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Mpox (サル痘) のまとめ (2023.04.19更新) L1.png

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投稿者

長谷川耕平

1/33

テキスト全文

  • #1.

    Updated 2023.04.19 Mpox 堺市⽴総合医療センター 感染症内科 ⻑⾕川 耕平

  • #2.

    Mpox (サル痘) とは • Mpoxは, Orthopoxvirus属のサル痘ウイ ルス感染による急性発疹性疾患である。 • 感染症法では4類感染症に位置付けられて いる。 • 主にアフリカ中央部から⻄部にかけて発 ⽣しており, ⾃然宿主はアフリカに⽣息 するげっ⻭類が疑われているが, 現時点 では不明 国⽴感染症研究所 (updated May 20, 2022) https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/408-monkeypox-intro.html Mandell, Douglas, and Bennett's Principles and Practice of Infectious Diseases, 9th, Chap 132

  • #3.

    症状 • 潜伏期間は通常7⽇以内 (1〜21⽇) • 古典的には発熱(62%), 頭痛(21%), 筋⾁痛 (31%), リンパ節腫脹 (56%) などが1〜5⽇続き, その後発疹(95%)が出現するが, ⽪疹から始まる こともある • 発疹は有痛性で, 典型的には顔⾯から始まり, 体幹 部へと広がるが, 曝露部位による。 • 初期は平坦だが, ⽔疱, 膿疱化し痂⽪化した後, 発 症から2〜4週間で治癒。発熱は中央値8⽇間。 • ⼝腔, 陰部粘膜, 結膜や⾓膜にも発疹が⽣じること もあり, ⽔痘や⿇疹, 梅毒などと鑑別が必要 WHO. WHO factsheet on monkeypox (updated April 18, 2023) https://www.who.int/en/news-room/fact-sheets/detail/monkeypox NIID (updated May 20, 2022) https://www.niid.go.jp/niid/ja/ kansennohanashi/408-monkeypox-intro.html N Engl J Med. 2022;387(8):679-691. DOI: 10.1056/NEJMoa2207323

  • #4.

    経過 N Engl J Med. 2022;10.1056/NEJMoa2207323. DOI: 10.1056/NEJMoa2207323

  • #5.

    天然痘との違い • ヒトのMpoxの病因は, 天然痘のそれと類似している。 • 潜伏期間が約12⽇間の急性発熱性発疹。 • 潜伏期間中, ウイルスは最初に内臓に分布し, その後⽪膚に分布する。 • 主な違いは, リンパ節腫脹の程度が⼤きく, ヒトの症例間伝播能が低いこ と (ワクチン未接種者における家庭内⼆次感染率は8%程度 [天然痘は3080%]) Mandell, Douglas, and Bennett's Principles and Practice of Infectious Diseases, 9th, Chap 132

  • #6.

    Mpoxと鑑別が必要な発疹性疾患 天然痘 7-17⽇ 2-4⽇ ⽔痘 12-14⽇ 0-2⽇ 中 中 中 中 重 中 重 無 軽〜無 軽 軽 無 表層〜深 (4-6mm) 深 (4-6mm) 表層 (2-4mm) 遠⼼性(主に) 遠⼼性 中⼼性 個々の⽪疹は同じフェーズ 個々の⽪疹は同じフェーズ 様々なフェーズの⽪疹が混在 14-21⽇後 14-21⽇後 6-14⽇後 コモン コモン 稀 Clin Infect Dis. 2005;41(12):1765-1771. 厚労省通達 (updated February 9, 2023) https://www.kansensho.or.jp/uploads/ les/news/sarutou_230216.pdf fi 潜伏期間 前駆症状期間 症状 発熱 倦怠感 頭痛 リンパ節腫脹 部位 深さ 分布 外観 落屑 ⼿掌・⾜底 Mpox 5-21⽇ 1-4⽇

  • #7.

    感染様式 • ヒト-ヒト伝播は, Mpox患者の発疹や痂⽪に直接接触するほか, 唾液, 上気道分泌物 (⿐⽔, 粘液), または汚染物質 (⾐服・リネンなど) との密な接触によって起こる。次のようなclose contactに よって発⽣する可能性がある - Oral/anal/vaginal sex, または性器・肛⾨との接触 - ハグ, マッサージ, キス - ⻑時間の対⾯接触 (⾶沫感染) • 胎盤を介した垂直感染 (先天性サル痘), 出⽣中および出⽣後の濃厚接触による感染も起こり得る • 全ての⽪疹が痂⽪となり, 全ての痂⽪が剥がれ落ちて無くなるまで (概ね21⽇間程度) は周囲のヒ トや動物に感染させる可能性がある fi WHO. WHO factsheet on monkeypox (updated April 18, 2023) https://www.who.int/en/news-room/fact-sheets/detail/monkeypox CDC. Monkeypox Transmission (updated February 2, 2023) https://www.cdc.gov/poxvirus/monkeypox/transmission.html 厚労省通達 (updated February 9, 2023) https://www.kansensho.or.jp/uploads/ les/news/sarutou_230216.pdf

  • #8.

    針刺し事故によるMpox感染 A) Day 1; B) day 6; C) day 8; d) day 18; E) day 22; F) day 25; G) day 34; H) day 40. Emerg Infect Dis. 2023;29(5):10.3201/eid2905.230028. DOI: 10.3201/eid2905.230028

  • #9.

    接触別感染リスク • No: 軽い会話。Mpoxの⼈のそばを歩いたり, ドアノブのようなものに触れること • Yes: - ⽪疹病変と⽪膚との直接接触。性的/親密な接触。感染者とキスをする。 - 同じ家に住み, ベッドを共有する。タオルや洗われていない服の共有。 - 対⾯での呼吸器⾶沫 (主にMpoxの⼈と⼀緒に暮らしたり, Mpoxの⼈の世話をしたりするとき に起こる)。 • Maybe/Still learning: 精液または腟液との接触。 • Unknown/Still learning: Mpoxに感染していても症状がない⼈ (症状のある⼈は感染と関連して いる可能性が⾼いと考えられているが, 中には⾮常に軽症で感染していることに気づかない⼈も いるかもしれない)と接触する。 CDC Monkeypox Response: Transmission (updated June 9, 2022) https://www.cdc.gov/media/releases/2022/0509-monkeypox-transmission.html

  • #10.

