドレナリン 大腿外側に筋注 静注ではないことに注意!(静注は心肺蘇生時のみ) 針は根本まで刺すこと! 57

  • #58.

    アナフィラキシー対応の流れ まずはアナフィラキシーと認識する 可能なら曝露要因を取り除く ↓ 患者を評価する(A・B・C・D・E) ↓ 助けを呼ぶ(可能なら院内救急を) ↓ 気道確保、仰臥位・下肢挙上して アドレナリン筋注! 図:アナフィラキシーガイドライン2022より 58

  • #59.

    アナフィラキシー対応の流れ 図:アナフィラキシーガイドライン2022より アドレナリンは投与時間を記録し、 必要に応じて5〜15分毎に再投与する ↓ 必要な場合は高流量酸素投与(6〜8L/分) (フェイスマスクか経口エアウェイで) ↓ 14〜16Gの留置針でルート確保・生食1〜2L急速投与 頻回にバイタルサインチェック、必要なら心配蘇生 ルート確保は筋注より後で!! 59

  • #60.

    被疑薬が静注薬だった場合 まずはその薬剤投与をストップ!! →アドレナリン筋注→新たに輸液する! ・新しいルートを取ってから、被疑薬を投与していた ルートを抜去する! ・新しいルートが取れなければ、逆血を完全に引いて から使用する! 60

  • #61.

    アドレナリン筋注のポイント再掲 いつ:アナフィラキシーと診断、または強く疑う場合!! 何を:アドレナリン製剤(1mg/1mL) 量は:0.01mg/kg 成人は最大0.5mg、小児は最大0.3mg どこ:大腿外側に筋注 ※投与時間を記録すること! ※症状が消失するまで、5〜15分おきに何度でも筋注可能! 出典:アナフィラキシーガイドライン2022 61

  • #62.

    症例 ここまでを踏まえて考えてみましょう! 62

  • #63.

    症例 9歳女児(体重 30kg) 【現病歴】 来院1時間前、くるみを食べた直後から咽頭痛、呼吸苦、 腹痛を自覚したため、母親に連れられて夜間救急外来を 受診した。 【既往歴】 以前くるみを食べて同様の症状が起こったことがあり、 いつもはくるみを避けていた。 63

  • #64.

    診断基準 どちらかを満たせば非常に可能性が高い 2, アレルゲン +血圧低下・気管支攣縮・喉頭症状 が急速に(数分〜数時間で)発症 注意:皮膚症状はなくてもよい! 出典:アナフィラキシーガイドライン2022 64

  • #65.

    症例 【来院時現症】 General Appearance 受け答えはできるが言葉数が少なく、元気がない。 Vital Signs 意識清明, 体温 36.4 ℃ , 脈拍数 84/min, 血圧 111/86mmHg, 呼吸数 16/min, SpO2 99%(RA) 65

  • #66.

    神経症状の重症度 アナフィラキシーは意識状態にも要注意! 軽症 意識状態 元気がない 中等症 重症 眠気 軽度頭痛 恐怖感 ぐったり 不穏 失禁 意識消失 出典:アナフィラキシーガイドライン2022 66

  • #67.

    症例 【来院時現症】 身体所見 頭頸部:咽頭発赤を認めない 呼吸音:清, wheeze聴取しない 腹部:平坦, 圧痛を認めない 皮膚:皮疹を認めない, 掻痒感なし 67

  • #68.

    診断基準 どちらかを満たせば非常に可能性が高い 2, アレルゲン +血圧低下・気管支攣縮・喉頭症状 が急速に(数分〜数時間で)発症 注意:皮膚症状はなくてもよい! 出典:アナフィラキシーガイドライン2022 68

  • #69.

    症例の実際・・・ 診断は? →既知のアレルゲン曝露後に急性発症 →診断はアナフィラキシー!! 69

  • #70.

    アドレナリン筋注のポイント再掲 いつ:アナフィラキシーと診断、または強く疑う場合!! 何を:アドレナリン製剤(1mg/1mL) 量は:0.01mg/kg 成人は最大0.5mg、小児は最大0.3mg どこ:大腿外側に筋注 ※投与時間を記録すること! ※症状が消失するまで、5〜15分おきに何度でも筋注可能! 出典:アナフィラキシーガイドライン2022 70

  • #71.

    症例の実際・・・ 治療は? →アナフィラキシーを疑ったら 迷わずアドレナリン! アドレナリン0.01mg/kgだから 0.3mg筋注しよう! 71

  • #72.

    症例の実際・・・ えー、先生、この子に成人量 (0.3mg)のアドレナリン投与 するんですか??? バイタル落ち着いているんだから、 アドレナリンいらないよ! 72

  • #73.

    症例の実際・・・ (やむなく) ERで経過観察していたところ、 みるみる咳嗽・喘鳴と、 全身に蕁麻疹が出現! 腹痛も増悪し、眼瞼浮腫も認め、 SpO2 91%まで低下! 73

  • #74.

