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急性腎障害〜診断は尿量とCrの動き、腎代替療法のタイミング〜

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症例から学ぼう!熱中症

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投稿者

ミント@腎臓内科

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テキスト全文

  • #1.

    腎臓内科 ミント

  • #2.

    はじめに Ø 慢性腎臓病(CKD)患者では基本的に腎機能の回復は見込めない Ø そのため、腎機能障害の進行を抑える保存的治療が主になる Ø 保存的治療の甲斐なく、末期腎不全に至った患者では上手に腎代替療法を導入 する必要がある Ø 腎代替療法の導入は主に腎臓内科医が担うことが多いが、地域や病院によっては 非専門医でも導入の一端を担うこともありうる

  • #3.

    目次 1. 末期腎不全の管理 2. 腎代替療法の概要 3. 選択までの流れ 4. Take Home Message

  • #4.

    1. 末期腎不全の管理 CKDの定義と管理目標 定義 Ø 広義には 何らかの腎障害が3ヶ月以上持続する こと Ø 便宜上 GFR< 60 mL/分/1.73 m2で規定することが多い 大目標 Ø とにかく腎代替療法の導入に至らないこと!! Ø 脳心血管イベントを抑制することも極めて重要! そのためには… 蛋白尿の軽減化と腎血流低下 が重要

  • #5.

    1. 末期腎不全の管理 CKDの管理の概要 p 食事:減塩、適正なカロリー/タンパク摂取 p 運動:適切な運動量 p 血圧:適正な血圧 130-140/80-90mmHg未満 p 体重:適正体重を維持 p 血糖:HbA1c 6.5%未満目安 p 脂質:LDL-C 120mg/dL未満 などなど多数…

  • #6.

    1. 末期腎不全の管理 どのタイミングで腎専門医に紹介する? Ø 日本腎臓学会のCKD診療ガイドのヒートマップに準拠 Ø 以下は概要 主な紹介基準 ü ü ü ü 尿蛋白陽性ならほぼ全例 尿蛋白 でeGFR< 60 mL/分/1.73 m2 尿蛋白陰性でもeGFR< 45 mL/分/1.73 m2 3か月以内に30%以上の腎機能の悪化 * ただし、地域や医療施設のキャパシティなども考慮が必要

  • #7.

    1. 末期腎不全の管理 専門医に紹介したら何をしてくれる? p まずは治療可能な可逆的病態がないかスクリーニング ü 抗GBM抗体疾患やANCA関連血管炎など ü 腎形態の確認:腎生検が可能なら腎生検も検討 p 残念ながら非可逆的なCKDであれば進行を抑制する保存的治療 p eGFR< 30 mL/分/1.73 m2程度で腎代替療法の説明を開始 p さらに進行し末期腎不全に至ったら上手に腎代替療法につなぐ

  • #8.

    2. 腎代替療法の概要 腎代替療法の種類 血液透析 代替できる 腎機能 腹膜透析 10% 5% ホルモンの異常は残る ホルモンの異常は 残る 腎移植 50% ホルモンの異常は ある程度 悪い 生命予後 心血管合併症 週3回 通院 悪い 優れている 月1-2回 安定すれば月1回 費用 40万円/月 30〜50万円/月 初年度 400万 その後月10万程度 デメリット バスキュラー アクセスの問題 腹膜炎 EPS 免疫抑制 拒絶反応

  • #9.

    2. 腎代替療法の概要 それぞれの腎代替療法について 血液透析 p ブラッドアクセス(主に自己血管内シャント)を用いて血液を脱血し、透析器を通して 余分な尿毒素や水分を除去し、血液を体の中に戻す方法 p 基本的に病院スタッフにお任せになる p 循環動態の大きな変化を伴うため心臓の負担が大きい 腹膜透析 p カテーテルを通して透析液を腹腔内に入れ、数時間後に老廃物がたまった透析液を体外に出す方法 p 患者本人もしくは介護者が行う必要がある反面、通院は少なくて済む 腎移植 p 家族もしくは他者から腎臓を提供してもらう p 免疫抑制薬を内服することやそれに伴う副作用以外は日常生活は健常者と同様である

  • #10.

    2. 腎代替療法の概要 日本と諸外国の比較 日本 p 93%程度が血液透析、3%程度が腹膜透析、3%程度が腎移植を選択 海外 p 米国や欧州では10%程度が腹膜透析、40%程度が腎移植 p 血液透析は腎移植までのつなぎとして考えている 日本でも腹膜透析、腎移植の割合を増やしたい!

