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身体症状と陰性感情の関連性についての患者の表現:プライマリケア診療の質的分析   2020年4-5月

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小林聡史

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11月:百日咳

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小林聡史

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  • #1.

    体重バイアスとスティグマ ゆきあかり診療所 総合診療医 小林聡史

  • #2.

    論文翻訳&要約してみました。 Br J Gen Pract. 2019 Jul;69(684):349. 題材とした論文は、「Weight bias and stigmatisation: what is it and what can we do about it?」です。 「British Journal of General Practice」という家庭医療系の雑誌に載っていました。 マイケルサンデルの「実力も運のうち 能力主義は正義か?」の本を思い出し、読んでみることにしました。 PDF1枚だけの論文なので、さらっと読めます。

  • #3.

    論文の本文に移ります。

  • #4.

    体重バイアスは解消されづらく、診療の場で悪影響を及ぼす。 体重バイアスは最も解消されづらい偏見と言われている。 これが診察室に持ち込まれると、それ自体が健康上の脅威となり、ケアの不平等が起きるリスクが上がり、医師と患者双方の介入やアドヒアランスの努力を妨げることになる。

  • #5.

    体重バイアスは医療現場で蔓延しており、解決策を模索しなければいけない。 2015年のBMJ誌に掲載された「Why there‘s no point tell me to lose weight(体重を減らせと言っても無駄な理由)」という記事では、ある患者が、GPが診察の際に現存の健康問題よりも体重に気を取られていることを批判している。 その患者によると、「私のGPは...私をまず太った人間として見ており、次に個人として見ている」とのこと。 実際、医療現場では、暗黙的なものも実際に行われているものも含めて、体重バイアスが蔓延していることが研究で証明されている。 患者のケアを最適化するためには、医師の暗黙の態度がもたらす質の高いヘルスケアへの障害を理解し、解決策を検討することが重要だ。

  • #6.

    THE STIGMATISED PATIENT 烙印を押された患者

  • #7.

    能力主義的な見方をする医師は、肥満患者を尊重しない傾向がある。 BMI値が高い患者は、健康な体重の患者に比べて尊重されないという研究結果がある。 医師は、肥満の患者はコンプライアンスや自己管理能力が低いと見ており、患者のBMIが高くなるにつれて介入したいと思う気持ちが低下すると報告されている。 このような態度は、肥満がコントロール可能であるという認識に起因していると考えられる。 肥満の患者を「architects of their own health(自分の健康の設計者)」と考えると、そのような決めつけ自体が、肥満の原因となる生活習慣を強化することが示されているにもかかわらず、患者をライフスタイルの変化を促すことに消極的な人であるとみなすことになる。

  • #8.

    肥満患者とはコミュニケーションエラーが起きやすく、アンカリングバイアスも働きやすい。 GPは、アドヒアランスが悪いと思われる肥満の患者に対して、患者中心のコミュニケーションをとり、信頼関係を築くことが少ない。また、診察時間の配分が異なり、患者の健康に関する教育に費やす時間が少なくなる可能性がある。 また、医師は患者さんの医学的問題を肥満のせいだと考えすぎてしまい、適切な紹介がなされず、減量以外の治療法が検討されないこともある。

  • #9.

    StigmaがBioPsychoSocialに与える影響は大きい。 Stigmaは、社会的拒絶の一形態で、うつ病、不安、自尊心の低下の原因となる。 Stigmaを感じた患者は、医療機関を受診することに不安を感じ、受診が遅れたり、全く受診しなかったりする人もいる。 Stigmaによる心理的ストレスは、それ自体が太りすぎの病態生理に寄与する。 例えば、ストレスによる内分泌機能の変化により、コルチゾール、脂肪酸、血糖値、LDL値などが上昇する。 Stigmaを感じた患者はフィードバックを受けても影響を受けにくく、肥満のStigmaを経験すればするほど、健康に価値を感じなくなる。 このように、体重バイアスは、肥満患者への介入の直接的な妨げになる。

  • #10.

    バイアスに気づき、臨床に影響しないようにしよう。 自分自身のバイアスを認識し、それに挑戦し、臨床に影響を及ぼさないようにすることは、私たちの責任である。 ハーバード大学の「Project Implicit」Association Testは、暗黙のバイアスを明らかにするための迅速で簡単なツールである。 バイアスを減らすことを目的としたこれまでの研究では、perspective-taking exercises,やacceptance and commitment therapyなど、ポジティブな精神的態度や感情を促進するエクササイズを試して成功しており、それらは向社会的行動や偏見の減少につながっている。

  • #11.

    しかし、体重バイアスの是正は難しく、トレーニングの時間も限られている。 しかし、肥満に対する偏見は、他のタイプの偏見に比べて、特に介入しにくいことがわかっている。 さらに、プライマリ・ケアの実践者は、集中的かつ長期的な参加型トレーニングコースに参加する時間がほとんどない。

  • #12.