    症例の実際・・・ しかし、 アドレナリン筋注で速やかに症状消失! 来院時バイタル安定していても、 アナフィラキシーを疑ったら アドレナリン投与をためらわない! 74

  • #75.

    ディスカッション2 1, アドレナリンが効かない!どうする?? 具体的にどんな要因が考えられますか? 2, 症状改善!さて、入院?帰宅? このまま帰宅させていいですか? どんな状況になってれば帰れますか? 75

  • #76.

    アドレナリン筋注で効果不十分な時 <確認事項> ①体位は適切か、ショックなら輸液は十分か ②アドレナリンの使用方法は適切か ③アドレナリン阻害の薬剤歴はないか ④そもそもアナフィラキシーではないと言うことはないか 出典:アナフィラキシーガイドライン2022 76

  • #77.

    アドレナリン筋注で効果不十分な時 <確認事項> ①体位は適切か、ショックなら輸液は十分か →臥位で足上げ、18G以上のルートで生食1〜2L全開 ②アドレナリンの使用方法は適切か →投与する量・部位・経路・速度を確認 出典:アナフィラキシーガイドライン2022 77

  • #78.

    アドレナリン筋注で効果不十分な時 <確認事項> ③アドレナリン阻害の薬剤歴はないか ・β blocker(ビソプロロール、カルベジロールなど) ・α blocker ・ACE阻害薬など 出典:救急外来ただいま診断中!P95 78

  • #79.

    ④そもそも、本当にアナフィラキシー? アナフィラキシーとの鑑別リスト ・呼吸器症状:気管支喘息、異物誤飲、過換気症候群 ・皮膚症状:急性全身性蕁麻疹、血管性浮腫、接触性皮膚炎 ・循環器症状:急性冠症候群、肺血栓塞栓症、心不全 ・消化器症状:食中毒、好酸球性消化管障害 ・神経症状:血管迷走神経反射、神経調節性失神、てんかん 出典:アナフィラキシーガイドライン2022 79

  • #80.

    アドレナリンに反応しないアナフィラキシー患者 βブロッカーが投与されている患者にはグルカゴンも! <グルカゴン投与> 投与量:成人は1〜5mg 小児は0.02〜0.03mg/kg(最大でも 1mgまで) 投与法:ゆっくり5分以上かけて静注 出典:アナフィラキシーガイドライン2022 80

  • #81.

    なぜグルカゴンが効くのか? アドレナリンとは異なる経路でcAMPを活性化する アドレナリン グルカゴン Βブロッカー グルカゴン受容体 Β受容体 GTP結合蛋白 細胞膜 アデニル酸シクラーゼ cAMP 画像:救急外来ただいま診断中!P96改変 81

  • #82.

    アドレナリンとグルカゴンの比較 アドレナリン グルカゴン アナフィラキシーに対して 第一選択 アドレナリン繰り返し投与しても 無効なら検討 作用機序 β受容体などに作用して cAMP活性化 グルカゴン受容体に作用して cAMP活性化 成人投与量 最大0.5mg 1〜5mg 小児投与量 最大0.3mg 0.02〜0.03mg/kg (最大でも 1mgまで) 投与経路 大腿外側に筋注 ゆっくり5分以上かけて静注 まずはアドレナリン筋注を2回はトライすること!! 82

  • #83.

    アドレナリン以外はおまけ! 抗ヒスタミン薬 皮膚症状を緩和させるが、それ以外では効果はない! アナフィラキシーに対する治療推奨度:C ステロイド 二相性反応を予防するかもしれないが、効果発現に数時間かかる! エビデンスなし。 アナフィラキシーに対する治療推奨度:C アナフィラキシーには何においてもアドレナリン! 出典:アナフィラキシーガイドライン2022 83

  • #84.

    アドレナリンを打った後のフォローは? アナフィラキシー患者は、 症状が消失しても基本的に経過観察が必要 二相性反応が起こらない可能性は ・1時間経過観察後:95% ・6時間経過観察後:97% 入院適応に絶対的なものはないが、施設に基準があれば従おう 出典:研修医のための内科診療ことはじめ 第9章 21 アナフィラキシー p852 84

  • #85.

    アナフィラキシー初期対応の後は・・・ ①アレルゲンを特定する • アレルギー専門医に紹介する • 1/3で診断や疑いとなっていた原因の診断が変わる ② アナフィラキシー教育を行う • 可能性として、72時間は二相性に反応が起き得ると伝える • アナフィラキシーは死ぬ病気である • アレルゲンとなった薬剤使用は禁忌・食物は口にしない 出典:アナフィラキシーガイドライン2022 85

  • #86.

