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コロナ時代の感染対策(2021年12月版)

  • 感染症科

  • 新型コロナウイルス感染症
  • COVID-19
  • 感染対策

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39

2022/1/7
黒田浩一

神戸市立医療センター中央市民病院

コロナ時代の感染対策を、2021年12月時点での知見に基づいて作成しました。以前に感染対策に関連したスライドをアップした時より、COVID-19ワクチンの果たす役割が大きくなっているため、それに合わせた内容としています。また、感染経路について、一部修正を加えています。このスライドは、主に看護師を対象とした講義の資料です。4つの講義で構成(各10-15分相当)されています。1:ウィズコロナ時代の院内感染対策(1)、2:ウィズコロナ時代の院内感染対策(2)、3:COVID-19病棟での感染対策、4:ウィズコロナ時代の病院外での感染対策。なお、このスライドは、作者が個人的に作成したもので、所属施設の見解を代表したものではありません。


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コロナ時代の感染対策(2021年12月版)

  1. コロナ時代の感染対策2021年12月版 神戸市立医療センター中央市民病院 感染症科 黒田浩一 2021.12.23作成 2022.1.6に一部修正

  2. 医療従事者向けの講義の資料 4つの講義で構成(各10-15分相当) - ウィズコロナ時代の院内感染対策(1) - ウィズコロナ時代の院内感染対策(2) - COVID-19病棟での感染対策 - ウィズコロナ時代の病院外での感染対策

  3. ウィズコロナ時代の院内感染対策(1) 神戸市立医療センター中央市民病院 感染症科 黒田浩一 2021.12.23作成(一部2022.1.6に修正)

  4. 用語の確認 新型コロナウイルス =severe acute respiratory syndrome coronavirus 2 =SARS-CoV-2 新型コロナウイルス感染症 =coronavirus disease 2019 (COVID-19)  

  5. この講義でお話する内容 ウィズコロナ時代の院内感染対策 - SARS-CoV-2の感染経路 - 一般的な院内での感染対策(COVID-19病棟外) - 院内職員間伝播予防策の具体例 - 病院職員のCOVID-19ワクチン接種 - 面会制限について

  6. COVID-19の疫学:日本での感染者数 厚生労働省website. 国内の発生状況など. https://www.mhlw.go.jp/stf/covid-19/kokunainohasseijoukyou.html [最終アクセス2021.12.8] 2021年12月8日時点 感染者 1,728,113名 死亡者 18,367名 新規陽性者 重症者 第3波 第4波 第5波 2021.2.17- 医療従事者に接種開始 2021.3- アルファ株の流行 2021.4.12- 高齢者への接種開始 2021.6- デルタ株の流行

  7. SARS-CoV-2の感染経路

  8. SARS-CoV-2の感染経路 感染は主に気道分泌物を介して起こる  くしゃみ・咳・会話など 飛沫感染(2m以内)  口・鼻・目の粘膜への飛沫の付着 エアロゾル感染(空気感染とは厳密には異なる)  微小な飛沫あるいはエアロゾルの吸入(換気の悪い閉鎖空間) 接触感染  ウイルスが付着した手指による粘膜への接触 Ann Intern Med. 2021 Jan;174(1):69-79. doi: 10.7326/M20-5008.日本環境感染学会医療機関における新型コロナウイルス感染症への対応ガイド(第4版) CDC. Scientific Brief: SARS-CoV-2 Transmission. https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/science/science-briefs/sars-cov-2-transmission.html

  9. 「エアロゾル感染」 決まった定義はない 「飛沫感染と空気感染の中間」のイメージ

  10. 日本環境感染学会医療機関における新型コロナウイルス感染症への対応ガイド(第4版) http://www.kankyokansen.org/modules/news/index.php?content_id=418

  11. ウイルスを含むエアロゾルの吸入 空気感染 airborne transmission という用語は使用していない 感染源から2m以内で感染リスクが最大(飛沫と同様) 感染源から2m以上離れていても、以下の場合に感染リスクがある ・換気が不十分な閉鎖空間 ・気道分泌物の放出量が大きい(運動・歌う・叫ぶ) ・長時間の曝露(典型的には15分以上) CDC. Scientific Brief: SARS-CoV-2 Transmission. https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/science/science-briefs/sars-cov-2-transmission.html

  12. 「エアロゾル感染」が起こりうる状況 エアロゾル発生手技 換気の悪い屋内の混雑した閉鎖空間 - 合唱の練習 - レストラン - フィットネスクラブ - コールセンター   など WHO:https://www.who.int/news-room/commentaries/detail/transmission-of-sars-cov-2-implications-for-infection-prevention-precautions CDC:https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/prevent-getting-sick/how-covid-spreads.html 3密(密閉・密集・密接) + 継続時間と音量

  13. エアロゾル感染の可能性を示すデータ

  14. 病室・病室の空気中のウイルス 患者の頭から4m離れた場所の空気からSARS-CoV-2がPCR検査で検出された1) 患者の頭から2-4.8m離れた場所の空気のウイルス培養が陽性となった2) 隔離病棟・人工呼吸器患者の病室の空気中のSARS-CoV-2 RNA濃度は非常に低かったが、患者ベッドから約3m以内の床はウイルスで汚染されていた3)  →「エアロゾル」は、患者から4-5m離れたところまで到達する可能性 実験室の環境におけるエアゾロル(この実験では、5μm未満の飛沫核)中のウイルスは、3時間以上viabilityを保持する(半減期は1.1-1.2時間)4) 1. Emerg Infect Dis. 2020 Apr 10;26(7). doi: 10.3201/eid2607.200885. 2. Int J Infect Dis. 2020 Sep 16;100:476-482. 3. Nature. 2020 Apr 27. doi: 10.1038/s41586-020-2271-3. 4. N Engl J Med. 2020 Apr 16;382(16):1564-1567. doi: 10.1056/NEJMc2004973.

  15. レストランのエアコン気流による伝播 食事会は1月24日、index caseは1月24日の食事会後に発症 Emerg Infect Dis. 2020;26(7):1628-1631. 3m程度 エアコン

  16. 合唱の練習はcluster発生のリスクあり 2時間30分の合唱の練習で60名中52名が感染:飛沫?エアロゾル? MMWR Morb Mortal Wkly Rep. 2020;69(19):606-610.

  17. フィットネスクラブ:激しい運動・密な空間 ダンスクラス(ラテンリズム)でcluster発生 - 激しい運動 - 大人数の参加者 - 狭い空間 密度の低いレッスン、ピラティス、ヨガでは発生なし Emerg Infect Dis. 2020;26(8):1917-1920.

  18. コールセンターcluster 韓国のコールセンターcluster あるフロアに集中 43.5%の職員が感染した 換気の悪い3密空間がリスク高い Emerg Infect Dis. 2020;26(8):1666-1670.

  19. 札幌のコールセンターcluster 2021年5月3日~6月10日 従業員260名のコールセンターで86名が感染 全員マスクは着用していた(適切使用率は不明) 原因として想定されたもの - 休憩や勤務中のマスクを外した時の飛沫感染, - 不十分な消毒下でのヘッドセット共有や - 不十分な手指衛生による接触感染 - 不十分な換気条件下でのエアロゾル感染 室内CO2濃度に応じた適切な換気量の確保、室内換気量に応じた在室者数の調整が重要と考えられた 高い累積罹患率を認めた札幌市内コールセンターでの新型コロナウイルス感染症アウトブレイク(2021年5月). https://www.niid.go.jp/niid/ja/2019-ncov/2502-idsc/iasr-in/10674-499c06.html

  20. 3密空間では2mを超えて感染しうる 飛沫は大きいものから小さいものまであり、小さいものをエアロゾルを呼ぶ 換気の悪い3密空間では、エアロゾルは2mを超えて感染しうる(ただし、エアロゾルであっても感染リスクは2m以内が最大) 換気の悪い3密に注意:密閉・密集・密接

  21. 接触感染について

  22. 環境からの感染の懸念

  23. ウイルス(核酸)が検出される場所

  24. 病院内のどこが汚染? レッドゾーン 床(70%で陽性)・コンピューターマウス・ゴミ箱・ベッドの手すり・ドアノブ・患者マスク・排気口フィルター・テーブル・ロッカー、椅子・照明のスイッチ・聴診器・洗面台(外側・内側)・窓・シンクの上のPPE置き場・トイレのドアノブ・便器の表面 隔離病棟のグリーンゾーン 受話器と手指衛生消毒薬のプッシュボタン Emerg Infect Dis. 2020;26(7):1583-1591. doi: 10.3201/eid2607.200885. JAMA. 2020;323(16):1610-1612. doi: 10.1001/jama.2020.3227. J Hosp Infect. 2020;105(2):373-374. doi: 10.1016/j.jhin.2020.04.020.

