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滋賀医科大学
院外CPAで搬送されてきた患者さん、警察に異状死として届けたら「一緒に検案してください」って言われた!そんなこと言われても、何を見て何を判断すればいいの?大学でも臨床研修でも教わらない死体検案、死後CTの読み方と共に解説します。
臨床医のための法医学
①臨床で遭遇する院外CPA、警察通報とその後
https://slide.antaa.jp/article/view/ae5c460dfd48481a
②死因究明と死体検案(本スライド)
https://slide.antaa.jp/article/view/63be89c89ef8413b
③いまさら聞けない死亡診断書の書き方
臨床医のための法医学③いまさら聞けない死亡診断書の書き方
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死因究明と死体検案 臨床医のための法医学② このスライドは、作者が個人的に作成したものであり、所属大学・講座の見解を代表したものではありません。
はじめに 以下のうち、当てはまるものはありますか? 警察に異状死の届出をしたら、「一緒に検案して検案書作成してください」と言われることがある 蘇生中止と同時に原因を考えるのも中止、それにもやっとすることがある 今日も蘇生中止。本当に蘇生不可能だったのかな・・・? 来院時CPAの生化学検査、異常値だらけだけど全部死後変化でしょ? 警察から死後CT撮影の依頼を受けた!「何か所見ありますか?」って聞かれても、死後CTの読み方なんて・・・
このスライドの内容 死体検案の仕方 死体現象の発現と死後経過時間 死体現象と臨床症状 死因の推定 死後CTの読み方 死後CTの基本 蘇生術による変化 死後変化 このスライドには、死体の写真およびCT画像があります。 苦手な方はご注意ください。 また、電車内やカフェなど、公共の場所で閲覧しないでください。 スライド内の画像を転用しないでください。
死体検案の仕方
死体検案とは 死体の検案(けんあん)とは、医師または獣医師が死体に対し、死亡を確認し、死因、死亡時刻、異状死との鑑別を総合的に判断することをいう。 都立広尾病院事件の最高裁判所判決によれば、医師法21条にいう死体の「検案」とは、医師が死因等を判定するために死体の外表を検査することをいい、当該死体が自己の診療していた患者のものであるか否かを問わない。 (Wikipediaより)
一般的に行われている検視官(警察)の検視、警察医の検案 直腸温測定 死体硬直の確認 死斑の確認 全身観察(着衣)→全身観察(脱衣) 頭部:頭髪の色、長さ。頭皮の外傷の有無、骨折触知の有無。 顔面:皮膚の色。眼瞼結膜の色、溢血点の有無。瞳孔径の測定。鼻腔内、口腔内、外耳道内含有物の確認。口腔粘膜の損傷、溢血点の確認。歯科所見(治療痕等)の確認。 頸部:皮膚の色。圧迫痕や索溝の有無の確認。その他損傷、病変の確認。 胸部:皮膚の色。胸郭の変形の有無、腹部の膨満度・変形の有無。その他損傷、病変の確認。 四肢:皮膚の色、指先・爪の色。その他損傷、病変の確認。 心臓血の採取:トロポニンの定性、薬物検査など 後頭窩穿刺:血性髄液有無の確認 これらと病歴、周辺状況を総合して死因を考察、解剖の要否を決定
一般的に行われている検視官(警察)の検視、警察医の検案 直腸温測定 死体硬直の確認 死斑の確認 全身観察(着衣)→全身観察(脱衣) 頭部:頭髪の色、長さ。頭皮の外傷の有無、骨折触知の有無。 顔面:皮膚の色。眼瞼結膜の色、溢血点の有無。瞳孔径の測定。鼻腔内、口腔内、外耳道内含有物の確認。口腔粘膜の損傷、溢血点の確認。歯科所見(治療痕等)の確認。 頸部:皮膚の色。圧迫痕や索溝の有無の確認。その他損傷、病変の確認。 胸部:皮膚の色。胸郭の変形の有無、腹部の膨満度・変形の有無。その他損傷、病変の確認。 四肢:皮膚の色、指先・爪の色。その他損傷、病変の確認。 心臓血の採取:トロポニンの定性、薬物検査など 後頭窩穿刺:血性髄液有無の確認 これらと病歴、周辺状況を総合して死因を考察、解剖の要否を決定 やらなくていいです。 溢血点、心臓血、後頭窩穿刺 エビデンスに乏しい