    アナフィラキシー初期対応の後は・・・ ③エピペン処方の妥当性を検討する • • • • アレルゲンが特定できない場合 養蜂家等、アレルゲンを避けられない場合 ありふれた食物が原因の場合 運動誘発アナフィラキシーの場合 ただし夜間救急外来ではエピペンは処方できないことも! 次へつなぐこと! 出典:アナフィラキシーガイドライン2022 86

  • #87.

    エピペン処方について 出典:アナフィラキシーガイドライン2022 87

  • #88.

    エピペン処方について 出典:エピペンサイト 医療関係者用 オンライン講習を受けていないと処方できません!! 88

  • #89.

    本日のまとめ アドレナリン筋注の適応は アナフィラキシーを疑ったタイミング! 重症度による適応判断が不要になった! 89

  • #90.

    本日のまとめ 来院時バイタルが安定していても、 アナフィラキシーを疑ったら アドレナリン筋注もためらわないこと! 90

  • #91.

    本日のまとめ 新しくなったガイドライン、 ぜひご一読ください! 91

  • #92.

    参考資料 ・アナフィラキシーガイドライン2022 ・アナフィラキシーガイドライン2014 ・Up To Date Anaphylaxis:Acute diagnosis, Emergency treatment ・エピペンサイト 医療関係者用 ・塩尻俊明, 杉田陽一郎「研修医のための内科診療ことはじめ」(羊土社) ・坂本壮「救急外来ただいま診断中!」(中外医学社) 92

アナフィラキシーに対応しよう

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投稿者プロフィール
永井友基
Award 2022 受賞者

独立行政法人国立病院機構長崎医療センター

概要

アナフィラキシー自信もって対応できますか?!

新型コロナウイルスワクチンなどでも、アナフィラキシーは注目されており、今後どの年次、どの診療科でも対応する必要があると思います。

非常によくまとまっているので皆さんのお役に立てばと思います。

勉強会でのキースライドなどをtwitterでも発信しています。よければフォローしてください(@yukina_minhos)

本スライドの対象者

医学生/研修医/専攻医

テキスト全文

  • #1.

    研修医/コメディカルに知ってほしい ~アナフィラキシー~ アナフィラキシーガイドライン2022年ver Presented by 手稲渓仁会病院 奥山由梨佳

  • #2.

    本日の目標 アナフィラキシーの 1, 診断ができる 2, 初期対応ができる 速やかにアドレナリン筋注ができる! 2

  • #3.

    ガイドラインが新しくなりました! 2022年8月30日改訂! 以下が新しくなりました! ・診断基準 ・アドレナリン投与基準 ・アドレナリン投与量表記 3

  • #4.

    定義・疫学・病態 4

  • #5.

    定義 2022年度アナフィラキシーガイドラインによると、 ・重篤な全身性の過敏性反応 ・通常は急速に発現し、死に至ることもある 「感作された人体の生命を脅かすアレルギー反応」 5

  • #6.

    定義 アレルギー :抗原曝露による免疫反応の結果起こる病的反応 アナフィラキシー :人体の生命を脅かすアレルギー反応 アナフィラキシーショック :血圧低下や意識障害を伴うアナフィラキシー 6

  • #7.

    疫学 ・世界全体の生涯有病率は0.3〜5.1%と推定 ・アナフィラキシーで死亡する確率は100万人あたり 薬剤 :0.05〜0.51 食物 :0.03〜0.32 昆虫毒:0.09〜0.13 統計:アナフィラキシーガイドライン2022より 7

  • #8.

    疫学 ・日本における食物アナフィラキシー誘因 1位:牛乳(22%) 2位:鶏卵(20%) 3位:小麦(12%) ・食物依存性運動誘発アナフィラキシーでは 小麦の他、甲殻類、果物が多い 統計:アナフィラキシーガイドライン2022より 8

  • #9.

    病態 赤枠がⅠ型アレルギー:最多 図:アナフィラキシーガイドライン2022より 9

  • #10.

    病態 アナフィラキシーは Ⅰ型アレルギーが多い 抗原曝露を契機とした マスト細胞活性化による ヒスタミン放出が原因 図:研修医のための内科診療ことはじめ 第9章 21 アナフィラキシー p848より 10

  • #11.

    病態 ヒスタミン放出⇨全身の血管拡張 ↓ 血管内皮細胞の結合が緩くなる ↓ 血漿成分が細胞外に漏出 ↓ 間質浮腫⇨各種臓器症状 循環血漿量減少⇨失神・ショック 出典:研修医のための内科診療ことはじめ 第9章 21 アナフィラキシー p848 11

  • #12.

    病態 間質浮腫がアナフィラキシーの臓器症状の病態! ・皮膚症状⇨膨疹 ・鼻粘膜症状⇨鼻汁、くしゃみ、鼻詰まり ・気道症状⇨咳嗽、喘鳴 ・消化管症状⇨下痢(消化管浮腫)、腹痛(消化管狭窄) 出典:研修医のための内科診療ことはじめ 第9章 21 アナフィラキシー p849 12

  • #13.