  25. 環境表面のウイルスから感染リスクがある期間

  26. SARS-CoV-2の環境表面での安定性 プラスティック:72-96時間以内(半減期6.8時間) ステンレス:48-72時間以内(半減期5.6時間) 銅:4-8時間(半減期1時間未満) ダンボール:24-48時間以内(半減期3-4時間) N Engl J Med. 2020;382(16):1564-1567. doi: 10.1056/NEJMc2004973.

  27. 4℃の環境で安定(14日以上感染性が確認された) 70℃の環境では5分以内に不活化される ウイルス培養が陽性となる期間  紙・ティッシュペーパー:3時間以内  木・布:2日以内  ガラス、紙幣:4日以内  ステンレス、プラスティック:7日以内 SARS-CoV-2の環境表面での安定性 Lancet Microbe. 2020;1(1):e10. doi: 10.1016/S2666-5247(20)30003-3.

  28. 環境表面のウイルスからの感染リスク 汚染された(可能性のある)物品はいつから触れてもよい? - 紙・ティッシュペーパー・ダンボール:24-48時間以内 - 木・布:2日以内 - ガラス:4日以内 - ステンレス・プラスティック:3-7日以内 上記期間内に触った後は、アルコールによる手指衛生を行えばOK

  29. しかし、実際には…

  30. 接触感染は稀と考えられている 患者周囲の環境表面にウイルスは存在することはわかっているが、感染性があることと同義ではない(環境表面での失活、ウイルス量が少ないこと、宿主免疫、など) 明確に接触感染を証明した報告はほとんどない とはいえ、患者が排泄したばかりの気道分泌物が付着(高ウイルス量かつ失活していない)している高頻度接触面からの感染リスクはあるので、手指衛生はしっかりとしましょう WHO. https://www.who.int/news-room/commentaries/detail/transmission-of-sars-cov-2-implications-for-infection-prevention-precautions Infect Control Hosp Epidemiol. 2021 May 27;1-12. doi: 10.1017/ice.2021.254. Nature. 2021 Feb;590(7844):26-28. doi: 10.1038/d41586-021-00251-4. Lancet Infect Dis. 2020 Aug;20(8):892-893. doi: 10.1016/S1473-3099(20)30561-2.

  31. グリーンゾーンでの環境消毒 手指衛生が最も重要(感染経路の遮断) 高頻度接触面の定期的な消毒(限界がある) ドアの取手・ノブ、手すり、スイッチ、蛇口などの高頻度接触面を1日1回程度(利用の頻度や感染の流行状況に応じて回数を増やす)、環境消毒する アルコール(70-90%)または次亜塩素酸ナトリウム(0.05%)が推奨される 日本環境感染学会医療機関における新型コロナウイルス感染症への対応ガイド(第4版) http://www.kankyokansen.org/modules/news/index.php?content_id=418

  32. 感染経路のまとめ 飛沫の粘膜への付着またはエアロゾル吸入(2m以内)が主要な感染経路である 換気の悪い3密空間では、エアロゾルは2mを超えて感染しうる 接触感染も起こりうるが、実際には稀と考えられている

  33. 一般的な院内での感染対策 COVID-19病棟以外の病院内

  34. COVID-19の感染経路 医療従事者への伝播  患者・訪問者から、市中感染・家庭内感染 患者への伝播  医療従事者(または他の患者)からの伝播、市中感染 院内での職員間の伝播

  35. COVID-19の感染経路 医療従事者への伝播  患者・訪問者から、市中感染・家庭内感染 患者への伝播  医療従事者(または他の患者)からの伝播、市中感染 院内での職員間の伝播

  36. COVID-19の感染経路 医療従事者への伝播  患者・訪問者から、市中感染・家庭内感染 患者への伝播  医療従事者(または他の患者)からの伝播、市中感染 院内での職員間の伝播

  37.   患者    職員 だれがCOVID-19に感染しているかわからない (無症候性感染者・症状がでる直前の感染者)

  38. だれが感染していたとしても「安全・大丈夫!」な感染対策

  39. ワクチン+感染経路の遮断 全体的に感染リスクを減らす(ワクチン) 飛沫感染→ユニバーサルマスキング、目の防護 エアロゾル感染→マスクだけ△、適切な換気と3密回避 接触感染→手指衛生(標準予防策)

  40. ウィズコロナの院内感染対策 COVID-19ワクチン接種(3回目接種も)  ※COVID-19ワクチンは、次回詳しく説明 ユニバーサルマスキングと適切な換気(飛沫・エアロゾル) 標準予防策(手指衛生)の徹底(接触感染) 感染経路別予防策

  41. ユニバーサルマスキング すべての医療従事者・患者・訪問者はマスクを着用する COVID-19患者は - 症状出現の約2日前からウイルス排泄あり - 症状出現前の感染伝播が50%弱 ユニバーサルマスクの目的 - 「気道症状のない感染者(職員・患者・訪問者)」から他者への伝播を防ぐ ⼀般社団法人 日本環境感染学会. 医療機関における新型コロナウイルス感染症への対応ガイド第4版. https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/hcp/infection-control-recommendations.html#minimize Infect Control Hosp Epidemiol. 2020 May 6;1-2. doi: 10.1017/ice.2020.202.

  42. マスクを着用する意義 ウイルスを含む飛沫/エアロゾルの放出を減らす(周りを守る) - 無症候性または症状出現前の感染者(職員、別疾患で入院した患者) - 咳などの気道症状のあるCOVID-19確定患者 着用者の飛沫の吸入を減らす(着用者を守る) 米国CDC:Scientific Brief: Community Use of Cloth Masks to Control the Spread of SARS-CoV-2 https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/more/masking-science-sars-cov2.html Nat Med. 2020 May;26(5):676-680.

  43. ユニバーサルマスキングの効果(市中) 米国のヘアサロン スタイリスト2人が感染 :症状出現から診断まで就労 ヘアサロンの感染対策 :ユニバーサルマスキング 15分以上接触があった客とスタッフ139名に感染者なし MMWR Morb Mortal Wkly Rep. 2020 Jul 17;69(28):930-932. https://www.cdc.gov/mmwr/volumes/69/wr/mm6928e2.htm?s_cid=mm6928e2_w

  44. サージカルマスク>布マスク 放出する飛沫の量 サージカル:1% コットン:10% Sci Adv. 2020 Sep 2;6(36):eabd3083. doi: 10.1126/sciadv.abd3083.

  45. 目の防護は重要かもしれない 患者の飛沫の眼の粘膜曝露を減らすため、医療従事者は、患者に対応する際に、フェイスシールドまたはアイシールドを着用する COVID-19でメガネを常用している人の割合(5.8%)は、一般人口の近視率より低い(31.5%)→メガネをすることによって、目を触る回数が減少するから? COVID-19の濃厚接触者調査をしているcommunity health worker(CHW)が、訪問時サージカルマスクに追加してフェイスシールドを着用するように方針を変更したところ、CHWが新規で感染することがなくなった(インド) JAMA Ophthalmol. 2020;138(11):1196-1199. doi: 10.1001/jamaophthalmol.2020.3906. JAMA. 2020;324(13):1348-1349. doi: 10.1001/jama.2020.15586.

  46. 診療時アイシールド着用 46 眼の粘膜を飛沫から防護 マスクを着用しない、または、できない患者もいる(認知症・せん妄・小児など) 汚染した手で眼を触る頻度が減少する 個人的に購入する人も多い

  47. 標準予防策の徹底 適切なタイミングの手指衛生 適切な個人防護具の使用 - 吸痰時のサージカルマスク - 体液に触れる場合の手袋 - 衣服が汚染する可能性がある場合のエプロン/ガウン ハンドハイジーン研究会. http://www.goodhandhygiene.jp/practice/5moments/

  48. アルコールとSARS-CoV-2 皮膚の上で、SARS-CoV-2は9.04時間生存する 80%エタノールで15秒以内に失活する→手指衛生で対応可能 Clin Infect Dis. 2020 Oct 3;ciaa1517. doi: 10.1093/cid/ciaa1517.