    診断 • ⽪膚病変 (⼩⽔疱および膿疱から採取した表⽪または体液, 乾燥痂⽪) のPCRが, 感度・特 異度ともに⾼く有⽤である • ⾎液のPCRは, ウイルス⾎症の持続期間が短いためルーチンに採取すべきではない。 • オルソポックスウイルスは⾎清学的に交差するため, 抗原および抗体の検出法ではサル痘 の特異的な診断には⾄らない。 • 最近または遠隔地でのワクチン接種により, 偽陽性結果が⽣じる可能性がある (⽇本では 1976年以降ワクチン接種はされていない)。 • 性的接触による感染の場合, ヘルペスなど他の性感染症を合併する可能性がある WHO. WHO factsheet on monkeypox (updated April 18, 2023) https://www.who.int/en/news-room/fact-sheets/detail/monkeypox モダンメディア 2006;52(2)50-3 MMWR Morb Mortal Wkly Rep. 2022;71(36):1141-1147.

  • #11.

    検体ごとのPCR陽性率 Lancet Infect Dis. 2023;23(1):74-80.

  • #12.

    治療 • 疼痛管理などの⽀持療法と, Mpoxウイルスに対して活性のある抗ウイル ス薬の使⽤を⾏う • Tecovirimatが動物実験でオルソポックスウイルスに有効で, outbreak時 に使⽤されin vivoでも有効性が確認されている (ランダム化⽐較試験で確 認されたものではない)。また, ⼤きな副作⽤もない。 • Tecovirimat耐性の報告もあり, 14⽇間経過後も治療反応性が得られなけ れば代替薬 (Cidofovir/Brincidofovir) を検討する • ⽇本では臨床試験による提供があるが, ⼊院が必要 fi Lancet. 2023;401(10370):60-74. 厚労省通達 (updated February 9, 2023) https://www.kansensho.or.jp/uploads/ les/news/sarutou_230216.pdf

  • #13.

    致死率 • 古典的致命率は0〜11%1) • ⼩児や妊婦, 免疫不全者で重症となる場合がある2) • 2022年1⽉1⽇以降, 常在国外を含め死亡例が36例報告されている2) 1. NIID (updated May 20, 2022) https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/408-monkeypox-intro.html 2. NIID (updated November 9, 2022) https://www.niid.go.jp/niid/ja/monkeypox-m/2596-cepr/11547-monkeypox-ra-1104.html

  • #14.

    ⾼リスクに対する予防接種 • ⾼リスク群に対しワクチン接種を⾏うことが推奨されている1-2) - MSM, ゲイ, バイセクシャル, および過去6ヶ⽉間にSTDに感染した, または複数のパートナー を持つトランスジェンダーまたはノンバイナリー 過去6か⽉以内にcommercial sex venueでの性交渉, またはMpox感染が発⽣している地域 における⼤規模イベントに関連する性交渉があった⼈ 上記のリスクを持つ⼈のsexual パートナー HIV感染, または他の要因による免疫抑制状態の⼈で, 最近Mpoxに感染したことがあるか, その可能性がある⼈ 特定のHCW (別記載) • JYNNEOS®を4週間隔で2回接種した場合, 感染に対するVE 79% (95% CI: 24%-94%)3) • 1回接種ではbreakthroughしうり, high risk behaviorの14⽇前には2回接種を完了するべき4) 1. 2. 3. 4. CDC, Vaccination Basics for Healthcare Professionals (updated March 14, 2023) https://www.cdc.gov/poxvirus/mpox/clinicians/vaccines/vaccine-basics-healthcare.html MMWR Morb Mortal Wkly Rep. 2022;71(22):734-742. WHO, Vaccines and immunization for monkeypox: Interim guidance (updated November 16, 2022) https://www.who.int/publications/i/item/WHO-MPX-Immunization Emerg Infect Dis. 2023;29(5):10.3201/eid2905.221797. DOI: 10.3201/eid2905.221797

  • #15.

    曝露後予防 • JYNNEOS®が推奨されており, 天然痘⼜はMpox感染のリスクが⾼い18歳以上の天然痘 及びMpox予防を⽬的として, 2022年8⽉FDAに承認された • 曝露後のワクチン接種は早ければ早いほどよく, 4⽇以内に投与することが推奨される • 曝露4-14⽇にワクチンを接種した場合, 予防効果は保証されないが症状軽減などの効果 は期待される • ⽇本ではJYNNEOS®を⽤いることはできず, LC16「KMB」を臨床研究に参加する形で接 種することができる CDC. Monkeypox and Smallpox Vaccine Guidance (update March 22, 2023) https://www.cdc.gov/poxvirus/monkeypox/clinicians/smallpox-vaccine.html WHO, Vaccines and immunization for monkeypox: Interim guidance (updated November 16, 2022) https://www.who.int/publications/i/item/WHO-MPX-Immunization 国⽴国際医療研究センター, 診療研究の説明⽂書 (published June 13, 2022) https://www.pref.ishikawa.lg.jp/kansen/documents/sankou2.pdf

  • #16.

    天然痘ワクチン 推奨 ワクチン接種が推奨されるのは誰か? 誰がワクチンを提供されるべきか? 特定の間隔で追加接種が推奨される集団 ACAM2000 JYNNEOS オルソポックスウイルスへの職業曝露リスクがある場合* *オルソポックスウイルスの診断検査を実施する検査室職員, 臨床検査室職員, 指定された対応チームメンバー, ACAM 2000 (⽣ワクチン) を投与する医療従事者, またはオルソポックスウイルスに感染した患者のケアを⾏う医療従事者 ACAM 2000を投与する者, または複製可能なウイルスに感染した患者のケア を⾏う者 オルソポックスウイルスへの職業性暴露のリスクが継続している⼈** **実施された職業作業による継続的なリスク;対応要因は, オルソポックスウイルス感染の”持続的リスク”にあるとは みなされない。 追加接種の頻度 毒性の強いオルソポックスウイルス(例, Variola virusor Monkeypox virus)を扱う⼈ 毒性の低いオルソポックスウイルス(例, Vaccinia virusor Cowpox virus)で働く⼈ 3年ごと 2年ごと 少なくとも10年ごと MMWR Morb Mortal Wkly Rep. 2022;71(22):734-742.