臨床医として検案するゴール 異状死にあたるかどうか判断する 死体検案書を作成する 氏名、性別、生年月日の確認 死亡したときの推定 死亡したところの決定 死因、死因の種類の考察 死因を通して治療プロセスの妥当性を考察する
死亡したときの推定 家族からの病歴聴取:最終健常確認時刻 *最後に見たときに「生きている」状態だったか 〇会話した、動いていた 〇最後に見たときの体勢とCPAで発見したときの体勢が異なる 【要注意】「寝ていると思ったのでそっとしておいた」 救急隊接触時、病着時のモニター波形 ROSCしなくてもPEAやVFなどなんらかの波形が見られたら、その時間は「生存時間」と判断 (心臓の電気活動は生活反応という解釈) 死体現象
第1期 (死後2~3時間) 第2期 (比較的直線降下) 第3期 (環境温度と平衡) 死後経過時間 直腸内温度 死体現象① 体温(直腸温)低下 Start:死亡時の体温 Goal:環境温度
教科書的には… 気温17℃で ~10時間:1℃/1時間 低下 11時間~:0.5℃/1時間 低下 (右左:いずれも『検視ハンドブック改訂2版(南山堂)』より
12 体温降下に影響する因子 環境条件外気温、風通し、着衣の有無や湿潤、死体の置かれた場所の熱伝導速度 死体条件体格、死因(熱射病、凍死など)、姿勢、体の部位(体幹部は冷却が遅く、四肢は速い) 高体温症(熱射病、頭部外傷、感染症、覚せい剤中毒等) 低体温症 裸体 やせ 肥満 高い外気温
死体現象② 死体硬直 小さい筋肉→大きい筋肉 の順で発現、緩解 (一般に「上肢→下肢」と言われるのは、下肢の筋の方が上肢より大きいから) 2~3時間:顎、指先など 6~8時間:全身におよぶ 12~24時間:ピーク →徐々に緩解 【参考】 死体硬直(+):硬さを感じるが、用手的に関節運動可能 (++):強く力を込めれば関節運動可能 (+++):強く力を込めても関節運動不可能 死体硬直に影響する因子:体格(マッチョ→より強く発現、廃用萎縮→出現しづらい) 死亡直前の筋収縮(激しい運動、痙攣など) 「顎が硬くて挿管困難」 この時点で2時間以上経過 あくまで作者(平均より小柄な女)なりの目安
死体現象③ 死斑 30分~:発現開始 2時間~:肉眼的に観察しやすくなる 4~5時間:体位変換で完全転移(もともと出現していた死斑は消える) 6~8時間:不完全転移(両側性死斑) 12時間~:固定化 重力方向に出現。圧迫部(床と接していた背面中央部、臀部、ふくらはぎ、ウエストゴムなど)は出現しない
☚両側性死斑 右側臥位(顔面下向き)で発見 →仰臥位で安置 前面と背面の左側(発見時の体勢を反映)+背面(安置後の体勢を反映)に死斑が出現 ⇒発見時に死後6~8時間経過していたと推定
死斑発現に影響する因子 死斑の出現速度 血液の流動性 急死や窒息死では血液は流動性を維持し、感染症や中毒死では血管内に凝血が存在 急死では早く出現し、凝血の存在する死亡では遅延する 水中死体では遅延する(体位変換しながら流れている場合は出現しない) 死斑の強さ 循環血液量と血色素量:大量出血や貧血患者では薄くなる 死斑の色 中毒 一酸化炭素、シアン化物:鮮紅色 硫化水素:青緑色 塩素酸塩、亜硝酸塩:灰褐色
一酸化炭素中毒(坐位。やや腐敗変化あり:腹部の青緑色) 出血性ショック(坐位)
死体現象と死後経過時間推定の精度 鋭敏、環境や死因による影響を受けやすい 普遍性高い、時間経過は曖昧 直腸温 死体硬直 死斑
病歴聴取と死体現象で死後経過時間に矛盾が出たら 病歴が間違っている(誰かが嘘を言っている) or 死体現象が修飾されている 直腸温が高すぎる →死亡時高体温となる病態:熱中症、感染症、頭蓋内出血、薬物中毒 死後体温低下が減速する環境:暖房、風呂、直射日光など 直腸温が低すぎる →死亡時低体温となる病態:低体温、敗血症 死後体温低下が加速する環境:体が濡れていた、風が当たっていた、水に浸かっていた、など 死体硬直が強すぎる →死亡直前の強い筋運動(激しい運動や痙攣など) 死体現象の出現が早すぎる(既に腐敗徴候が出ているなど) →菌血症、高温環境下に置かれていた、など
死体現象と間違えやすい臨床症状 死体硬直 ⇔ 廃用拘縮、強直 腐敗網(写真左) ⇔ 網状皮斑(写真右) 救急隊が網状皮斑を腐敗網と誤って、救命可能な人を不搬送としてしまう事案が時々発生している