  49. Take Home Messages 飛沫の粘膜への付着またはエアロゾルの吸入(2m以内)がSARS-CoV-2の主要な感染経路であるが、換気の悪い3密(密閉・密集・密接)空間では、エアロゾルは2mを超えて感染しうる ウィズコロナ時代の院内感染対策の基本は、COVID-19ワクチン接種(3回目接種推奨)、標準予防策の徹底、ユニバーサルマスキング・適切な換気、目の防護(特に患者がマスクを着用していない場合)

  50. ウィズコロナ時代の院内感染対策(2) 神戸市立医療センター中央市民病院 感染症科 黒田浩一 2021.12.23作成(一部2022.1.6に修正)

  51. この講義でお話する内容 ウィズコロナ時代の院内感染対策 - SARS-CoV-2の感染経路 - 一般的な院内での感染対策(COVID-19病棟外) - 職員からの伝播予防策 - 具体例とともに - - 病院職員のCOVID-19ワクチン接種 - 面会制限について

  52. COVID-19の感染経路 医療従事者への伝播  患者・訪問者から、市中感染・家庭内感染 患者への伝播  医療従事者(または他の患者)からの伝播、市中感染 院内での職員間の伝播

  53. COVID-19の感染経路 医療従事者への伝播  患者・訪問者から、市中感染・家庭内感染 患者への伝播  医療従事者(または他の患者)からの伝播、市中感染 院内での職員間の伝播

  54. 患者 職員    職員/患者 市中感染

  55. 職員からの伝播予防策 具体例とともに

  56. http://chuo.kcho.jp/news/2020-08-07

  57. 主な院内クラスターの原因 市中感染(孤発例) 陽性患者 A病棟 医療従事者 A病棟 医療従事者 ②職員間の伝播 A病棟 医療従事者 ①医療従事者への伝播 患者 ③患者への伝播

  58. 当院での職員間伝播 休憩室等職員共有スペースで伝播したと考えられた スタッフ室で食事・休憩中にマスクを外した状態で会話して飛沫感染 院内感染発覚前(2020年4月初旬)は、職員の体調不良者の休務期間等に関するマニュアルが十分整備されておらず、発熱したA病棟の看護師は翌日は解熱し(受診なし)、さらにその翌日から職場復帰していた A病棟の職員が共通で使用する物品・設備等の高頻度接触面を中心に環境ふき取り調査(PCR検査)を行ったが、すべて陰性であった

  59. COVID-19ワクチン接種 ユニバーサルマスキング 手指衛生 院内で換気の悪い3密(密閉・密集・密接)環境をつくらない 体調不良者は出勤しない(休む・帰る) 職員からの感染を予防する

  60. 微熱や軽度の気道症状がある場合 →出勤しない or 業務中なら業務を中断する COVID-19の可能性がわずかでもあるのであれば、受診してSARS-CoV-2 PCR検査(LAMP法や抗原定量検査でもOK) 職員からの感染を予防する

  61. 体調不良時に「休む」文化が大切 自分のため 同僚のため 患者さんのため

  62. 職員間感染予防の工夫-具体例-

  63. 工夫:手指消毒薬へのアクセス 頻回の手指衛生(標準予防策の徹底)のため - ナースステーション(複数個所) - 休憩室(入り口と中のテーブルの上) - ロッカー、食堂前、食堂の中 - 医局、事務部門、職員通用口

  64. 工夫:2m以内の会話に注意 ユニバーサル・マスキングの徹底 特に、2m以内で会話する場合!! マスクをとって会話してしまいがちな環境  休憩室(特に飲食の時)  ロッカー(着替えの時)  友人との帰り道 定期的な注意喚起が必要

  65. 工夫:密な環境を作らない 引き継ぎは少人数で 大人数で話し合う場合は、カンファレンス室のドア・窓を開ける(サーキュレーターの使用も検討する) 不要な会議は行わない 会議の文書開催やオンライン会議の実施

  66. 工夫:食事・休憩時 食事は1m以上の間隔をあけてとる 休憩時間の分散化 イスは向かい合わせにならない配置 こまめに窓を開けて換気する 手指消毒薬を複数の場所に設置する

  67. 職員食堂

  68. 病院職員のCOVID-19ワクチン接種 mRNAワクチンの3回目接種 2021.12から開始

  69. 日本でのmRNAワクチンの感染予防効果 第51・52回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード会議資料から 10分の1

  70. 第53・54回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード会議資料から 日本でのmRNAワクチンの感染予防効果 10分の1

  71. ワクチンの効果は時間とともにやや低下 ファイザーワクチンの感染予防効果を検討したプラセボ対照RCT(ワクチン接種後6か月間) 症候性感染予防効果:91.3% 重症化予防効果:96.7% 2回目接種4か月以降の感染予防効果:83.7% N Engl J Med. 2021 Sep 15;NEJMoa2110345. doi: 10.1056/NEJMoa2110345 デルタ株流行前のデータ

  72. mRNAワクチンの効果(デルタ株流行前) 米国での観察研究 症候性COVID-19の予防効果を検討 デルタ前(2020.12.28-2021.5.19) 3ヶ月を超えると効果はやや低下する傾向 2回接種のVE:全体約90%、ファイザー88.8%、モデルナ96.3% 年齢、基礎疾患に関係なく、効果は90%程度 N Engl J Med. 2021 Sep 22;NEJMoa2106599. doi: 10.1056/NEJMoa2106599

  73. ファイザーワクチン vs デルタ株5ヶ月間重症化予防効果は維持される 期間全体の感染予防効果:73%(平均3.4ヶ月)  全体:最初の1ヶ月88%→5ヶ月後47%  デルタ株:最初の1ヶ月93%→4ヶ月後に53%  その他の変異株:最初の1ヶ月97%→4ヶ月後に67% 期間全体の入院予防効果(≒重症化予防効果)  :約90%の効果は、5か月間維持された Lancet. 2021 Oct 4;398(10309):1407-1416. doi: 10.1016/S0140-6736(21)02183-8.

  74. COVID-19ワクチンのまとめ mRNAワクチンの短期的なCOVID-19発症予防効果・感染予防効果は90%以上 mRNAワクチンの重症化予防効果は6か月以上持続するが、感染予防効果は3-4か月経過すると減弱していく可能性が高い → 2021.12- booster(3回目)接種 mRNAワクチンの副反応は、軽度なものがほとんどで、2日以内に改善する mRNAワクチンによるアナフィラキシーは稀(10万接種に1回未満)であり、発症したとしても、アドレナリン筋注で対応可能である 若年者は、稀ではあるが、mRNAワクチン接種後の心筋炎に注意する

  75. mRNAワクチン3回目接種すべきか?

  76. 60歳以上に対するファイザーbooster 3回目接種から12日後以降の感染を非booster接種群と比較した観察研究(イスラエル) ファイザーワクチンの2回目を5-6.5か月前に接種した患者を対象とした 各群1週間のみの観察期間、長くても2週間程度 5500人が感染(114万人医療圏)→1日約800人/100万人医療圏(非常に大きな流行) N Engl J Med. 2021;385(15):1393-1400. doi: 10.1056/NEJMoa2114255

  77. 全年齢に対するファイザーbooster 2021.7.30-2021.9.23に3回目のファイザーワクチン接種した主に成人(2回目から5ヶ月以上の間隔)を対象として3回目接種7日後からのワクチン効果を検討した(f/u期間は中央値:13日) 感染予防効果:88%、症候性感染予防効果:91% 年齢・基礎疾患に関係なく、ワクチン効果確認された イスラエル での観察研究 doi:10.1016/S0140-6736(21)02249-2

  78. 16歳以上に対するファイザーbooster N Engl J Med. 2021 Dec 8. doi: 10.1056/NEJMoa2115926. イスラエル 16歳以上で、5か月以上前にファイザーワクチン2回接種している人が対象(1-2か月f/u) Booster接種群で 感染者:1/10 40歳以上の重症化:1/20 60歳以上の死亡:1/15 感染の減少

  79. 50歳以上に対するファイザーbooster N Engl J Med. 2021 Dec 8. doi: 10.1056/NEJMoa2115624. イスラエル 50歳以上で、5か月以上前にファイザーワクチン2回接種している人が対象 約2か月までf/u Booster接種群で、死亡が90%減少した

  80. イスラエル:ワクチンと感染者数の関係 ファイザーワクチン接種開始 3回目接種開始 https://www.worldometers.info/coronavirus/

  81. ファイザー・副反応:2回目=3回目 ACIP Presentation Slides: Sept 22-23, 2021 Meeting (https://www.cdc.gov/vaccines/acip/meetings/downloads/slides-2021-09-22/02-COVID-Gruber-508.pdf)

  82. mRNAワクチンboosterの安全性 ・2回目と3回目接種の副反応はほぼ同等(N=22191) ・2回目と3回目の接種間隔は約6か月(182日) ・3回目接種後:局所症状74.9%、全身症状69.9%。日常生活に支障28.3%、1医療機関受診1.8%、入院0.1%した。 ・3回の投与すべての健康診断調査完了したのは12591人(左図):3回目接種:局所症状79.4%、全身症状74.1%、2回目接種:局所症状77.6%、全身症状76.5%。3回目は、2回目よりも局所症状が多く、全身症状は少なかった。 MMWR Morb Mortal Wkly Rep. 2021;70(39):1379-1384. doi: 10.15585/mmwr.mm7039e4

  83. 新しいvariantの出現(オミクロン) https://www.who.int/en/activities/tracking-SARS-CoV-2-variants/

  84. ファイザーワクチンによる中和活性 ファイザーワクチン2回目接種5.5ヶ月後、3回目接種3.5週間後のVOCに対する健常者の中和活性を測定 ベータとオミクロンは2回目接種後5ヶ月強で中和活性消失していたが、3回目接種で約100倍上昇した N Engl J Med. 2021 Dec 29. doi: 10.1056/NEJMc2119358.