  • #17.

    天然痘ワクチン 特徴 ACAM2000 JYNNEOS® (MVA-BN) 乾燥細胞培養痘そうワクチン LC16 [KMB] ワクチンウイルス 複製能を有するワクチンウイル 複製⽋損改変vaccinia Ankara ス (=⽣ワクチン) (=⽣ワクチン) LC16m8株を増殖・希釈し凍結乾 燥 (=⽣ワクチン) ワクチン接種後の”病変” Yes No Yes 不注意な接種および⾃家 接種のリスク Yes No Yes 重篤な有害事象のリスク Yes 臨床試験期間内では報告なし phase1/2では無し ⼼有害事象のリスク 初回接種後, ⼼筋⼼膜炎 5.7/1,000 臨床試験データは限られている が, 単⼀の試験群から抽出したデ ータに有意事象なし データは限られる 有効性評価 免疫反応およびDryvaxとの病 変率の⽐較 ACAM 2000と動物試験との免疫 反応の⽐較 動物での薬効試験成績をDryvax と⽐較 投与⽅法 複数回穿刺 (擦過) 法による分 岐針を⽤いた経⽪的,単回投与 28⽇間隔で2回⽪下投与 多刺法により⽪膚に接種, 初種痘 で5回, その他10回 MMWR Morb Mortal Wkly Rep. 2022;71(22):734-742. Vaccine. 2006;24(47-48):7009-7022. J Infect Dis. 2011;204(9):1395-1402. KMバイオロジクス (September 15, 2022) https://www.mhlw.go.jp/content/10906000/000990069.pdf

  • #18.

    fi 天然痘ワクチン 臨床的特徴 ACAM2000の禁忌 JYNNEOSの禁忌 初回接種 再接種 条件付きの家庭内接触* アトピー性⽪膚炎の既往または存在 + + + ̶ その他の活動性の剥脱性⽪膚疾患 + + + ̶ 免疫不全 + + + ̶ 妊娠 + + + ̶ 1歳未満 + + + ̶ 授乳中 + + ̶ ̶ ワクチンに含まれる成分へのアレルギー + + ̶ + 既知の基礎⼼疾患(例:冠動脈疾患または⼼筋症) + + ̶ ̶ 既知の主要な⼼リスク因⼦が3つ以上 HT, DM, DLp, heart disease at age ≤50 years in a rst-degree relative, and smoking + ̶ ̶ ̶ * 家庭内接触者:被接種者と⻑期間親密に接触した⼈ (性的接触など) や, 接種部位や汚染されている可能性のあるも の 包帯や⾐類など )と直接接触するかもしれない⼈が含まれる MMWR Morb Mortal Wkly Rep. 2022;71(22):734-742.

  • #19.

    感染対策 -病室• Mpox疑い/確定患者は個室隔離を⾏い, 専⽤の浴室を使⽤する • 患者の病室外への移動は, 医学的に必要な場合のみに限定する。 • 患者を病室の外に搬送する場合は, 適切な感染管理 (例. 医療⽤マスク)を⾏い, 露出した ⽪膚病変をシートまたはガウンで覆うべきである • 挿抜管や⼝腔分泌物を拡散させる可能性のある処置は空気感染隔離室で⾏うことをCDC は推奨 • ⾶沫感染は稀だが, ⽔痘・⿇疹が鑑別に⼊ることから感染研/厚労省は空気感染対策を推 奨している fi CDC (updated October 31, 2022). https://www.cdc.gov/poxvirus/monkeypox/clinicians/infection-control-healthcare.html NIID (updated May 20, 2022) https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/408-monkeypox-intro.html 厚労省通達 (updated February 9, 2023) https://www.kansensho.or.jp/uploads/ les/news/sarutou_230216.pdf

  • #20.

    感染対策 -PPE• ⾶沫・接触 (+空気感染) 予防策を講じる (患者の理念を扱う者や清掃担当 者も同様) - ガウン - ⼿袋 - ⽬の防護 - N95マスク (必要に応じて) CDC (updated October 31, 2022) https://www.cdc.gov/poxvirus/monkeypox/clinicians/infection-control-healthcare.html

  • #21.

    感染対策 -廃棄物処理• 汚れた洗濯物 (寝具, タオル, 個⼈の⾐服) は, 洗濯物に存在する可能性の ある病変物質との接触を避け, 標準的な⽅法に従って処理を⾏う。 - WHO, USCDC, UKHSAでは温⽔による洗浄を推奨している • 乾燥した埃を払う, 掃く, 掃除機をかけるなどの⾏為は避け, 湿式洗浄が望 ましい。 • ⾷器管理も, ⽇常的な⼿順に従って⾏う CDC (updated October 31, 2022) https://www.cdc.gov/poxvirus/monkeypox/clinicians/infection-control-healthcare.html NIID (updated July 8, 2022) https://www.niid.go.jp/niid/ja/monkeypox-m/2596-cepr/11196-monkeypox-01.html

  • #22.

    感染対策 -⾃宅療養• 患者は同居⼈と肌や顔を接しないようにする • リネン類の共有を避け, 患者が使⽤したリネン類は, 病変や体液からの感染性粒⼦ が⾶散する可能性があるため, 静かにビニール袋等に⼊れて運搬し、洗濯機に⼊れ る。洗濯後は再利⽤可能。 • ベッド, トイレ, 患者が接触した場所 (家具や床など) は, 使い捨て⼿袋を着⽤し清 掃, その後消毒薬で清拭する。その後必ず⼿指衛星を⾏う。 • 患者が使⽤した⾷器や調理器具は, ⽯鹸や洗剤等で洗った後に再利⽤可能である。 • 常に⼗分な換気を⾏うよう配慮する。 NIID (updated July 8, 2022) https://www.niid.go.jp/niid/ja/monkeypox-m/2596-cepr/11196-monkeypox-01.html

  • #23.

    感染対策 -期間- • 医療施設における隔離予防措置の中⽌について, 地⽅または州の保健所と 協議して⾏う必要がある。 • 隔離予防策は, すべての病変が痂⽪化し, それらの痂⽪が分離し, その下に 健康な⽪膚の新鮮な層が形成されるまで⾏う。 CDC (updated October 31, 2022) https://www.cdc.gov/poxvirus/monkeypox/clinicians/infection-control-healthcare.html

  • #24.