死因の推定 臨床診療とほぼ一緒です 現病歴(救急要請時の様子、最終健常確認時の様子)聴取 既往歴聴取 身体所見 外傷の有無:見逃しやすいところ=頭部(頭髪の中)、 腹部(圧迫を受けても皮下出血を生じにくい) 異臭の有無(有機リン中毒、硫化水素中毒→※有毒ガスなので、一瞬匂ったらすぐ防護。医療者 に二次被害を出さないように!) 体表の感染徴候の有無(蜂窩織炎、壊死性筋膜炎、褥瘡感染など。皮下気腫の有無も確認) ☝急性フルニトラゼパム中毒。薬物を飲み込まずに咀嚼した稀な例。
死因の推定(続き) 血液検査 死後変化、蘇生治療による変化を受けやすいもの 血ガス 血糖値(だいたいは死戦期のストレスを反映して3~400くらいまで上昇。600以上は生前高血糖の可能性も。菌血症、ウイルス血症では低血糖となる) 逸脱酵素系(CK, AST, ALT, LDH, K, etc…) 死後も比較的安定し、生前の状態を反映するもの BUN、Cre(死戦期の急性腎不全を反映してCre ~2.0くらいまでは上がる。それ以上は生前腎不全の可能性) CRP、 HbA1c(死後数日経ってもほぼ変わらない) WBC、RBC、Hb(1日以上の経過で徐々に血球が壊れ、機械測定上は減少していくが、死亡当日ならほぼ安定) Na、Cl(1日以上の経過で徐々に低下するが、死亡当日ならほぼ安定) 画像検査(死後CT) ☝『医療の広場』2020:60(9);p16-19.
死体検案の困る事案 警察に「心臓血取ってくれませんか」と依頼された! →CPR中に採血した検体の残があれば、「これでどうですか」と言ってみてください (血液であれば良いはず。薬物分析の観点からも、末梢血の方が正確) CPR中に採血できなかった場合:胸骨第4肋間左縁あたりを18G針(カテラン針がbetter)付き20ccシリンジでほぼ垂直に穿刺、5~8㎝程度で心臓腔内に当たるはず Ⓧ
死後CTの撮影と読影
法医学における画像診断 レントゲンが出現した時代より、ご遺体の体内の異物(主に銃弾)を検索するのに利用されていた。 近年の(特に日本での)CTの爆発的普及により、法医学にもCTをはじめとした単純レントゲン以外の画像診断を活用しようという動きが起こってきた。
CTでどれくらい死因がわかるのか 筑波メディカルセンターの統計(救命センターへ院外CPAで搬送された後死亡した患者+法医解剖例)では,外因死の8割,内因死の3割前後がAi(Autopsy imaging=死後CT)で診断できるとしている.
2013年湘南藤沢徳洲会病院で実施した死後CT 21例における診断率 外傷例3例を除いた18例中7例(39%)で死因となる所見あり. 病歴から推察され,Aiで矛盾しないものを合わせると18例中11例(61%)で死因を診断することができた.
CTでわかるものとわからないもの CTでわかり、死因となり得るもの 頭蓋内出血 大血管の病変(大動脈解離、大動脈瘤破裂) 胸腔内や腹腔内の大出血 緊張性気胸 など CTでわかるが、死因となるかどうかわからないもの 骨折 肺炎 など 死因となり得るが、CTではわからないもの 心筋梗塞 代謝異常、不整脈などの機能性疾患 肺動脈血栓症 中毒 CTで見つけられた所見が、 どのようにしてできたものか (事故、自傷、他害、病気) はCTは教えてくれない 多くの場合は「物言わぬ遺体の単純CT」であり、得られる情報には限界がある、 と理解した上で運用することが大切
特に異状死の判断に注意を要するもの 頭蓋内出血 くも膜下出血、実質出血:覚醒剤等違法薬物に起因することがある 硬膜下血腫、硬膜外血腫:明らかな外傷歴がなかったとしても、原則外因性と考える(内因性のSDH、EDHもあるが稀な例外) 大動脈瘤破裂、大動脈損傷、心タンポナーデ、消化管穿孔 交通外傷などの外傷性に生じることがある
死後CTの撮影 基本はFull body、2.5mmスライス 成人は頭頸部+胸腹部でも可。特に頸椎は損傷があれば致命的なのに読影でも解剖でも見落としやすいので、MPR再構成含め依頼する。 小児は四肢含めた全身を撮影。 挿管チューブ、胃管、CV他体内に挿入したものは抜去せずにそのまま撮影
基本的には、単純CTの読影。 蘇生治療による変化や死体特有の変化を、異常所見と見間違わないように。
蘇生術による変化①心血管内ガス、門脈内ガス 胸骨圧迫中の圧変化で血管内の溶存ガスが気化するとか、用手換気によって破綻した肺胞毛細血管から流入するとか、諸説あります