    そこで、教育介入が比較的有効かも。 体重や肥満の偏見を特に対象とした介入の中で、最も成功しているのは教育的なものである。 2010年に行われた研究では、医療機関の学生が肥満の原因に関するチュートリアルを受けたところ、特に遺伝的・環境的な影響についての理解が深まり、暗黙的な「反脂肪(anti-fat)」の態度が減少した。 同様に、2013年に行われた試験では、研修中の医師に反Stigmaに関する短い映画を見せたところ、肥満の人に対するあからさまな態度や信念が大幅に減少したことがわかった。 したがって、医学部や研修生のカリキュラムに簡単な教育的介入を盛り込む努力をすべきであろう。

  • #13.

    TAKING RESPONSIBILITY 責任の所在

  • #14.

    体重バイアスの影響を軽減する方法を模索しなければいけない。 極論を言えば、スティグマやバイアスは、臨床行為に影響を与え、積極的な行動変容を促すのに逆効果である。 平等で効果的な診療を確実にし、患者の安全を守り、行動変容のための介入を最大限に成功させるためには、暗黙の認知バイアスが存在していても、実践者の行動に影響を与えてはならない。 私たちは、治療と予防のためのコミュニティとして、体重バイアスの影響を軽減する方法を模索しなければいけない。

  • #15.

    肥満患者が全て減量を希望していると決めつけない。主訴への対応が最優先。 診察では、患者の主訴に対応することが最優先である。患者が減量のアドバイスを必要としている、あるいは減量を望んでいると決めつけてはならない。そのように対応していれば、結果的に患者と医師の信頼関係は向上しうる。 バイアスに直接対抗するには、(卒前教育も含めて)医療的な訓練にバイアスを意識した演習を組み込むことだ。それが、医療従事者が自らの暗黙のバイアスを認識し、抑制するのに役立ちうる。

  • #16.

    論文の本文はこれで終了です。 以下、雑感。

  • #17.

    雑感 自分自身にも体重バイアスがあることに読んでいて気付いた。能力主義的な傾向が少なからずあるのだろう。 喫煙や飲酒など、健康に悪い習慣を持つ患者さんへの対応全般に適応可能な話だと思った。 心理的ストレスが体重を増加させる方向に働きうるというのも考えれば納得で、体重バイアスにより却って肥満を助長する、というのは非常に重要な指摘だと思った。 患者さんの行動変容ステージに応じた対応が必要なんだろうと感じた。

体重バイアスとスティグマ

  • 総合診療科

  • その他

  • ゆきあかり

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投稿者プロフィール
小林聡史

はるな生活協同組合通町診療所

概要

体重バイアスとスティグマに関する論文の翻訳・要約です。

本スライドの対象者

研修医/専攻医

テキスト全文

  • #1.

    体重バイアスとスティグマ ゆきあかり診療所 総合診療医 小林聡史

  • #2.

    論文翻訳&要約してみました。 Br J Gen Pract. 2019 Jul;69(684):349. 題材とした論文は、「Weight bias and stigmatisation: what is it and what can we do about it?」です。 「British Journal of General Practice」という家庭医療系の雑誌に載っていました。 マイケルサンデルの「実力も運のうち 能力主義は正義か?」の本を思い出し、読んでみることにしました。 PDF1枚だけの論文なので、さらっと読めます。

  • #3.

    論文の本文に移ります。

  • #4.

    体重バイアスは解消されづらく、診療の場で悪影響を及ぼす。 体重バイアスは最も解消されづらい偏見と言われている。 これが診察室に持ち込まれると、それ自体が健康上の脅威となり、ケアの不平等が起きるリスクが上がり、医師と患者双方の介入やアドヒアランスの努力を妨げることになる。

  • #5.

    体重バイアスは医療現場で蔓延しており、解決策を模索しなければいけない。 2015年のBMJ誌に掲載された「Why there‘s no point tell me to lose weight(体重を減らせと言っても無駄な理由)」という記事では、ある患者が、GPが診察の際に現存の健康問題よりも体重に気を取られていることを批判している。 その患者によると、「私のGPは...私をまず太った人間として見ており、次に個人として見ている」とのこと。 実際、医療現場では、暗黙的なものも実際に行われているものも含めて、体重バイアスが蔓延していることが研究で証明されている。 患者のケアを最適化するためには、医師の暗黙の態度がもたらす質の高いヘルスケアへの障害を理解し、解決策を検討することが重要だ。

  • #6.

    THE STIGMATISED PATIENT 烙印を押された患者

  • #7.

    能力主義的な見方をする医師は、肥満患者を尊重しない傾向がある。 BMI値が高い患者は、健康な体重の患者に比べて尊重されないという研究結果がある。 医師は、肥満の患者はコンプライアンスや自己管理能力が低いと見ており、患者のBMIが高くなるにつれて介入したいと思う気持ちが低下すると報告されている。 このような態度は、肥満がコントロール可能であるという認識に起因していると考えられる。 肥満の患者を「architects of their own health(自分の健康の設計者)」と考えると、そのような決めつけ自体が、肥満の原因となる生活習慣を強化することが示されているにもかかわらず、患者をライフスタイルの変化を促すことに消極的な人であるとみなすことになる。

  • #8.

