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神戸市立医療センター中央市民病院
2020.11に掲載したものの改訂版です。
市中肺炎診療の考え方 ウィズコロナ時代
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COVID-19 診断・治療・感染対策
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COVID-19治療 アップデート 2022年4月版
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オンライン診療とプライマリ・ケア
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2021.12.22 COVID-19 update
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COVID-19の疫学 2020.12
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SNS初心者による初心者のための効率的な勉強法講座 - twitterを中心に -
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コロナ肺炎のマネジメントまとめ
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タコでもわかる静注抗菌薬の話
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Primary Survey 気道(A)の異常【解剖・気道確保を中心に】
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臨床における意思決定支援
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不登校と向き合う第一歩 〜不登校は疑うところから〜
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踵採血のいろは〜新生児医療入門〜
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【公式】Antaa Slideの投稿方法
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COVID-192020.12 UPDATE 神戸市立医療センター中央市民病院 感染症科 黒田浩一
PCR検査についてのQ&A PCRでウイルスが消えたら退院可能? いつまで感染伝播リスクがあるのか? 再感染はするのか?
Q2:PCRでウイルスが消えたら退院可能? 退院前のPCR陰性確認は不要であり、感染性の有無は、症状の経過・重症度・発症からの期間で評価可能 退院は、以下の2点が確認できた時点で可能となる - 患者の状態が改善している - 感染伝播リスクが消失している
いつまで感染するリスクがある? ただしく恐れる 4
「感染性がある」とは? PCR陽性→× ウイルス培養陽性→? 実際に起こったoutbreakの調査結果 5
軽症から重症のCOVID-19患者12例の検討 ・発症から9日目でウイルス培養陽性の症例があった ・10日目以降のウイルス培養は検討されていない ・気管挿管例は含まれていない Nat Med. 2020 Apr 23. doi: 10.1038/s41591-020-0877-5 6
軽症COVID-19(9例の検討)発症8日目までの喀痰ウイルス培養陽性 便のウイルス培養は全例陰性(PCRのウイルス量に関連なし) Nature. 2020 Apr 1. doi: 10.1038/s41586-020-2196-x. 7
米国のSkilled Nursing Facilityで起こったoutbreak。重症例も含めたCOVID-19の上気道検体を使用したPCRとウイルス培養を施行。SARS-CoV-2は、発症6日前から発症9日目で培養陽性となった。ウイルス量(PCR)が多い場合に培養陽性となる傾向があるようにみえるが、発症早期にウイルス量が多いことが原因と思われる。 N Engl J Med. 2020 Apr 24. doi: 10.1056/NEJMoa2008457. 8
発症前(潜伏期間):45% 発症後:40% 環境接触:10% 無症状感染者:5% 感染伝播:感染(曝露)から10-12日頃まで Science. 2020 May 8;368(6491). doi: 10.1126/science.abb6936. 9
COVID-19のヒト-ヒト感染77ペアを解析した研究。感染伝播は、発症2.3日前から出現し、発症前後でpeakとなり、その後発症7日目までに急速に減少する。感染伝播の44%は発症前に起こる(pre-symptomatic transmission)。 Nat Med. 2020 Apr 15. doi: 10.1038/s41591-020-0869-5. 10
100名の患者からの感染伝播を調査した台湾の報告。Secondary caseは、index case発症から初回曝露までの期間が5日以下までの症例のみだった。感染率が高いのは、発症前曝露(pre-symptomatic transmission)、家庭内曝露、重症例/最重症例。無症状感染者からの感染(asymptomatic transmission)はなかった。 JAMA Intern Med. 2020 May 1. doi: 10.1001/jamainternmed.2020.2020. 11 presymptomatic transmissionは発症4日前から起こりうる
主に軽症から中等症のCOVID-19患者の上気道検体のウイルス培養は、発症から10日まで陽性となりうる。無症状者も有症状者も同様の結果であった。 Euro Surveill. 2020;25(32):pii=2001483. https://doi.org/10.2807/1560-7917.ES.2020.25.32.2001483 12
13 重症または最重症のCOVID-19患者の上気道検体のウイルス培養は、発症から20日まで陽性となりうる。発症から15日を超えて陽性となる可能性は5%以下であった。 プレプリントのdata doi: https://doi.org/10.1101/2020.06.08.20125310
14 成人COVID-19患者(重症度や年齢・基礎疾患などの詳細なdataは提示されていない)の鼻咽頭または気管内検体のウイルス培養で、発症から8日以降は陽性例なし。Ct値>24でも陽性例はなかった。 Clin Infect Dis. 2020 May 22;ciaa638. doi: 10.1093/cid/ciaa638.