    症例 とある夜間救急外来のこと。 「次の患者さんは9歳の女の子です。 主訴はくるみ食べた後からの咽頭痛です。 息も少し苦しいと言ってますよ。」 13

  • #14.

    症例 9歳女児(体重 28 kg) 【現病歴】 来院1時間前、くるみを食べた直後から咽頭痛、呼吸苦、 腹痛を自覚したため、母親に連れられて夜間救急外来を 受診した。 【既往歴】 以前くるみを食べて同様の症状が起こったことがあり、 いつもはくるみを避けていた。 14

  • #15.

    症例 【来院時現症】 General Appearance 受け答えはできるが言葉数が少なく、元気がない。 Vital Signs 意識清明, 体温 36.4 ℃ , 脈拍数 84/min, 血圧 111/86mmHg, 呼吸数 16/min, SpO2 99%(RA) 15

  • #16.

    症例 【来院時現症】 身体所見 頭頸部:咽頭発赤を認めない 呼吸音:清, wheeze聴取しない 腹部:平坦, 圧痛を認めない 皮膚:皮疹を認めない, 掻痒感なし 16

  • #17.

    ディスカッション1 1, 診断してみましょう! 診断基準は知っていますか? 2, 上記診断なら、初期治療は何をしますか? 具体的に何を、どのくらい使うのか、 パッと思い浮かびますか? 17

  • #18.

    アナフィラキシーの診断 Step1, 症状から疑う Step2, 診断する 上記の根拠は全て臨床所見!! 18

  • #19.

    症状 19

  • #20.

    症状で一番多いのは皮膚症状!だが・・・ 皮膚粘膜症状 80-90% 気道症状 70% 消化器症状 45% 循環器症状 45% 中枢神経症状 15% ※つまり、10〜20%で皮膚症状は出現しない!! 出典:アナフィラキシーガイドライン2022 20

  • #21.

    アナフィラキシーの致死的反応 呼吸停止・心停止に至るまでの時間(中央値) 薬剤 (経静脈) ハチ毒(経皮下) 5分! 15分 食物 (経腸管) 30分 ※蘇生に成功しても、重篤な低酸素脳症を残すことも 迅速な対応が必要!! 出典:アナフィラキシーガイドライン2022 21

  • #22.

    診断 22

  • #23.

    今までの診断基準 23

  • #24.

    旧診断基準 臨床所見から3パターン 1, 急速に皮膚粘膜症状 + 呼吸器症状 or 循環器症状のうち1つ以上が出現 アレルゲンはなくてもよい! 図:アナフィラキシーガイドライン2014より 24

  • #25.

    旧診断基準 臨床所見から3パターン 2, アレルゲン + 以下の2つ以上の臓器症状 皮膚症状はなくてもよい! 図:アナフィラキシーガイドライン2014より 25

  • #26.

    旧診断基準 臨床所見から3パターン 3, 既知のアレルゲン + 血圧低下 皮膚症状はなくてもよい! 図:アナフィラキシーガイドライン2014より 26

  • #27.

    新しい診断基準 27

  • #28.

    診断基準 どちらかを満たせば非常に可能性が高い 1, 急速に(数分〜数時間)皮膚・粘膜症状 +気道・循環器・重篤な消化器症状が出現 注意:アレルゲンはなくてもよい! 出典:アナフィラキシーガイドライン2022 28

  • #29.

    診断基準 どちらかを満たせば非常に可能性が高い 図:アナフィラキシーガイドライン2022より 29

  • #30.

    診断基準 どちらかを満たせば非常に可能性が高い 2, アレルゲン +血圧低下・気管支攣縮・喉頭症状 が急速に(数分〜数時間で)発症 注意:皮膚症状はなくてもよい! 出典:アナフィラキシーガイドライン2022 30

  • #31.

    診断基準 どちらかを満たせば非常に可能性が高い 図:アナフィラキシーガイドライン2022より 31

  • #32.

    診断基準 新旧比較 旧ガイドライン 新ガイドライン 急速に皮膚粘膜症状 + 呼吸器 or 循環器 症状が出現 アレルゲン不要 急速に皮膚・粘膜症状 + 気道 or 循環器 or 重篤な消化器症状が出現 アレルゲン + 皮膚粘膜 or 呼吸器 or 循環器 or 消化器症状の うち2つ以上 皮膚症状不要 アレルゲン + 血圧低下 or 気管支攣縮 or 喉頭症状が急速に発症 既知のアレルゲン + 血圧低下 皮膚症状不要 ー 出典:アナフィラキシーガイドライン2014, 2022 32

  • #33.

    診断基準 つまり、 ・皮疹がなくても、 ・アレルゲンがなくても、 ・消化器症状でも、 急速発症はアナフィラキシーを疑え! 33

  • #34.