  85. mRNAワクチンによる中和抗体価 感染6ヶ月後の中和抗体価は非常に低いが(従来株の32分の1)、mRNAワクチン接種(1-2回)によって、接種前の154倍に上昇する 2回目接種5ヶ月後の中和抗体価は非常に低いが(従来株の27分の1)、ワクチンbooster接種により38倍に上昇する DOI: 10.1056/NEJMc2119641

  86. ファイザーワクチン2回接種の症候性感染予防効果5ヶ月でほぼ消失する、boosterによって60-80%程度まで上昇するが、10週間で効果減弱する(booster効果は、ファイザー<モデルナ) SARS-CoV-2 variants of concern and variants under investigation in England Technical briefing: Update on hospitalisation and vaccine effectiveness for Omicron VOC-21NOV-01 (B.1.1.529).(2021.12.31) [最終アクセス2021.1.3] mRNAワクチンの症候性感染予防効果

  87. ワクチンのオミクロンに対する効果は、デルタの場合と比較すると小さいが、良好な入院予防効果(3回接種でワクチン効果88%)が認められている SARS-CoV-2 variants of concern and variants under investigation in England Technical briefing: Update on hospitalisation and vaccine effectiveness for Omicron VOC-21NOV-01 (B.1.1.529).(2021.12.31) [最終アクセス2021.1.3] COVID-19ワクチンの入院予防効果

  88. ファイザーワクチンの入院予防効果 南アフリカで、デルタ流行期とオミクロン流行期におけるファイザーワクチンの入院予防効果を比較した 2回接種による入院予防効果は70%(デルタ流行期は93%) N Engl J Med. 2021 Dec 29. doi: 10.1056/NEJMc2119270.

  89. 3回目を接種すべきか?→Yes 高齢者・基礎疾患を有する者・医療従事者は、特に接種が望ましい 感染予防効果高い 重症化予防効果高い 副反応は2回目と同等で安全性は高い オミクロンへの感染予防効果は、2回では不十分 接種前の抗体価の測定は不要(感染予防効果を認めるIgGカットオフ値は不明であり、高値であっても感染する可能性もある)

  90. 3回目接種:日本ではどうなる? Booster doseは、2回目接種から6-8カ月以上あけて接種する 対象は2回接種した18歳以上を対象にmRNAワクチンを接種 2021年12月~ファイザーワクチン3回目接種が医療従事者で開始 2022年1月~高齢者から3回目接種開始? 2022年2月~モデルナワクチンの接種が順次開始される予定 厚生労働省. 事務連絡. https://www.mhlw.go.jp/content/000845349.pdf 厚生労働省. 事務連絡. https://www.mhlw.go.jp/content/000849637.pdf 第25回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会 資料. https://www.mhlw.go.jp/content/10601000/000849024.pdf 第26回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会(2021.11.15). https://www.mhlw.go.jp/content/10601000/000854954.pdf

  91. 病院職員のCOVID-19ワクチン接種 義務ではないが、3回の接種が強く推奨される 接種者本人だけでなく、患者・同僚の利益にもつながる 患者→職員本人への感染予防効果 職員の市中感染への予防効果 職員→職員への感染予防効果 職員→患者への感染予防効果

  92. 面会制限について 再開していく方針

  93. 面会制限は状況をみて緩和していく方針 COVID-19流行期は、原則面会禁止・オンライン面会が推奨されていた ワクチン接種がすすみ、医療提供体制の強化・重症化予防薬が開発されたこと、2021年10月以降、新規患者数が低値で推移していていることから、面会者からの感染を防ぎつつ、患者や家族のQOLを考慮して、対面での面会が実施できるよう、各医療機関でその方法・条件を検討し、面会を再開していく方針(2021.11以降、政府が推奨している) 対面での面会実施において考慮する点:地域における感染拡大状況、患者・面会者の体調・ワクチン接種歴・PCR(抗原)検査結果など 新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針(2021.11.19) https://corona.go.jp/expert-meeting/pdf/kihon_r_031119.pdf 厚生労働省医政局地域医療計画課. 事務連絡(2021.11.24) https://www.mhlw.go.jp/content/000858255.pdf 日本環境感染学会医療機関における新型コロナウイルス感染症への対応ガイド(第4版)

  94. Take Home Messages 医療施設内での職員からの別の職員または患者への感染予防は、COVID-19ワクチン接種(2回目から6-8か月あけて3回目接種、安全性は2回目接種と同等)、ユニバーサルマスキング、手指衛生、院内で換気の悪い3密(密閉・密集・密接)環境をつくらない、体調不良者は出勤しない(休む・帰る)、が基本となる 流行状況をみながらであるが、家族の面会制限は緩和していく方針が推奨されている(今後は、オミクロンの流行次第?)

  95. COVID-19病棟での感染対策 神戸市立医療センター中央市民病院 感染症科 黒田浩一 2021.12.23作成(一部2022.1.6に修正)

  96. 本日お話する内容 COVID-19病棟での感染対策 - 使用する個人防護具 - いつまで感染伝播リスクがあるか - いつまで隔離が必要か - レッドゾーンでの家族面会について

  97. 感染経路別予防策(対コロナ) 接触予防策 飛沫予防策 空気予防策(エアロゾル発生手技の時に必要) 新型コロナウイルス感染症(COIVD-19) 診療の手引き 第6版 ⼀般社団法人 日本環境感染学会. 医療機関における新型コロナウイルス感染症への対応ガイド第4版.

  98. 使用する個人防護具 personal protective equipment PPE

  99. COVID-19患者(疑いも含む)の感染対策 個人防護具 1. 眼・鼻・口を防護するもの  サージカルマスク or N95マスク  ゴーグル or フェイスシールド 2. 長袖ガウン 3. キャップ(必須ではない) 4. 手袋 新型コロナウイルス感染症(COIVD-19) 診療の手引き 第6版 ⼀般社団法人 日本環境感染学会. 医療機関における新型コロナウイルス感染症への対応ガイド第4版.

  100. N95マスクを使用する状況 エアロゾル発生手技を行う場合 気道吸引 NIV/HFNC 喀痰誘発 気管支鏡 胸骨圧迫 用手換気 気管挿管・抜管 咳が強い患者の診察(当院) 新型コロナウイルス感染症(COIVD-19) 診療の手引き・第2版 ⼀般社団法人 日本環境感染学会. 医療機関における新型コロナウイルス感染症への対応ガイド第3版.

  101. キャップは必須? キャップ装着は、必須とは考えられていない ただし、髪に触れた際に、⼿指に付着したウイルスによる粘膜汚染など(手→髪→手→眼・鼻、手→髪→眼)が懸念されるため、特に髪を触りやすい人は着用したほうが安全と思われる

  102. シューズカバーは不要 集中治療室で最重症COVID-19診療している医療従事者の靴の裏のウイルスPCRが50%で陽性であった報告がある1) COVID-19診療している医療従事者の靴の前面のウイルスPCRが陽性であった報告がある2) しかし、シューズカバーを脱ぐ際に⼿指が汚染するリスクを考慮すると、シューズカバーの着用は推奨されない3,4) 1. Emerg Infect Dis. 2020 Apr 10;26(7). doi: 10.3201/eid2607.200885. 2. JAMA. 2020 Mar 4;323(16):1610-1612. doi: 10.1001/jama.2020.3227. 3. ⼀般社団法人 日本環境感染学会. 医療機関における新型コロナウイルス感染症への対応ガイド第4版. 4. 国立感染症研究所. 新型コロナウイルス感染症に対する感染管理 2020年5月20日改訂.

  103. いつまで感染するリスクがあるか ただしく恐れる

  104. 「感染性がある」ことの評価方法は? PCR陽性→× ウイルス培養陽性 実際に起こったoutbreakの調査結果

  105. 米国のSkilled Nursing Facilityで起こったoutbreak。重症例も含めたCOVID-19の上気道検体を使用したPCRとウイルス培養を施行。SARS-CoV-2は、発症6日前から発症9日目で培養陽性となった。ウイルス量(PCR)が多い場合に培養陽性となる傾向があるようにみえるが、発症早期にウイルス量が多いことが原因と思われる。 N Engl J Med. 2020 Apr 24. doi: 10.1056/NEJMoa2008457.