    肥満患者とはコミュニケーションエラーが起きやすく、アンカリングバイアスも働きやすい。 GPは、アドヒアランスが悪いと思われる肥満の患者に対して、患者中心のコミュニケーションをとり、信頼関係を築くことが少ない。また、診察時間の配分が異なり、患者の健康に関する教育に費やす時間が少なくなる可能性がある。 また、医師は患者さんの医学的問題を肥満のせいだと考えすぎてしまい、適切な紹介がなされず、減量以外の治療法が検討されないこともある。

  • #9.

    StigmaがBioPsychoSocialに与える影響は大きい。 Stigmaは、社会的拒絶の一形態で、うつ病、不安、自尊心の低下の原因となる。 Stigmaを感じた患者は、医療機関を受診することに不安を感じ、受診が遅れたり、全く受診しなかったりする人もいる。 Stigmaによる心理的ストレスは、それ自体が太りすぎの病態生理に寄与する。 例えば、ストレスによる内分泌機能の変化により、コルチゾール、脂肪酸、血糖値、LDL値などが上昇する。 Stigmaを感じた患者はフィードバックを受けても影響を受けにくく、肥満のStigmaを経験すればするほど、健康に価値を感じなくなる。 このように、体重バイアスは、肥満患者への介入の直接的な妨げになる。

  • #10.

    バイアスに気づき、臨床に影響しないようにしよう。 自分自身のバイアスを認識し、それに挑戦し、臨床に影響を及ぼさないようにすることは、私たちの責任である。 ハーバード大学の「Project Implicit」Association Testは、暗黙のバイアスを明らかにするための迅速で簡単なツールである。 バイアスを減らすことを目的としたこれまでの研究では、perspective-taking exercises,やacceptance and commitment therapyなど、ポジティブな精神的態度や感情を促進するエクササイズを試して成功しており、それらは向社会的行動や偏見の減少につながっている。

  • #11.

    しかし、体重バイアスの是正は難しく、トレーニングの時間も限られている。 しかし、肥満に対する偏見は、他のタイプの偏見に比べて、特に介入しにくいことがわかっている。 さらに、プライマリ・ケアの実践者は、集中的かつ長期的な参加型トレーニングコースに参加する時間がほとんどない。

  • #12.

    そこで、教育介入が比較的有効かも。 体重や肥満の偏見を特に対象とした介入の中で、最も成功しているのは教育的なものである。 2010年に行われた研究では、医療機関の学生が肥満の原因に関するチュートリアルを受けたところ、特に遺伝的・環境的な影響についての理解が深まり、暗黙的な「反脂肪(anti-fat)」の態度が減少した。 同様に、2013年に行われた試験では、研修中の医師に反Stigmaに関する短い映画を見せたところ、肥満の人に対するあからさまな態度や信念が大幅に減少したことがわかった。 したがって、医学部や研修生のカリキュラムに簡単な教育的介入を盛り込む努力をすべきであろう。

  • #13.

    TAKING RESPONSIBILITY 責任の所在

  • #14.

    体重バイアスの影響を軽減する方法を模索しなければいけない。 極論を言えば、スティグマやバイアスは、臨床行為に影響を与え、積極的な行動変容を促すのに逆効果である。 平等で効果的な診療を確実にし、患者の安全を守り、行動変容のための介入を最大限に成功させるためには、暗黙の認知バイアスが存在していても、実践者の行動に影響を与えてはならない。 私たちは、治療と予防のためのコミュニティとして、体重バイアスの影響を軽減する方法を模索しなければいけない。

  • #15.

    肥満患者が全て減量を希望していると決めつけない。主訴への対応が最優先。 診察では、患者の主訴に対応することが最優先である。患者が減量のアドバイスを必要としている、あるいは減量を望んでいると決めつけてはならない。そのように対応していれば、結果的に患者と医師の信頼関係は向上しうる。 バイアスに直接対抗するには、(卒前教育も含めて)医療的な訓練にバイアスを意識した演習を組み込むことだ。それが、医療従事者が自らの暗黙のバイアスを認識し、抑制するのに役立ちうる。

  • #16.

    論文の本文はこれで終了です。 以下、雑感。

  • #17.

    雑感 自分自身にも体重バイアスがあることに読んでいて気付いた。能力主義的な傾向が少なからずあるのだろう。 喫煙や飲酒など、健康に悪い習慣を持つ患者さんへの対応全般に適応可能な話だと思った。 心理的ストレスが体重を増加させる方向に働きうるというのも考えれば納得で、体重バイアスにより却って肥満を助長する、というのは非常に重要な指摘だと思った。 患者さんの行動変容ステージに応じた対応が必要なんだろうと感じた。

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