    アナフィラキシーの診断 Step1, 症状から疑う 世界アレルギー機構の 診断基準と一緒です! Step2, 診断する 正しく診断することが大事!! 出典: Up To Date Anaphylaxis:Acute diagnosis 34

  • #35.

    重症度 新ガイドラインでは参考程度です! 35

  • #36.

    皮膚・粘膜症状の重症度 部分的か、全体的かで分ける! 軽症 中等症 重症 紅斑・膨疹 部分的 全身性 ⇦ 掻痒 自制内 自制外 ⇦ 口唇や眼瞼の腫脹 部分的 顔全体 ⇦ 出典:アナフィラキシーガイドライン2022 36

  • #37.

    消化器症状の重症度 咽頭痛、腹痛、嘔吐・下痢がないかチェック! 軽症 中等症 重症 口腔内・咽頭 違和感 喉の違和感 咽頭痛 ⇦ 腹痛 弱い 強いが自制内 持続性・自制外 嘔吐・下痢 嘔気 単回の嘔吐・下痢 複数回の 嘔吐・下痢 繰り返す 嘔吐・便失禁 出典:アナフィラキシーガイドライン2022 37

  • #38.

    呼吸器症状の重症度 咳嗽や喘鳴がないかチェック! 軽症 咳嗽、鼻汁・鼻閉 くしゃみ 喘鳴、呼吸困難 間欠的 ー 中等症 重症 断続的 持続的 犬吠様 聴診上の喘鳴 軽度呼吸苦 明らかな喘鳴 呼吸困難 SpO2≦92% 嗄声・嚥下困難 チアノーゼ 呼吸停止 出典:アナフィラキシーガイドライン2022 38

  • #39.

    循環器症状の重症度 循環器症状が出現すれば中等症以上! 軽症 頻脈・血圧低下 ー 中等症 重症 頻脈(+15回/min) 血圧軽度低下 蒼白 不整脈 血圧低下 重度徐脈 心停止 出典:アナフィラキシーガイドライン2022 39

  • #40.

    神経症状の重症度 アナフィラキシーは意識状態にも要注意! 軽症 意識状態 元気がない 中等症 重症 眠気 軽度頭痛 恐怖感 ぐったり 不穏 失禁 意識消失 出典:アナフィラキシーガイドライン2022 40

  • #41.

    重症度のまとめ 皮 膚 症 状 消 化 器 症 状 呼 吸 器 症 状 循 環 器 ・ 神 経 出典:アナフィラキシーガイドライン2022 軽症 中等症 重症 紅斑・膨疹 部分的 全身性 ⇦ 掻痒 自制内 自制外 ⇦ 口唇や眼瞼の腫脹 部分的 顔全体 ⇦ 口腔内・咽頭の違和感 喉の違和感 咽頭痛 ⇦ 腹痛 弱い 強いが自制内 持続性・自制外 嘔吐・下痢 嘔気、単回の嘔吐・下 痢 複数回の嘔吐・下痢 繰り返す嘔吐・便失禁 咳嗽、鼻汁・鼻閉 くしゃみ 間欠的 断続的 ー 聴診上の喘鳴 軽度呼吸苦 頻脈・血圧低下 ー 頻脈(+15回/min) 血圧軽度低下、蒼白 意識状態 元気がない 眠気、軽度頭痛、恐怖感 喘鳴、呼吸困難 持続的 犬吠様 明らかな喘鳴、呼吸困難 SpO2≦92%、嗄声・嚥下困難 チアノーゼ、呼吸停止 不整脈、血圧低下 重度徐脈、心停止 ぐったり、不穏、失禁 意識消失 41

  • #42.

    初期対応 42

  • #43.

    初期対応 1, 患者を評価する 2, 人を多く集め、必要物品を揃える 3, アドレナリンを筋注する 43

  • #44.

    初期対応 1, 患者を評価する 何においても、まずは A・B・C・D・E A B C D E 気道:会話可能か? Stridorの有無 呼吸:呼吸数、SpO2、 Wheezeの有無 循環:血圧、脈拍数 意識:意識レベル 皮膚:蕁麻疹の範囲と部位 +問診で臓器別に症状の情報を集める 44

  • #45.

    初期対応 2, 人を多く集め、必要物品を揃える ・アドレナリン製剤(1mg/mL) ・細胞外液バッグ ・酸素(酸素ボンベ・延長チューブ) ・リザーバー付きアンビューマスク ・経鼻エアウェイ、ラリンジアルマスク ・鼻カニューレ、フェイスマスク ・挿管用医療機器、吸引用医療機器 ・静脈ルート確保・輸液のための用具一式 ・手袋(ラテックス不使用のものを) ・バックボード 45

  • #46.

