僧帽弁形成術 vs 僧帽弁置換術

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西澤 俊紀

西澤 俊紀

東京医科歯科大学

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学生時代に僧帽弁形成術の患者さんを持たされて作ったスライドです。 僧帽弁形成術の方が成績が良い..という当たり前の事実から、後尖と前尖どちらが成績が良いの?というところまで踏み込んで調べてみました。

僧帽弁形成術 vs 僧帽弁置換術

1. 僧帽弁閉鎖不全に対し、僧帽弁形成術を施行され、術後経過良好な60歳男性 11110641 西澤 俊紀
2. 患者 基本情報 60歳男性 M.Tさん    <入院目的>僧帽弁の直視下弁形成術施行目的 飲酒歴:機会飲酒  喫煙歴:22歳から1日30本、2014年10月から禁煙  家族歴:母)徐脈  アレルギー:なし  既往歴:高血圧、尿管結石(45歳)、細菌性肺炎(59歳) 内服薬:オルメテック錠(オルメサルタンメドキソミル)20mg 朝食後 <その他>
3. 入院時身体所見・検査   <身体所見> 身長167.5cm、体重77kg BT:36℃胸部:呼吸音清 心音S1→S2→S3(-)S4(-) 心尖部で収縮期逆流性雑音 腹部:膨満 軟、左鼠径ヘルニア、 腸音聴取 肝脾腫(-) 反跳痛(-) 筋性防御(-)四肢:下腿浮腫(-)、冷感(-)、右足背動脈・橈骨動脈触知良好 <検査所見> [血算]   WBC:8900/µl, RBC:514×104/µl, Hb:15.3g/dl, Ht:44.6%, MCV:86.8fl,        MCH:29.8pg, MCHC:34.3%, Plt:22.5×104/µl [凝固]   PT:11.3s(10.5s), PT(%):84.0%, PT-INR:1.08, APTT:32.1s(29.0s), ATⅢ:98.2%     [生化]   TP:7.6g/dl, Alb:4.7g/dl, BUN:17mg/dl, Cre:0.81mg/dl, UA:8.9mg/dl,        Na:139mEq/l, K:4.5mEq/l, Cl:102mEq/l, Ca:9.9mg/dl, IP:3.5mg/dl,        LDH:181IU/l, AST:27IU/l, ALT:43IU/l, γ-GTP:96IU/l, ALP:155IU/l,        T-Bil:0.5mg/dl, T-Chol:219mg/dl, TG:284mg/dl, HDL-Chol:40mg/dl,        CK:106IU/l, AMY:66U/l, Glu:82mg/dl, HbA1c:6.2%, Fe:106µg/dl, UIBC:200µg/dl, BNP:7.6 [血清]   CRP:0.06mg/dl [感染症] HBs-Ag:(-), HCV-Ab:(-), HIV-Ab:(-), 梅毒定性:(-), TP抗体:(-) [動脈血ガス]pH:7.393, PaO2:68.5mmHg, PaCO2:34.7mmHg,          HCO3-:20.7mmol/l, BE:-3.4mmol/l , SaO2:94.0%
4. [ECG] HR 75 bpm, rhythm: 洞調律 [Spiro] VC(%) 3.52L (101.0%), FEV1.0(%) 2.25L (65.6%) [CT] 肺に軽度気腫性変化あり [CAG] 0枝病変 [心エコー]LAD 52.2mm(28.7cm2), LVDd/Ds 70.9/45.4mm, IVSd/PWd 10.8/11.3mm, EF: 64 AR: trivial, AS: None, MR: severe, MS: None, PR: trivial, TR: None, MR jet area 18.3cm2,18.9cm2, パルスドプラ法 RV120ml, RF 63% P1 prolapse, 腱索断裂の疑い [心カテ] PA 22(19) mmHg, PCWP 14 mmHg        CI 3.21 LVEF 61.3%, AR 度, MR 2度     
5. 心エコー検査 MR jet area 18.3cm2
6. 両側CPA sharp CTR 48%
7. 手術所見 ⑴人工心肺につなぎ、心肺停止後、    右側左房切開アプローチ ⑵弁輪全周に針をかけ、後尖P1-P2を縫合 ⑶Physio Ⅱ30mm rigidリングを 弁輪に縫着, 逆流がないか確認 ⑷左心耳を血栓形成予防のため閉鎖 (2) (3) (4) http://www.teikyo-cvs.com/public/seminar_doc/cvs_seminar03/cvs03_slide.pdf