蘇生術による変化②肋骨骨折、胸骨骨折
人の手による胸骨圧迫で生じる肋骨骨折(分布) 作者自験データ ■Anterior ■Posterior 胸骨圧迫による肋骨骨折は第2~第7肋骨、中腋窩線より前側に分布する
人の手による胸骨圧迫で生じる肋骨骨折(年齢との関係) 作者自験データ r=0.61 p<0.01 肋骨骨折の生じる境界線は30歳代(胸骨骨折は18歳くらいから) 骨の柔らかい小児での骨折は稀⇒外傷性を疑う
蘇生術による変化③肺水腫 輸液全開+胸骨圧迫+用手換気 でできる。必ずしも死亡直前の心イベントを意味しない。
体表では、死後30分~2時間程度で出現(死斑)。CTでは、一番見やすい肺でも5~6時間はかかる印象。 頭部、心血管内(血球成分が沈殿し高吸収になる)、肺でみられる。 *低体温死では、肺野の透過性が亢進し、血液就下による高吸収が見えないことがある 死後変化①血液就下
生前と比べて大動脈径が縮小、血管壁の肥厚・高吸収化。 脳虚血:白質・灰白質のなどのコントラストが不明瞭、脳溝が不明瞭。 死後変化②CTだけで見られるもの 生体 死体
間違えやすいCT所見上行大動脈解離と大動脈周囲浮腫 (左)上行大動脈解離。(右)大動脈周囲の浮腫(死後変化)
造影しないと大動脈解離や大動脈瘤破裂がわかりにくい… 上行大動脈解離の例
←大動脈瘤破裂(上行) ←大動脈瘤破裂(胸部) 破裂孔が内側にあり、対側の胸腔に穿破した例 破裂した大動脈瘤は虚脱する。大動脈の石灰化が軽度である場合、通常の縦隔条件では血管壁が見づらい時も。階調調整で脳条件に近付けると、見やすくなることがある
今だから注意したい肺野所見 ←左:蘇生行為による肺水腫 右:肺野の血液就下 ←COVID-19によるウイルス性肺炎 (Eur Radiol. 2020 Mar 19. doi: 10.1007/s00330-020-06801-0. )
いつでも気を付けなければならない肺の空洞性病変 ☝死後CTで空洞性病変を認め、結核の可能性があったため、N95マスク着用して解剖。肺をホルマリンで潅流固定後に切り出し。 (結果は肺アスペルギルス症) 結核(空気感染)、COVID-19(エアロゾル、飛沫感染)を疑う所見があったら、接触者へのケアを忘れずに!(死体からでも感染する可能性があります)
肺動脈血栓塞栓症は単純CTでわかるか? ←Ao径<PA径 ←同一画像のBrain条件 PA内に血栓が見える…? 実際の解剖写真。 肺動脈内に血栓が充満→ いずれも感度低く、CTでの診断に期待はしない方が良い
臨床ではあまり気にしないけど法医が気にする所見① 消化管内の高吸収 →量が多ければ薬物過内服内を疑う (剤形が判別できる画像も) (症例はバルプロ酸ナトリウム) 高吸収を呈する消化管内容物の鑑別としては、 餅、麺類、土砂(溺水など)、胃石などがあります
臨床ではあまり気にしないけど法医が気にする所見② 副鼻腔内の液面形成+肺野の水腫像→溺水 (症例では左肺894.0g、右肺1099.2g)
死後CTの話をすると必ず出てくるお金の議論・・・ 現状、「死因究明」は保険診療適応外=死後CTは請求できない でも撮影すれば必ずCTの管球を消耗する 多くの医療機関が 「心肺蘇生中の原因検索の一環」として請求 研究費として病院から持ち出し コストに応じた恩恵を受けられる、として黙認する 警察に請求できるように契約を結ぶ 現在、警察は届け出られた異状死体の死因究明のため、解剖予算とは別に死後CT予算が組まれています。「警察の捜査のため」と依頼を受けて撮影すれば、警察に費用を請求できます。(相場:3万円/件) *搬送適応外の死体のCTを依頼される可能性もありますが、そこは契約の仕方次第です 対策
まとめ 死体検案は死亡時刻の推定と死因の考察。 死因は、臨床と同様のプロセス(病歴、身体所見、検査所見)で考察 死後CTでの死因判明率は3割前後。限界を知った上で、正しく運用すること。 それでも死後CTを撮った方がいい理由 ご遺族のグリーフケアの一助となる 蘇生治療に携わった医療スタッフのフィードバック、メンタルケアの一助となる 救急隊・医療スタッフ・葬儀関係者・警察等の感染症予防の一助となる 次回、「いまさら聞けない死亡診断書の書き方」 近日アップロード予定!