    初期対応 3, アドレナリンを筋注する(以前は) いつ:Grade3の症状がある or Grade2の症状が複数ある 何を:アドレナリン製剤(1mg/1mL) 量は:成人は0.3mg、小児は0.01mg/kg どこ:大腿外側に筋注 ※投与時間を記録すること! ※症状が消失するまで、5〜15分おきに何度でも筋注可能! 出典:アナフィラキシーガイドライン2014 46

  • #47.

    初期対応 3, アドレナリンを筋注する いつ:アナフィラキシーと診断、または強く疑う場合!! 何を:アドレナリン製剤(1mg/1mL) 量は:0.01mg/kg 成人は最大0.5mg、小児は最大0.3mg どこ:大腿外側に筋注 ※投与時間を記録すること! ※症状が消失するまで、5〜15分おきに何度でも筋注可能! 出典:アナフィラキシーガイドライン2022 47

  • #48.

    アドレナリンの薬理作用 α1作用:血管収縮・血管抵抗増加→血圧上昇 気道粘膜浮腫抑制 β1作用:心収縮力増大・心拍数増加 β2作用:気管支拡張 メディエーターの放出低下 ショックの防止・緩和 上気道閉塞の軽減 血管浮腫の軽減 出典:アナフィラキシー ガイドライン2022 48

  • #49.

    アナフィラキシーには直ちにアドレナリン筋注を! ヒスタミン放出⇨全身の血管拡張 ↓ 血管内皮細胞の結合が緩くなる アドレナリン ↓ ヒスタミン放出と間質浮腫を抑制する 血漿成分が細胞外に漏出 =症状の原因と根本に作用する ↓ 間質浮腫⇨各種臓器症状 循環血漿量減少⇨失神・ショック 出典:研修医のための内科診療ことはじめ 第9章 21 アナフィラキシー p848 49

  • #50.

    アナフィラキシーの致死的反応 再掲 呼吸停止・心停止に至るまでの時間(中央値) 薬剤 (経静脈) ハチ毒(経皮下) 5分! 15分 食物 (経腸管) 30分 ※蘇生に成功しても、重篤な低酸素脳症を残すことも 迅速な対応が必要!! 出典:アナフィラキシーガイドライン2022 50

  • #51.

    アドレナリンの有害事象 アドレナリン投与に禁忌なし!!ためらうな!! 有害事象 :蒼白、振戦、不安、動悸、浮動性めまい、頭痛 →これらは薬理作用量が投与された指標でもある 過量投与では心室性不整脈、高血圧、肺水腫リスク! 出典:アナフィラキシーガイドライン2022 51

  • #52.

    アドレナリンの有害事象は回復する 出典:アナフィラキシーガイドライン2022 52

  • #53.

    アドレナリン投与量 <今までの表記> 1回投与量は0.01mg/kg (最大量:成人0.5mg、小児0.3mgは表のみに記載) <新しい表記> 「アドレナリンの最大投与量は、 成人0.5mg、小児0.3mgであり・・・」と本文に明文化 出典:アナフィラキシーガイドライン2022 53

  • #54.

    アドレナリン投与量 新しい表記 ・シリンジに吸う量は1回量 ・プレフィルドでは先に余剰分を破棄 必ず1回量だけシリンジ内 に入ってるようにしてか ら投与する! 54

  • #55.

    アドレナリン 1回投与量は0.01mg/kg 以下のような投与量の簡素化も可能 出典:アナフィラキシーガイドライン2022 55

  • #56.

    アドレナリン製剤:どれも1mg/mL(0.1%)製剤 56

  • #57.

    アドレナリン 大腿外側に筋注 静注ではないことに注意!(静注は心肺蘇生時のみ) 針は根本まで刺すこと! 57

  • #58.

    アナフィラキシー対応の流れ まずはアナフィラキシーと認識する 可能なら曝露要因を取り除く ↓ 患者を評価する(A・B・C・D・E) ↓ 助けを呼ぶ(可能なら院内救急を) ↓ 気道確保、仰臥位・下肢挙上して アドレナリン筋注! 図:アナフィラキシーガイドライン2022より 58

  • #59.

    アナフィラキシー対応の流れ 図:アナフィラキシーガイドライン2022より アドレナリンは投与時間を記録し、 必要に応じて5〜15分毎に再投与する ↓ 必要な場合は高流量酸素投与(6〜8L/分) (フェイスマスクか経口エアウェイで) ↓ 14〜16Gの留置針でルート確保・生食1〜2L急速投与 頻回にバイタルサインチェック、必要なら心配蘇生 ルート確保は筋注より後で!! 59

  • #60.

    被疑薬が静注薬だった場合 まずはその薬剤投与をストップ!! →アドレナリン筋注→新たに輸液する! ・新しいルートを取ってから、被疑薬を投与していた ルートを抜去する! ・新しいルートが取れなければ、逆血を完全に引いて から使用する! 60

  • #61.