    国外の状況 • 2022年5⽉7⽇, 英国は常在国であるナイジェリア渡航後のMpox患者の発⽣を報告。 • 5⽉13⽇には, 5⽉7⽇の症例と関係がない, 渡航歴がない, また最近渡航歴がある⼈との接触 もない2例の家族症例 • 5⽉15⽇, 同じく渡航歴がなく, 先に報告された例との疫学的関連性がない4例を報告。 • 7⽉23⽇, WHOのテドロス事務局⻑が”国際的に懸念される公衆衛⽣上の緊急事態 (PHEIC)” に相当すると宣⾔ • 11⽉28⽇, WHOが「サル痘」を「M痘 (Mpox)」へ名称変更 (厚労省通達はサル痘のまま) • 2023年2⽉16⽇, PHEIC維持を決定 UKHSA. Monkeypox cases con rmed in England (published May 14, 2022) https://www.gov.uk/government/news/monkeypox-cases-con rmed-in-england-latest-updates ECDC. Risk Assessment: Monkeypox multi-country outbreak. (published May 26, 2022) https://www.ecdc.europa.eu/en/publications-data/risk-assessment-monkeypox-multi-country-outbreak. fi fi 国⽴感染症研究所. アフリカ⼤陸以外の複数国で報告されているサル痘について(第1報) (updated May 24, 2022) https://www.niid.go.jp/niid/ja/from-lab/2521-cepr/11166-monkeypox-ra-0524.html

  • #25.

    CDC Monkeypox Outbreak Global Map - updated April 13, 2023 https://www.cdc.gov/poxvirus/monkeypox/response/2022/world-map.html

  • #26.

    国内の状況 • • 2022年7⽉25⽇国内1症例⽬が報告, 30歳代男性, 欧州渡航歴があり, 現地でMpox患者と の接触歴あり。 2023年以降, 患者の発⽣が増加しており, 2023年4⽉13⽇時点で109例の患者等が報告 されている。 厚⽣労働省報道発表資料 (published July 25, 2022) https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_27036.html 厚⽣労働省 サル痘について (accessed April 19, 2023)https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou19/monkeypox_00001.html

  • #27.

    本邦における疑似症例の定義 原則, 下記の①〜②全てを満たす者とするが, 臨床的にサル痘を疑うに⾜るとして主治医が判断をした場合につ いては, この限りではない。 ① 少なくとも次の1つ以上の症候を呈している。 • 説明困難*な急性発疹 (⽪疹⼜は粘膜疹), 発熱 (≧38.5℃), 頭痛, 背中の痛み, 重度の脱⼒感, リンパ節 腫脹, 筋⾁痛, 倦怠感, 咽頭痛, 肛⾨直腸痛, その他の⽪膚粘膜病変 • *⽔痘, ⾵しん, 梅毒, 伝染性軟属腫, アレルギー反応, その他の急性発 疹及び⽪膚病変を呈する疾患に よるものとして説明が困難であることをいう。ただし, これらの疾患が検査により否定されていること は必須ではない。 ② 次のいずれかに該当する。 • 発症 21 ⽇以内に複数または不特定の者と性的接触があった。 • 発症 21 ⽇以内にサル痘の患者、無症状病原体保有者⼜は①を満たす者との接触(表 1レベル中以 上)があった。 • 臨床的にサル痘を疑うに⾜るとして主治医が判断をした。 fi 厚労省通達 (updated February 9, 2023) https://www.kansensho.or.jp/uploads/ les/news/sarutou_230216.pdf

  • #28.

    本邦における接触者の定義 • サル痘の患者 (確定例) ⼜は疑い例と, 表に⽰す接触状況があった者 サル痘患者等との接触の状況 適切なPPE の着⽤や感 染予防策 創傷などを含 む粘膜との接 触 寝⾷をともに する家族や同 居⼈ なし ⾼1) ⾼2) 中1) 中 低 あり - - - 低 低 正常な⽪膚の 1m以内の接触 1mを超える接 みとの接触 歴3) 触歴 1) サル痘常在国でのげっ⻭類との接触を含む 2) 寝具やタオルの共有や, 清掃・洗濯の際の, 確定例の体液が付着した寝具・洋服等との接触を含む 3) 接触時間や会話の有無等周辺の環境や接触の状況等個々の状況から患者の感染性を総合的に判断すること fi 厚労省通達 (updated February 9, 2023) https://www.kansensho.or.jp/uploads/ les/news/sarutou_230216.pdf

  • #29.

    感染症法に基づく届出@⽇本 検査⽅法 検査材料 分離・同定による病原体検出 病原体の特異⾼原の検出 ⽪膚⼜は粘膜病変, ⽔疱内容液, ⿐咽頭拭い液, 咽頭 拭い液, 肛⾨直腸拭い液, その他粘膜拭い液, ⾎液, 尿, その他検査⽅法に適する材料 PCR法による病原体の遺伝⼦の検出 厚⽣労働省, 感染症法に基づく医師の届出のお願い, サル痘 (accessed April 19, 2023) https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou11/01-04-13.html

  • #30.

    医療機関における対応について • 疑い例の症例定義に該当する者を診察した場合⼜は⺠間検査会社における研究 ⽤試薬を⽤いた検査により陽性と判明した場合には, 最寄りの保健所に連絡し て, 検体採取や疑い例の者への聴取, ⾏政検査による確定検査1等その後の対応 について相談すること • 特に, 渡航歴, 接触歴 (性的接触歴を含む), 天然痘ワクチン接種歴等の詳細を 可能な限り聴取すること。 • 感染症法第15条による保健所の積極的疫学調査に協⼒すること。 • 疑い例の検体を保存するとともに, 保健所の求めに応じて, 検体を提出する fi 厚労省通達 (updated February 9, 2023) https://www.kansensho.or.jp/uploads/ les/news/sarutou_230216.pdf

Mpox (サル痘) のまとめ (2023.04.19更新)

  • 感染症科

  • サル痘
  • M痘
  • Mpox

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投稿者プロフィール
長谷川耕平

堺市立総合医療センター

概要

2023.04.19までのCDCやWHO, 厚労省通達を引用しつつ, Mpox (サル痘) に関して病院職員向けの資料を作成しました。

症状や, ワクチン接種, 治療などに触れています。

本スライドの対象者

研修医/専攻医/専門医

テキスト全文

  • #1.