8. 文 献 的 考 察 後尖P1の逸脱による僧帽弁閉鎖不全症に対し、 僧帽弁形成術を施行され、術後経過良好な60歳男性 要約すると… 僧帽弁形成術の方が僧帽弁置換術より良いのか 気になったことは… 文献をいくつか調べてみると… 僧帽弁形成術はどれくらい長持ちするのか 後尖部と前尖部で僧帽弁形成術後の成績が異なるのか
9. 僧帽形成術 vs 僧帽弁置換術 Maurice Enriquez-Sarano et al. Circulation. 1995;91:1022-1028 Copyright © American Heart Association, Inc. All rights reserved. 僧帽弁形成術 の方が生存率が良い year Mayo Clinic and Mayo Foundation, Rochester, Minn.
10. 僧帽形成術はどれくらい長持ちするのか 1072人:MRの原因の割合 (10年) 再手術回避率 92.9% また前尖が後尖と比べて一年以内に再手術になるリスクが高いという結果も出ている Marc Gillinov, Md:DURABILITY OF MITRAL VALVE REPAIR FOR DEGENERATIVE DISEASE The Journal of Thoracic and Cardiovascular Surgery Volume 116, Number 5
11. 前尖は後尖と比べて、一年以内に再手術になる可能性が高い
12. Method: 参加患者と評価方法 参 加 患 者 1981年7月〜2001年6月までに 僧帽弁閉鎖不全に対し 手術を施行された患者815名のうち… 86% (701人) 僧帽弁形成術を施行 14% (114人) 僧帽弁置換術を施行 51%(359名)・・・後尖 13%(92名)・・・ 前尖 36%(250名)・・・両尖 *ただし、3群とも弁形成術か弁置換術の割合に有意差なし (p value .09) Clinical Follow up 100% (6.9 ± 4.0 years) 退院後心エコーFollow up 94% (769/815) 評 価 項 目 ・ 方 法 今回知りたいのは 「後尖と前尖の弁形成術後の成績の違い」 を除外 残った701名のうち… 生存率の評価 再手術回避率 の評価 MR再発率 の評価 The Journal of Thoracic and Cardiovascular Surgery November 2005
13. Result(1): 患者の特徴(術前) 前尖病変群は比較的若く、大動脈弁病変が多く、左室駆出率が悪い
14. Result(2): 患者の特徴(手術内容) 20年間 Single surgeon
15. Result(3): 12年 生存率では3群とも有意差なし しかしながら、前尖を手術した患者は後尖を手術した患者より7歳若い
16. Result(4): 12年間再手術回避率 後尖94% vs 前尖88% AL: Anterior leaflet PL: Posterior leaflet BL: Bileaflet
17. Result(5): 12年間MR*再発回避率 後尖80% vs 前尖65% * mederate-severe MR
18. Result(6): Cox regression analysis  独立した予測因子
19. Discussion & Conclusion 今回検討したかったのは… 後尖と前尖で 治療成績/予後 に違いがあるか? 僧帽弁形成術の方が僧帽弁置換術の方が生存率が長い 僧帽弁形成術は概して90%以上、10年間は再手術しなくて済む 前尖 を形成することは概して難しい *ただし今回の研究では弁形成術の術式によるアウトカムに対する統計学的有意差は出なかった ④人工腱索再建法 術式が古く手術成績は 不良とされる Ruptureしやすい M弁の変性の進行は形成術により止まらない
20. 前尖形成術 http://www.teikyo-cvs.com/public/seminar_doc/cvs_seminar03/cvs03_slide.pdf
21. 後尖形成術 http://www.teikyo-cvs.com/public/seminar_doc/cvs_seminar03/cvs03_slide.pdf
22. 後尖形成術+α http://www.teikyo-cvs.com/public/seminar_doc/cvs_seminar03/cvs03_slide.pdf