    アドレナリン筋注のポイント再掲 いつ:アナフィラキシーと診断、または強く疑う場合!! 何を:アドレナリン製剤(1mg/1mL) 量は:0.01mg/kg 成人は最大0.5mg、小児は最大0.3mg どこ:大腿外側に筋注 ※投与時間を記録すること! ※症状が消失するまで、5〜15分おきに何度でも筋注可能! 出典:アナフィラキシーガイドライン2022 61

  • #62.

    症例 ここまでを踏まえて考えてみましょう! 62

  • #63.

    症例 9歳女児(体重 30kg) 【現病歴】 来院1時間前、くるみを食べた直後から咽頭痛、呼吸苦、 腹痛を自覚したため、母親に連れられて夜間救急外来を 受診した。 【既往歴】 以前くるみを食べて同様の症状が起こったことがあり、 いつもはくるみを避けていた。 63

  • #64.

    診断基準 どちらかを満たせば非常に可能性が高い 2, アレルゲン +血圧低下・気管支攣縮・喉頭症状 が急速に(数分〜数時間で)発症 注意:皮膚症状はなくてもよい! 出典:アナフィラキシーガイドライン2022 64

  • #65.

    症例 【来院時現症】 General Appearance 受け答えはできるが言葉数が少なく、元気がない。 Vital Signs 意識清明, 体温 36.4 ℃ , 脈拍数 84/min, 血圧 111/86mmHg, 呼吸数 16/min, SpO2 99%(RA) 65

  • #66.

    神経症状の重症度 アナフィラキシーは意識状態にも要注意! 軽症 意識状態 元気がない 中等症 重症 眠気 軽度頭痛 恐怖感 ぐったり 不穏 失禁 意識消失 出典:アナフィラキシーガイドライン2022 66

  • #67.

    症例 【来院時現症】 身体所見 頭頸部:咽頭発赤を認めない 呼吸音:清, wheeze聴取しない 腹部:平坦, 圧痛を認めない 皮膚:皮疹を認めない, 掻痒感なし 67

  • #68.

    診断基準 どちらかを満たせば非常に可能性が高い 2, アレルゲン +血圧低下・気管支攣縮・喉頭症状 が急速に(数分〜数時間で)発症 注意:皮膚症状はなくてもよい! 出典:アナフィラキシーガイドライン2022 68

  • #69.

    症例の実際・・・ 診断は? →既知のアレルゲン曝露後に急性発症 →診断はアナフィラキシー!! 69

  • #70.

    アドレナリン筋注のポイント再掲 いつ:アナフィラキシーと診断、または強く疑う場合!! 何を:アドレナリン製剤(1mg/1mL) 量は:0.01mg/kg 成人は最大0.5mg、小児は最大0.3mg どこ:大腿外側に筋注 ※投与時間を記録すること! ※症状が消失するまで、5〜15分おきに何度でも筋注可能! 出典:アナフィラキシーガイドライン2022 70

  • #71.

    症例の実際・・・ 治療は? →アナフィラキシーを疑ったら 迷わずアドレナリン! アドレナリン0.01mg/kgだから 0.3mg筋注しよう! 71

  • #72.

    症例の実際・・・ えー、先生、この子に成人量 (0.3mg)のアドレナリン投与 するんですか??? バイタル落ち着いているんだから、 アドレナリンいらないよ! 72

  • #73.

    症例の実際・・・ (やむなく) ERで経過観察していたところ、 みるみる咳嗽・喘鳴と、 全身に蕁麻疹が出現! 腹痛も増悪し、眼瞼浮腫も認め、 SpO2 91%まで低下! 73

  • #74.

    症例の実際・・・ しかし、 アドレナリン筋注で速やかに症状消失! 来院時バイタル安定していても、 アナフィラキシーを疑ったら アドレナリン投与をためらわない! 74

  • #75.

    ディスカッション2 1, アドレナリンが効かない!どうする?? 具体的にどんな要因が考えられますか? 2, 症状改善!さて、入院?帰宅? このまま帰宅させていいですか? どんな状況になってれば帰れますか? 75

  • #76.

    アドレナリン筋注で効果不十分な時 <確認事項> ①体位は適切か、ショックなら輸液は十分か ②アドレナリンの使用方法は適切か ③アドレナリン阻害の薬剤歴はないか ④そもそもアナフィラキシーではないと言うことはないか 出典:アナフィラキシーガイドライン2022 76

  • #77.

    アドレナリン筋注で効果不十分な時 <確認事項> ①体位は適切か、ショックなら輸液は十分か →臥位で足上げ、18G以上のルートで生食1〜2L全開 ②アドレナリンの使用方法は適切か →投与する量・部位・経路・速度を確認 出典:アナフィラキシーガイドライン2022 77

  • #78.