    Updated 2023.04.19 Mpox 堺市⽴総合医療センター 感染症内科 ⻑⾕川 耕平

  • #2.

    Mpox (サル痘) とは • Mpoxは, Orthopoxvirus属のサル痘ウイ ルス感染による急性発疹性疾患である。 • 感染症法では4類感染症に位置付けられて いる。 • 主にアフリカ中央部から⻄部にかけて発 ⽣しており, ⾃然宿主はアフリカに⽣息 するげっ⻭類が疑われているが, 現時点 では不明 国⽴感染症研究所 (updated May 20, 2022) https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/408-monkeypox-intro.html Mandell, Douglas, and Bennett's Principles and Practice of Infectious Diseases, 9th, Chap 132

  • #3.

    症状 • 潜伏期間は通常7⽇以内 (1〜21⽇) • 古典的には発熱(62%), 頭痛(21%), 筋⾁痛 (31%), リンパ節腫脹 (56%) などが1〜5⽇続き, その後発疹(95%)が出現するが, ⽪疹から始まる こともある • 発疹は有痛性で, 典型的には顔⾯から始まり, 体幹 部へと広がるが, 曝露部位による。 • 初期は平坦だが, ⽔疱, 膿疱化し痂⽪化した後, 発 症から2〜4週間で治癒。発熱は中央値8⽇間。 • ⼝腔, 陰部粘膜, 結膜や⾓膜にも発疹が⽣じること もあり, ⽔痘や⿇疹, 梅毒などと鑑別が必要 WHO. WHO factsheet on monkeypox (updated April 18, 2023) https://www.who.int/en/news-room/fact-sheets/detail/monkeypox NIID (updated May 20, 2022) https://www.niid.go.jp/niid/ja/ kansennohanashi/408-monkeypox-intro.html N Engl J Med. 2022;387(8):679-691. DOI: 10.1056/NEJMoa2207323

  • #4.

    経過 N Engl J Med. 2022;10.1056/NEJMoa2207323. DOI: 10.1056/NEJMoa2207323

  • #5.

    天然痘との違い • ヒトのMpoxの病因は, 天然痘のそれと類似している。 • 潜伏期間が約12⽇間の急性発熱性発疹。 • 潜伏期間中, ウイルスは最初に内臓に分布し, その後⽪膚に分布する。 • 主な違いは, リンパ節腫脹の程度が⼤きく, ヒトの症例間伝播能が低いこ と (ワクチン未接種者における家庭内⼆次感染率は8%程度 [天然痘は3080%]) Mandell, Douglas, and Bennett's Principles and Practice of Infectious Diseases, 9th, Chap 132

  • #6.

    Mpoxと鑑別が必要な発疹性疾患 天然痘 7-17⽇ 2-4⽇ ⽔痘 12-14⽇ 0-2⽇ 中 中 中 中 重 中 重 無 軽〜無 軽 軽 無 表層〜深 (4-6mm) 深 (4-6mm) 表層 (2-4mm) 遠⼼性(主に) 遠⼼性 中⼼性 個々の⽪疹は同じフェーズ 個々の⽪疹は同じフェーズ 様々なフェーズの⽪疹が混在 14-21⽇後 14-21⽇後 6-14⽇後 コモン コモン 稀 Clin Infect Dis. 2005;41(12):1765-1771. 厚労省通達 (updated February 9, 2023) https://www.kansensho.or.jp/uploads/ les/news/sarutou_230216.pdf fi 潜伏期間 前駆症状期間 症状 発熱 倦怠感 頭痛 リンパ節腫脹 部位 深さ 分布 外観 落屑 ⼿掌・⾜底 Mpox 5-21⽇ 1-4⽇

  • #7.

    感染様式 • ヒト-ヒト伝播は, Mpox患者の発疹や痂⽪に直接接触するほか, 唾液, 上気道分泌物 (⿐⽔, 粘液), または汚染物質 (⾐服・リネンなど) との密な接触によって起こる。次のようなclose contactに よって発⽣する可能性がある - Oral/anal/vaginal sex, または性器・肛⾨との接触 - ハグ, マッサージ, キス - ⻑時間の対⾯接触 (⾶沫感染) • 胎盤を介した垂直感染 (先天性サル痘), 出⽣中および出⽣後の濃厚接触による感染も起こり得る • 全ての⽪疹が痂⽪となり, 全ての痂⽪が剥がれ落ちて無くなるまで (概ね21⽇間程度) は周囲のヒ トや動物に感染させる可能性がある fi WHO. WHO factsheet on monkeypox (updated April 18, 2023) https://www.who.int/en/news-room/fact-sheets/detail/monkeypox CDC. Monkeypox Transmission (updated February 2, 2023) https://www.cdc.gov/poxvirus/monkeypox/transmission.html 厚労省通達 (updated February 9, 2023) https://www.kansensho.or.jp/uploads/ les/news/sarutou_230216.pdf

  • #8.

    針刺し事故によるMpox感染 A) Day 1; B) day 6; C) day 8; d) day 18; E) day 22; F) day 25; G) day 34; H) day 40. Emerg Infect Dis. 2023;29(5):10.3201/eid2905.230028. DOI: 10.3201/eid2905.230028

  • #9.

    接触別感染リスク • No: 軽い会話。Mpoxの⼈のそばを歩いたり, ドアノブのようなものに触れること • Yes: - ⽪疹病変と⽪膚との直接接触。性的/親密な接触。感染者とキスをする。 - 同じ家に住み, ベッドを共有する。タオルや洗われていない服の共有。 - 対⾯での呼吸器⾶沫 (主にMpoxの⼈と⼀緒に暮らしたり, Mpoxの⼈の世話をしたりするとき に起こる)。 • Maybe/Still learning: 精液または腟液との接触。 • Unknown/Still learning: Mpoxに感染していても症状がない⼈ (症状のある⼈は感染と関連して いる可能性が⾼いと考えられているが, 中には⾮常に軽症で感染していることに気づかない⼈も いるかもしれない)と接触する。 CDC Monkeypox Response: Transmission (updated June 9, 2022) https://www.cdc.gov/media/releases/2022/0509-monkeypox-transmission.html

  • #10.