  • #11.

    2. 腎代替療法の概要 血液透析の準備とタイミング 準備 Ø 維持透析施設の決定:スケジュール(火木土 or 月水金)や送迎の有無など Ø 医療費助成の申請:40万/月の医療費 ⇨助成で1-2万/月(後述) Ø バスキュラーアクセスの作成:内シャント、カテーテルなど タイミング Ø GFR<15mL/分/1.73 m2になったら透析導入時期をおおよそ判断して準備開始 Ø バスキュラーアクセス/内シャントの作製は透析導入の少なくとも1ヶ月前、 最短でも2-4週間前に作成

  • #12.

    2. 腎代替療法の概要 血液透析の負担 • 週3回 4時間 通院、じっとする • (原則)⼀⽣涯⾏う • 毎回(2箇所)針を刺される • シャントトラブル • ⾎圧の変動によるしんどさ • 飲⽔、⾷事制限 • 内服薬 負担が大きい!!!

  • #13.

    2. 腎代替療法の概要 在宅血液透析 Ø 透析施設で一般的に行われている血液透析を自宅で行うこと Ø 血液透析は4時間週3回の透析が標準的だが、在宅血液透析では回数も時間も短 縮・延長することが可能 食事や就労など生活の様々な制限が軽くなる Ø ただし、機械の準備はもちろん、シャント穿刺から透析中のトラブル、後片付けに至 るまで本人もしくは周囲の人が行う必要がある上、医療従事者がすぐに対応できない のでリスクも高い Ø 日本では透析患者の0.07%と普及率が低いが、環境が整えばさらに普及することが 推定される

  • #14.

    2. 腎代替療法の概要 腹膜透析 血液透析との違い Ø 自分 もしくは 家族・介護者が自宅で毎日行う透析 Ø 循環動態の変化が乏しく、心臓への負担が小さい 準備 Ø 残腎機能が腹膜透析期間の規定因子となるためタイミングは血液透析よりやや早め Ø 腹膜透析カテーテルを腹部に埋め込む手術 SMAP法:カテーテル挿入の際出口を作らずにしばらく置いておいて実際に 腹膜透析を始めるときに出口を作る (段階的腹膜透析導入法) SPIED法:カテーテル挿入の際に出口を作成する Ø 透析液のバッグ交換や接続方法、ケアの方法などを理解

  • #15.

    2. 腎代替療法の概要 腎移植 種類 Ø 生体腎移植:親族から提供される。適応となるドナーが必要 Ø 献腎移植:亡くなった方から提供される。平均待機期間は約15年 Ø 日本では生体腎移植が腎移植全体数の約85%を占めている 準備 Ø 透析しながら行うケースと透析導入前に行うケース(先行的腎移植)がある Ø 先行的腎移植の場合おおよそGFR 20mL/分/1.73 m2を目安に準備開始 Ø ドナーやレシピエントの耐術能や適応、倫理的背景(金銭的授受など)を詳しく調査 Ø 術前に体重など含めた身体的な状態を整える(他の手術と同様)

  • #16.

    2. 腎代替療法の概要 それぞれの患者費用負担 透析 p 健康保険+特定疾病療養受療証:1-2万円/月 腎移植 p 透析をしている方→健康保険+特定疾病療養受療証:0-2万円/月 p 透析をしていない方→健康保険(+身体障害者手帳):0-健康保険自己負担限度額 *自治体により制度は様々でややこしいので該当する窓口で要相談

  • #17.

    3. 腎代替療法の選択 どうやって選択するのか 検討事項 ü ü ü ü ü ü ü QOL 生命予後 生活への影響 患者の価値観 メリット・デメリット 医師の経験上での推奨 患者の能力 共同意思決定(SDM) 医療者と患者が協働して患者にとって最善の 医療上の決定を下すためのプロセス *IC(インフォームドコンセント) 特定の医療介入を決定するための情報交換や 話し合いのプロセス

  • #18.

    3. 腎代替療法の選択 医療者と患者のギャップ Ø 透析患者を対象とした介入試験は主に死亡、心血管疾患、QOLが上位3つを占めている (医療者の評価) Ø 一方,透析患者あるいはその介護者が重視しているのは 「旅行に行けるか?」や「透析のない自由な時間は?」のような項目 Ø NPO 法人腎臓サポート協会の2019年会員アンケートでも透析に対する不安は 生命予後よりも透析の前と同じような日常生活が送られるかどうかである SDMの際は患者の求めるアウトカムに 寄り添って説明する

  • #19.