    アドレナリン筋注で効果不十分な時 <確認事項> ③アドレナリン阻害の薬剤歴はないか ・β blocker(ビソプロロール、カルベジロールなど) ・α blocker ・ACE阻害薬など 出典:救急外来ただいま診断中!P95 78

  • #79.

    ④そもそも、本当にアナフィラキシー? アナフィラキシーとの鑑別リスト ・呼吸器症状:気管支喘息、異物誤飲、過換気症候群 ・皮膚症状:急性全身性蕁麻疹、血管性浮腫、接触性皮膚炎 ・循環器症状:急性冠症候群、肺血栓塞栓症、心不全 ・消化器症状:食中毒、好酸球性消化管障害 ・神経症状:血管迷走神経反射、神経調節性失神、てんかん 出典:アナフィラキシーガイドライン2022 79

  • #80.

    アドレナリンに反応しないアナフィラキシー患者 βブロッカーが投与されている患者にはグルカゴンも! <グルカゴン投与> 投与量:成人は1〜5mg 小児は0.02〜0.03mg/kg(最大でも 1mgまで) 投与法:ゆっくり5分以上かけて静注 出典:アナフィラキシーガイドライン2022 80

  • #81.

    なぜグルカゴンが効くのか? アドレナリンとは異なる経路でcAMPを活性化する アドレナリン グルカゴン Βブロッカー グルカゴン受容体 Β受容体 GTP結合蛋白 細胞膜 アデニル酸シクラーゼ cAMP 画像:救急外来ただいま診断中!P96改変 81

  • #82.

    アドレナリンとグルカゴンの比較 アドレナリン グルカゴン アナフィラキシーに対して 第一選択 アドレナリン繰り返し投与しても 無効なら検討 作用機序 β受容体などに作用して cAMP活性化 グルカゴン受容体に作用して cAMP活性化 成人投与量 最大0.5mg 1〜5mg 小児投与量 最大0.3mg 0.02〜0.03mg/kg (最大でも 1mgまで) 投与経路 大腿外側に筋注 ゆっくり5分以上かけて静注 まずはアドレナリン筋注を2回はトライすること!! 82

  • #83.

    アドレナリン以外はおまけ! 抗ヒスタミン薬 皮膚症状を緩和させるが、それ以外では効果はない! アナフィラキシーに対する治療推奨度:C ステロイド 二相性反応を予防するかもしれないが、効果発現に数時間かかる! エビデンスなし。 アナフィラキシーに対する治療推奨度:C アナフィラキシーには何においてもアドレナリン! 出典:アナフィラキシーガイドライン2022 83

  • #84.

    アドレナリンを打った後のフォローは? アナフィラキシー患者は、 症状が消失しても基本的に経過観察が必要 二相性反応が起こらない可能性は ・1時間経過観察後:95% ・6時間経過観察後:97% 入院適応に絶対的なものはないが、施設に基準があれば従おう 出典:研修医のための内科診療ことはじめ 第9章 21 アナフィラキシー p852 84

  • #85.

    アナフィラキシー初期対応の後は・・・ ①アレルゲンを特定する • アレルギー専門医に紹介する • 1/3で診断や疑いとなっていた原因の診断が変わる ② アナフィラキシー教育を行う • 可能性として、72時間は二相性に反応が起き得ると伝える • アナフィラキシーは死ぬ病気である • アレルゲンとなった薬剤使用は禁忌・食物は口にしない 出典:アナフィラキシーガイドライン2022 85

  • #86.

    アナフィラキシー初期対応の後は・・・ ③エピペン処方の妥当性を検討する • • • • アレルゲンが特定できない場合 養蜂家等、アレルゲンを避けられない場合 ありふれた食物が原因の場合 運動誘発アナフィラキシーの場合 ただし夜間救急外来ではエピペンは処方できないことも! 次へつなぐこと! 出典:アナフィラキシーガイドライン2022 86

  • #87.

    エピペン処方について 出典:アナフィラキシーガイドライン2022 87

  • #88.

    エピペン処方について 出典:エピペンサイト 医療関係者用 オンライン講習を受けていないと処方できません!! 88

  • #89.

    本日のまとめ アドレナリン筋注の適応は アナフィラキシーを疑ったタイミング! 重症度による適応判断が不要になった! 89

  • #90.

    本日のまとめ 来院時バイタルが安定していても、 アナフィラキシーを疑ったら アドレナリン筋注もためらわないこと! 90

  • #91.

    本日のまとめ 新しくなったガイドライン、 ぜひご一読ください! 91

  • #92.

    参考資料 ・アナフィラキシーガイドライン2022 ・アナフィラキシーガイドライン2014 ・Up To Date Anaphylaxis:Acute diagnosis, Emergency treatment ・エピペンサイト 医療関係者用 ・塩尻俊明, 杉田陽一郎「研修医のための内科診療ことはじめ」(羊土社) ・坂本壮「救急外来ただいま診断中!」(中外医学社) 92

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