  106. COVID-19のヒト-ヒト感染77ペアを解析した研究。感染伝播は、発症2.3日前から出現し、発症前後でpeakとなり、その後発症7日目までに急速に減少する。感染伝播の44%は発症前に起こる(pre-symptomatic transmission)。 Nat Med. 2020 Apr 15. doi: 10.1038/s41591-020-0869-5.

  107. 主に軽症から中等症のCOVID-19患者の上気道検体のウイルス培養は、発症から10日まで陽性となりうる。無症状者も有症状者も同様の結果であった。 Euro Surveill. 2020;25(32):pii=2001483. https://doi.org/10.2807/1560-7917.ES.2020.25.32.2001483

  108. 重症または最重症のCOVID-19患者の上気道検体のウイルス培養は、発症から20日まで陽性となりうる。発症から15日を超えて陽性となる可能性は5%以下であった。 Nat Commun. 2021 Jan 11;12(1):267.

  109. 100名の患者からの感染伝播を調査した台湾の報告。Secondary caseは、index case発症から初回曝露までの期間が5日以下までの症例のみだった。感染率が高いのは、発症前曝露(pre-symptomatic transmission)、家庭内曝露、重症例/最重症例。無症状感染者からの感染(asymptomatic transmission)はなかった。 JAMA Intern Med. 2020 May 1. doi: 10.1001/jamainternmed.2020.2020. presymptomatic transmissionは発症4日前から起こりうる

  110. 例外は存在する:高度免疫不全者 造血幹細胞移植後とCAR-T細胞療法の患者で発症から20日を越えてウイルス培養が陽性となった報告がある 3例報告されており、発症から25日、26日、61日目でのウイルス培養が陽性であった 高度免疫不全者には、マスク着用と手洗いを特に指導する必要がある、かつ、PCRで2回陰性化確認? N Engl J Med. 2020 Dec 1. doi: 10.1056/NEJMc2031670

  111. 例外は存在する:高度免疫不全者 慢性リンパ性白血病よる高度免疫不全の既往のある無症状のCOVID-19患者で、発症70日目の鼻咽頭ぬぐい液のウイルス培養が陽性になった報告がある CD4リンパ球が0のHIV患者のCOVID-19で、発症95日目の鼻咽頭ぬぐい液のウイルス培養が陽性になった報告がある Cell. 2020 Dec 23;183(7):1901-1912.e9. J Infect Dis. 2021 Feb 8;jiab075. doi: 10.1093/infdis/jiab075.

  112. 感染伝播する期間のまとめ 発症2-4日前から発症後5-10日目までがリスクが高い - 院内感染のリスクが高い感染症である それ以降に感染伝播が起こる可能性は非常に低い → 発症から11日目以降の感染リスクはほぼない 最重症例(人工呼吸器管理)は20日間までリスクあり 高度免疫不全例の場合は、稀だがさらに長期リスクあるかも?

  113. いつまで隔離が必要か- 退院・感染対策終了基準 -

  114. 退院・隔離解除基準(日本) 発症日から10日間経過し、かつ、症状軽快後72時間経過した場合 原則PCR検査は行わない 従来の基準は、重症度を考慮していなかった

  115. 退院・隔離解除基準(日本) 2021年2月25日に、「人工呼吸器非使用例」と「人工呼吸器使用例」に分けられた。前者はこれまでと同様。後者は、「発症から15日間経過」に変更。また、「発症から20日間経過するまでは、退院後も適切な感染予防策を講じるものとする」と付記されている。

  116. 補足:オミクロン 2022.1.6に追加

  117. オミクロンへの対応(2022.1.4まで) オミクロンの可能性のある検査陽性者(無症状感染者も含む)は全員入院対応 入院期間中は、個室隔離(コホーティングも可) オミクロン感染者(疑いも含む)の濃厚接触者は宿泊施設に滞在し、最終曝露日から14日目まで隔離される(最終接触から3日目、6日目、10日目を目安にPCR検査を行う) オミクロン(疑いを含む)感染者の退院基準 - 有症状者:症状軽快後24時間経過した後からPCR検査を行い2日連続陰性 - 無症状者:陽性検査の採取日から6日経過した後からPCR検査を行い2日連続陰性 B.1.1.529系統(オミクロン株)の感染が確認された患者等に係る入退院及び航空機内における濃厚接触者 並びに公表等の取扱いについて (2021.11.30, 2021.12.28に一部改正). https://www.mhlw.go.jp/content/000867652.pdf

  118. オミクロンによる軽症COVID-19のCt値の推移 オミクロンによる軽症COVID-19(11例)のCt値を調査した報告 10名はワクチン2回接種済み 全員軽症(3名は無症状) 発症6.0日でCt値>30 発症10.6日でCt値>35 DOI: 10.35772/ghm.2021.01124

  119. オミクロンのCt値とウイルス培養陽性率の推移 結論:2回のワクチン接種から14日以上経過している場合、無症状または軽症COVID-19患者では、発症または診断から10日後以降に感染性ウイルスを排出する可能性は低い SARS-CoV-2 B.1.1.529系統(オミクロン株)感染による新型コロナウイルス感染症の積極的疫学調査(第1報):感染性持続期間の検討. https://www.niid.go.jp/niid/ja/2019-ncov/2484-idsc/10880-covid19-66.html?fbclid=IwAR3gncpKyO54OOXanLToP2NU9Z0-II3FrU9I6GqGup1d5xbWxiSjTkBEdsM 21名の患者 年齢中央値33歳 軽症81%、無症19% ワクチン2回接種80%、3回接種10%、非接種10%

  120. 2022.1.5の厚生労働省の事務連絡 オミクロン感染者・濃厚接触者の対応が変更 感染拡大地域であれば...(各地方自治体の裁量と思われる) - 軽症または無症状:入院→自宅療養・宿泊療養可 - 濃厚接触者:宿泊施設→自宅待機可 ワクチン接種完了後の患者であれば - 従来の退院基準(PCR結果に関係なく発症から10日で隔離解除) 検査陽性者の「個室隔離」は変わらず B.1.1.529系統(オミクロン株)の感染が確認された患者等に係る入退院及び航空機内における濃厚接触者並びに公表等の取扱いについて (2021.11.30, 2022.1.5に一部改正). https://www.mhlw.go.jp/content/000876461.pdf

  121. 院内隔離解除の基準(米国) 軽症・中等症の場合(呼吸不全なし)  発症から10日以上、かつ、解熱24時間、かつ、症状改善 重症・最重症の場合(呼吸不全あり) 高度免疫不全の場合  発症から10-20日以上、かつ、解熱24時間、かつ、症状改善  ※高度免疫不全患者では、PCR検査を専門家と相談

  122. 院内隔離解除の基準(WHO) 重症度に関係なく 発症から10日以上、かつ、症状消失後72時間 発症から13日以上、かつ、症状消失後72時間 Clinical management of COVID-19:interim guidance, 27 May 2020 https://apps.who.int/iris/handle/10665/332196 Clinical management of COVID-19:living guidance, 25 January 2021 変更後...

  123. 院内感染対策終了の基準(欧州) 軽症・中等症  発症から10日以上経過、かつ  解熱後72時間以上、かつ、その他の症状改善 重症・免疫不全  発症から14-20日以上(免疫不全は20日)経過、かつ  解熱後72時間以上、かつ、その他の症状改善  ※24時間間隔で採取したPCR 2回連続陰性確認でもよい Guidance for discharge and ending of isolation of people with COVID-19(2020.10.16) https://www.ecdc.europa.eu/en/publications-data/covid-19-guidance-discharge-and-ending-isolation

  124. まとめ:隔離解除のタイミング 解熱(72時間)と症状改善傾向を前提として 呼吸不全なし→発症から10日 呼吸不全あり→発症から14-20日 高度免疫不全→発症から20日 高度免疫不全の場合は、PCR陰性化確認を考慮する

  125. 隔離解除後に入院継続が必要な場合 通常の病棟・標準予防策でOK 転院も安全に可能 原則として、2-3か月以内の再感染は非常に稀なので、その期間内の発熱でPCR検査は不要(最初の感染によるPCR陽性が持続することがあるため、たとえ陽性だとしても、基本的に新しいCOVID-19とは考えない)