    3. 腎代替療法の選択 療法選択外来 p 前述したギャップもあり、医師と患者だけで決定するのは難しい p 他職種でSDMを行い、決定していく必要がある p 看護師が中心となり、腎代替療法の決定を支援する外来が療法選択外来 ü 内容 複数ある腎代替療法それぞれの特徴を知ってもらい、ライフスタイルに合わせた 治療法を自分たちで選択できるようにする よく使う資料 p 腎不全 治療選択とその実際 (日本腎臓学会) p 腎臓病 あなたに合った治療法を選ぶために(腎臓病SDM推進協会)

  • #20.

    3. 腎代替療法の選択 透析したくない! Ø ただ中にはいずれの腎代替療法にしても行いたくない!という方がいる Ø 特にADLの落ちた高齢者や認知症患者では本人だけでなく家族の負担も大きいため その傾向は強くなる Ø そのため腎代替療法を希望しないという方もいる Ø しかし 末期腎不全に至った方の透析導入しなかった場合の予後は短いと考えられている 透析導入さえすれば腎臓が原因での死亡は避けられる 腎代替療法を導入しない( 透析非導入)ことを選択しにくい しかし、本来は Ø 透析非導入の患者=完全な看取りという考え方ではなく、あくまで腎代替療法を選択しなかった患者 Ø そういった患者群に対する治療を 保存的腎臓療法(Conservative Kidney Management; CKM)と定義するようになった

  • #21.

    3. 腎代替療法の選択 保存的腎臓療法(CKM) 定義 Ø 末期腎不全患者が通常のCKD患者と同様に腎臓病の進行を遅らせたり 合併症を最小限にとどめたりする介入治療を含むが特に症状の軽減と 心理的、社会的、文化的、スピリチュアルなサポートを重視し、透析を含まないもの KDIGO(Kidney Disease Improving Global Outcomes)2015 CKD guideline 対応すべき項目 ü 精神・心理的苦痛への対応 ü 基本的なCKD管理 ü スピリチュアルペインとスピリチュアルケア ü 身体的苦痛の緩和 ü 患者と家族への緩和ケアにおける心理社会的支援 疼痛、倦怠感、睡眠障害、掻痒症 悪心嘔吐、レストレスレッグス症候群 呼吸困難、便秘、浮腫 などなど、、、

  • #22.

    3. 腎代替療法の選択 CKMの予後 Ø 基本的にGFR< 20mL/分/1.73 m2の患者で 透析導入群と透析非導入群を比較すると生命予後は透析導入群の方が優れている Ø しかし、80歳以降で比較すると有意差なし Hussain JA Palliat Med. 2013 Oct;27(9):829-39 Ø QOLも文献にもよるが概ねCKMの方が良好であったとする報告が多い Wong SPY. JAMA Netw Open. 2022 Mar 1;5(3):e222255. Ø 日本でも90歳代の末期腎不全患者の半数〜9割程度が透析非導入で死亡するとの統計がある 日腎会誌 2019; 61(2):91-97 課題 Ø CKMのケアモデルや適した患者群の設定などがまだ定まっていない Ø 今後定まってくれば他の腎代替療法に並ぶ治療法になると推定される

  • #23.

    4. Take Home Message Take Home Message Ø 腎代替療法には血液透析・腹膜透析・腎移植があり、それぞれの選択には 医学的適応だけでなく、本人の希望や生活習慣など社会的な部分も多く関わる Ø 日本では現在血液透析が圧倒的に多いが、今後は腎移植や腹膜透析をさらに 増やす必要がある Ø 最近腎代替療法を行わない保存的腎臓療法(CKM)が注目されてきており、 特に80歳以上の高齢者や多くの併存疾患を持ちADLが低下している患者には 考慮していく必要がある

目の前の患者に適した腎代替療法を選択するために

  • 腎臓内科

  • 総合診療科

  • 腹膜透析
  • 腎代替療法
  • 腎機能障害
  • 腎移植
  • 末期腎不全
  • CKM
  • 療法選択外来

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投稿者プロフィール
ミント@腎臓内科

地域中核総合病院

概要

慢性腎臓病(CKD)患者では基本的に腎機能の回復は見込めないため、腎機能障害の進行を抑える保存的治療が主となります。末期腎不全に至った患者への腎代替療法の導入は、地域や病院によっては非専門医でも導入の一端を担うこともありえます。このスライドが目の前の患者へ適した腎代替療法の一助となりましたら幸いです。

◎目次

・はじめに

・CKDの定義と管理目標

・CKDの管理の概要

・どのタイミングで腎専門医に紹介する?