    診断 • ⽪膚病変 (⼩⽔疱および膿疱から採取した表⽪または体液, 乾燥痂⽪) のPCRが, 感度・特 異度ともに⾼く有⽤である • ⾎液のPCRは, ウイルス⾎症の持続期間が短いためルーチンに採取すべきではない。 • オルソポックスウイルスは⾎清学的に交差するため, 抗原および抗体の検出法ではサル痘 の特異的な診断には⾄らない。 • 最近または遠隔地でのワクチン接種により, 偽陽性結果が⽣じる可能性がある (⽇本では 1976年以降ワクチン接種はされていない)。 • 性的接触による感染の場合, ヘルペスなど他の性感染症を合併する可能性がある WHO. WHO factsheet on monkeypox (updated April 18, 2023) https://www.who.int/en/news-room/fact-sheets/detail/monkeypox モダンメディア 2006;52(2)50-3 MMWR Morb Mortal Wkly Rep. 2022;71(36):1141-1147.

  • #11.

    検体ごとのPCR陽性率 Lancet Infect Dis. 2023;23(1):74-80.

  • #12.

    治療 • 疼痛管理などの⽀持療法と, Mpoxウイルスに対して活性のある抗ウイル ス薬の使⽤を⾏う • Tecovirimatが動物実験でオルソポックスウイルスに有効で, outbreak時 に使⽤されin vivoでも有効性が確認されている (ランダム化⽐較試験で確 認されたものではない)。また, ⼤きな副作⽤もない。 • Tecovirimat耐性の報告もあり, 14⽇間経過後も治療反応性が得られなけ れば代替薬 (Cidofovir/Brincidofovir) を検討する • ⽇本では臨床試験による提供があるが, ⼊院が必要 fi Lancet. 2023;401(10370):60-74. 厚労省通達 (updated February 9, 2023) https://www.kansensho.or.jp/uploads/ les/news/sarutou_230216.pdf

  • #13.

    致死率 • 古典的致命率は0〜11%1) • ⼩児や妊婦, 免疫不全者で重症となる場合がある2) • 2022年1⽉1⽇以降, 常在国外を含め死亡例が36例報告されている2) 1. NIID (updated May 20, 2022) https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/408-monkeypox-intro.html 2. NIID (updated November 9, 2022) https://www.niid.go.jp/niid/ja/monkeypox-m/2596-cepr/11547-monkeypox-ra-1104.html

  • #14.

    ⾼リスクに対する予防接種 • ⾼リスク群に対しワクチン接種を⾏うことが推奨されている1-2) - MSM, ゲイ, バイセクシャル, および過去6ヶ⽉間にSTDに感染した, または複数のパートナー を持つトランスジェンダーまたはノンバイナリー 過去6か⽉以内にcommercial sex venueでの性交渉, またはMpox感染が発⽣している地域 における⼤規模イベントに関連する性交渉があった⼈ 上記のリスクを持つ⼈のsexual パートナー HIV感染, または他の要因による免疫抑制状態の⼈で, 最近Mpoxに感染したことがあるか, その可能性がある⼈ 特定のHCW (別記載) • JYNNEOS®を4週間隔で2回接種した場合, 感染に対するVE 79% (95% CI: 24%-94%)3) • 1回接種ではbreakthroughしうり, high risk behaviorの14⽇前には2回接種を完了するべき4) 1. 2. 3. 4. CDC, Vaccination Basics for Healthcare Professionals (updated March 14, 2023) https://www.cdc.gov/poxvirus/mpox/clinicians/vaccines/vaccine-basics-healthcare.html MMWR Morb Mortal Wkly Rep. 2022;71(22):734-742. WHO, Vaccines and immunization for monkeypox: Interim guidance (updated November 16, 2022) https://www.who.int/publications/i/item/WHO-MPX-Immunization Emerg Infect Dis. 2023;29(5):10.3201/eid2905.221797. DOI: 10.3201/eid2905.221797

  • #15.

    曝露後予防 • JYNNEOS®が推奨されており, 天然痘⼜はMpox感染のリスクが⾼い18歳以上の天然痘 及びMpox予防を⽬的として, 2022年8⽉FDAに承認された • 曝露後のワクチン接種は早ければ早いほどよく, 4⽇以内に投与することが推奨される • 曝露4-14⽇にワクチンを接種した場合, 予防効果は保証されないが症状軽減などの効果 は期待される • ⽇本ではJYNNEOS®を⽤いることはできず, LC16「KMB」を臨床研究に参加する形で接 種することができる CDC. Monkeypox and Smallpox Vaccine Guidance (update March 22, 2023) https://www.cdc.gov/poxvirus/monkeypox/clinicians/smallpox-vaccine.html WHO, Vaccines and immunization for monkeypox: Interim guidance (updated November 16, 2022) https://www.who.int/publications/i/item/WHO-MPX-Immunization 国⽴国際医療研究センター, 診療研究の説明⽂書 (published June 13, 2022) https://www.pref.ishikawa.lg.jp/kansen/documents/sankou2.pdf

  • #16.

    天然痘ワクチン 推奨 ワクチン接種が推奨されるのは誰か? 誰がワクチンを提供されるべきか? 特定の間隔で追加接種が推奨される集団 ACAM2000 JYNNEOS オルソポックスウイルスへの職業曝露リスクがある場合* *オルソポックスウイルスの診断検査を実施する検査室職員, 臨床検査室職員, 指定された対応チームメンバー, ACAM 2000 (⽣ワクチン) を投与する医療従事者, またはオルソポックスウイルスに感染した患者のケアを⾏う医療従事者 ACAM 2000を投与する者, または複製可能なウイルスに感染した患者のケア を⾏う者 オルソポックスウイルスへの職業性暴露のリスクが継続している⼈** **実施された職業作業による継続的なリスク;対応要因は, オルソポックスウイルス感染の”持続的リスク”にあるとは みなされない。 追加接種の頻度 毒性の強いオルソポックスウイルス(例, Variola virusor Monkeypox virus)を扱う⼈ 毒性の低いオルソポックスウイルス(例, Vaccinia virusor Cowpox virus)で働く⼈ 3年ごと 2年ごと 少なくとも10年ごと MMWR Morb Mortal Wkly Rep. 2022;71(22):734-742.