  126. レッドゾーンでの直接面会

  127. 家族との面会の重要性 入院中の患者は、家族と会えないことによる精神心理的な動揺、不安、ストレスを抱えており、患者本人と家族のコミュニケーションを確保すること(もっとも一般的な方法が「面会」)はとても重要である 救急・集中治療ケア領域の患者家族のニーズとして、情報、保証、接近、サポート、安寧・安楽はよく知られており、「患者のそばにいたい、そばにいて何とかしてあげたい」という接近のニーズに応えること、つまり、患者と家族が直接面会することを調整することは、重要な家族ケアの1つである 一般社団法人 日本クルティカルケア看護学会. 救急・集中ケアにおける終末期看護プラクティスガイド, 医学書院, 東京, 2020

  128. 直接面会の具体的な意義として、病状の理解が進むこと・十分な相談が可能になることによる患者・家族の治療やケアの選択・意思決定の促進、患者・家族双方の心理的・スピリチュアルな苦痛の緩和、悲嘆作業の促進、などが挙げられる 終末期の患者におけるSNSを利用したオンライン面会は、家族の満足度の向上に有用ではあるが、直接面会に代わるものではないことがCOVID-19流行期のイタリアの緩和ケア病棟・ホスピスで行われた研究で示されている 家族との面会の重要性 一般社団法人日本クリティカルケア看護学会. 救急・集中ケアにおける終末期看護プラクティスガイド. 2019. http://jaen.umin.ac.jp/pdf/EOL_guide1.pdf Mercadante S, at al. Palliative Care in the Time of COVID-19. J Pain Symptom Manage. 60(2):e79-e80, 2020.

  129. 隔離病棟での直接面会についての指針 日本クリティカルケア看護学会 COVID-19 患者の面会は原則禁止だが、終末期など状況に応じて患者と家族が会える方策を検討することを推奨 感染伝播に対して可能な限りの予防策を講じた上で、面会時間や人数の検討を行い、面会できる環境を調整することを提案している 一般社団法人 日本クリティカルケア看護学会. COVID-19重症患者看護実践ガイド ver.3.0. 2021. https://www.jaccn.jp/guide/pdf/COVID-19_guide1.Ver3.0.pdf

  130. オーストラリア・ニュージーランド集中治療医学会 Australian College of Critical Care Nurses 終末期ケアのひとつとして、オンライン面会に加えて、家族による直接面会を提案 面会者の安全が最も重要であるため、医療スタッフによる家族への手指衛生・個人防護具の着脱の指導と面会者の人数制限(理想的には1名)について言及。 医療スタッフの安全も重要であり、面会者による院内へのCOVID-19の持ち込みを防ぐため、面会者は、健康状態が良好で、COVID-19曝露による自己隔離をしておらず、現在COVID-19に罹患していない、という条件を満たす必要がある。 隔離病棟での直接面会についての指針 ANZICS COVID-19 Guidelines version 3. https://www.anzics.com.au/wp-content/uploads/2020/10/ANZICS-COVID-19-Guidelines_V3.pdf 6. Aust Crit Care. 34(2): 132–134, 2021.

  131. 神戸市立医療センター中央市民病院 木原康樹(監修), 黒田浩一(編集):神戸市立医療センター中央市民病院 新型コロナウイルス感染症対策マニュアル. メディカ出版, 大阪, 2021.10.

  132. Take Home Messages COVID-19病棟で使用するPPEは、サージカルマスク(エアロゾル発生手技時は、N95マスク)、フェイスシールド(眼の防護)、長袖ガウン、手袋、キャップ(必須ではない)である COVID-19の感染伝播のリスクがあるのは、発症2-4日前から発症10日目(重症患者の場合は発症20日目まで)であるが、発症して1週間を超えるとリスクはかなり低くなる(症状が軽度な発症時期周辺がもっとも危険) 患者家族の安全に確保しつつ、レッドゾーンでの直接面会(特に終末期の場合)システムを構築することは重要である

  133. ウィズコロナ時代の病院外での感染対策 神戸市立医療センター中央市民病院 感染症科 黒田浩一 2021.12.23作成(一部2022.1.6に修正)

  134. この講義でお話する内容 ウィズコロナ時代の病院外での感染対策 - SARS-CoV-2の感染経路(復習) - 医療従事者の感染は、むしろ市中感染が多い - 医療従事者の市中感染予防 - 医療従事者の家族内感染予防 - 女性・子供へのCOVID-19ワクチン接種 - COVID-19ワクチン接種後の感染対策

  135. 病院外での感染対策(院内と同じ) COVID-19ワクチン接種(3回目接種も必要) 屋内や人混みでのマスク着用、換気 手指衛生(アルコール製剤 or 流水と石鹸) 身体的距離の確保(最低1m、可能なら2m) 換気の悪い3密(密集・密接・密閉)の回避 体調不良時は、外出しない・人と会わない

  136. SARS-CoV-2の感染経路 感染は主に気道分泌物を介して起こる  くしゃみ・咳・会話など 飛沫感染(2m以内)  口・鼻・目の粘膜への飛沫の付着 エアロゾル感染(空気感染とは厳密には異なる)  微小な飛沫あるいはエアロゾルの吸入(換気の悪い閉鎖空間) 接触感染  ウイルスが付着した手指による粘膜への接触 Ann Intern Med. 2021 Jan;174(1):69-79. doi: 10.7326/M20-5008.日本環境感染学会医療機関における新型コロナウイルス感染症への対応ガイド(第4版) CDC. Scientific Brief: SARS-CoV-2 Transmission. https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/science/science-briefs/sars-cov-2-transmission.html

  137. COVID-19の感染経路 医療従事者への伝播  患者・訪問者から、市中感染・家庭内感染 患者への伝播  医療従事者(または他の患者)からの伝播、市中感染 院内での職員間の伝播

  138. COVID-19の感染経路 医療従事者への伝播  患者・訪問者から、市中感染・家庭内感染 患者への伝播  医療従事者(または他の患者)からの伝播、市中感染 院内での職員間の伝播

  139. COVID-19の感染経路 医療従事者への伝播  患者・訪問者から、市中感染・家庭内感染 患者への伝播  医療従事者(または他の患者)からの伝播、市中感染 院内での職員間の伝播

  140. 患者    職員   市中感染・家族内伝播 職員 患者

  141. 医療従事者の感染はむしろ市中感染が多い

  142. 医療従事者の病院外での感染に注意 院内では気をつけているため、むしろ病院内での感染リスクは低い。また、COVID-19診療病棟よりも、初診外来・救急外来のほうが感染リスクが高いと思われる(クラスター収束以降、当院でCOVID-19感染した職員は、全員市中感染)。 医療従事者の感染は、家庭内での感染(27.8%)・市中での感染(15.3%)のほうが、職場での感染(16.7%)より多い(シンガポール) 医療従事者のSARS-CoV-2 IgG陽性率は、COVID-19診療への有無との関連はなく、家族にCOVID-19患者がいる場合に、高かった(ベルギー) Influenza Other Respir Viruses. 2021 Mar;15(2):218-226. doi: 10.1111/irv.12803. JAMA. 2020 Jul 14;324(2):195-197. doi: 10.1001/jama.2020.11160.

  143. COVID-19大流行の米国(2020.11) https://www.beckershospitalreview.com/workforce/900-mayo-clinic-workers-diagnosed-with-covid-19-in-past-2-week.html

  144. 医療従事者の市中感染予防

  145. 医療従事者の市中感染予防 COVID-19ワクチン接種(3回目接種も必要) 屋内や人混みでのマスク着用 手洗い 身体的距離の確保(最低1m、可能なら2m) 換気の悪い3密(密集・密接・密閉)の回避 感染が流行している地域への移動を控える

  146. 具体的に気をつけること 事例とともに

  147. 過去2週間以内のレストラン利用はCOVID-19感染のリスク(流行期の米国) COVID-19に感染した人は、店を訪れた際にマスクの着用や身体的距離の確保などの感染対策を遵守していない割合が高かった MMWR Morb Mortal Wkly Rep. 2020 Sep 11;69(36):1258-1264. doi: 10.15585/mmwr.mm6936a5.