・専門医に紹介したら何をしてくれる?

・腎代替療法の種類

・それぞれの腎代替療法について

・日本と諸外国の比較

・血液透析の準備とタイミング

・血液透析の負担

・腹膜透析

・それぞれの患者費用負担

・どうやって選択するのか

・医療者と患者のギャップ

・療法選択外来

・透析したくない!

・保存的腎臓療法(CKM)

・CKMの予後

・Take Home Message

本スライドの対象者

研修医/専攻医

参考文献

  • KDIGO(Kidney Disease Improving Global Outcomes)2015 CKD guideline

  • Hussain JA Palliat Med. 2013 Oct;27(9):829-39

  • Wong SPY. JAMA Netw Open. 2022 Mar 1;5(3):e222255.

  • 日腎会誌 2019; 61(2):91-97

テキスト全文

  • #1.

    腎臓内科 ミント

  • #2.

    はじめに Ø 慢性腎臓病(CKD)患者では基本的に腎機能の回復は見込めない Ø そのため、腎機能障害の進行を抑える保存的治療が主になる Ø 保存的治療の甲斐なく、末期腎不全に至った患者では上手に腎代替療法を導入 する必要がある Ø 腎代替療法の導入は主に腎臓内科医が担うことが多いが、地域や病院によっては 非専門医でも導入の一端を担うこともありうる

  • #3.

    目次 1. 末期腎不全の管理 2. 腎代替療法の概要 3. 選択までの流れ 4. Take Home Message

  • #4.

    1. 末期腎不全の管理 CKDの定義と管理目標 定義 Ø 広義には 何らかの腎障害が3ヶ月以上持続する こと Ø 便宜上 GFR< 60 mL/分/1.73 m2で規定することが多い 大目標 Ø とにかく腎代替療法の導入に至らないこと!! Ø 脳心血管イベントを抑制することも極めて重要! そのためには… 蛋白尿の軽減化と腎血流低下 が重要

  • #5.

    1. 末期腎不全の管理 CKDの管理の概要 p 食事:減塩、適正なカロリー/タンパク摂取 p 運動:適切な運動量 p 血圧:適正な血圧 130-140/80-90mmHg未満 p 体重:適正体重を維持 p 血糖:HbA1c 6.5%未満目安 p 脂質:LDL-C 120mg/dL未満 などなど多数…

  • #6.

    1. 末期腎不全の管理 どのタイミングで腎専門医に紹介する? Ø 日本腎臓学会のCKD診療ガイドのヒートマップに準拠 Ø 以下は概要 主な紹介基準 ü ü ü ü 尿蛋白陽性ならほぼ全例 尿蛋白 でeGFR< 60 mL/分/1.73 m2 尿蛋白陰性でもeGFR< 45 mL/分/1.73 m2 3か月以内に30%以上の腎機能の悪化 * ただし、地域や医療施設のキャパシティなども考慮が必要

  • #7.

    1. 末期腎不全の管理 専門医に紹介したら何をしてくれる? p まずは治療可能な可逆的病態がないかスクリーニング ü 抗GBM抗体疾患やANCA関連血管炎など ü 腎形態の確認:腎生検が可能なら腎生検も検討 p 残念ながら非可逆的なCKDであれば進行を抑制する保存的治療 p eGFR< 30 mL/分/1.73 m2程度で腎代替療法の説明を開始 p さらに進行し末期腎不全に至ったら上手に腎代替療法につなぐ

  • #8.

    2. 腎代替療法の概要 腎代替療法の種類 血液透析 代替できる 腎機能 腹膜透析 10% 5% ホルモンの異常は残る ホルモンの異常は 残る 腎移植 50% ホルモンの異常は ある程度 悪い 生命予後 心血管合併症 週3回 通院 悪い 優れている 月1-2回 安定すれば月1回 費用 40万円/月 30〜50万円/月 初年度 400万 その後月10万程度 デメリット バスキュラー アクセスの問題 腹膜炎 EPS 免疫抑制 拒絶反応

  • #9.

    2. 腎代替療法の概要 それぞれの腎代替療法について 血液透析 p ブラッドアクセス(主に自己血管内シャント)を用いて血液を脱血し、透析器を通して 余分な尿毒素や水分を除去し、血液を体の中に戻す方法 p 基本的に病院スタッフにお任せになる p 循環動態の大きな変化を伴うため心臓の負担が大きい 腹膜透析 p カテーテルを通して透析液を腹腔内に入れ、数時間後に老廃物がたまった透析液を体外に出す方法 p 患者本人もしくは介護者が行う必要がある反面、通院は少なくて済む 腎移植 p 家族もしくは他者から腎臓を提供してもらう p 免疫抑制薬を内服することやそれに伴う副作用以外は日常生活は健常者と同様である

  • #10.