  • #17.

    天然痘ワクチン 特徴 ACAM2000 JYNNEOS® (MVA-BN) 乾燥細胞培養痘そうワクチン LC16 [KMB] ワクチンウイルス 複製能を有するワクチンウイル 複製⽋損改変vaccinia Ankara ス (=⽣ワクチン) (=⽣ワクチン) LC16m8株を増殖・希釈し凍結乾 燥 (=⽣ワクチン) ワクチン接種後の”病変” Yes No Yes 不注意な接種および⾃家 接種のリスク Yes No Yes 重篤な有害事象のリスク Yes 臨床試験期間内では報告なし phase1/2では無し ⼼有害事象のリスク 初回接種後, ⼼筋⼼膜炎 5.7/1,000 臨床試験データは限られている が, 単⼀の試験群から抽出したデ ータに有意事象なし データは限られる 有効性評価 免疫反応およびDryvaxとの病 変率の⽐較 ACAM 2000と動物試験との免疫 反応の⽐較 動物での薬効試験成績をDryvax と⽐較 投与⽅法 複数回穿刺 (擦過) 法による分 岐針を⽤いた経⽪的,単回投与 28⽇間隔で2回⽪下投与 多刺法により⽪膚に接種, 初種痘 で5回, その他10回 MMWR Morb Mortal Wkly Rep. 2022;71(22):734-742. Vaccine. 2006;24(47-48):7009-7022. J Infect Dis. 2011;204(9):1395-1402. KMバイオロジクス (September 15, 2022) https://www.mhlw.go.jp/content/10906000/000990069.pdf

  • #18.

    fi 天然痘ワクチン 臨床的特徴 ACAM2000の禁忌 JYNNEOSの禁忌 初回接種 再接種 条件付きの家庭内接触* アトピー性⽪膚炎の既往または存在 + + + ̶ その他の活動性の剥脱性⽪膚疾患 + + + ̶ 免疫不全 + + + ̶ 妊娠 + + + ̶ 1歳未満 + + + ̶ 授乳中 + + ̶ ̶ ワクチンに含まれる成分へのアレルギー + + ̶ + 既知の基礎⼼疾患(例:冠動脈疾患または⼼筋症) + + ̶ ̶ 既知の主要な⼼リスク因⼦が3つ以上 HT, DM, DLp, heart disease at age ≤50 years in a rst-degree relative, and smoking + ̶ ̶ ̶ * 家庭内接触者:被接種者と⻑期間親密に接触した⼈ (性的接触など) や, 接種部位や汚染されている可能性のあるも の 包帯や⾐類など )と直接接触するかもしれない⼈が含まれる MMWR Morb Mortal Wkly Rep. 2022;71(22):734-742.

  • #19.

    感染対策 -病室• Mpox疑い/確定患者は個室隔離を⾏い, 専⽤の浴室を使⽤する • 患者の病室外への移動は, 医学的に必要な場合のみに限定する。 • 患者を病室の外に搬送する場合は, 適切な感染管理 (例. 医療⽤マスク)を⾏い, 露出した ⽪膚病変をシートまたはガウンで覆うべきである • 挿抜管や⼝腔分泌物を拡散させる可能性のある処置は空気感染隔離室で⾏うことをCDC は推奨 • ⾶沫感染は稀だが, ⽔痘・⿇疹が鑑別に⼊ることから感染研/厚労省は空気感染対策を推 奨している fi CDC (updated October 31, 2022). https://www.cdc.gov/poxvirus/monkeypox/clinicians/infection-control-healthcare.html NIID (updated May 20, 2022) https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/408-monkeypox-intro.html 厚労省通達 (updated February 9, 2023) https://www.kansensho.or.jp/uploads/ les/news/sarutou_230216.pdf

  • #20.

    感染対策 -PPE• ⾶沫・接触 (+空気感染) 予防策を講じる (患者の理念を扱う者や清掃担当 者も同様) - ガウン - ⼿袋 - ⽬の防護 - N95マスク (必要に応じて) CDC (updated October 31, 2022) https://www.cdc.gov/poxvirus/monkeypox/clinicians/infection-control-healthcare.html

  • #21.

    感染対策 -廃棄物処理• 汚れた洗濯物 (寝具, タオル, 個⼈の⾐服) は, 洗濯物に存在する可能性の ある病変物質との接触を避け, 標準的な⽅法に従って処理を⾏う。 - WHO, USCDC, UKHSAでは温⽔による洗浄を推奨している • 乾燥した埃を払う, 掃く, 掃除機をかけるなどの⾏為は避け, 湿式洗浄が望 ましい。 • ⾷器管理も, ⽇常的な⼿順に従って⾏う CDC (updated October 31, 2022) https://www.cdc.gov/poxvirus/monkeypox/clinicians/infection-control-healthcare.html NIID (updated July 8, 2022) https://www.niid.go.jp/niid/ja/monkeypox-m/2596-cepr/11196-monkeypox-01.html

  • #22.

    感染対策 -⾃宅療養• 患者は同居⼈と肌や顔を接しないようにする • リネン類の共有を避け, 患者が使⽤したリネン類は, 病変や体液からの感染性粒⼦ が⾶散する可能性があるため, 静かにビニール袋等に⼊れて運搬し、洗濯機に⼊れ る。洗濯後は再利⽤可能。 • ベッド, トイレ, 患者が接触した場所 (家具や床など) は, 使い捨て⼿袋を着⽤し清 掃, その後消毒薬で清拭する。その後必ず⼿指衛星を⾏う。 • 患者が使⽤した⾷器や調理器具は, ⽯鹸や洗剤等で洗った後に再利⽤可能である。 • 常に⼗分な換気を⾏うよう配慮する。 NIID (updated July 8, 2022) https://www.niid.go.jp/niid/ja/monkeypox-m/2596-cepr/11196-monkeypox-01.html

  • #23.