  148. 「飲み会」での集団発生事例 有症状者がいる 感染者の向かい・隣の席は高リスク 1m以上の距離だとリスクは低い 無症状者からの感染リスクもある 席の移動はリスク 換気の悪い場所はリスク 飲用容器の共有はリスク 国立感染症絵研究所.いわゆる「飲み会」における集団感染事例について. https://www.niid.go.jp/niid/ja/diseases/ka/corona-virus/2019-ncov/2484-idsc/9941-covid19-26.html

  149. 会食をする場合に気をつけること 全員COVID-19ワクチン接種済みであることが望ましい 体調不良者は参加しない 他のテーブルとの距離が1-2m以上ある店を選ぶ 換気のよい店を選ぶ なるべくマスクを着用 頻回にアルコールによる手洗いを行う

  150. 趣味などの余暇活動でのクラスター スポーツジム:  更衣室や休憩ラウンジでのマスクをはずした会話 バーベキュー:  食事中のマスクなしの会話 合唱練習・カラオケ:  発症後の練習参加、換気が不十分な屋内、マスクをはずして歌う 国立感染症研究所. 「趣味など余暇活動」における集団感染事例について. https://www.niid.go.jp/niid/images/epi/corona/covid19-27.pdf

  151. 余暇活動での感染対策 マスクの着用の徹底(食後の会話、歌唱時など) 十分な身体的距離の確保 症状がある場合は「趣味など余暇活動」に参加しない 店内換気の励行 パーテーションの設置等飛沫対策 客の入店時に体温測定や症状の確認 国立感染症研究所. 「趣味など余暇活動」における集団感染事例について. https://www.niid.go.jp/niid/images/epi/corona/covid19-27.pdf

  152. 感染リスクを高めやすい場面 飲酒を伴う懇親会 大人数や深夜におよぶ飲食 大人数やマスクなしでの会話 仕事後や休憩時間 集団生活 激しい呼吸を伴う運動 屋外での活動前後 新型コロナウイルス感染症対策分科会. 人の移動に関する分科会から政府への提言. 2020.9.25. https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/ful/bunkakai/hito_ido_teigen.pdf

  153. 新型コロナウイルス感染症対策分科会. 分科会から政府への提言. 感染リスクが高まる「5つの場面」と「感染リスクを下げながら会食を楽しむ工夫」2020.10.23. https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/ful/bunkakai/teigen_12_1.pdf

  154. 院内でも院外でも基本は同じ COVID-19ワクチン接種(3回目接種も必要) 屋内や人混みでのマスク着用 手洗い 身体的距離の確保(最低1m、可能なら2m) 換気の悪い3密(密集・密接・密閉)の回避

  155. 医療従事者の家庭内感染予防

  156. 家庭内での伝播のリスクは高い 中国での流行は、家族内clusterの占める割合が大きかった 1) 家族内でのattack rateは、5%-38.2%と報告によって幅がある 2-8) :10-20%程度という報告が多い 医療体制(自宅隔離 or 入院隔離)、家庭内感染対策の実施の有無、研究が行われた時期(知見の集積の有無)によって異なると思われる 家族内でattack rateは、医療機関や市中でのattack rateより高い 3) 症状出現してからの隔離で、2次感染率は著明に低下するという報告がある 5) 1) https://www.who.int/docs/default-source/coronaviruse/who-china-joint-mission-on-covid-19-final-report.pdf 2) Emerg Infect Dis. 2020 Aug;26(8):1666-1670. 3) JAMA Intern Med. 2020 Sep 1;180(9):1156-1163. 4) Clin Infect Dis. 2020 Nov 5;71(8):1953-1959. 5) Clin Infect Dis. 2020 Nov 19;71(16):2099-2108. 6) Clin Infect Dis. 2020 Nov 5;71(8):1943-1946. 7) Clin Infect Dis. 2020 Oct 12;ciaa1558. doi: 10.1093/cid/ciaa1558. 8) Lancet Infect Dis. 2020 Aug;20(8):920-928. 9) Lancet Infect Dis. 2020 Aug;20(8):911-919.

  157. 家庭内での感染は以下の状況でリスクが高い - 寝室が同じ - 30分以上の会話 Lancet Infect Dis. 2020 Nov 2;S1473-3099(20)30833-1. doi: 10.1016/S1473-3099(20)30833-1. 家庭内での伝播のリスクは高い

  158. 家庭内感染予防(これも同じ) COVID-19ワクチン接種(適応ある人全員接種が望ましい)  各人の感染リスク低下、だれかが感染しても家族内伝播リスク減少 気道症状のある家族がいる場合 - Social distanceの確保 - マスクの着用 - 高頻度接触面の消毒 - 部屋の換気(窓を開ける) BMJ Glob Health. 2020 May;5(5):e002794. doi: 10.1136/bmjgh-2020-002794. 2次感染が減少することが示されている

  159. 女性・子供へのCOVID-19ワクチン接種 効果と安全性

  160. 妊娠中・授乳中・妊娠検討中mRNAワクチンは接種すべきか

  161. 妊娠は「重症化リスク」である ICU入室率・人工呼吸器使用率が約3倍 死亡も増加する可能性がある 高年齢、肥満、糖尿病、高血圧は、妊婦の重症化リスク 早産やNICU入室のリスクである(流産・死産は増加しない) 垂直感染は非常に稀である 日本では、入院先の確保が困難な時期があった(現在も?) MMWR Morb Mortal Wkly Rep. 2020;69(44):1641-1647. doi: 10.15585/mmwr.mm6944e3. BMJ. 2020 Sep 1;370:m3320. doi: 10.1136/bmj.m3320.

  162. mRNAワクチンの妊婦での安全性 2020年12月14日から2021年2月28日までに約35000人の妊婦がv-safe surveillanceに参加し、副反応の頻度は、妊娠していない女性と同等だった V-safe Pregnancy Registryに参加した約4000人のうち827人が妊娠を完了したが、有害な妊娠と新生児の転帰は、通常の妊婦と同等だった(安全性の懸念が増すことはなかった) N Engl J Med. 2021;384(24):2273-2282. doi: 10.1056/NEJMoa2104983 安全性は確認されている

  163. N Engl J Med. 2021;384(24):2273-2282. doi: 10.1056/NEJMoa2104983 局所反応: 妊娠していない女性と同等

  164. N Engl J Med. 2021;384(24):2273-2282. doi: 10.1056/NEJMoa2104983 流産・死産・早産・先天性奇形・新生児死亡の頻度は、通常の妊婦と同等だった

  165. mRNAワクチンで自然流産は増加しない N Engl J Med. 2021;385(16):1533-1535. doi: 10.1056/NEJMc2113891. JAMA. 2021 Sep 8;e2115494. doi: 10.1001/jama.2021.15494.

  166. 妊婦へのファイザーワクチンの効果 イスラエルで行われた後ろ向き観察研究 ファイザーワクチン初回接種4週間後以降のPCRで診断された感染の予防効果を検討 f/u期間の中央値は37日間 ワクチン1回目接種は2020.12.19-2021.2.28(f/uは2021.4.11で終了) ワクチン接種群の感染は78%少なかった 胎児発育不全、中絶、早産、死産、母体死亡、妊娠高血圧腎症、肺塞栓症は増加しなかった JAMA. 2021;326(8):728-735. doi: 10.1001/jama.2021.11035.

  167. mRNAワクチンの妊婦での効果 妊娠中・授乳中の女性へのmRNAワクチン接種によって、血清RBD-IgG、中和抗体は上昇する。臍帯血(RBD-IgG、中和抗体)と母乳(RBD-IgGとIgA、中和抗体)へ移行する。 JAMA. 2021 May 13:e217563. doi: 10.1001/jama.2021.7563.

  168. 授乳中の女性に対するmRNAワクチンの効果 母乳中のIgAは1回目接種の2週間後から上昇 母乳中のIgGは2回目接種の1週間後から上昇 授乳中の女性84名にファイザーワクチン接種した後、母乳のIgAとIgGを測定。 JAMA. 2021 Apr 12. doi: 10.1001/jama.2021.5782.

  169. 米国CDCの妊娠・授乳中の女性に対する推奨 すべての妊婦、授乳中の女性に対してmRNAワクチン接種を推奨 妊娠希望している女性とそのパートナーに対してワクチン接種を推奨 男性・女性ともにmRNAワクチン接種によって不妊となる根拠はない スパイク蛋白に対するIgGが母乳・臍帯血中に指摘  →新生児に対してある程度の感染予防効果が期待できるかもしれない 発熱時はアセトアミノフェンを内服する COVID-19 Vaccines While Pregnant or Breastfeeding [最終アクセス2021.10.19] https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/vaccines/recommendations/pregnancy.html JAMA. 2021 Dec 10. doi: 10.1001/jama.2021.22679.

  170. mRNAワクチン接種によって不妊になる危険性はあるのか? mRNAワクチンが、男性または女性の生殖機能に悪影響を及ぼすことを示したデータはない ワクチン接種後の避妊は不要である mRNAワクチン1回目の接種後に妊娠した場合、通常のスケジュール通り2回目を接種すればよい COVID-19 Vaccines for People Who Would Like to Have a Baby [最終アクセス2021.10.19] https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/vaccines/planning-for-pregnancy.html JAMA. 2021;326(3):273-274.