    2. 腎代替療法の概要 日本と諸外国の比較 日本 p 93%程度が血液透析、3%程度が腹膜透析、3%程度が腎移植を選択 海外 p 米国や欧州では10%程度が腹膜透析、40%程度が腎移植 p 血液透析は腎移植までのつなぎとして考えている 日本でも腹膜透析、腎移植の割合を増やしたい!

  • #11.

    2. 腎代替療法の概要 血液透析の準備とタイミング 準備 Ø 維持透析施設の決定:スケジュール(火木土 or 月水金)や送迎の有無など Ø 医療費助成の申請:40万/月の医療費 ⇨助成で1-2万/月(後述) Ø バスキュラーアクセスの作成:内シャント、カテーテルなど タイミング Ø GFR<15mL/分/1.73 m2になったら透析導入時期をおおよそ判断して準備開始 Ø バスキュラーアクセス/内シャントの作製は透析導入の少なくとも1ヶ月前、 最短でも2-4週間前に作成

  • #12.

    2. 腎代替療法の概要 血液透析の負担 • 週3回 4時間 通院、じっとする • (原則)⼀⽣涯⾏う • 毎回(2箇所)針を刺される • シャントトラブル • ⾎圧の変動によるしんどさ • 飲⽔、⾷事制限 • 内服薬 負担が大きい!!!

  • #13.

    2. 腎代替療法の概要 在宅血液透析 Ø 透析施設で一般的に行われている血液透析を自宅で行うこと Ø 血液透析は4時間週3回の透析が標準的だが、在宅血液透析では回数も時間も短 縮・延長することが可能 食事や就労など生活の様々な制限が軽くなる Ø ただし、機械の準備はもちろん、シャント穿刺から透析中のトラブル、後片付けに至 るまで本人もしくは周囲の人が行う必要がある上、医療従事者がすぐに対応できない のでリスクも高い Ø 日本では透析患者の0.07%と普及率が低いが、環境が整えばさらに普及することが 推定される

  • #14.

    2. 腎代替療法の概要 腹膜透析 血液透析との違い Ø 自分 もしくは 家族・介護者が自宅で毎日行う透析 Ø 循環動態の変化が乏しく、心臓への負担が小さい 準備 Ø 残腎機能が腹膜透析期間の規定因子となるためタイミングは血液透析よりやや早め Ø 腹膜透析カテーテルを腹部に埋め込む手術 SMAP法:カテーテル挿入の際出口を作らずにしばらく置いておいて実際に 腹膜透析を始めるときに出口を作る (段階的腹膜透析導入法) SPIED法:カテーテル挿入の際に出口を作成する Ø 透析液のバッグ交換や接続方法、ケアの方法などを理解

  • #15.

    2. 腎代替療法の概要 腎移植 種類 Ø 生体腎移植:親族から提供される。適応となるドナーが必要 Ø 献腎移植:亡くなった方から提供される。平均待機期間は約15年 Ø 日本では生体腎移植が腎移植全体数の約85%を占めている 準備 Ø 透析しながら行うケースと透析導入前に行うケース(先行的腎移植)がある Ø 先行的腎移植の場合おおよそGFR 20mL/分/1.73 m2を目安に準備開始 Ø ドナーやレシピエントの耐術能や適応、倫理的背景(金銭的授受など)を詳しく調査 Ø 術前に体重など含めた身体的な状態を整える(他の手術と同様)

  • #16.

    2. 腎代替療法の概要 それぞれの患者費用負担 透析 p 健康保険+特定疾病療養受療証:1-2万円/月 腎移植 p 透析をしている方→健康保険+特定疾病療養受療証:0-2万円/月 p 透析をしていない方→健康保険(+身体障害者手帳):0-健康保険自己負担限度額 *自治体により制度は様々でややこしいので該当する窓口で要相談

  • #17.

    3. 腎代替療法の選択 どうやって選択するのか 検討事項 ü ü ü ü ü ü ü QOL 生命予後 生活への影響 患者の価値観 メリット・デメリット 医師の経験上での推奨 患者の能力 共同意思決定(SDM) 医療者と患者が協働して患者にとって最善の 医療上の決定を下すためのプロセス *IC(インフォームドコンセント) 特定の医療介入を決定するための情報交換や 話し合いのプロセス

  • #18.