    感染対策 -期間- • 医療施設における隔離予防措置の中⽌について, 地⽅または州の保健所と 協議して⾏う必要がある。 • 隔離予防策は, すべての病変が痂⽪化し, それらの痂⽪が分離し, その下に 健康な⽪膚の新鮮な層が形成されるまで⾏う。 CDC (updated October 31, 2022) https://www.cdc.gov/poxvirus/monkeypox/clinicians/infection-control-healthcare.html

  • #24.

    国外の状況 • 2022年5⽉7⽇, 英国は常在国であるナイジェリア渡航後のMpox患者の発⽣を報告。 • 5⽉13⽇には, 5⽉7⽇の症例と関係がない, 渡航歴がない, また最近渡航歴がある⼈との接触 もない2例の家族症例 • 5⽉15⽇, 同じく渡航歴がなく, 先に報告された例との疫学的関連性がない4例を報告。 • 7⽉23⽇, WHOのテドロス事務局⻑が”国際的に懸念される公衆衛⽣上の緊急事態 (PHEIC)” に相当すると宣⾔ • 11⽉28⽇, WHOが「サル痘」を「M痘 (Mpox)」へ名称変更 (厚労省通達はサル痘のまま) • 2023年2⽉16⽇, PHEIC維持を決定 UKHSA. Monkeypox cases con rmed in England (published May 14, 2022) https://www.gov.uk/government/news/monkeypox-cases-con rmed-in-england-latest-updates ECDC. Risk Assessment: Monkeypox multi-country outbreak. (published May 26, 2022) https://www.ecdc.europa.eu/en/publications-data/risk-assessment-monkeypox-multi-country-outbreak. fi fi 国⽴感染症研究所. アフリカ⼤陸以外の複数国で報告されているサル痘について(第1報) (updated May 24, 2022) https://www.niid.go.jp/niid/ja/from-lab/2521-cepr/11166-monkeypox-ra-0524.html

  • #25.

    CDC Monkeypox Outbreak Global Map - updated April 13, 2023 https://www.cdc.gov/poxvirus/monkeypox/response/2022/world-map.html

  • #26.

    国内の状況 • • 2022年7⽉25⽇国内1症例⽬が報告, 30歳代男性, 欧州渡航歴があり, 現地でMpox患者と の接触歴あり。 2023年以降, 患者の発⽣が増加しており, 2023年4⽉13⽇時点で109例の患者等が報告 されている。 厚⽣労働省報道発表資料 (published July 25, 2022) https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_27036.html 厚⽣労働省 サル痘について (accessed April 19, 2023)https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou19/monkeypox_00001.html

  • #27.

    本邦における疑似症例の定義 原則, 下記の①〜②全てを満たす者とするが, 臨床的にサル痘を疑うに⾜るとして主治医が判断をした場合につ いては, この限りではない。 ① 少なくとも次の1つ以上の症候を呈している。 • 説明困難*な急性発疹 (⽪疹⼜は粘膜疹), 発熱 (≧38.5℃), 頭痛, 背中の痛み, 重度の脱⼒感, リンパ節 腫脹, 筋⾁痛, 倦怠感, 咽頭痛, 肛⾨直腸痛, その他の⽪膚粘膜病変 • *⽔痘, ⾵しん, 梅毒, 伝染性軟属腫, アレルギー反応, その他の急性発 疹及び⽪膚病変を呈する疾患に よるものとして説明が困難であることをいう。ただし, これらの疾患が検査により否定されていること は必須ではない。 ② 次のいずれかに該当する。 • 発症 21 ⽇以内に複数または不特定の者と性的接触があった。 • 発症 21 ⽇以内にサル痘の患者、無症状病原体保有者⼜は①を満たす者との接触(表 1レベル中以 上)があった。 • 臨床的にサル痘を疑うに⾜るとして主治医が判断をした。 fi 厚労省通達 (updated February 9, 2023) https://www.kansensho.or.jp/uploads/ les/news/sarutou_230216.pdf

  • #28.

    本邦における接触者の定義 • サル痘の患者 (確定例) ⼜は疑い例と, 表に⽰す接触状況があった者 サル痘患者等との接触の状況 適切なPPE の着⽤や感 染予防策 創傷などを含 む粘膜との接 触 寝⾷をともに する家族や同 居⼈ なし ⾼1) ⾼2) 中1) 中 低 あり - - - 低 低 正常な⽪膚の 1m以内の接触 1mを超える接 みとの接触 歴3) 触歴 1) サル痘常在国でのげっ⻭類との接触を含む 2) 寝具やタオルの共有や, 清掃・洗濯の際の, 確定例の体液が付着した寝具・洋服等との接触を含む 3) 接触時間や会話の有無等周辺の環境や接触の状況等個々の状況から患者の感染性を総合的に判断すること fi 厚労省通達 (updated February 9, 2023) https://www.kansensho.or.jp/uploads/ les/news/sarutou_230216.pdf

  • #29.

    感染症法に基づく届出@⽇本 検査⽅法 検査材料 分離・同定による病原体検出 病原体の特異⾼原の検出 ⽪膚⼜は粘膜病変, ⽔疱内容液, ⿐咽頭拭い液, 咽頭 拭い液, 肛⾨直腸拭い液, その他粘膜拭い液, ⾎液, 尿, その他検査⽅法に適する材料 PCR法による病原体の遺伝⼦の検出 厚⽣労働省, 感染症法に基づく医師の届出のお願い, サル痘 (accessed April 19, 2023) https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou11/01-04-13.html

  • #30.

    医療機関における対応について • 疑い例の症例定義に該当する者を診察した場合⼜は⺠間検査会社における研究 ⽤試薬を⽤いた検査により陽性と判明した場合には, 最寄りの保健所に連絡し て, 検体採取や疑い例の者への聴取, ⾏政検査による確定検査1等その後の対応 について相談すること • 特に, 渡航歴, 接触歴 (性的接触歴を含む), 天然痘ワクチン接種歴等の詳細を 可能な限り聴取すること。 • 感染症法第15条による保健所の積極的疫学調査に協⼒すること。 • 疑い例の検体を保存するとともに, 保健所の求めに応じて, 検体を提出する fi 厚労省通達 (updated February 9, 2023) https://www.kansensho.or.jp/uploads/ les/news/sarutou_230216.pdf

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