15 Clinical Infectious Diseases, ciaa1249 https://doi.org/10.1093/cid/ciaa1249
例外は存在する 造血幹細胞移植後とCAR-T細胞療法の患者で発症から20日を越えてウイルス培養が陽性となった報告がある 3例報告されており、発症から25日、26日、61日目でのウイルス培養が陽性であった ゼロリスク達成は難しい:免疫不全者には、マスク着用と手洗いを特に指導する必要がある N Engl J Med. 2020 Dec 1. doi: 10.1056/NEJMc2031670
RT-PCRのCt値と感染性の関係 診断における一般的なCt値のカットオフ値は<40 Ct値が低いほどウイルス培養陽性率が高い Ct > 30-35でウイルス培養は陰性と予測できる Eur J Clin Microbiol Infect Dis. 2020 Jun;39(6):1059-1061. Clin Infect Dis. 2020 Aug 25;ciaa1249. doi: 10.1093/cid/ciaa1249. Emerg Infect Dis. 2020 Jul;26(7):e201595. doi: 10.3201/eid2607.201595 Clin Infect Dis. 2020 Oct 24;ciaa1579. doi: 10.1093/cid/ciaa1579. Ct=Threshold Cycle
Ct値はRT-PCR検査の結果報告に記載すべき?Ans. routineに行うことは推奨されない 同じウイルス量でも、Ct値は検査系によって異なる(cobasとXpertのCt=20のウイルス量copy/testは異なる) Ct値は、検体採取のqualityに左右される Ct値によって、感染性の有無を評価する十分なevidenceはまだない J Clin Microbiol. 2020 Oct 21;58(11):e01695-20. doi: 10.1128/JCM.01695-20.
感染伝播する期間:文献のまとめ 発症2-4日前から発症後5-10日目までがリスクが高い - 院内感染のリスクが高い感染症である それ以降に感染伝播が起こる可能性は非常に低い → 発症から11日目以降の感染リスクはほぼない 最重症例(人工呼吸器管理)は20日間までリスクあり 19
PCR検査は再度陽性になることがあるが感染伝播した例は報告されていない 2回PCR陰性確認された4名のCOVID-19患者で、5-13日後にPCRが再度陽性化した SARS-CoV-2 PCR検査2回陰性確認後退院となった患者の14.5%で再度陽性化した 韓国CDCは、COVID-19の症状が改善し、いったんPCR陰性化した患者で、再度陽性になった285名の追跡したところ、1例も感染伝播を起こさなかった Clin Infect Dis. 2020 Apr 8;ciaa398. doi: 10.1093/cid/ciaa398. JAMA. 2020 Feb 27;323(15):1502-1503. 20
COVID-19治癒後の患者へのPCR再検は原則不要 終生免疫はできない可能性が高い そのため、治癒後長期間(例えば3か月)経過してから 再度感染する可能性はある 21
感染伝播する期間:2020.5以前 発症から10日以上経過、かつ、解熱状態72時間以上経過していれば、感染性はないと考えてよいと思われるが、さらに安全な条件として、「症状改善、かつ、24時間以上の間隔をあけてPCR 2回陰性確認」(日本政府が決めた退院基準)。 22
退院基準の変更(日本) 2020年6月12日に「発症日から10日間経過し、かつ、症状軽快後72時間経過した場合」に変更 退院の適応を決定するにあたって、原則PCR検査は行わないことになった この基準は、重症度を考慮していない 23
院内感染対策終了の基準(米国) 軽症・中等症の場合(呼吸不全なし) 発症から10日以上、かつ、解熱24時間、かつ、症状改善 重症・最重症の場合(呼吸不全あり) 高度免疫不全の場合 発症から20日以上、かつ、解熱24時間、かつ、症状改善 ※退院基準ではない 24
院内感染対策終了の基準(WHO) 重症度に関係なく 発症から10日以上経過、かつ、症状消失後72時間 25 https://apps.who.int/iris/handle/10665/332196
院内感染対策終了の基準(欧州) 軽症・中等症 発症から8日以上経過、かつ 解熱後72時間以上、かつ、その他の症状改善 重症・免疫不全 発症から14日以上経過、かつ 解熱後72時間以上、かつ、その他の症状改善 26 https://www.ecdc.europa.eu/en/publications-data/covid-19-guidance-discharge-and-ending-isolation
感染伝播する期間:2020.8の当院 発熱を含めた症状が改善して72時間が経過、かつ - 軽症・中等症は、発症から10日以上 - 重症・最重症の場合は、発症から20日以上 経過していることが確認できれば、感染性はない と判断している(院内感染対策終了の判断に使用) 27
再感染の報告はある インドの2名の医療従事者 1)→2回とも無症状(スクリーニング検査) - 1回目の治癒確認から3-5か月後に再感染が判明 既往のない33歳男性 2)→初回:軽症、2回目:無症状 - 1回目の治癒確認から4ヶ月後に再感染が判明 喘息の既往のある51歳女性 3)→初回はSpO2 94%、2回目はより軽症 - 1回目発症から3ヶ月後に2回目を発症 上記の患者は、ゲノム配列の解析で、「再感染」と診断された
再感染が軽症とは限らない 米国の既往のない25歳男性: 初回軽症、2回目重症(呼吸不全あり) Lancet Infect Dis. 2020 Oct 12;S1473-3099(20)30764-7.
重要な点 感染伝播の危険性があるのは、発症2日前から発症9日目がほとんど 重症例でも、発症から20日を越えて感染することはほとんどない