  171. 時期を問わず妊婦全員にmRNAワクチン接種を推奨 妊婦の夫またはパートナーのワクチン接種も推奨 不妊・流産との関連なし、生理中・不妊治療中・ピル内服中も接種可能 授乳可能、接種後の発熱はアセトアミノフェンで対応 日本産婦人科学会の最新の推奨 日本産婦人科学会. 妊産婦のみなさまへ. 新型コロナウイルス(メッセンジャーRNA)について(第2報)[2021.8.14発表] https://www.jsog.or.jp/news/pdf/20210814_COVID19_02.pdf

  172. 若年者へのmRNAワクチンは必要? 12歳~20歳台 5~11歳

  173. 12-15歳へのファイザーワクチンの効果 対象は2260人(小規模) 中和活性は16-25歳より高値 COVID-19の予防効果:100% N Engl J Med. 2021;385(3):239-250. doi: 10.1056/NEJMoa2107456.

  174. 12-15歳へのファイザーワクチンの安全性 局所症状:12-15歳と16-25歳で同等、1回目と2回目でほぼ同等 N Engl J Med. 2021;385(3):239-250. doi: 10.1056/NEJMoa2107456.

  175. 12-15歳へのファイザーワクチンの安全性 全身反応 - 12-15歳と16-25歳で同等 - 1回目<2回目 - 発熱:  1回目10%、2回目20% N Engl J Med. 2021;385(3):239-250. doi: 10.1056/NEJMoa2107456.

  176. mRNAワクチン接種後の心筋炎/心膜炎の要点 mRNAワクチン接種後の心筋炎は100万接種あたり数例(多い報告で10万人あたり約2例) 10-20歳台の男性で頻度が高く10万接種あたり2-14例で発症する mRNAワクチン接種後の発症率は、一般人口の発症率の5倍以上である 胸痛・息切れ・動悸で発症する 血液検査でトロポニン上昇、CRP上昇、心電図でST上昇を認める 重症例は稀(5%未満)で、ほとんどが軽症であり、通常1週間以内に改善する 2回目接種後に発症することが多く、典型的には2回目接種の4日以内に発症する

  177. mRNAワクチン後の心筋炎:10-20歳代男性モデルナワクチンは避けたほうがよさそう ・日本国内のデータによると、心筋炎は特に10-20歳代男性のモデルナワクチン2回目接種後に多い ・カナダオンタリオ州は18-24歳に対してファイザーワクチンを推奨している ・スウェーデンでは30歳未満へのモデルナワクチン接種を停止している 全人口では、各国のデータから、  ファイザーワクチン100万回接種あたり1-5件  モデルナワクチン 100万回接種あたり1-30件 https://www.mhlw.go.jp/content/000844011.pdf https://www.mhlw.go.jp/content/10601000/000844075.pdf

  178. 5-11歳に対するファイザーワクチン 5-11歳を対象(N=2268名) 1回接種量10μg 2回目接種後の全身反応は16-25歳に対する30μgより少ない ワクチン接種群で、中和活性は99%以上で上昇(16-25歳に対する30µgと同等) N Engl J Med. 2021 Nov 9;NEJMoa2116298. doi: 10.1056/NEJMoa2116298. FDA. https://www.fda.gov/media/153409/download

  179. 5-11歳に対するファイザーワクチン 症候性感染予防効果 90.7% 重症例は両群とも0 MIS-Cも両群とも0 f/u期間:2~3か月 まだ長期的な効果は不明 N Engl J Med. 2021 Nov 9;NEJMoa2116298. doi: 10.1056/NEJMoa2116298. FDA. https://www.fda.gov/media/153409/download

  180. 5-11歳へのファイザーワクチンの安全性 米国では、2021.11.3-2021.12.19に約870万回接種された 有害事象の97.6%が非重症(重症に分類されたのは100例) 心筋炎は、11例(トロポニン上昇15例)→約80万接種に1例 心筋炎による死亡例なし 死亡2例(ワクチンとの関連は現時点では認められていないがreview中) MMWR Morb Mortal Wkly Rep. 2021 Dec 31;70(5152):1755-1760. doi: 10.15585/mmwr.mm705152a1.

  181. 未成年へのワクチン接種のメリット 重症化予防効果がある可能性:基礎疾患のある子どもは、重症化するリスクが高い 頻度は低いが(日本での報告は非常に少ない)、小児多系統炎症性症候群(Multisystem Inflammatory Syndrome in Children、MIS-C)は重篤な病態である(年齢中央値は8-11歳で、10歳以上が40-50%程度) Long COVIDの予防 発症予防効果は90%以上  →同居する家族(主に大人)に感染させる危険性が減る  →感染による病欠や学校内での流行による学級閉鎖が減る→日常生活を取り戻すために有用 N Engl J Med. 2020;383(4):334-346. doi: 10.1056/NEJMoa2021680. Lancet Child Adolesc Health. 2020;4(9):669-677. doi: 10.1016/S2352-4642(20)30215-7. 厚生労働省:https://www.cov19-vaccine.mhlw.go.jp/qa/column/0008.html 日本小児科学会:http://www.jpeds.or.jp/modules/activity/index.php?content_id=379 Acta Paediatr. 2021;110(3):914-921. doi: 10.1111/apa.15673 Lancet Child Adolesc Health. 2021;5(10):708-718. doi: 10.1016/S2352-4642(21)00198-X.

  182. 未成年へのワクチン接種のデメリット ●副反応 ・発熱・倦怠感・頭痛は、若年成人と同等の頻度である ・心筋炎:思春期から若年成人の男性でリスク高い(1回目<2回目)  ただし頻度は低い(数万~10万人に1人)、ほとんどが軽症(90%以上)  5-11歳でのリスクがどの程度か2021年12月初旬時点では不明  接種から1週間以内が多い→接種後1週間は自覚症状に注意  はげしい運動も控えることを考慮(日本小児科学会推奨) ●長期的な予防効果まだ検討されていない 厚生労働省:https://www.cov19-vaccine.mhlw.go.jp/qa/column/0008.html 日本小児科学会:http://www.jpeds.or.jp/modules/activity/index.php?content_id=379

  183. COVID-19ワクチン接種後の感染対策

  184. ワクチン接種後も感染対策は必要か? 必要。COVID-19ワクチンが100%の発症予防効果があるわけではないこと、ワクチンによる免疫の持続期間が不明であることから、現時点では、接種後も従来の感染対策を継続する必要がある(マスク・身体的距離の確保・換気の悪い3密を回避・換気)。

  185. 日常生活(米国CDCの推奨) 屋外でマスクを着用する必要はない 感染率が高い地域では、公共の場では屋内でマスクを着用する 自身が重症化リスクあり、または、同居家族が重症化リスクありまたはワクチン非接種の場合、地域の流行状況に関係なくマスク着用 学校関係者(教師、生徒、その他)は、学校内ではマスクを着用する When You’ve Been Fully Vaccinated [最終アクセス2021.12.12] https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/vaccines/fully-vaccinated.html Interim Public Health Recommendations for Fully Vaccinated People [最終アクセス2021.12.12] https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/vaccines/fully-vaccinated-guidance.html

  186. 屋外→マスク不要 公共の屋内スペース→マスク着用 学校(屋内)→マスク着用 公共交通機関→マスク着用 日常生活(米国CDCの推奨) When You’ve Been Fully Vaccinated [最終アクセス2021.10.19] https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/vaccines/fully-vaccinated.html Interim Public Health Recommendations for Fully Vaccinated People [最終アクセス2021.10.19] https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/vaccines/fully-vaccinated-guidance.html

  187. どこまで感染対策を緩和してよい? 地域の流行状況と病床利用率 変異株の出現と感染者にしめる割合 その変異株に対するワクチン効果(2021年12月:オミクロン) ワクチン接種率、マスクの使用状況(日本>>欧米) 海外渡航の状況(2021年12月現在、かなり制限されている) 経済状況、政治判断、世論 などによって決まると思われる(明確な答えはない)

  188. 病院外での感染対策(再掲) COVID-19ワクチン接種(3回目接種も必要) 屋内や人混みでのマスク着用、換気 手指衛生(アルコール製剤 or 流水と石鹸) 身体的距離の確保(最低1m、可能なら2m) 換気の悪い3密(密集・密接・密閉)の回避 体調不良時は、外出しない・人と会わない

  189. Take Home Messages 病院外での感染対策も、院内での感染対策と基本は同じ:COVID-19ワクチン接種(3回目接種も必要)、屋内や人混みでのマスク着用、換気、手指衛生(アルコール製剤 or 流水と石鹸)、身体的距離の確保、換気の悪い3密(密集・密接・密閉)の回避、体調不良時は人と会わない、ことが重要である。 現時点では、COVID-19ワクチン接種後も、基本的な感染対策(マスク・身体的距離の確保・換気の悪い3密回避・換気)は継続する

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