    3. 腎代替療法の選択 医療者と患者のギャップ Ø 透析患者を対象とした介入試験は主に死亡、心血管疾患、QOLが上位3つを占めている (医療者の評価) Ø 一方,透析患者あるいはその介護者が重視しているのは 「旅行に行けるか?」や「透析のない自由な時間は?」のような項目 Ø NPO 法人腎臓サポート協会の2019年会員アンケートでも透析に対する不安は 生命予後よりも透析の前と同じような日常生活が送られるかどうかである SDMの際は患者の求めるアウトカムに 寄り添って説明する

  • #19.

    3. 腎代替療法の選択 療法選択外来 p 前述したギャップもあり、医師と患者だけで決定するのは難しい p 他職種でSDMを行い、決定していく必要がある p 看護師が中心となり、腎代替療法の決定を支援する外来が療法選択外来 ü 内容 複数ある腎代替療法それぞれの特徴を知ってもらい、ライフスタイルに合わせた 治療法を自分たちで選択できるようにする よく使う資料 p 腎不全 治療選択とその実際 (日本腎臓学会) p 腎臓病 あなたに合った治療法を選ぶために(腎臓病SDM推進協会)

  • #20.

    3. 腎代替療法の選択 透析したくない! Ø ただ中にはいずれの腎代替療法にしても行いたくない!という方がいる Ø 特にADLの落ちた高齢者や認知症患者では本人だけでなく家族の負担も大きいため その傾向は強くなる Ø そのため腎代替療法を希望しないという方もいる Ø しかし 末期腎不全に至った方の透析導入しなかった場合の予後は短いと考えられている 透析導入さえすれば腎臓が原因での死亡は避けられる 腎代替療法を導入しない( 透析非導入)ことを選択しにくい しかし、本来は Ø 透析非導入の患者=完全な看取りという考え方ではなく、あくまで腎代替療法を選択しなかった患者 Ø そういった患者群に対する治療を 保存的腎臓療法(Conservative Kidney Management; CKM)と定義するようになった

  • #21.

    3. 腎代替療法の選択 保存的腎臓療法(CKM) 定義 Ø 末期腎不全患者が通常のCKD患者と同様に腎臓病の進行を遅らせたり 合併症を最小限にとどめたりする介入治療を含むが特に症状の軽減と 心理的、社会的、文化的、スピリチュアルなサポートを重視し、透析を含まないもの KDIGO(Kidney Disease Improving Global Outcomes)2015 CKD guideline 対応すべき項目 ü 精神・心理的苦痛への対応 ü 基本的なCKD管理 ü スピリチュアルペインとスピリチュアルケア ü 身体的苦痛の緩和 ü 患者と家族への緩和ケアにおける心理社会的支援 疼痛、倦怠感、睡眠障害、掻痒症 悪心嘔吐、レストレスレッグス症候群 呼吸困難、便秘、浮腫 などなど、、、

  • #22.

    3. 腎代替療法の選択 CKMの予後 Ø 基本的にGFR< 20mL/分/1.73 m2の患者で 透析導入群と透析非導入群を比較すると生命予後は透析導入群の方が優れている Ø しかし、80歳以降で比較すると有意差なし Hussain JA Palliat Med. 2013 Oct;27(9):829-39 Ø QOLも文献にもよるが概ねCKMの方が良好であったとする報告が多い Wong SPY. JAMA Netw Open. 2022 Mar 1;5(3):e222255. Ø 日本でも90歳代の末期腎不全患者の半数〜9割程度が透析非導入で死亡するとの統計がある 日腎会誌 2019; 61(2):91-97 課題 Ø CKMのケアモデルや適した患者群の設定などがまだ定まっていない Ø 今後定まってくれば他の腎代替療法に並ぶ治療法になると推定される

  • #23.

    4. Take Home Message Take Home Message Ø 腎代替療法には血液透析・腹膜透析・腎移植があり、それぞれの選択には 医学的適応だけでなく、本人の希望や生活習慣など社会的な部分も多く関わる Ø 日本では現在血液透析が圧倒的に多いが、今後は腎移植や腹膜透析をさらに 増やす必要がある Ø 最近腎代替療法を行わない保存的腎臓療法(CKM)が注目されてきており、 特に80歳以上の高齢者や多くの併存疾患を持ちADLが低下している患者には 考慮していく必要がある

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